ウェブ会議を利用した裁判期日について

名古屋では、日中には暖かい日も出てきました。
先日、ウィメンズマラソンがあった日も好天に恵まれていましたが、これから徐々に暖かくなっていけば、過ごしやすくなってくるなと思います。

今回は、「ウェブ会議を利用した裁判期日」について、取り上げたいと思います。

これまでも何度か取り上げてきましたが、裁判手続きのウェブ化が進んでいます。
裁判の期日にウェブ会議の方法を利用して参加するほか、書面をオンラインで提出したり、データを提供したりといった方法が利用できるようになってきました。
利用できる範囲も、民事訴訟だけであったのが家事事件にも拡充されたり、一部の地方裁判所だけであったのが、高等裁判所や家庭裁判所等に拡充されたり、といったように広がってきています。

裁判期日への参加がウェブを利用してできるようになったことは、特に遠方の裁判所での期日のときに便利です。
現在、遠方の裁判所の手続きではほぼこれを利用している状況にあります。

令和7年3月1日からは、人事訴訟・家事調停事件で、ウェブ会議を利用して和解や調停を成立させることもできるようになりましたが、これは単に裁判所に出頭しなくてもよいので便利という以上の意味があります。

というのも、離婚事件においては、DⅤが絡んでいて裁判所でのトラブルになるおそれがあるため、当事者が顔を合わせることを避けるべきであるという事案や、当事者の感情的な問題のため、顔を合わせることが困難という事案があります。
人事訴訟における和解離婚や、離婚調停における調停の成立においては、裁判所が当事者の意思を確認するため、基本的には、当事者が出頭したうえで、裁判官が当事者と顔を合わせて、離婚の内容を確認するという運用がされてきました。
場合によっては、当事者が直接、顔を合わせないように、裁判官が個別に離婚の内容を確認するという方法が取られることもありましたが、それでも、裁判所に出頭する限り、暴力等のトラブルのリスクを完全に排除できるわけではありませんし、「同じ建物、近くにいるだけで、精神的に耐えられない」という当事者もいますので、裁判所への出頭が困難ということもあります。
そのような場合に、ウェブを利用して和解離婚や調停離婚を成立させることができれば、上記のようなリスクを避けたり、当事者の感情的な問題に対処したりできるようになります。

裁判のウェブ化には、業務の効率化以外の目的や効果があると思います。
とはいえ、すべてをウェブ化するのが望ましいかどうかは慎重に考えなければなりませんし、あえてウェブを利用しないという選択が適切であるという場合もあるでしょう。
ウェブという選択ができるようになったのは望ましいことですので、今後も制度が進化していってほしいと思います。

裁判書類で使用されている文字

先日、名古屋でも雪が降りました。

今年の冬は、あまり寒くないようにも感じていましたが、2月に入っても寒い日が続きました。

しっかりと体調管理をしながら、日々の業務を進めていきたいと思います。

 

今回は、「裁判書類で使用されている文字」について、取り上げたいと思います。

 

裁判の当事者の氏名等では、あまり使わない漢字が使用されていることがあります。

しかし、今や裁判で作成される主張書類等のほとんどの書類はパソコンを用いて作成されており、あまり使用されていない字体を使用することは手間になる面があります。

 

そこで、裁判書類では、字種が同じ文字については、字形や字体の違いにかかわらず、区別せずに同一のものと取り扱うことが原則ということになりました。

この字種が同じかどうかについては、常用漢字表をもとに判断されます。

たとえば、「崎」と「﨑」は字種が同じなので、字体が違っていても、同じ扱いとされることになりました。

他方、「斎」と「斉」

これまでは、字体が異なっていた場合には、字体を区別して記載するという扱いでしたから、これは以前との変更点ということになっています。

字形の違いは、従来からも区別されていませんでしたから、この点の変更はありません。

 

ここで問題になるのが、字体が異なるものを区別せずに取り扱った結果、戸籍や登記などの手続きに影響がでないのかということです。

つまり、字体を区別せずに裁判書類を作成した結果、たとえば、「山崎」さんと「山﨑」さんとの区別や同一性の確認ができなくなってしまうのではないかということです。

この点については、最高裁判所と法務省との間で確認がされているようであり、手続きに支障が生じないそうです。

 

上記の扱いは、あくまで裁判所での扱いに関するものであり、当事者や弁護士が、これを区別して書面を作成しても差支えはないそうです。

 

これらの扱いは、事務の合理化だけでなく、前回も取り上げたような電子化との関係もある分野です。

電子化にともなって、各種の事務の取扱いにも変化が生じているようです。

税務署の収受印の廃止

2025年を迎えました。

本年も自分なりにしっかりと目標を立てて、より充実した一年にしたいと考えています。

 

今年のお正月は、多くの寺社に参拝しました。

弁護士業務に関連して、多くの硬貨を抱えることになりましたので、たくさんの寺社に参って、お賽銭を奉納しようと思い立ったのでした。

 

