金沢で弁護士をする同期の友人からお酒がとどきました

今年のゴールデンウイークは、コロナ流行も落ち着いて、すごく多くの人出だったようです。

そのようなゴールデンウィークの間に、石川県では大きな地震がありました。私の同期の弁護士が金沢で働いていますので、久しぶりにお見舞いのLINEを送ってみましたが、幸いにして特に問題はなかったようです。

その同期の友人から聴くところによると、金沢市内よりも能登半島の奥の方が、揺れが激しかったそうです。

そして、後日、その友人から私の職場に「奥能登の地酒」と包装紙に書かれた贈り物が届きました。

お中元の季節でもないのに何だろうと思って連絡をとってみると、その友人曰く、被災地を応援する気持ちで奥能登の地酒を購入したので、私のほうにもお裾分けで送ってくれたそうです。

酒飲みの発想だなと可笑しく思いつつ、なかなかに洒落た心配りに、うれしい気持ちがしました。

届いたのは、「谷泉」というお酒でした。どんな銘柄なのか、気になってインターネットで調べてみると創業230年の伝統のある酒造店でした。興味深いことにお酒を造る杜氏の方について、石川県で唯一、女性の杜氏の方がいる酒造店と紹介されていました。

なお、法律に絡めた話をすると「地酒」という言葉については、明確な法的な定義はないそうです。

「地酒」というのは、法的に定義される言葉ではなく、あくまでご当地の特色が豊かにでた特徴のあるお酒という意味の日常の言葉です。

法的な言葉で今回の贈り物を語るとすると、「清酒」という言葉になります。

「清酒」を含む、様々な酒類に関する定義は、酒税法という法律に定められています。

酒税法では、清酒とは、「次に掲げる酒類でアルコール分が二十二度未満のものをいう。イ 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの ロ 米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。)」

と定義されています。

この他にも、「発泡酒」と「ビール」の違いなども、酒税法の定義から確認ができます。

普段口にするお酒についても、掘り下げて考えると法律に絡めたお話がでてくるものです。

酒類の定義などという無粋な話は、酒の味が不味くなりそうな話ですので、このあたりで終えたいと思います。

 

 

盟神探湯

先日、家で料理をしていたとき、誤って熱いお湯をいれた鍋をもってしまい、火傷をしそうになりました。

ああいうときは、指先からジンジンする痛みがはしって、反射的に手をひくことで酷いやけどをすることを避けることができます。

このように、火傷しそうになった手に痛みを感じながら、古代の裁判のことを思い出しました。

現代の日本の司法制度では、裁判は公務員である裁判官が裁判所において、当事者から提出された証拠をもとに判断をくだして行われます。

弁護士は、そのような裁判制度のなかで、当事者が裁判官に意見を伝えたり証拠について説明をしたりするお手伝いをすることを仕事としています。

もっとも、はるか古代にまでさかのぼると、そのような近代的で合理的な裁判制度があったわけではありません。

私が、高校時代に学んで衝撃を受けたのが、古代日本で行われていた盟神探湯という裁判です。

これは、熱湯に手を入れて、火傷をすれば有罪、火傷をしなければ無罪という裁判です。

このような裁判は、人間の理性を信頼し、証拠に基づいて合理的に判断をして裁判をすることを基本としている、現代人の感覚では、到底理解できないものです。

ただし、このような裁判形式は古代日本にだけみられるものではなく、世界各地に類似の事例がみられるようです。例えば、毒蛇のはいった箱に手を入れて嚙まれたら有罪、噛まれなければ無罪というようなものです。

このような裁判形式のことを神明裁判と呼ぶそうです。

その背景にある思想は、人間が有罪か無罪か、嘘をついているか否かについて、当事者がリスクのある行動をとって被害を受けずに済んだのであれば、それは神がその当事者に加護を与えたからであり、神が加護を与えたのであれば、そのものが有罪であったり嘘をついているはずはないという考え方だそうです。

ただ、蛇に噛まれるかいなかは運の要素があるので、まだ運試しとして成立しそうですが、熱湯に手を入れれば人体の構造上、10人中10人がやけどをするのではないかと思われます。

歴史書の中には、そのような裁判を行ったという記録は残っていますが、果たして裁判として本当に機能していたのかを考えると、非常に不思議な気持ちになります。

裁判所ごとの運用の違いについて

弁護士法人心は関西、東海、関東の幅広い地域に支店を展開しています。

そのため、社内で会議を開いたり、特定の法律分野について社内研修会などを開いたりして、他の支店の弁護士の話をきくと、裁判所ごとに細かな運用が異なることを知らされます。

