弁護士法人心に所属しております,弁護士の江口と申します。
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ウェブ会議を利用した裁判期日について
名古屋では、日中には暖かい日も出てきました。
先日、ウィメンズマラソンがあった日も好天に恵まれていましたが、これから徐々に暖かくなっていけば、過ごしやすくなってくるなと思います。
今回は、「ウェブ会議を利用した裁判期日」について、取り上げたいと思います。
これまでも何度か取り上げてきましたが、裁判手続きのウェブ化が進んでいます。
裁判の期日にウェブ会議の方法を利用して参加するほか、書面をオンラインで提出したり、データを提供したりといった方法が利用できるようになってきました。
利用できる範囲も、民事訴訟だけであったのが家事事件にも拡充されたり、一部の地方裁判所だけであったのが、高等裁判所や家庭裁判所等に拡充されたり、といったように広がってきています。
裁判期日への参加がウェブを利用してできるようになったことは、特に遠方の裁判所での期日のときに便利です。
現在、遠方の裁判所の手続きではほぼこれを利用している状況にあります。
令和7年3月1日からは、人事訴訟・家事調停事件で、ウェブ会議を利用して和解や調停を成立させることもできるようになりましたが、これは単に裁判所に出頭しなくてもよいので便利という以上の意味があります。
というのも、離婚事件においては、DⅤが絡んでいて裁判所でのトラブルになるおそれがあるため、当事者が顔を合わせることを避けるべきであるという事案や、当事者の感情的な問題のため、顔を合わせることが困難という事案があります。
人事訴訟における和解離婚や、離婚調停における調停の成立においては、裁判所が当事者の意思を確認するため、基本的には、当事者が出頭したうえで、裁判官が当事者と顔を合わせて、離婚の内容を確認するという運用がされてきました。
場合によっては、当事者が直接、顔を合わせないように、裁判官が個別に離婚の内容を確認するという方法が取られることもありましたが、それでも、裁判所に出頭する限り、暴力等のトラブルのリスクを完全に排除できるわけではありませんし、「同じ建物、近くにいるだけで、精神的に耐えられない」という当事者もいますので、裁判所への出頭が困難ということもあります。
そのような場合に、ウェブを利用して和解離婚や調停離婚を成立させることができれば、上記のようなリスクを避けたり、当事者の感情的な問題に対処したりできるようになります。
裁判のウェブ化には、業務の効率化以外の目的や効果があると思います。
とはいえ、すべてをウェブ化するのが望ましいかどうかは慎重に考えなければなりませんし、あえてウェブを利用しないという選択が適切であるという場合もあるでしょう。
ウェブという選択ができるようになったのは望ましいことですので、今後も制度が進化していってほしいと思います。