1 資産管理会社と配当金
IPOを目指す場合,資産管理会社を作り,そこにIPO準備会社の株式を持たせることがありますが,そのメリットの1つとして,配当金に関する節税が考えられます。
以下,IPO準備会社の株式をオーナー(個人)が所有している場合と,資産管理会社(法人)が所有している場合について比較して検討します。
2 配当金に課される税金
⑴ 個人の場合
通常であれば,上場株式の配当については,総合課税ではなく分離課税を選択することができますので,税率は20%(所得税・住民税)となります。
しかし,持ち株割合が3%以上となるような大口株主の場合(IPOを実現したオーナーの場合,通常これにあたると考えられます)については,分離課税を選択することができず,総合課税になり,その最高税率は,所得税・住民税を合わせて55%になります。
⑵ 法人の場合
法人の場合は,通常,税率が上記の所得税・住民税よりも低いです(税率30%程度)。
また,法人が上場株式の配当を受けた場合,「受取配当金の益金不算入」という制度があります。
この制度では,株式が「完全子法人株式等」「関連法人株式等」「その他の株式等」「被支配目的株式等」の4つの区分に分けられ,区分によって益金不算入の割合が異なってきます(参照:国税庁・平成27年度 法人税関係法令の改正の概要)。
① 完全子法人株式等(株式等保有割合100%)
益金不算入割合100%
② 関連法人株式等(株式保有割合3分の1超)
益金不算入割合100%-負債利子
③ その他の株式等(株式保有割合5%超3%以下)
益金不算入割合50%
④ 非支配目的株式等(株式保有割合5%以下)
益金不算入割合20%
3 まとめ
このように,通常,法人で株式を所有した場合,受取配当金の益金不算入制度,および,個人と法人の税率の違いにより,配当金に関して節税することができるといえます。
もっとも,株式を個人で所有するか法人で所有するかは相続税評価にも影響を与えますし,また,株式を売却する場合など,個人で所有しておく方が有利な場合もありますので,IPO準備会社の株式を資産管理会社に持たせるかどうか,持たせるとして割合をどうするかについては,慎重な検討が必要ですので,IPOに詳しい弁護士や税理士にご相談ください。