名古屋市の自宅付近だけでも、非常に多くの寺社があり、一つ一つを丁寧に参りました。

小規模な神社に参ることになりましたが、地域の神社にも、それぞれの村落を護ってきた歴史や由緒があり、とても勉強になりました。

それらの神社には、有名な神社、大きな神社にはない趣きがありましたし、心穏やかに参拝することができました。

普段は仕事で忙殺される日々ではありますが、新たな発見ができたことはよかったと思います。

 

今回は、「税務署の収受印の廃止」について、取り上げたいと思います。

 

従来、税務署では、提出した申告書等の控えに収受した日付の押印を求めた場合には、これに押印してもらえていました。

この押印がされていることが、税務署に書類を提出したことの一種の証明になることもあり、たとえば、事業者が融資を得る際にも利用されていました。

 

今般、税務署は、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直し等の一環として、令和7年1月から、収受印の押印をしないことになりました。

税務署としては、なるべく電子申告への誘導を図りたいということであり、今後はこの方向で税務も進んでいくことになろうと思われます。

 

他方、電子申告には、手続きにおける制限もありますし、その利便性が十分であるとはいえない面もあります。

申告書を郵送や窓口で提出できなくなるわけではありませんし、引き続き、この方法での提出をすることも可能です。

 

今後は、電子申告における課題を克服しながら、最も適切な方法で申告書を提出することになろうかと思われます。

 

相次相続控除について

2024年もあとわずかになりました。

名古屋も寒い日が続き、身体も冷えるようになってきましたので、残りの時間を有効に使えるように、体調と健康に気を付けていきたいと思います。

 

今回は、「相次相続控除」について、取り上げたいと思います。

 

相続税では、「相次相続控除」という税額の軽減が認められていますので、どのような制度かを説明します。

相続税がかかる相続が発生し、相続人が相続税を納付したとします。

その相続人が亡くなり、その相続人の相続でも相続税がかかるとすると、先に相続した財産には、2度の課税がされていることになります。

2つの相続が近接した時期に発生したとすると、同じ財産に重複して課税をすることが過重な負担であると考えることもできます。

そのため、このような場合の2度目の相続においては、相次相続控除が認められています。

ごく簡単な表現をすると、1度目に納付することになった相続税の一部を、2度目の相続の相続税から控除することを認めるという制度です。

 

相次相続控除を利用するには、いくつか要件や注意点があります。

 

一つは、被相続人の相続人であることです。

ただ、被相続人の相続人であったとしても、その相続人が相続放棄をして、それでも生命保険の保険金を受け取っていた場合には、注意が必要です。

その相続人は、「遺贈」として生命保険金を「みなし相続財産」として受け取っていても、この控除は使えないということに注意しましょう。

 

もう一つは、前回の相続からどの程度の期間が経過しているのかにも注意が必要です。

10年以上が経過していると、この控除は使えません。

相次相続控除が認められる額についても、1回目の相続からどれだけの期間が経過しているかによって変わります。

すなわち、10年間のうち、経過した年数を控除した残りの年数の割合だけ、控除が認められます。

経過した年数は、いわゆる少数点以下を切り下げて計算することになります。

分かりにくいので、例を使って簡潔に説明すると、1回目の相続から9年ちょっと経過してから2回目の相続が発生した場合には、1年分だけ控除が利用できることになります。

そこでは、1回目の相続で納付した相続税の10分1に相当する税額を控除しうることになります。

 

これ以外にも注意すべき点がありますので、この控除を利用する際にはしっかりと確認をしましょう。

未分割での相続税の申告について

名古屋でも、急に寒い日が続くようになりました。

日中は暖かい日もありますので、気温の寒暖差に気をつけながら生活をしたいと思います。

 

今回は、「未分割での相続税の申告」について、取り上げたいと思います。

 

相続税の申告が必要な場合には、相続開始を知った日から10か月以内に申告をする必要があります。

 

このときまでに遺産分割が終わっていれば、遺産分割の内容に応じて申告をすることになります。

しかし、遺産分割が終わっていない場合にも、申告自体はしなければいけませんので、その場合には、未分割で相続税の申告をすることになります。

 

未分割で相続税の申告をする場合には、いったんは法定相続分で相続税申告をすることになります。

そのうえで、遺産分割が終わった後に、その分割内容に応じて相続税申告をしなおすことになります。

 

ただし、未分割申告においては、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例などの適用ができません。

これらを適用しない内容での申告と納付をすることになります。

 

未分割申告となった場合に、上記の制度の適用を受けられなくなるわけではありません。

未分割申告にあたって、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、遺産分割が終わった後、それらの制度を適用した更正の請求をすることができます。

他方で、この分割見込書の提出を怠った場合には、これらの制度の適用ができなくなってしまいますので、注意が必要です。

 

この分割見込書は、国税庁のホームページに申請書様式がありますので、この用紙を利用して作成することになります。

「分割されていない理由」や「分割の見込みの詳細」を記載したうえで、適用を受けようとする特例等を選択したうえで、提出します。

 

