仕事で使う略称について

どのような業界にも正式名称と,その略称の使い分けがあるかと思います。

弁護士の仕事をするうえでも,そのような略称は数多く使います。

たとえば,法律名でも「自動車損害賠償保障法」のことを,そのまま読み上げることは稀であり,

通常は,「自賠法」と省略して呼びます。

「対人賠償責任保険によって対応」というときも,簡単に「対人対応」と会話ではいいます。

法律相談の際にも,ついつい,このような略称をつかってしまうことがありますが,

相談に来られているお客様からすると,ただでさえ馴染みのない法律や保険の用語を,さらに省略されては,

理解しづらくて仕方がないと思いますので,極力,相談の際には略称の使用は避けるように心がけたいと思います。

反対に,略称を使用されて弁護士の側が困惑してしまうこともあります。

典型的に多いのは,医学用語の略称です。

「 activities of daily living」は直訳すると「日常生活動作」となり,「ADL」と略して表記されます。

このくらいであれば,カルテ等に記載があっても,そこまで抵抗感はないのですが,なかには解釈を迷う略称もあります。

「NB」という略称は「neourogenic bladder」つまり「神経因性膀胱」の略称であるとともに,「nothern blotting(ノザンブロッテイング)」というDNA解析の手法の一つの略称であり,さらに「Nichts Besonders」というドイツ語の略称でもあります。

このどちらの意味で表記されているのかは,文脈から判断することになるのですが,医学の専門家でない弁護士にとっては容易ではありません。

また,「Nichts Besonders」の解釈についても「Nichts」はドイツ語で否定を意味する言葉であり,「Besonders」は「特に,特別に」という意味の言葉ですから,翻訳をみると「異常なし」と訳されることもあれば「特記すべきことなし」と訳されることもあるようです。

翻訳の仕方で,ニュアンスが異なってしまうこともありますので,証拠資料としてカルテが出てきたときには,苦労しながら読み込んでいかないといけません。