先日,新聞で,渋谷などの東京都心でのオフィスの空室率が上昇しており,
将来的には賃料にも下落圧力が加わるのではないかという記事を読みました。
その理由として,新型コロナによって,在宅勤務の増加などの働き方を見直す動きの影響もあるのではないかといわています。
たしかに,IT企業など,比較的在宅勤務などに切り替えがしやすい業態では,
フットワーク軽く,新しい働き方を見据えた,オフィスの変更などもできるのかもしれません。
他方で,リモートワークに切り替えは難しいだろう業種も多数存在します。
第1次産業や第2次産業は当然ですし,小売業なども,レジに立つスタッフが必要になります。
サービス業などでも,最近,感染拡大の要因として名指しされることの多い「夜の街」関連の仕事などは,
リモートでは成立し難いと思われます。例えば,自宅で,1人お酒をのみながら,リモートのモニーター越しに,
ホストクラブのホストが盛り上げてくれるようなサービスがあったとして,誰がそのサービスにお金を払うでしょうか?
そして,弁護士業務もリモートワークには馴染みにくい仕事の一つであり,どうしても,簡単に在宅勤務に切り替えるというわけにはまいりません。
まず,事件に関する記録ファイルなどはセンシティブな個人情報の塊ですので,気楽に自宅に持ち帰るというわけにはまいりません。
たとえば,家に記録を持ち帰り,その記録を配偶者や子供が読んで,ご近所さんや学校でうわさ話になれば,
守秘義務違反の問題が生じます。
また,出廷の問題もあります。裁判の際には,裁判所に直接出頭しなければなりません。
裁判所は,たいていの場合,その地域の都心部に設けられていますので,
リモートワーク前提に郊外にオフィスを移転すると,出廷の労力が大きくなり,業務効率が低下します。
多くの弁護士事務所が,裁判所の周辺に軒を連ねているのも,出廷の負担を軽減するということが大きな理由です。
さらに,依頼者との相談等の問題もあります。
たしかに,電話相談やメール相談など,相談の方法も多様化してきていますが,直接面談義務が問題となる債務整理の案件などでは,
来所相談を相談者にしてもらわないといけませんし,交通事故の事故状況などは,依頼者の方と一緒に事故現場の図面などを見ながら聴き取りしないと,思わぬ誤解をしてしまう恐れもあります。
このように,弁護士事務所も,なかなかリモートワークで業務を終わらせることが難しい業態ですので,
引き続き所内での感染予防に留意しながら,業務を続けていきたいと思います。