たとえば、交通事故の慰謝料の計算の仕方一つをとっても、大阪と東京では主に参照されている慰謝料の基準表がことなります。

また、借金の整理のなかには、個人再生という手続きがございますが、この手続きのなかには、個人再生委員というものを選任するかどうかという問題がございます。

この個人再生委員の選任ついては、東京地裁では原則として個人再生委員を選任することとされており、実際に東京の支店の弁護士に聞くと、大半の案件で個人再生委員が選任されるとのことでしたが、大阪や京都など関西地域では、債権額を巡って争いがあったり、財産額の評価が特に難しい案件などでなければ、一般的にはあまり個人再生委員が選任されない傾向があります。

また、同じ関西の地域でも、大阪と京都でも裁判所が異なれば、利用する書式に違いが生じたりします。

同じ国会で制定された同じ法律を利用する手続きですが、裁判所ごとにこのような違いがあるというのは、非常に興味深い現象です。

また、実際に弁護士に依頼して事件処理を任せようと考えるお客様からすると、その弁護士が、どれくらい現地の裁判所の運用に通じているかも確認してみると、より良い選択ができる可能性があります。

AIに弁護士の仕事は奪われたりするのだろうかという問題について

最近テレビなどで、「AI」、「人工知能」の発展がしばしば取りざたされており、一説によると現在存在している多くのサラリーマンの仕事は、AIによって奪われてなくなってしまうということです。

弁護士の仕事も、例外ではなく、契約書チェックや判例検索などはいまでも人工知能が行うことができるようなっているそうです。

また、直近ではChatGptが非常に話題になっていて、かなり高度な文章を起案してくれるようです。

さすがに、裁判の主張書面を弁護士の代わりに書くようなAIは今はないだろうと思いますが、このまま技術が発展していけば、弁護士が書いた主張書面が、AIの書いた主張書面によって、裁判で負けてしまうような時代も来るのかもしれません。

技術の発展は時代の流れですので、止めようのない話ですが、末恐ろしい思いもします。

ただ、時代をさかのぼれば、パソコンもワープロもない時代には手書きで裁判の書類を書いていたわけですし、民事訴訟法も改正を重ねて、電話会議やテレビ電話を利用した裁判手続きなどもどんどん普及してきています。

便利になる反面、期日の直前に突然、パソコンがフリーズして焦って裁判所に電話するなど、裁判所に実際に出頭していたときには思いもよらないトラブルで冷や汗をかくこともあります。

新しい技術は、学ぶのも大変ですが、厭うことなく興味を持って学んでいかなければならないなと思います。

 

年末ジャンボ宝くじ

あけましておめでとうございます。弁護士の有田です。本年もよろしくお願いいたします。

先月のブログで、スポーツ振興投票に関する法律に触れましたが、宝くじの中で一番有名なのは「年末ジャンボ宝くじ」ではないかと思います。

totoなどのスポーツ関連の宝くじは、根拠法がスポーツ振興投票の実施等に関する法律ですが、いわゆる宝くじについては、別に根拠となる法律がございます。

それが「当せん金付証票法」という法律です。

スポーツ振興投票の実施等に関する法律は、平成10年頃に作られた比較的新しい法律ですが、当せん金付証票法は、昭和の時代から続く、歴史のある法律です。

「当せん金付証票」とはなんなのか?ということですが、この法律の2条では「その売得金の中から、くじびきにより購買者に当せん金品を支払い、又は交付する証票をいう。」と定義されています。

簡単にいうと、くじを売った売り上げの中から、くじ引きで当選した人に当せん金を支払うという仕組みでやっている宝くじののことです。

スポーツ振興投票は、スポーツの振興のために売り上げが使われますが、こちらの当せん金付証票法に基づく宝くじは、「この法律は、経済の現状に即応して、当分の間、当せん金付証票の発売により、浮動購買力を吸収し、もつて地方財政資金の調達に資することを目的とする。」と第1条の趣旨にかかれています。

