「及び」と「並びに」の違い

法律の条文には、「及び」と「並びに」が頻繁に登場するため、弁護士としてはよく目にする単語です。
今回は、その意味の違いについて見ていきたいと思います。
ポイントは、「並びに」が大きい括りで、「及び」が小さい括りという点です。

「A及びB並びにC」という場合、大きい括りとして「A及びB」と「C」が並列関係にあり、小さい括りとして「A」と「B」が並列関係にあります。

具体例として、使用貸借の解除に関する民法598条について考えます。
「当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。」
これは、まず、大きい括りとして、「使用貸借の期間」と「使用及び収益の目的」が「並びに」で並列に括られています。
そして、後者の「使用及び収益の目的」は、小さい括りとして、「使用」と「収益」が「及び」で並列に括られています。

次に、もう少し複雑な構造になっている憲法7条5号について考えます。
憲法7条5号は、天皇の国事行為として、以下の事項を定めています。
「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。」
まず、大きな括りとして、「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免」「全権委任状及び大使及び公使の信任状」があり、これら2つが「認証すること」に係っています。
そして、「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免」には、小さな括りとして、「国務大臣」「法律の定めるその他の官吏の任免」があり、また、「全権委任状及び大使及び公使の信任状」には、「全権委任状」「大使及び公使の信任状」があります。
さらに、「大使及び公使の信任状」は、「大使」「公使」が及びで括られており、これらが「信任状」にかかります。

ちなみに、英訳を見ると、
Attestation of the appointment and dismissal of Ministers of State and other officials as provided for by law, and of full powers and credentials of Ambassadors and Ministers.
となっており、「及び」「並びに」の計4つがすべて”and”になり、さらに「任免」も”appointment and dismissal”と”and”が用いられることから、合計5つの”and”が登場して、難解です。