1 遺言の限界
相続対策として近年注目されているものとして「民事信託」があります。
遺言ではできないことが民事信託を活用すれば実現できることが注目の理由の一つです。
典型的な例として,おじいさんが「自分が死んだら息子に土地を相続させ,さらに息子が死んだあとは孫にその土地を相続させたい」と考えたとします。
基本的に遺言では,「自分が死んだら息子に土地を相続させる」ということは実現できますが,「息子が死んだあとは孫にその土地を相続させる」ということは実現できません。
息子は,土地を相続した後に,その土地を売ってしまうことや,孫とは別の人に相続させることもできてしまうわけです。
これに対して,民事信託を活用すれば上記おじいさんの意思を実現することが可能です。
2 民事信託とは
まず,簡単に民事信託について説明します。
民事信託では,通常,以下の三者が登場します。
自分の財産を委託する「委託者」,信託契約に従って委託された財産を管理・処分する「受託者」,財産からの利益を受ける「受益者」の三者です。
3 上記ケースで民事信託を活用
上記ケースでは,おじいさんを「委託者兼受益者」とし,息子を「第二次受益者」,孫を「第三次受益者」とすることで,おじいさんが生きている間は,おじいさんが土地を利用し,おじいさんが亡くなったあとは息子が土地を利用し,されに息子が亡くなった後は,孫が土地を利用するということができるわけです。
これを後継ぎ遺贈型受益者連続信託といいます。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託に関する法律は,信託法91条ですので以下引用します。
「受益者の死亡により,当該受益者の有する受益権が消滅し,他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は,当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間,その効力を有する。」
4 民事信託を使用した相続対策
他にも,民事信託には相続に活用できる場面があります。
弁護士法人心では,家族信託・民事信託についてのサイトを作り,家族信託・民事信託に関する情報を発信していますので,参考にしていただければと思います。