遺産分割調停における調停に代わる審判について

今年も、残り2か月余りとなりました。

名古屋でも涼しい時期が来たように感じますし、朝晩は肌寒くなってきました。

夏がいつまでも続くような感覚でしたが、もう10月なのを考えると、寒くなるのもすぐなのかもしれません。

 

今回は、「遺産分割調停における調停に代わる審判」について、取り上げたいと思います。

 

調停に代わる審判とは、調停手続きにおいて、裁判所が、調停成立の見込みがない場合に職権で審判をする制度です。

遺産分割においても、この調停に代わる審判が利用されることがありますので、どのように利用されることがあるのかを紹介します。

 

遺産分割協議において、連絡がとれない相続人がいたとします。

遺産分割協議は相続人全員で協議をして合意しなければなりませんので、連絡がとれない相続人がいれば、遺産分割協議がいつまでも成立しません。

そのようなときに、遺産分割を成立させるために、遺産分割調停を申し立てます。

 

こちらから遺産分割調停を申し立てたとしても、その相続人が調停の手続きに参加するとは限りませんし、遺産分割調停においても、当事者全員が合意することが必要ですので、当事者全員が参加しなければ調停は成立しません。

そのような場合に、調停に代わる審判が利用されることがあります。

 

たとえば、連絡が取れなかった相続人が、「遺産分割調停には参加しないが、遺産は取得するつもりはない」という連絡をしていたとします。

本人がそのような意思を持っていることが確認できたのであれば、仮に本人が調停手続きに参加しなかったとしても、そのような内容の遺産分割とすることが相当であると考えられるでしょう。

そのようなときには、裁判所が、その相続人が相続財産を取得せず、他の相続人が相続財産を取得する内容での調停に代わる審判を発出するという可能性があります。

 

この「可能性」という表現にしているのは、調停に代わる審判を発出するかどうか、どのような内容の調停に代わる審判が出されるのかというのは、あくまで裁判所の判断によるからです。

弁護士が代理人となっている調停手続においては、弁護士と裁判所が調整をして、対応を協議することになります。

 

相続財産の状況、相続人の状況は、事案ごとにさまざまですので、どのように裁判所を説得していくのかについては、弁護士としての力量が問われるところです。

戸籍取得の簡便化について

今年も、全国で台風の被害がありました。

台風の動きは意外なものであり、現在の技術をもってしても、台風の動きを予測することは難しいことが分かりました。

私は、名古屋以外に出張することがあり、交通機関への影響もありますので、今後も、台風の最新情報をこまめに確認するという必要は続きそうです。

 

今回は、「戸籍取得の簡便化」について、取り上げたいと思います。

相続などの手続きでは、戸籍を取得する必要があります。
「被相続人がいつ亡くなったのか」、「誰が相続人なのか」といった相続人関係の事項は戸籍で確認することができますので、これらを取得して進めることになります。

戸籍は、本籍地のある自治体で管理されていますので、本籍地のある自治体に証明書の発行を依頼することになります。
本籍地が近ければ、役所の窓口で取得すればよいですが、通常、本籍地は住所が変わっても変更しないため、住所地と異なる場所に本籍地があるという方々も多いでしょう。
そのような場合には、本籍地のある自治体に郵送で戸籍の発行を依頼することができます。
最近は、マイナンバーカードを利用するなどして、コンビニでも戸籍の発行ができるようになりましたが、取得可能な戸籍が限られているなどの問題が残っています。

郵送で取得するとなると、時間もかかるうえ、必要な戸籍が数か所に分散して管理されている場合には、そのような自治体すべてに手続きをする必要が生じてしまいます。
そこで、令和6年から広域交付の制度が開始されました。
この制度を利用すると、市外の戸籍であっても、住所地の自治体の窓口の手続きで取得できるようになりました。
本人以外の父母、祖父母などの直系尊属の戸籍も取得できますので、たとえば、「父の出生から死亡までの戸籍」を一度に取得することも可能です。
ただし、この制度を使って取得できる戸籍の範囲にも制限があり、自治体によっては利用時間などにも制限をかけていることがあるようですので、予め利用方法の確認をしてから手続きを進めるのが無難です。

政府では、戸籍の電子交付も検討されているようです。
電子交付されたものを利用して、各機関に対して、電子での手続きができようになれば、相続手続きはより便利になるでしょう。
今後も、戸籍の取得方法が簡便になるように工夫されていくでしょうし、このような流れをしっかりと確認していきたいと思います。

硬貨の口座への預入れについて

私の住んでいる名古屋でも、酷暑といえるような日が続いています。

通勤での自転車移動は、暑さが和らいだ朝晩の時間帯なので大丈夫なのですが、事務所間や、裁判所、金融機関等への移動は日中に移動するため、体力がかなり削られます。

暑さに負けないように頑張っていきたいと思います。

 

今回は、法律の話ではないのですが、「硬貨の口座への預入れ」について、取り上げたいと思います。

 

話はずれますが、財産管理をする意思能力を欠く常況にある方の財産管理をする者を成年後見人といいます。

私も、弁護士として何人かの方の成年後見人となっており、ご本人のために財産管理をしています。

この財産管理は、第三者のご本人のためにしているわけであり、公明正大にする必要があります。

現金の管理については、その管理に疑義が生じないように、なるべく現金としては管理せず、口座で管理することが望ましいといえます。

 

