科挙

弁護士になるには,司法試験に合格をしなければいけないという事実は,広く知られていることだと思います。

新司法試験制度の導入などの司法制度改革のなかで,近年,司法試験の合格率はかなり上昇していますが,

一昔前は,合格率が数パーセントという,極めて合格することが難しい試験でした。

その当時の,司法試験を例える表現として「現代の科挙」という言葉があります。

ところで,この「科挙」というのは,どのようなものかご存じでしょうか。

科挙というのは,簡単にいうと,大昔の中国の公務員試験です。

科挙は,紀元600年頃に中国にあった王朝である隋という国で誕生した制度で,受験資格に制限はなく,だれでも受験できる試験で,国の官僚や役人になるための資格試験でした。

この科挙という制度は,隋という国が滅びたあとも,中国では近代にいたるまで採用されつづけた制度でした。

試験で公務員を選ぶというのは,現代の感覚からすれば「あたりまえじゃないか?」と思われるかもしれませんが,当時は,貴族が世襲で政府の要職を独占して,政治を牛耳るのが普通の社会でしたから,身分にかかわらず,試験に合格さえすれば官僚になれるという制度は,非常に画期的で平等な制度だったと評価できると思います。

科挙は,このように身分にかかわらず受験することができたため,極めて競争率の高い試験で,人類史上もっとも合格することが困難な試験ではないかといわれています。

試験に合格したときには,70代のおじいさんになっていた。試験に合格しなくて発狂して自殺した。そういうエピソードもたくさんあるそうです。

そのような事情から,「科挙」というのは,難関試験の代名詞のように使われる言葉となりました。