企業の倒産件数が増加していることがよく報道されていますが、実際、弁護士への相談も増加しているように思います。
倒産が増える要因としては、①コロナ前と比べて売上が伸びていない(企業が多い)、②コストが増加した、③コロナ融資を返済しなければならないという3点が大きいのではないかと思います。
まず、①コロナ前と比べて売上が伸びていない(企業が多い)という点については、例えば飲食業においては、「コロナ禍で常連さんが離れてしまい戻って来ない」「忘年会などの飲み会が以前よりも減った」など、コロナによる影響が残っているケースも少なくありません。
次に、②コストが増加したという点についてですが、円安や戦争、燃料価格の高騰等により物価が上がっていることに加えて、最近は人件費も上がっており、商品・サービス価格に転嫁ができていない企業にとっては、大きな負担になっています。
最後に、③コロナ融資を返済しなければならないという点については、上記のように、売上が伸びていない一方で、コストが増加している企業も多く、返済が厳しい状況です。
今年4月にコロナ融資の返済が始まるという企業も多く、倒産の更なる増加が懸念されます。
時効の完成後に支払督促や裁判上の請求を受けたが放置し、仮執行宣言付支払督促や判決が確定した場合
1 時効の完成猶予・更新
時効完成前に、債権者から「裁判上の請求」や「支払督促」などを受けた場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は完成せず(民法147条1項)、これを「時効の完成猶予」といいます。
また、上記の場合において、「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したとき」は、上記事由が終了した時から新たに時効が進行することになり(同条2項)、これを「時効の更新」といいます。
また、債務者が、債務の存在を認めたり、一部の弁済をしたような場合にも、「権利の承認があった」として、時効が更新されます(同法152条1項)。
ここでのポイントは、これらの条文は、時効の完成前であることを前提としているという点で、時効の完成後には、これらの条文は適用されません。
それでは、時効の完成後に、①債務を承認した場合、②債権者から支払督促がなされ、放置していたところ、仮執行宣言付支払督促が確定してしまった場合、③債権者から裁判上の請求を受けたものの対応せず、判決が確定してしまった場合は、それぞれどうなるのでしょうか。
以下、順に考えていきます。
2 ①時効の完成後に、債務を承認した場合
この場合は、 最判昭和41年4月20日民集第20巻4号702頁において、「その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない」とされており、その理由として、「時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである」とされています。
3 ②時効完成後に、債権者から支払督促がなされ、放置していたところ、仮執行宣言付支払督促が確定してしまった場合
このような場合には、債務者としては、請求異議の訴えにおいて、時効の援用をすることが考えられます。
これが信義則に反して許されないのではないかという点が問題となり得ますが、宮崎地判令和2年10月21日では、支払督促の手続きの中で時効の援用をしなかったことについて、「そのような消極的対応は、時効による債務消滅の主張と相容れないものとまではいえず、それゆえ、本件貸金債権の消滅時効の援用は、信義則に反するとはいえない」として、消滅時効の主張を認めています。
4 ③時効完成後に、債権者から裁判上の請求を受けたものの対応せず、判決が確定してしまった場合
この場合には、債務者としては、債務不存在確認訴訟や請求異議の訴えにおいて、時効の援用をすることが考えられます。
しかし、この場合は、支払督促の場合とは異なり、債務者の主張は認められません。
なぜなら、確定判決には「既判力」(民事訴訟法114条1項)があり、前訴の訴訟物である権利義務関係についてはもはや争うことができないからです。
なお、支払督促について、民事訴訟法396条は、仮執行宣言付支払督促が確定したときは、「確定判決と同一の効力を有する」としているのですが、ここでいう効力に「既判力」は含まれないと解釈されますので、支払督促の場合には既判力による遮断が生じず、時効の主張ができるという結論を導き出すことが可能です。
5 消滅時効に関するご相談
消滅時効に関しては、制度を理解するのが必ずしも容易ではなく、判断を誤った場合の不利益も多いですので、具体的な問題でお悩みの際は、弁護士にご相談されるのがよいかと思います。
孤独死と相続放棄