ご本人の中に、非常に多くの硬貨をお持ちの方がいらっしゃいました。

大量のスペースを取られるという理由もありましたが、そのままで保管するのではなく、口座で管理するのが望ましいといえるでしょう。

 

この硬貨を銀行口座に預け入れるということに困難な点があります。

というのも、現在、金融機関では硬貨の預入れにおいて、枚数の制限があるか、手数料がかかるところがほとんどだからです。

 

1円硬貨を預け入れるために、その価値以上の手数料を払ってまで預け入れるというのは、本末転倒となってしまいます。

 

他方、金融機関の立場からしても、硬貨の計上や処理に手間がかかる以上、手数料を取らずに受け入れることは困難だという事情も理解できますし、やむを得ないことではあるでしょう。

 

いろいろと考えているなかで、「大量のお賽銭を受け入れている神社はどうしているのだろか」という疑問も生じました。

調べてみると、神社も硬貨の管理に苦心しており、「お賽銭は100円以上でお願いします」という呼びかけをしている神社もあるという記事も見かけました。

釣銭などで硬貨が必要な地元商店などに両替をしている神社もあるそうです。

 

キャッシュレス化がますます進んでいる時代に、硬貨の位置づけも変わってきていることを感じました。

参拝のご利益がお賽銭の額によって変わるのかは分かりませんが、同じく硬貨の扱いに苦労した者として、神社側のお立場も理解したうえで、お賽銭を決めたいと思いました。

 

なお、最後に法律の話をしておきますと、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律という法律があり、債務の弁済にあたって、貨幣(硬貨)は20枚までは利用できることが規定されています。

「政府は、磨損その他の事由により流通に不適当となった貨幣を、額面価格で、手数料を徴収することなく、財務省令で定めるところにより、第二条第一項に規定する通貨と引き換えるものとする。」とも規定されており、現在は、日本銀行の本支店でこれに対応しているようです。

遺言書保管制度での保管について

名古屋では蒸し暑い日が続くようになってきています。

一日の中でも、雨が降ったり、止んだりといったことも多いように思います。

寒暖差が大きい日もありますので、体調に気を付けながら、毎日の業務に励みたいと思います。

 

今回は、「保管された遺言書の保管後の扱い」について、取り上げたいと思います。

 

法務局で自筆証書遺言を保管してもらう制度が導入されています。

保管の申請がされた後、遺言書はどのように扱われることになるのかを説明していきます。

 

遺言者が保管を申請すると、遺言書保管官という法務局の職員が遺言書の原本を保管するとともに、その画像情報をデータで保管します。

その画像データとともに、遺言書に記載されている作成の年月日や遺言者の氏名、出生年月日、住所や本籍などの情報が遺言書保管ファイルというところで管理されることになります。

いつまで保管されるのかは、その後の利用も考慮されて、政令で定められています。

 

遺言は、遺言能力がある限り、いつでも撤回が可能です。

保管制度でも、保管を申請した本人は、保管されている遺言書の返還を受けることができます。

遺言書が返還されたときは、保管にともなって作成された情報も消去されます。

なお、遺言書は返還されても、撤回がされたわけではありませんので、引き続き、遺言書としての効力に影響はないことに注意しましょう。

 

遺言書の内容の確認は、申請者が生存中は、本人のみがすることができます。

この確認は、遺言書の閲覧は保管を申請したところでする必要がありますが、保管ファイルの記録の閲覧は他のところでもできるようです。

通常は、保管を申請する際に遺言書のコピーを控えているでしょうから、あまりこの制度を利用することはないかもしれません。

 

私が弁護士として携わるケースでも、保管制度を利用する機会も増えてきています。

自分が保管を申請した遺言書がどのように扱われるのかを理解しておいた方がよいかと思いますので、ご参考にされてください。

 

離婚届の提出について

名古屋でも暖かい日が続くようになってきていますが、他方で、台風の影響などで天候が崩れがちなようにも感じます。

梅雨入りはまだ先でしょうが、天候のことにも注意しながら生活していきたいです。

 

今回は、「離婚届の提出」について、取り上げたいと思います。

 

日本法では、当事者どうしの合意での離婚が認められています。

この合意での離婚を協議離婚といいますが、自治体の役所に離婚届を提出することで離婚が成立することになります。

 

協議離婚以外の離婚の方法として、訴訟での判決による判決離婚や、和解での離婚、調停での離婚、審判での離婚など、裁判手続きによる離婚もあります。

このような裁判による離婚の場合にも、自治体に離婚届を提出しなければなりません。

この場合、協議離婚と場合と異なり、証人2人の署名などは不要とされています。

離婚届は、裁判による場合には、裁判が確定した日から10日以内に提出する必要がありますので、注意してください。

 

