在留資格の取消し

1 在留資格の取消制度

外国人が日本に滞在するためには、在留資格が必要です。
在留資格を取得してしまえば、次の更新までは資格が維持されるかというと、必ずしもそうではありません。
それは、在留資格取消制度があるからです。
入管法22条の4第1項は、「法務大臣は、・・・在留資格をもつて本邦に在留する外国人・・・について、次の各号に掲げる事実のいずれかが判明したときは、法務省令で定める手続により、当該外国人が現に有する在留資格を取り消すことができる。」としています。

2 在留資格取消件数・具体例

2023年の在留資格取消件数は、1240件でした。
「特定技能」の在留資格の取消が983件と特に多く、「留学」が183件と次に多くなっています。
この2つの在留資格で、全体の約94.1%を構成しています。
在留資格取消事由として最も多いのが、入管法22条の4第1項第6号で、技能実習生が失踪し在留資格に応じた活動を行わずに3か月以上日本に在留していたケースなどがこれに該当します。
同号による取消しは、1049件と多く、また、2019年の431件から2倍以上になっており、大きな問題であるといえます。
また、入管法22条の4第1項第5号による取消しも128件と比較的多く、留学生が学校を除籍されアルバイトを行って在留していたケースなどがこれに該当します。
参考リンク:出入国在留管理庁・令和5年の「在留資格取消件数」について

3 技能実習生の失踪に関連する最近の動向

現時点では、技能実習生は原則として3年間は転籍できないことから、劣悪な職場環境に置かれた技能実習生が失踪するケースが増加しており、社会問題化しています。
対策として、転籍が認められる場合の要件の明確化がなされるとの報道がされています。
在留資格の取消しの前の段階で、適切に対応できる制度設計が望まれます。
また、お困りの方は、在留資格に詳しい弁護士にご相談ください。

ビザ(査証)と在留資格との違い

1 それぞれの意味と注意点
ビザ(査証)は、入国許可(上陸許可)を受ける際に必要なものです。
在留資格は、外国人が、日本に滞在するために必要な資格です。
ここで、注意すべきなのが、日常用語で、「ビザ」が後者の在留資格の意味で頻繁に使われているということです。
そのため、「ビザ」と言われた際に、本来のビザの意味である「査証」を意味しているのか、それとも、「在留資格」を意味しているのかは人によって異なります。
弁護士でも在留資格のことを「ビザ」という人は少なくありません。
この認識がずれていると会話が嚙み合わず、間違った手続き等をしてしまう恐れがありますので、注意が必要です。

2 本来の意味の「ビザ」(査証)とは
冒頭で記載したとおり、本来の意味のビザ(査証)は、日本に入国する際に必要となるもので、事前に、自国の日本大使館または領事館で発給を受けます。
英語では「VISA」と表記されます。

3 在留資格とは
こちらも冒頭で記載したとおり、在留資格は、外国人が日本に滞在するために必要な資格で、入国(厳密には上陸)の際に、法務省(出入国在留管理庁)から付与されます。
英語では「Status of Residence」と表記されます。
在留資格は、在留の目的に応じて多くの種類があり、例えば、日本で働くための在留資格であれば、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「経営・管理」などがあります。
なお、よく「就労ビザ」などの言葉を聞くことがありますが、これは、厳密には、本来の意味のビザ(査証)ではなく、就労可能な「在留資格」を意味しているものと考えられます。