近年、一人暮らしの高齢者が増加していることもあってか、「孤独死」の問題がメディア等でよく取り上げられています。
孤独死について、弁護士が関わることが多いものとして、「相続放棄」があります。
孤独死であっても、法律上、相続人がいれば相続がなされますが、相続人が相続をしたくないというケースがあります。
例えば、亡くなった方が財産よりも負債の方を多く抱えていたというケースや、また、亡くなった方が賃貸アパート等に住んでいて、孤独死のため発見が遅れてしまい、高額な特殊清掃費用を請求されるというケースなどがあります。
相続人は、遺産を処分等してしまうと、相続を「単純承認」したとして、もはや相続放棄ができなくなってしまう恐れがありますので、相続放棄をしようとする場合には要注意です。
参考リンク:相続放棄が認められないケース
孤独死の場合、警察や賃貸アパートの大家さん等から相続人に突然連絡が来ることがありますが、相続放棄をする可能性がある場合には、早めに弁護士に相談するなど慎重な対応をすることをおすすめいたします。
「及び」と「並びに」の違い
法律の条文には、「及び」と「並びに」が頻繁に登場するため、弁護士としてはよく目にする単語です。
今回は、その意味の違いについて見ていきたいと思います。
ポイントは、「並びに」が大きい括りで、「及び」が小さい括りという点です。
「A及びB並びにC」という場合、大きい括りとして「A及びB」と「C」が並列関係にあり、小さい括りとして「A」と「B」が並列関係にあります。
具体例として、使用貸借の解除に関する民法598条について考えます。
「当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。」
これは、まず、大きい括りとして、「使用貸借の期間」と「使用及び収益の目的」が「並びに」で並列に括られています。
そして、後者の「使用及び収益の目的」は、小さい括りとして、「使用」と「収益」が「及び」で並列に括られています。
次に、もう少し複雑な構造になっている憲法7条5号について考えます。
憲法7条5号は、天皇の国事行為として、以下の事項を定めています。
「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。」
まず、大きな括りとして、「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免」「全権委任状及び大使及び公使の信任状」があり、これら2つが「認証すること」に係っています。
そして、「国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免」には、小さな括りとして、「国務大臣」「法律の定めるその他の官吏の任免」があり、また、「全権委任状及び大使及び公使の信任状」には、「全権委任状」「大使及び公使の信任状」があります。
さらに、「大使及び公使の信任状」は、「大使」「公使」が及びで括られており、これらが「信任状」にかかります。
ちなみに、英訳を見ると、
Attestation of the appointment and dismissal of Ministers of State and other officials as provided for by law, and of full powers and credentials of Ambassadors and Ministers.
となっており、「及び」「並びに」の計4つがすべて”and”になり、さらに「任免」も”appointment and dismissal”と”and”が用いられることから、合計5つの”and”が登場して、難解です。
エスカレーターでの歩行禁止【名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例】
1 エスカレーターでの歩行禁止の条例制定の背景
2023年10月1日から、「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が施行され、名古屋市内ではエスカレーター上で歩くことが条例上禁止されることになります。
⑴ 全国のエスカレーター事故の状況
エスカレーター事故に関しては、一般社団法人日本エレベーター協会が、5年ごとにエスカレーターの事故等について調査をしており、直近に行われた2018年1月~2019年12月の2年間において、全国で発生した1,550件のエスカレーター事故のうち805件が乗り方不良によるものとされています。
乗り方不良には、「手すりを持たずに転倒する」、「踏段の黄色の線から足をはみ出し挟まれる」、「踏段上を歩行しつまずき転倒する」、「手すりから体をはみ出し挟まれる」、「逆走して転倒する」といったものがあります。