離婚届の提出先は、届出をする人の本籍地または所在地の自治体です。

平日の自治体の窓口の営業時間以外にも、夜間や休日の窓口でも受け付けています。

念のため、自治体に予め確認してから提出するのがよいでしょう。

 

離婚届と一緒に提出する書類についても確認してから提出するようにしてください。

本籍地以外の自治体に提出する場合には、戸籍謄本も提出しなければならないとされていましたが、戸籍法の改正によって、施行日の令和6年3月1日からは提出不要となっています。

 

離婚届の提出だけでも、このように細かな点を確認しておく必要がありますし、運用の変更にも注意しなければなりません。

相続放棄の起算点

今年の大型連休も終わりました。

天候にも恵まれたと思いますが、名古屋でもかなりの人出があったと思います。

気温も徐々に上がってきて、過ごしやすい日が続いていますね。

 

今回は、「相続放棄の起算点」について、取り上げたいと思います。

 

民法915条では、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に相続放棄をしなければならないとされています。

ですので、相続放棄の期間の起算点は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」ということになります。

 

そのため、よく誤解をされているのですが、「相続の開始日(亡くなった日)」が必ずしも起算点になるわけではありません。

亡くなった当日に相続の開始を知ることが多いでしょうが、後日、相続の開始を知った時にはその日が起算点になります。

 

ほかに誤解が多いのが後順位の相続人の相続放棄の起算点です。

相続人には優先順位があり、子どもがいなければ親が、親もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。

相続放棄をすると、その方は初めから相続人ではなかったことになりますので、たとえば、子ども全員が相続放棄をすれば親が相続人に、親も相続放棄をしたり、そもそも初めから先に亡くなっていたりすれば、兄弟姉妹が相続人になります。

 

そうした場合には、相続放棄の起算点は、その方が、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知ったときとなります。

法律の条文上は「相続の開始があったことを知った時」となっていますので、亡くなったことを知った日だと思われている方がいらっしゃるので、注意されてください。

 

相続放棄は、期限を守ることが非常に重要です。

確実に相続放棄の手続きができるように注意をされてください。

 

外国人の生活保護について

台湾で大きな地震が起き、多くの被害が発生しているようです。

台湾は、地震が少なくはない地域のようで、わが国に地震があった際にも、積極的に支援を申し出てくれます。

被害を受けた方々にお見舞い申し上げるとともに、一刻も早い復興を祈りたいと思います。

 

今回は、「外国人の生活保護」について、取り上げたいと思います。

 

報道によると、今年の1月16日、千葉地裁で「外国人に生活保護法に基づく受給権はない」などとして、結論としては、ガーナ国籍の方に生保保護費の支給を認めなかった判決があったようです。

 

前提となっている状況を整理しましょう。

生活保護法では、「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」とされています。

最高裁は、2014年に「外国人は生活保護法に基づく受給権を有しないというべき」と判断しています。

ただし、国から1954年に発出された通達に基づいて、一定の外国人には生活保護がなされており、2018年の政府答弁でも、「一定の外国人には、その生活が困窮する場合、人道上の観点から、生活保護による保護に準じた保護が行われている」とされています。

このような状況のもと、生活保護の支給を拒否された外国人が司法的救済を求めたところ、上記のとおりの判決がなされました。

 

以上からすると、現状、外国人に対しては、行政の通達によって保護がなされているものの、仮に、自治体が保護を実施しなかったとしても、司法によってそれが救済される方途がないといえそうです。

とすると、仮に、一定の自治体が外国人への保護を一切実施しなくなったときにも、これが是正される手段がないことになり、これは平等の観点から問題があるように思われます。

 

生活保護に対しては、しばしば社会から厳しい目が向けられることがあります。

私が住む名古屋でも多くの外国籍の方が居住されており、今後、それらの方々との社会をどのように形成していくのかをしっかりと考えなければなりません。

少なくとも、現在の制度の在り方には問題があるように思われますので、あるべき制度を議論していかなければならないだろうと思います。

相続土地国家帰属制度の利用状況について

名古屋でも、街中の街路樹に花が咲いている様子もよく見かけるようになりました。

桜の開花予想日も迫ってきており、春の訪れを感じるところです。

 

今回は、「相続土地国家帰属制度の利用状況」について、取り上げたいと思います。

 

相続によって取得した土地を国に引き取ってもらう制度である「相続土地国家帰属制度」が、令和5年4月27日から施行されています。

愛知県弁護士会と東海財務局との間で意見交換会があり、会報でその内容が報告され、その中に相続土地国家帰属制度に関する内容も含まれていました。

報告によると、令和5年8月31日時点では、全国で885件の申請がなされたとのことでした。

愛知県内では、そのうち約20件の申請がされたとのことです。

 

東海財務局管内でも、すでに数件は法務局に承認され、財産の管理が行われているようです。

相続人不存在等の場合と比べると、比較的管理しやすい物件が多い印象だということで、これは対象の不動産に制限があることが影響しているのかもしれません。

 

