御堂筋のイルミネーション

今年は暖冬だなと思っていましたが、ようやく師走らしい寒さも感じられるようになってきました。

弁護士法人心の大阪の支店は、大阪駅前第三ビルという御堂筋に面したビルに入っていますが、この季節は、御堂筋はイルミネーションで綺麗に飾り付けられており、通勤の際に眺めるのが楽しみな景色になっています。

なお、御堂筋は大阪の繁華で大きな通りの代表格ですが、あまり、その由来や範囲についてきちんと意識して調べたことがありませんでした。

調べてみると、御堂筋の北端は、梅田の阪神のデパート前の交差点、南の端は、難波の高島屋の前の難波西口交差点だそうです。

御堂筋というときに「だいたいこの辺だな」と思っていた範囲と一致していたので、特に驚きはなかったのですが、きちんと範囲が決まっているものだということは新たな発見でした。

御堂筋という呼称の由来は、東本願寺さんと西本願寺さんの、それぞれの御堂が、御堂筋にそって南北にあるからだそうです。

ただ、この御堂筋という呼称に法律や条例で決められているのかというと、そうではないようです。

御堂筋に限らない話ですが、私たちが当たり前に使っている地名というのは長い歴史や伝統のなかで培われてきた呼称です。

一般的に「地名は言葉の化石」といわれたりしますが、北海道にアイヌ語由来の地名が散見されるように、その地域で話されているメジャーな言語が置き換わっても、地名は変わらず使用されつづけられるほど、地名というのは変化しにくいものです。

そのため、身近な地名は決まりきった当たり前のものと感じられるのですが、法律という観点からいうと、例えば「国道●号線の、●から●までのあ範囲を●通りとする」というような、地名を定義した法律や条例などは存在しない方が一般的です。

地名に全く法律や条例の根拠がないかというとそういうわけではなく、地方自治体の名前は地方自治法第3条で「①地方公共団体の名称は、従来の名称による。② 都道府県の名称を変更しようとするときは、法律でこれを定める。③ 都道府県以外の地方公共団体の名称を変更しようとするときは、この法律に特別の定めのあるものを除くほか、条例でこれを定める。」とされており、基本的に昔からの慣例的な呼び名をもとにして、もし名前を変えるのだったら法律や条例で定めないといけないとされています。

この地方自治法の規定を利用して、実際に地方自治体の名称を変更した有名な事例は、愛知県豊田市ではないでしょうか。

もともとは挙母市という名称だったのですが、トヨタ自動車をはじめとするトヨタグループの影響力が非常に大きく、地方自治法3条3項にもとづいて条例をつくって、豊田市に名称を変更しました。

このように、地方自治法に地名の根拠を求められる場合があります。

その他に、河川の名称は河川法や河川法の施行規則などが根拠となります。

ただ、御堂筋のように、一般的に広く通用されているけれども、法律や条例に根拠を見いだせない地名もたくさんあります。

当たり前に思っていた地名も、その呼称の根拠をたどると、法律のような明確な根拠があるわけではなく、慣習によるのだなと知りました。

なお、地名をきちんと定義して決めないと落ち着かない人もすくなくないようで、国連には国際連合地名標準化会議(UNCSGN)という組織が設けられており、国際的に標準化された地名をきめていこうとしているそうです。

そして、国連の地名標準化会議の決議に基づいて、日本では、国土地理院と海上保安庁海洋情報部により『地名集 日本』という書籍が刊行されてています。

国土地理院のホームページで内容を読むことができますが、緯度や経度で地点を特定したうえで、大量の地名が列挙されています。

読んで面白い書籍ではなさそうですが、こういう地道な定義活動をしていかないと、社会活動で思わぬトラブルが起きることもあるよなと思うと、先人の努力に脱帽するような感慨深さがありました。