参考リンク:一般社団法人日本エレベーター協会・エスカレーターにおける利用者災害の調査報告(第9回)
⑵ 名古屋市のエスカレーター事故の状況等
名古屋市では、2021年には、エスカレーター関係での救急隊出動事案が133件発生しています。
また、名古屋市が実施した市内10か所における実態把握調査によると、エスカレーターを歩いて又は走って利用している割合は21.3%であったとのことで、エスカレーターで立ち止まることが十分には根付いていないものと考えられます。
一方で、市民等から、「歩行をやめさせてほしい」、「歩いてきた人がぶつかり転落しそうになった」などの意見等が名古屋市に寄せられていることもあり、エスカレーターの安全利用に関する意識向上や、関係者一丸となった取り組みの促進などのために、条例制定に至ったものと考えられます。
参考リンク:名古屋市・エスカレーターの安全な利用の促進について(答申)
2 条例の概要
条例の条文について見てみますと、第8条で「利用者は、右側か左側かを問わず、エスカレーターの踏段(人を乗せて昇降する部分をいう。)上に立ち止まらなければならない。」として利用者の義務が定められ、第9条で「管理者等は、利用者に対し、前条に規定する方法によりエスカレーターを利用するよう周知しなければならない。」として管理者の周知義務が定められ、第10条で「市長は、エスカレーターの安全な利用の促進のため必要があると認めるときは、管理者等に対し、必要な指導又は助言を行うことができる。」として市長による指導・助言が定められています。
参考リンク:名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例
この条例には、罰則がないことから、どこまで実効性があるのかが難しいところですが、これを機に市などによる啓発活動が行われ、それが報道等されることにより、エスカレーターでの歩行の危険性の認識が広がっていくことが期待できるのではないかと思います。
刑事事件における自首について
1 自首とは
犯罪に該当する行為をしてしまった方から、弁護士に、自首を考えているというご相談が時々あります。
「自首」というのは、日常でも使われる言葉ですが、刑法の条文でも用いられている法律用語でもあり、刑法上の「自首」は、日常用語として用いられる場合よりも狭いのではないかと思います。
刑法上の「自首」といえるためは、「犯罪事実」か「犯人」が捜査機関に発覚する前に行う必要があります。
犯罪事実が発覚する前というのは、例えば、他人の現金を盗むという窃盗事件をしてしまったとして、そのことが捜査機関に発覚していないような場合です。
犯人が発覚する前というのは、同じ事件の例で、誰かにお金が盗まれたということ自体は発覚しているが、それを誰がやったのかはわからないというような場合です。
つまり、犯罪事実も犯人も発覚しているが、逃走中であるため、まだ捕まっていないという場合には、捜査機関に出向いて自らが犯人である旨を申告しても、刑法上の「自首」にはなりません。
2 自首した場合の効果
刑法42条は、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」とされており、自首すると刑を「減軽」することが「できる」とされます。
その意味ですが、まず、「減軽」については、刑法68条に刑の種類ごとに規定されていますが、例えば、有期の懲役刑の場合には、「その長期及び短期の2分の1を減ずる」とされています。
また、減軽することが「できる」というのは、裁判官の判断で「できる」というものであり、法律上、必ず減軽されるというものではありません。
遺言作成の件数
1 遺言を作成する人は増えているのか?
近年、「相続対策」や「終活」に関する意識が高まっており、弁護士としては遺言を作成する人は増加しているように感じられますが、実際にはどうなのかを入手可能なデータをもとに考えてみます。
まず、遺言には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類があるのですが、③秘密証書遺言は件数が少ないため除外して、ここでは、①自筆証書遺言、②公正証書遺言の件数についてみていきます。
2 ①自筆証書遺言について
自筆証書遺言は、自分で作成できるものですので、作成しただけの段階では、すぐには件数として把握できません。
もっとも、自筆証書遺言について、法務局による保管制度ができましたので、その保管件数については把握できます。
また、自筆証書遺言のうち、法務局で保管していなかったものについては、遺言者が死亡した後に、遺言の保管者又は遺言を発見した相続人が、家庭裁判所において遺言の検認をしなければならないため、その検認の件数についても把握することができます。