相続土地国家帰属制度は、制度の利用がかなり難しいのではないかという前評判もありましたが、ある程度は利用されているようですし、実績もあるようです。

私自身は、弁護士として相続土地国家帰属制度を利用したことはないですが、相続財産の中に引き継ぎたくない財産が含まれていることについての相談を受ける機会はしばしばあります。

制度の利用が必要なときに、適切にアドバイスができるように、最新の情報を含めて、情報収集を進めておきたいと思います。

相続空き家特例の改正について

名古屋でもまだまだ寒い日が続いています。

令和6年も、あっという間に1か月が過ぎたわけですが、今年1年もしっかりと目標を見据えて、日々の業務にあたっていきたいと思います。

 

今回は、「相続空き家特例」について、取り上げたいと思います。

 

「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が、令和5年度の税制改正で、適用の期限が令和9年12月31日まで延長されました。

この特例は、被相続人が居住していた家屋が、被相続人の死亡により空き家になったとき、これを相続や遺贈で取得した者が、これを売却する際に譲渡所得税の控除を受けられる制度です。

この制度の目的は、社会的な問題となっている空き家の増加を抑制することにあります。

最大で3000万円までの控除を受けられますので、特に、相続によって取得した財産であるため、取得費が不明か、非常に低廉な額である場合には、とても有用な制度になります。

 

令和6年1月1日以降の譲渡について、内容が変更された点もあります。

一つは、家屋を含む譲渡のとき、耐震リフォームの要件が緩和されました。

従来は、「譲渡日まで」に、家屋が耐震基準に適合している必要があったのですが、「翌年の2月15日まで」に、この基準を満たせばよいことになりました。

もう一つは、敷地のみを譲渡するとき、従来は、「譲渡日まで」に、家屋を除去する必要があったのですが、こちらも、「翌年の2月15日まで」に、家屋の除去をすればよいことになりました。

これによって、業者などの買主がリフォームや除去をすることでもよいことになりますので、制度がより利用しやすくなります。

 

控除額の上限に制限が加えられることにもなりました。

従来は、財産を取得した者が複数であった場合、それぞれについて3000万円までの控除が認められていました。

今回の改正後は、財産を取得した者が3人以上である場合、その控除額は2000万円までとされることになりました。

 

税制については、頻繁に変更されるところでもありますので、変更内容については、しっかりと確認されるようにしてください。

栄で相続についてお悩みの方はこちらをご覧ください。

戸籍謄本等の広域交付制度

令和6年を迎えました。

新年を迎えてすぐに大きな災害や事故が起きたようです。

被災者や被害者の方々にはお見舞いを申し上げるとともに、自分が無事に新年を迎えられたことをありがたくも感じました。

今年も、自分ができることとやりたいことを明確にしたうえで、少しでも自分ができることを増やしていきたいと思います。

 

今回は、令和6年3月1日から始められる「戸籍謄本等の広域交付制度」について、取り上げたいと思います。

 

相続手続においては、相続関係を証明する書類として戸籍の証明書が必要です。

戸籍は本籍地のある市町村で管理されているため、その証明書を発行してもらうためには、当該市町村に申請する必要があります。

 

本籍地は転居等に伴って変更する必要がありませんから、場合によっては、申請先の市町村は遠方であることもあるでしょう。

そのような場合には、役所の窓口まで行くことは負担となるため、郵送で取得するという方法を採ることが一般的でした。

そこで今回の広域交付制度が導入されることで、近くの市町村の窓口で請求をすることができるようになりました。

 

さらに便利になることがあります。

相続手続きでは、「被相続人の出生から死亡までの戸籍」といったように複数の戸籍が必要になることがあり、それらが同一の市町村にあるとは限りません。

そのように、取得が必要な戸籍が全国の複数の市町村にあった場合にも、一つの市町村の窓口で申請することで、それらすべての戸籍を請求することが可能になります。

 

ただし、この制度を利用するにあたって、以下のような制限もあります。

・ 戸籍の申請者は、対象となる方から見て、本人、配偶者、直系の尊属と卑属のみで、兄弟姉妹は申請することができません。

・ 少なくとも、どこかの市町村の窓口での申請が必須で、郵送による取得はできませんし、本人が窓口に行く必要があって、代理人による申請も認められていません。

・ いわゆる戸籍謄本の取得ができるだけで、一部事項証明や個人事項証明は取得できません

・ 弁護士や司法書士などの専門家は、この制度は利用できません。

 

このように限定的な利用に留まっている点については、さまざまな理由があるものと考えられます、

これらの制度は、法務省で戸籍情報を連携するシステムを構築したうえで実施されるようですが、であれば、今後の運用や改善によってより利用しやすいシステムを構築することもできるのだろうと思いますし、国としても、他の利用目的も想定しているのだろうと思われます。

 

いずれにしろ、市民にとって利便性が高まることはよいことだろうと思いますので、今後は、これらの制度もうまく利用していきたいと思います。

『実務解説 サイバーセキュリティ法』について

今年も、あとわずかとなりました。
例年、「年内にもめごとを解決させて、新しい年をすっきりした気持ちで迎えたい」というお気持ちを持たれる方も多く、年末は特に忙しくなる時期でもあります。
今年の残りの時間を有効に使って、引き続き、業務を集中して進めていきたいと思います。