要するに、地方自治体の財政を助けるために、宝くじは、発行されているということです。

そのため、この法律の4条1項でも「都道府県並びに地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市及び地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第三十二条の規定により戦災による財政上の特別の必要を勘案して総務大臣が指定する市(以下これらの市を特定市という。)は、同条に規定する公共事業その他公益の増進を目的とする事業で地方行政の運営上緊急に推進する必要があるものとして総務省令で定める事業(次項及び第六条第三項において「公共事業等」という。)の費用の財源に充てるため必要があると認めたときは、都道府県及び特定市の議会が議決した金額の範囲内において、この法律の定めるところに従い、総務大臣の許可を受けて、当せん金付証票を発売することができる。」と定めれていてます。

要約すると、宝くじの販売は、総務省が認めた事業について、総務大臣の許可を受けた場合にだけ、都道府県や指定都市といった地方自治体が販売できるということです。

このように、宝くじの販売は、行政によって管理されていますので、宝くじを購入することは合法です。

ただし、少し話はそれますが、自己破産などの裁判所を利用する債務整理を行う予定がある場合には、宝くじの購入は競馬やパチンコなどのギャンブルと同じ射幸行為の一つとして免責不許可事由(破産をしても借金を免除してもらえない事情)と扱われる恐れがあるので注意が必要です。

 

 

 

ワールドカップをみて思うこと

テレビでは連日、ワールドカップ関連のニュースが報道されています。

日本代表が、スペイン、ドイツという強豪国に勝利して決勝リーグに進むなどドラマのある展開でしたので、盛り上がるのも当然かと思います。

弁護士仲間の間でも、近頃は、「どの国が優勝するだろうか」など、サッカーの話題が多くなりました。

ところで、サッカーのような規模の大きいスポーツには、それに関連するいろんなルールがあるはずです。

気になって「サッカー 法律」などのキーワードで検索してみました。

真っ先にでてきたのは、「平成十四年度ワールドカップサッカー大会特別措置法」という法律でした。

これは、平成14年に日韓合同開催で行われたワールドカップの運営や財源に関して定めた法律です。

日韓合同開催のワールドカップのときには、ちょうど私は田舎から東京にでて大学生をやっていたときでしたので、渋谷の街中で盛り上がるサポーターの群衆をみて、「えらいさわぎだな」と驚いたのを覚えています。

私にとっては、懐かしい思い出ですが、「平成十四年度ワールドカップサッカー大会特別措置法」自体は、僅か4条だけの短い法律ですので、読んでも大して面白い箇所はありません。

その次に、検索でヒットするのが「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」です。

スポーツ振興投票とは何なのか?という話ですが、簡単にいうと宝くじ売り場でうっている、totoのようなスポーツ関連の宝くじのことです。

ああいったスポーツ関連の宝くじの売り上げは、その一部が、日本のスポーツ振興政策に利用されています。

その仕組みの根拠法令が、このスポーツ振興投票の実施等に関する法律ということになります。

ちなみに、なぜこのような法律が必要かということですが、そもそも宝くじのように、当たれば一攫千金、外れれば出したお金は全部失うというハイリスク、ハイリターンの商品は、原則として「国民の射幸心を煽り、勤労の美風を損ない、国民経済の影響を及ぼす」という理由で法律で禁止されています。

刑法187条では「富くじ発売等」について「1 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。」と刑事罰が定められています。

刑法187条をみると、勝手に宝くじを売った側が処罰されるのはもちろんですが、3項では、その宝くじを受け取ったものも処罰されることになっていますので、注意が必要です。

このように、原則として宝くじは禁止なのですが、特別に法律でみとめられたものだけが、販売が許されているという関係になります。

 

法人について

弁護士法人心は、その名称のとおり、弁護士法人です。

弁護士法人というのは、弁護士法第4章の2に根拠が定められている法人のことです。

弁護士法30条の2では、「弁護士は、この章の定めるところにより、第三条に規定する業務を行うことを目的とする法人(以下「弁護士法人」という。)を設立することができる。」と定められています。なお、弁護士法第3条1項では、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」と定められており、このような業務を法人という組織をもって行うことを可能とすることに弁護士法人の特徴があります。

法人となることができるというのは、法律上の人格を認められるということです。法人として認められた組織は、法人の名義で権利義務の主体となったり、裁判などの当事者となったりすることができるようになります。

このような法人には、様々な種類があります。学校法人や財団法人、宗教法人なども法人です。このような法人のなかで、多くの人にとって一番身近な存在は、株式会社であろうかと思います。日本の多くの人は、株式会社に雇用されて給料をもらい、株式会社が生産した商品を、株式会社が経営する商店から購入して生活をしています。