そこで、以下、法務局での保管件数と検認の件数についてみていきます。
⑴ 法務局での保管件数
法務局における自筆証書遺言保管制度は、2020年7月に開始されたものですので、それ以前の統計はありませんが、2022年に保管された件数は、1万6954件でした。
参考リンク:法務省民事局・遺言書保管制度の利用状況
⑵ 検認の件数
遺言の件数は、裁判所が公表している司法統計によると、2012年には1万4996件であったのに対し、2021年には1万9576件と約30.5%増加しています(2022年の数値は現時点では公表されていないため、2021年の数値を記載しています。)。
注意点としては、検認は、死亡後の手続きですので、遺言作成からタイムラグがあるということと、死者数が増加すれば検認の件数も増加しやすいということです。
後者について、2012年と2021年の死者数の増加率についてみてみると、厚生労働省の人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、2012年は125万6254人であるのに対し、2021年は143万9809人であり、その増加率は約14.6%で、検認の増加率の方が倍以上であることがわかります。
参考リンク:平成24年人口動態統計月報年計(概数)の概況、令和3年人口動態統計月報年計(概数)の概況
3 ②公正証書遺言について
公正証書遺言については、日本公証人連合会が統計を出しており、遺言公正証書の作成件数が、2012年には8万8156件であったのに対し、2022年には11万1977件と約27%増加しています。
参考リンク:令和3年の遺言公正証書作成件数について、令和4年の遺言公正証書の作成件数について
4 まとめ
以上からすると、遺言を作成する人は増加している可能性が高そうです。
ただ、検認については、上記のとおりタイムラグがあることに加えて、法律に違反して検認がなされないケースや、そもそも作成した遺言が発見されずに検認に至らないケースもあると思いますし、また、公正証書遺言については、同一の人が何度も作成しているケースもあると思いますので、完全に上記数字のとおりに遺言を作成する人の数が推移しているとは限らない点に注意が必要です。
伊藤塾「明日の法律家講座」
今日は、弁護士法人心代表の西尾有司弁護士が、司法試験予備校「伊藤塾」の「明日の法律家講座」で講演し、私も参加しました。
伊藤塾では、資格試験に合格するだけではなく、「合格後を考える」というのを大切にされており、定期的に、法律実務家や政治家などを講師とした「明日の法律家講座」を開催されています。
私も学生時代に、伊藤塾で勉強していましたので、かなり久しぶりに伊藤塾の校舎に行くことができ、懐かしく感じました。
今回の講演は、「法律実務家として活躍するために大切な考え方」というテーマで、参加者の方からはたくさん質問を頂くなど、とても熱心に聞いていただきました。
試験勉強をしている時は、どうしても早く合格することに意識が行きがちですが(私自身そうでした)、実際は、実務に出てから活躍できることが大切ですので、このような取り組みはとても素晴らしいと思います。
明日の法律家講座は、伊藤塾生だけでなく、一般の方も参加できるようですので、ご興味のある方は、ぜひ、参加してみてはいかがでしょうか。
また、本日の講演は、録画されたものが後日配信されるようで、こちらは、伊藤塾生限定になりますが、ぜひ、多くの方に聞いていただければと思います。
明日の法律家講座についてのホームページはこちら
刑法における「違法性」とは?
刑法上、明文の規定はありませんが、「違法性」がない場合には、犯罪が成立しないと考えられています。
例えば、相手を殴って怪我をさせてしまった場合、傷害罪が成立しそうですが、「相手が急に襲い掛かってきて、自分自身を守るために、やむを得ずに反撃した結果、相手を怪我させてしまった」という場合であれば、「正当防衛」となり、犯罪が成立しない可能性があります。
このような正当防衛など違法性がなくなる事由を法律用語では「違法性阻却事由」といいます。
他にも、例えば、名誉毀損について、違法性が阻却される場合があります。
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合には、名誉棄損罪が成立しそうですが、刑法230条の2は、名誉棄損行為が「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」としており、これは、違法性が阻却されるからであると考えられます。
刑法の分野に関しては、難解な概念も多くありますので、お困りの際は、弁護士にご相談ください。
未成年者は契約を取り消せる?