今回は、八雲法律事務所さまから発刊される『実務解説 サイバーセキュリティ法』という書籍について、取り上げたいと思います。

サイバーセキュリティという言葉自体は、ニュースでも日常的に取り上げられていますし、もはや説明が必要ないほどに一般的なものになっているでしょう。
今やインターネットに接続することなく事業を営んでいるという企業や自営業者はほとんどないでしょうし、事業で内外部の重要な情報を情報媒体で取り扱っていないということもほぼないでしょう。
その意味では社会経済活動をするうえで、サイバーセキュリティとは関係がないという方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
 いざインシデントが発生してしまった場合には、企業は多大な経済的損害を被ることになりますし、十分な対策を怠っていれば、社会的な非難の対象にもなるでしょう。
 私が所属する組織でも、サイバーセキュリティが頻繁に会議の議題とされていますし、組織的な体制の構築と職員へのリテラシーの向上を図っています。

本書は、サイバーセキュリティに関連した法律業務分野の実務について解説した書籍です。
「サイバーセキュリティ法」では、民法、商法、行政法、刑法などの多分野の法律が関係しています。
私の認識では、独立の講学上の学問領域というよりも、実務上の領域であると認識しています。
この領域が法律以外の技術的な専門的知識を要求されること、これまでに弁護士が扱ってきた業務分野とは異なること、他方で、多数の関係法令が存在することが、この分野を専門的に扱う必要性を生じさせていると思います。
このような実務分野が存在するのは、やはりその対象の専門的な性格にあると考えられますし、一般的な弁護士が扱うことは難しい分野だと思います。

八雲法律事務所さまは、サイバーセキュリティ分野を専門的に取り扱っておられ、本書では、これに関する問題点について、とても理解しやすく解説されています。

この分野において弁護士業界に対する社会的なニーズは高まっており、より多くの弁護士がこれに応えられるよう、本書が資することは確実だろうと思います。

特別寄与料についての最高裁決定の紹介

インフルエンザが流行しているようです。

本格的に流行する時期はもう少し後なのだと思っていましたが、私の周りの名古屋の方でも、年齢を問わず、早くも流行しているという話を聞きます。

一度、罹患してしまうと生活に影響してしまいますので、私もワクチンを接種しておきました。

みなさまも、コロナに加えて、インフルエンザについても警戒していただければと思います。

 

今回は、特別寄与料に関する最高裁判所決定(令和5年10月26日第一小法廷決定)について説明することにします。

 

特別寄与料とは、被相続人に対して療養看護等の特別の寄与をした相続人以外の者に金銭的な権利を認める制度です。

特別寄与料は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定められることになっています。

相続人が複数いる場合には、各相続人が法定相続分または指定相続分に応じて特別寄与料を負担することになっています。

 

本件で問題となったのは、「遺言書によって指定相続分がないとされていたものの、遺留分侵害額請求をしたことで財産の給付を受けた者が特別寄与料の負担を受けることになるかどうか」という点です。

 

この点について、原審は、「遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは当該相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されない」と判断し、最高裁判所もこれを支持しました。

 

上記の点については、立法過程でもある程度の議論がされていました。

一つの考え方として、特別寄与料は「具体的相続分」に従って負担するという考え方がありますが、このように考えるのは以下の点で合理性がないとされました。

特別受益については、特別受益がある相続人と特別受益がない相続人との間の最終的な取得額ができるだけ平等になるように調整されたものであるにも関わらず、特別寄与料においては、特別受益がないまたは少ない相続人の負担を増加させることは相当ではないとされました。

寄与分についても、被相続人の財産の維持または増加に貢献があった相続人について、それが認められたために特別寄与料の負担が増加するということも合理性に欠けるとされました。

さらに、上記のような特別受益や寄与分が確定しない限り各相続人が負担すべき特別寄与料が確定しないとなると、紛争が複雑化・長期化することが懸念されたという事情もありました。

 

上記最高裁決定においても、特別寄与料の負担について、「相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等によることとしたもの」と解釈され、このような理解を前提として、遺留分侵害額請求をしたからといって負担割合が変化することはないという結論に達しました。

 

この判決については、関連して考えなければならない事項もありますので、後日、取り上げたいと思います。

相続登記の申請義務化の運用について

今年の残暑も厳しく、いつになったら涼しくなるのかと思っていましたが、名古屋でもやっと涼しくなってきましたし、朝晩の冷え込みが進んだように感じます。

一気に気温が低下したように感じますので、体調を崩さないように気を付けていきたいと思います。

 

今回は、相続登記の申請義務化の運用について説明することにします。

 

相続登記の申請が義務化されるということはすでに決まっておりましたし、私の弁護士ブログでも触れたことがあると思います。

このたび、その具体的な運用に関する指針が出されていますので、それを紹介しようと思います。

 

登記官は、申請義務があるにも関わらず、申請義務を果たしていない者を職務上知ったときは、違反者に対して、相当の期間を定めて申請をすべき旨を催告することになっています。

