近頃の物価について

近頃、ニュースを見ていても、何かと値上げの話がつづいております。

スーパーやコンビニエンスストアなどで買い物をしていても、これまでは100円で買えていたものが、120円、130円と値を上げています。

私が普段よく通っている食堂でも、原材料高騰により値上がりがありました。

値上げに伴い、賃金が上がっていけば生活に困ることはないですが、日本全体の統計でみると、賃金の上昇よりも物価の上昇の方が速いらしく、現時点までのところ、実質賃金は減少を続けていると聴きます。

このような、物価の上昇のなかで日々の生活を送ることには、いろんな不安があるかと思います。

特に、現役で働いている世帯ではなく、年金を主な収入減としている世帯にとって、物価上昇はかなり苦しいのではないかと思います。

弁護士法人心でも障害年金の申請手続きのサポートを取り扱い分野の一つとしておりますので、年金額と物価のバランスというのは気になる問題です。

年金額の決まり方は、一般的に法律で定められた年金額(現行では78万900円)に毎年、改定率を乗じて、その年度の年金額を決める仕組みとなっています。

この改定率というのが、非常に複雑であり、基本的には、名目賃金の変動と物価の変動を考慮しながら年金額が調整される仕組みがとられています。

国民年金等の公的年金制度は、単なる銀行の定期預金や多くの民間の年金保険等に比べて、物価に応じて支給額が変動する仕組みがとられている点で、インフレに対して強みがあるといえます。

日本年金機構のホームページでも、「年金額の実質価値を維持するため、物価の変動に応じて年金額を改定することをいいます。現行の物価スライド制では、前年(1月から12月まで)の消費者物価指数の変動に応じ、翌年4月から自動的に年金額が改定されます。私的年金にはない公的年金の大きな特徴です。」と紹介されています。

ただし、年金額が物価変動に応じて調整されているといっても、例えば物価が全体で10%上昇したから、来年の年金額も10%上昇するというような単純な仕組みにはなってはいません。

日本年金機構のホームページでは、上記の説明につづいて「なお、平成17年4月から、財政均衡期間にわたり年金財政の均衡を保つことができないと見込まれる場合に、給付水準を自動的に調整する仕組みであるマクロ経済スライドが導入されました。これにより、年金額の調整を行っている期間は、年金額の伸びを物価の伸びよりも抑えることとします。」と記載されています。

このマクロ経済スライドにより、物価や賃金が急上昇した場合でも支給される年金額は「調整率」というものを掛け合わせることで、同じ勢いでは上昇しないように調整されることとなります。

これだけ聞くと、物価が上がっても同じように年金が上がっていかないのであれば、年金はあてにならないと思われる方もいるかと思います。

この点については、「将来の現役世代の負担が過重なものとならないよう、最終的な負担(保険料)の水準を定め、その中で保険料等の収入と年金給付等の支出の均衡が保たれるよう、時間をかけて緩やかに年金の給付水準を調整することになりました。」と日本年金機構のホームページでは趣旨が紹介されています。

要するに、国民年金の給付額は、世代間扶養の理念のもと、年金受給をする方自身が払ったお金だけでなく、現役世代の支払う保険料を加えて初めて賄うことができています。そのため、現役で働く労働人口に対して、リタイアして年金の受給する側に回った人口の比率が高くなった社会で、物価変動をそのまま年金支給額に反映していたのでは、現役世帯の家計がパンクする恐れがあるという判断のようです。

確かに、物価の伸びよりも賃金の伸びが大きいような景気の良い社会であれば、年金保険料が多少あげられても、現役世代から不満は上がらなさそうですが、反対に、物価の伸びより賃金伸びが少ない状態で、年金保険料まで上がってしまうと、現役世代の生活が回らなくなるのではないかという懸念は理解できます。

調整率の設定が妥当なのかどうかなど制度の是非は、政治家ではないのでわかりませんが、少なくとも国民年金には一定のインフレリスク対応ができるというメリットはありますので、結局のところ、国民年金とその他の私的な年金保険、貯金等の様々な備えをすることで生活を維持できるようリスク分散をするしかないのかなと思われます。