未成年者は、契約を締結すること自体はできるのですが、未成年者保護の観点から、民法上、成年者と異なるルールが設けられています。
未成年者は、契約などの法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならないとされています。
そのため、例えば、未成年者が弁護士に依頼するような場合には、法定代理人の同意が必要です。
そして、未成年者が法定代理人の同意を得ないでした契約については、「取り消すことができる」とされています。
このようなルールは、未成年者は、成年者に比べて、知識や経験、判断能力等が不足しているため、保護しなければならないという発想に基づくものであると考えられます。
未成年者と取引する相手方からすると、契約しても、法定代理人の同意を得ていないものであれば、後で取り消される可能性があるため、同意の有無をしっかりと確認することが大切です。
もっとも、実際の取引で、未成年者が契約をする際に、常に、法定代理人の同意を得なければならないかというと、そうではありません。
例えば、未成年者が、お小遣いで、コンビニなどでお菓子を買う際に(これも売買契約です)、毎回、法定代理人の同意を得ているわけではないと思います。
そうだとすると、未成年者はその売買契約を取り消せるのかというと、お小遣いで、お菓子を買っているような場合には、取り消せないものと考えられます。
これは、民法で、「法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」とされているためです。
このように、未成年者については、原則として、法定代理人の同意が必要としながらも、一定の類型については例外を設けることで、円滑な取引ができるようになっているといえます。
相続放棄をした場合の相続財産の管理義務に関する民法改正
相続人が相続放棄をした場合の義務に関して、改正前民法940条1項は、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」としていました。
これについては、管理継続義務の発生要件、管理継続義務の内容等について、見解が分かれ、どのような場合にどのような義務を負うのかが明確ではありませんでした。
民法改正によって、同条項は、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」と改正されました(施行は2023年4月1日)。
この改正によって、相続放棄をした人が義務を負うのは、「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に限られることが明確となりました。
また、義務の内容について、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」と規定されました。
ただ、この保存義務がどこまでしなければならないものなのか(財産の現状を維持するために必要な行為をする義務まであるのか)は、必ずしも明らかでないように思いますが、法制審議会の民法・不動産登記法部会では、「相続放棄によって相続人となった者を含む他の相続人のために必要最小限の義務を負わせるものとする観点から、財産を滅失させ、又は損傷する行為をしてはならないことのみを意味している」とされています。
参考リンク:法制審議会-民法・不動産登記法部会
相続放棄について、お悩みの方は、弁護士法人心にご相談ください。
精神障害と労災
労災というと、転落事故や転倒事故、重機や機械へのはさまれ、巻き込まれ等による死亡や怪我というイメージが強いかもしれませんが、それだけでなく、精神障害に関する労災の相談も多くあります。
職場でのパワハラやセクハラ等のハラスメント、長時間労働等が原因で、うつ病などの精神障害を負ってしまう方も少なくありません。
厚生労働省の発表によると、令和3年度の精神障害に関する請求件数は2346件で、令和2年度よりも295件も増えており、当法人への精神障害の労災のご相談も増えています。
労災においては、労災保険の適用を受けるだけでなく、会社に過失があるような場合には、会社に対する損害賠償請求をすることも可能です。
当法人では、労災問題に詳しい弁護士が、社会保険労務士法人心の社労士とも連携して、労災申請および会社に対する損害賠償請求の対応をしております。
労災問題でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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会社破産増加の兆し
最近、会社破産に関するご相談・ご依頼が増えてきています。
昨年は、企業倒産件数が57年ぶりの低水準というのが報道されていましたが。これはコロナ禍において融資をはじめとした各種支援がなされたからであり、経済情勢は依然厳しいものと考えられます。
コロナによる経済活動の停滞が長期化する中で、業種によっては、売上が落ち込んだままである一方で、戦争や円安によって原材料費が高騰しており、かなり厳しい状況であるのではないかと思います。
コロナ融資の返済開始も相まって。今後は、資金繰りが困難になる企業も増えてくる恐れがあり、冒頭のとおり、現に、会社破産に関する弁護士へのご相談・ご依頼も増えてきています。
弁護士法人心では、会社破産手続きのご依頼のほか、まだ破産すべきかどうか迷っている段階でのご相談も承っています。
借入金の返済ができない、仕入の代金が支払えない、従業員の給料が払えないなど、事業の継続が難しくなってきた場合には、弁護士にご相談ください。
