1 交通事故と代車使用料
交通事故に遭い,車が壊れてしまった場合,修理か買替えが必要となり,その間は車がなくなってしまいます。
その間に代車を使った場合,代車使用料を加害者に請求することができることがあります。
2 代車の必要性
代車使用料が認められるためには,代車の必要性と,実際に代車を使用したことが必要です。
日頃から車を通勤等に使っていたという場合には,代車の必要性が認められやすいですが,他にも車を保有していた場合や,電車やバスなどの公共交通機関の利用が可能かつ相当である場合には,代車の必要性が否定されることもあります。
裁判例でも,「被害車両を使用して自宅から約三キロメートルの会社に通勤していたことが認められるところ、バスや電車等の公共の交通機関やタクシーの利用では不十分であることなどの主張、立証がなく、そのうえ、原審における第一審原告A本人尋問の結果によれば、第一審原告ら宅には被害車両のほかに普通乗用車、軽トラック、原付自転車各一台が所有されていることが認められるから、代車使用の必要性があるものとはいい難く、代車使用料相当の損害の主張は採用できない」として代車の必要性を否定しているものがあります(大阪高判平成5年4月15日交通事故民事裁判例集26巻2号303頁)。
3 代車の使用期間
事故に遭った車の修理や買替えに必要な相当期間を限度として,代車使用料が認められます。
ですので,例えば,車を修理に出して代車を3週間使用したとしても,その事故に遭った車の修理に必要な相当期間が2週間だったとすれば,代車使用料は2週間分しか認められません。
代車の使用期間として認められるのは,もちろんそれぞれのケースごとに異なりますが,修理の場合は2週間程度,買替えの場合には1か月程度というのが一つの目安とされています。
また,加害者側保険会社等との交渉期間についても相当期間に含められることがあります。
裁判例でも,「一般に,加害者の示談交渉を代行し,交通事故処理を専門的かつ継続的に担当する損害保険会社の担当者は,被害者に対して合理的な損害賠償額の算定方法について十分かつ丁寧な説明をなし,その根拠資料を示して,被害者の理解を得るように真摯な努力を尽くすべきであって,ことに,被害者側に何らの落ち度もない事案においては,被害感情が高いことが少なく(原文ママ),その必要性は大変高いものということができる。そして,被害者が納得するための説明,交渉等に時間を要し,その結果,修理又は買換手続に着手する以前の交渉等に費やされた期間中に代車料が生じたとしても,それが,加害者(損害保険会社の担当者)の具体的な説明内容や被害者との交渉経過から見て,通常の被害者が納得して修理又は買換手続に着手するに足りる合理的な期間内の代車料にとどまる限り,加害者(損害保険会社)はその代車料についても当然に負担する責任を負わなければならない。」とし交渉期間についても代車使用料を認めたものがあります(東京地判平成13年12月26日交通事故民事裁判例集34巻6号1687頁)。
4 代車の車種
どのような車種を代車としてもその使用料が認められるわけではありません。
事故に遭った車と同程度の車種であればその代車の使用料が認められるというのが基本的な考え方です。
ただ,事故に遭ったのが高級外車の場合には,国産高級車の限度で代車使用料が認められる傾向にあります。
裁判例でも,「原告車には、事務が行えるよう電話機、ファックスなど機器が備えつけられていた。原告が営業車として特に原告車を使用していた理由は、安全性が高いこと、車内で事務が可能であること、多人数を乗車させることができること、会社の体面などである。」と認定した上で,「原告が原告車を営業車として使用していた理由は、修理期間という短期間であることも考えれば、いずれも国産高級車をもって十分代替できるところで、代車としてキャデラックのリムジンを使用しないことによって、営業活動に与える支障は特段認めることができず、他に原告の主張を認めるに足りる証拠もない。」として,高級外車ではなく国産高級車の限度で代車使用料を認めたものがあります(東京地判平成7年3月17日交通事故民事裁判例集28巻2号417頁)。
5 まとめ
このように,交通事故で車が壊れたとしても,無制限に代車使用料が賠償されるわけではありません。
代車使用料について保険会社との話がまとまらない場合には,弁護士に相談してみるのもよいかもしれません。