10月も半ばを迎え、だいぶ空気が秋めいてきました。
秋の夕日はつるべ(釣瓶)落としといいますが、日が沈むのも随分早くなり6時前にはすっかり暗くなるようになりました。
ところで、この「つるべ(釣瓶)落とし」という慣用表現について、そもそもこの「つるべ(釣瓶)」というのは近頃の若い方にはどこまで理解してもらえる表現なのでしょうか。
「つるべ(釣瓶)」というのは、井戸から水をくみ上げるときにつかう滑車にかけたロープの先の桶のことです。また、そういった桶やロープ滑車を含めた井戸から水をくみ上げる機構全体を「つるべ(釣瓶)」と呼ぶ言葉の用法もあるようです。
秋の夕日はつるべ落としという慣用表現は、井戸につるべ(釣瓶)がストーンと落ちていくようにすごく早く夕日が沈み、日が暮れる秋の様子の描写です。
私の育った家には釣瓶の付いた井戸はありませんでしたが、奈良県の祖父母の家には井戸がありましたので、秋の夕日はつるべ落としという表現を聴いた時に、情景をイメージをすることは容易でした。しかし、生まれも育ちも都会でずっと過ごしてきた、特に若い世代の方にはつるべ(釣瓶)のついた井戸というのは、イメージがしにくいのではないかと思います。
ちょうど、「ファミコンのソフトをフーする」、「ビデオを巻き戻す」、「レコードに針を落とす」、「レコードの針が飛ぶ」といった、昔は身の回りにあふれていた物品にまつわる表現で、いまではその物品自体が稀少になったため、イメージがわきにくくなった日本語表現の一つではないかと思います。
昔はおそらく大阪の街でも、長屋ごとに井戸が掘られて、文字通り井戸端会議がされていたのだと思いますが、今では大阪の街なかで、井戸というものを見つけるのは至難の業かと思います。
なお、弁護士法人心大阪法律事務所とは梅田の駅をはさんで反対側になりますが、梅田スカイビルの地下1階は、滝見小路という昭和レトロを売りにした飲食店街があります。その中には、釣瓶式ではないですが、手押しポンプ式の井戸の模型が再現されていた記憶です。
大阪で井戸に興味を持った方は一度訪問してみても面白いかもしれません。
井戸は、昔は生活用水の確保のために不可欠な存在でしたが、上下水道の発達した現在では、需要がほとんどなくなりました。
もっとも、地震などの大災害でライフラインが寸断された場合などには、自宅の庭で井戸水をくみ上げられる環境というのは非常に安心感があります。
災害や水道網の老朽化への備えとして、井戸の存在は見直されても良いのではないかと思います。
この点に関連して、じゃあ明日から自宅の庭に井戸を掘ろうと思って、法的にそれは許されることなのかという点が、弁護士の性として気になりました。
調べてみると、少なくとも法律レベルでは井戸掘りについて統一的なルールを設けた法律は無いようです。
ただし、むやみに地下水の採取を許すと、地盤沈下などの問題が生じるので、各自治体ごとに条例等で地下水の採取については規制を設けているようです。
大阪ではどうだろうかと思って調べてみたところ、大阪市のホームページに「大阪市では、工業用水法で定める指定地域内において、吐出口の断面積(吐出口が2つ以上あるときは、その断面積の合計)が6平方センチメートル(口径27.6ミリメートル)を超える揚水機(ポンプ)を用いて、工業の用途に使用する地下水を新たに汲み上げようとする場合は、市長の許可を受ける必要があります(吐出口の断面積が6平方センチメートル以下の場合でも、許可の対象外であることを現地にて確認させていただく場合があります)。」と記載されていました。
では、工業用水法で定める指定地域というのは大阪市のどの範囲なのだろうかと思って調べてみたのですが、具体的にどのエリアにどのような規制があるのかについてhttps://www.pref.osaka.lg.jp/kankyohozen/jiban/kiseikuiki.htmlに詳しく表がつくられていました。
基本的には、大阪市のほとんど全域に規制がかかっているようです。
大阪で井戸を掘る場合には、行政に事前にしっかり相談をして許可を受けたうえで掘る必要があるようです。