1 正当防衛について
「Aさんは,Bさんに急に襲われたので,反撃したらBさんにケガを負わせてしまった」というケースで,反撃したAさんは罪に問われるのでしょうか?
このようなケースについては,Aさんに「正当防衛」が成立するかどうかが問題となります。
正当防衛が成立するのであれば,Aさんの行為には,違法性がないとして,Aさんの行為は犯罪になりません。
2 正当防衛が成立するには?
相手が先に手を出してきたからといって必ずしも正当防衛は成立しません。
正当防衛が成立するためには,①急迫不正の侵害があること(簡単にいうと危険が迫っていることです),②自己または他人の権利を防衛するためであること,③やむを得ずした行為であることが必要です。
正当防衛について詳しくは,こちらもご覧ください。
3 具体的なケースで正当防衛が成立するかどうか?
⑴ ケース
「Bさんがナイフを突き出してAさんの方に向かってきたので,Aさんは,近くにあった金属バットでBさんの頭を殴って怪我をさせた」というケースでAさんに正当防衛が成立するのでしょうか?
⑵ ①急迫不正の侵害,②自己または他人の権利を防衛するため
Bさんがナイフを突き出してAさんの方に向かってきているので,通常であれば,①急迫不正の侵害があり,Aさんの行為は,②自己の権利を防衛するためにしたものといえそうです。
ただ,Aさんが予めBさんの襲撃を察知しており,この機会にBさんを痛めつけてやろうと思って金属バットを準備し,予定どおりBさんを金属バットで殴りつけたという場合であれば,①急迫不正の侵害が否定されるものと考えられます。また,このようなケースであれば,②自己または他人の権利を防衛するための行為でないともいえます。
⑶ ③やむを得ずした行為
これについては,具体的な事情を総合的に判断することになります。
例えば,Bさんの持っていたナイフが刃渡り20センチメートルのものか,5センチメートルのものかで随分と事情が変わってきます。
また,Aさん,Bさんの年齢,性別,体格などによっても大きく事情が異なります。
例えば,Aさんが20歳の体格の良い男性で,Bさんが70歳の小柄な女性だったとすると金属バットで殴らなくても危険を回避できるのではないかと考えられます。
4 まとめ
このように,正当防衛が成立するかは,具体的な事情を踏まえて詳細な検討をしなければならず,弁護士でも判断が難しいようなケースもあります。