確定申告のシーズン
今年も所得税の確定申告のシーズンになってきました。
確定申告というと、自営業者やフリーランスなど事業所得を受け取っている人がするイメージがありますが、他にも、不動産の家賃収入がある人や2000万円を超える収入のある給与所得者なども確定申告が必要となる場合があります。
確定申告が必要な場合には、3月15日までにしなければなりません。
毎年、確定申告の会場はとても混雑します。
確定申告は、e-taxによる電子申告も可能で、コロナウイルスの感染リスクを減らすためにもe-taxによる申告が推奨されています。
参考リンク:国税庁・所得税の確定申告書等を作成される方へ
名古屋駅近くのナナちゃんも電子申告を推進していました。
税理士法人心では、確定申告に関するご相談も承っています。
税理士法人心のホームページはこちら
弁護士会
弁護士は、弁護士会に所属しています。
一般的に「弁護士会」と呼ばれるものには、全国的な組織の日弁連(日本弁護士連合会)と地域ごとの各弁護士会があります。
名古屋で弁護士をする場合には、地域ごとの弁護士会は「愛知県弁護士会」になります。
大阪に法律事務所・税理士事務所を開設いたしました。
今月、大阪に、弁護士法人心と税理士法人心の事務所を開設いたしました。
全国で16か所目、関西では、今年2月にオープンした京都に続き、2か所目となります。
場所は、大阪駅から徒歩5分、北新地駅から徒歩1分の場所にある大阪駅前第3ビルです。
これまでも、お電話等で大阪からご相談いただくことがありましたが、今後は、事務所にお越しいただいて、ご相談いただくことができます。
弁護士法人心 大阪法律事務所では、相続、交通事故、債務整理、労災などの法律問題を取り扱っております。
また、税理士法人心 大阪税理士事務所では、相続税の生前対策、相続税申告などを取り扱っております。
電話相談やテレビ会議システムを用いたテレビ電話相談も承っています。
法律問題や税金問題でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
弁護士法人心横浜法律事務所
今月、弁護士法人心横浜法律事務所がオープンしました。
横浜駅から3分の場所にあります。
湯沢和紘弁護士が所長を務めます。
東京にも事務所がありますので、これまでも神奈川県にお住まいの方からたくさんご相談をいただいていましたが、この度横浜に事務所を開設したことにより、より一層、神奈川にお住まいの方のお力になれればと考えております。
弁護士法人心横浜法律事務所のホームページはこちら
また、当法人では、電話やテレビ電話でのご相談にも対応させていただいております。
お仕事や家事で忙しく、なかなか法律事務所まで出かけて弁護士に相談する時間をとるのが難しいという方でも、電話相談・テレビ電話相談でしたらお気軽にご相談いただけるのではないかと思います。
また、最近は、コロナウイルスの感染を避けるために、できる限り外出を控えている方が多いかと思います。
電話相談であれば、家から出る必要がありませんので、コロナ禍の現状でも、ご相談いただきやすいかと思います。
法律における「時」と「とき」の違い
文章を書く際に、「時」と漢字で書くべきか、「とき」と平仮名で書くべきか迷うことはないでしょうか?
日本語で、「時」「とき」という場合、「夜遅く帰った時、家族はもう寝ていた」など「時点」を意味する場合と、「雨が降ったときは、遠足は中止になります」など「~の場合」という意味のことがあります。
この点について、法律では明確に使い分けられており、時点を意味をする場合には「時」、~の場合という意味の場合には「とき」が使われます。
例えば、民法97条1項では、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」とされており、これは、意思表示が相手方に到達した「時点」を意味しています。
これに対し、民法95条1項では、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」とされており、これは、錯誤が重要なものである「場合」を意味しています。
弁護士が文書を作成する際も、このような使い分けをすることが多いように思います。
栄に新規事務所がオープン
松坂屋名古屋店の中に,弁護士法人心栄法律事務所と税理士法人心栄税理士事務所がオープンしました。
弁護士法人心・税理士法人心の本部がある名古屋駅周辺は,オフィスが多いビジネス街ですが,栄は,様々なお店がたくさんある繁華街で,いつもとても賑やかです。
お仕事帰りや買い物等と合わせてご相談にもお越しいただくことも可能かと思います。
事務所の場所は,松坂屋名古屋店の本館の7Fで催事場の近くです。
法律問題や税金問題に関するご相談をご希望の方は,お電話でご予約をいただければと思います。
弁護士法人心千葉法律事務所・税理士法人心千葉税理士事務所オープン
先月の四日市に続き,今月は千葉の事務所がオープンしました。
千葉には,弁護士法人心千葉法律事務所と税理士法人心千葉税理士事務所を開設いたしました。
場所は,千葉駅の北口のロータリーの向かい側になります。
駅から歩いて1分の場所にありますので,電車でお越しいただきやすいかと思います。
近くに駐車場も多くありますので,車でお越しいただくことも可能です。
最近は,首都圏でコロナウイルスの感染者数が再び増加しており,外出を控えている方もいらっしゃるかと思います。
弁護士法人心,税理士法人心では,電話相談を実施していますので,外出を控えている方でも弁護士,税理士にご相談いただけます。
法律問題や相続税等でお困りの際は,お気軽にご相談ください。