登記官が、申請の催告をしたにも関わらず申請がされないときに限り、管轄地方裁判所にその事件を通知するということになっています。

 

この申請の催告における催告書には、「登記の申請をすべき不動産」や「登記の申請をすべき期限」などが記載されています。

登記の申請をしないことにつき「正当な理由」がある場合には、これを記載して登記所に返送することができるようにもなっています。

よって、申請義務があるにも関わらず違反をしていたとしても、急に過料を課されてしまうということはないのでしょう。

 

登記官が申請の催告を行う端緒として、遺言書や遺産分割協議書で、申請の対象となった不動産以外にも、その相続人が相続することになっている不動産がある場合が挙げられています。

そのため、これらの不動産がある場合には、特に注意が必要です。

 

上記の「正当な理由」が認められるケースについても触れられています。

具体的には、相続人が極めて多く、相続人の把握に時間がかかっている場合や、遺言の有効性や遺産の範囲などが相続人等の間で争われている場合、申請義務者に重病その他の事情がある場合などがあるそうです

 

難しいケースは多いので、今後の施行にむけて注意していきたいと思います。

 

相続の準拠法について

先日、にっぽんど真ん中祭りが名古屋市各地で開かれました。

私の事務所のある松坂屋名古屋店の道向かいの久屋大通公園がメイン会場となっており、3日間にわたって開催されました。

メイン会場でのパフォーマンスはYouTubeでのライブ配信もされており、仕事のあった私は、すぐ近くの事務所からオンライン観覧していました。

多数の団体が出場しており、白熱した演技を観ることができました。

予選ではそれぞれの団体の特性を発揮した演技も楽しむことができましたし、ファイナルステージに進出した団体には非常にレベル高い演技を観せていただきました。

楽曲、衣装、パフォーマンス内容など、コンテストとはいえ、これ以上はないのではないかという程の甲乙つけ難い演技を観ることができました。

しっかりと観覧したのは初めてでしたので、非常に感動しましたし、いつか実際に観覧をしたいと思いました。

イベントの運営は学生の方々が携われていたようであり、その点でもとても素晴らしいと感じました。

出場された各団体も、イベント自体もさらに成長していっていただき、多くの観客を感動させていただきたいと思います。

 

今回は、相続における準拠法について説明することにします。

 

準拠法とは、どの国の法律が適用されるかに関するものです。

日本法では、相続は、法の適用に関する通則法という法律で、被相続人の本国法によるとされています。

本国法とは、その方が有している国籍の国の法のことをいいます。

そのため、亡くなった方が外国籍の場合には、その国の法律が適用されることになります。

 

そのような場合には、その国の相続に関する法律がどのような内容になっているかを確認しなければなりません。

場合によっては、相続人の範囲も異なりますし、法定相続分も異なることがあります。

 

被相続人が外国籍であっても、日本法が適用される場合があります。

たとえば、当該外国法で、被相続人の住所が日本にあり、相続財産も日本にある場合には、日本法が適用されるとされていることもあり、その場合には、外国法が適用された結果、日本法が適用されるということになります。

 

被相続人が外国籍の場合には、相続手続きだけでなく、遺言書の作成方法などにも注意しなければなりません。

相続財産の分離について

台風6号が日本に大きな被害を与えましたが、その経路を予想することは専門家にとっても難しかったそうです。

気象に関する研究はかなり進んできたのでしょうが、まだまだ天候を正確に予知することは難しいのでしょう。

新たな台風も日本に迫っているようであり、名古屋の方もその他の地域の方も、最新の情報を確認しつつ、それぞれに対策をしておくことが重要でしょう。

 

今回は、相続における「財産分離」という制度について説明することにします。

 

相続が開始すると、相続人が相続放棄をしない限り、相続人が被相続人の財産と負債を引き継ぐことになります。

これにより、場合によっては、被相続人または相続人の債権者に影響があることがあります。

すなわち、被相続人の債権者としては、相続財産がプラスであっても、相続人の固有財産がマイナスである場合には、相続財産と相続人の固有財産が一緒になることで債権が回収できない可能性が生じます。

他方、相続人の債権者としては、相続人の固有財産がプラスであっても、相続財産がマイナスである場合には、同様に債権が回収できない可能性が生じます。

そのため、債権者としては、責任財産を保全するため、相続財産と相続人の固有財産を分離したいというニーズがあり、それを認めたのが財産分離の制度です。

 

相続債権者や受遺者は、相続人の固有財産が債務超過の状態にある等の場合には、家庭裁判所に相続人の財産から相続財産を分離することを申し立てることができます。

この手続きをとれば、相続人の債権者に優先して、相続財産から優先的に弁済を受けることができます。

他方で、相続人の債権者の側でも、自らの債権の確保のために相続人の固有財産と相続財産とを分離する必要がある場合にも、同様の手続きが認められています。

 

基本的には、債権者や受遺者から申し立てるものであって、相続をする側にはあまりなじみのない手続きでしょうが、債権回収との関係では重要な手続きとはいえます。