受取配当金の益金不算入の根拠

法人(A社)が,他の法人(B社)の株式を所有しており,そのB社から配当を受ける場合については,「受取配当金の益金不算入」という制度があり,その配当金額の全部または一部について益金に算入されません(つまり,法人税が課せられません)。

受取配当金の益金不算入の根拠を考えるために,受取配当金の益金不算入の制度がない場合について,以下の例を考えてみます。
ここでは,単純化するために,法人税率を30%とします。

①B社が1000万円稼いで,そこから法人税を300万円支払った。
②その後,B社は残ったお金700万円をA社に配当として支払った。
③A社は,B社から配当金を700万円受け取ったため,その30%の210万円を法人税として支払った。

この場合,B社の1000万円の稼ぎに対し,B社段階で300万円(①),A社段階で270万円(③)の合計570万円が法人税として課されてしまいます。
このような同一の利益に対する重複課税を回避することが受取配当金の益金不算入の根拠だといわれています。

もっとも,現行制度では,受取配当金について必ずしも全額が益金不算入になるわけではありません。
完全子法人株式等(株式等保有割合100%)の場合には益金不算入割合は100%であるのに対し,株式保有割合の低い非支配目的株式等(株式保有割合5%以下)の場合には益金不算入割合は20%となっています。

これには,どのような企業形態をとるかについて,税制が影響を与えてしまうことを回避するという政策的な理由があるものと考えられます。

上記の例で,B社がA社の完全子会社であったとすると,A社としては,自ら直接事業をおこなえば税金が300万円ですむのに,完全子会社B社を作ってB社に事業をさせることにより税金が570万円になってしまいます。
これでは,どのような企業形態をとるかについて税制が中立ではありません(A社がB社を統合する方向に税制が影響を与えてしまいます)。
そこで,支配目的で株式を保有している場合には,受取配当金の益金不算入を徹底していると考えられます。

結論が分かればよいということで,受取配当金に限らず,制度の根拠というのは意識されないことも多いのですが,弁護士が法解釈する際には,根拠から考えることも多く,しっかりと押さえておくことが大切です。