コンビニエンスストアで購入したポテトチップスから、毎日そでを通しているスーツまで、株式会社と無縁で生活することはできません。

このように身近な株式会社という存在ですが、ふと気になって、日本にはどのくらいの数の株式会社か調べてみました。

テレビのニュースなどで、日経平均株価などが報道されますが、あのような証券取引所で取引される対象となるような証券取引所に上場されている株式会社だけで3800社程度あるそうです。

之だけでも、把握しきれないほど大量の会社ですが、これは日本に存在する株式会社のほんの一部分です。

株式会社は、大きなものから小さなものまで含めると、概ね200万社ほどあるそうです。

私の馴染みのある政令指定都市の人口と比較すると、大阪市の人口が約270万人、名古屋市の人口が約230万人、京都市の人口が約150万人程度ですので、日本の株式会社の数は、それらの政令指定都市とそん色ない程度であるといえます。

もちろん、自然人と違って、株式会社には法律上存在しているだけで、何の活動もしていない休眠会社もあると思いますが、それにしても、想像していた以上に株式会社というのがあるものだなと驚きました。

 

 

 

 

 

淀川水系

弁護士法人心大阪法律事務所は大阪市北区梅田にございます。

梅田から北の方に少しあるくと、すぐに淀川につきあたります。

弁護士法人心は京都にも事務所があり、私は京都の方の事件もたくさん取り扱っておりますので、京都・大阪間をよく移動しますが、その際は淀川沿いに移動することになります。

落語の演目の一つに「三十石」という演目がありますが、昔は、大阪・京都間は三十石船という船で、淀川を往来していたそうです。

現在では、急行に乗れば30分ほどで行き来できる距離ですが、昔は、大阪・京都間の移動はものすごく時間のかかる仕事であったはずです。

それでも、鉄道が発達する前の交通を考えると、船をつかった水運は、最も早く大量の物資を運ぶことのできる非常に有効な輸送手段だったのだと思われます。

地図を眺めていると、河川と河川のつながりから水系を理解することができます。

そして、水系をみていると、地域間の文化や歴史の繋がりについて理解を深めることができるので、興味深いです。

淀川にそそぐ河川は、淀川水系と呼ばれますが、淀川には、木津川、宇治川、桂川、鴨川などの大きな河川が京都市の南で合流して淀川になります。

木津川は遡ると、私のふるさとである三重県名張市や奈良県宇陀市を流れる名張川や宇田川、芳野川にまでさかのぼることができます。

職場のすぐ目の前を流れている大きな淀川が、川の流れをたどると、自分の故郷につながることを思うと、感慨深いものがあります。

また、宇治川はさらにさかのぼると瀬田川となり、さらにさかのぼると琵琶湖にいたります。

最近知ったことですが、琵琶湖というのは「湖」と呼ばれていますが、河川法の定義に従うと琵琶湖は1級河川になるそうです。

弁護士としては、法律の規定を重視するべきなのかもしれませんが、琵琶湖をみて河川だというのは、なかなか実感の湧かない話です。

なお、琵琶湖の東西の幅は広いところでは20kmを超えるそうです。

テレビでブラジルのアマゾン川や、中国の長江、黄河などの風景をみて、「やっぱり大陸の河の風景は雄大だな」と思っていましたが、黄河の川幅も20km程度ですので、琵琶湖が河川なのだとしたら、日本の河も川幅で負けていないことになります。

中秋の名月

9月はお月見の季節です。

昔から、9月の満月は中秋の名月と呼ばれ、重陽の節句や中秋節といった特別な日として扱われて、お月見をしたり一家団欒を楽しんだりといった行事を行う日になっています。

このように9月の満月を特別に大切にする風習は、広く東アジア全般に広がっており、その起源は古代の中国の伝統行事にあるようです。

クリスマスやバレンタイン、ハロウィンといった欧米渡来の行事に比べると、扱いが地味な印象がありますが、

デパートではお月見団子が売られますし、マクドナルドでは期間限定のお月見バーガーが販売され、中華物産展には月餅が並ぶなど、中秋の名月にあわせた商戦も行われています。

今年は、大阪では幸いにして雲が少ない良い天気であったため、中秋の名月をしっかり眺めることができました。

月というのは考えてみると面白いもので、太陽が毎日同じ形で空に昇るのに対して、月には満月、半月、三日月、新月というように満ち欠けがあります。

中秋の名月を、多くの人がありがたがって鑑賞するのは、次の日の夜にはすぐに欠け始めて、「満月は今日しか見られない」という、稀少性に価値を感じる心理が働くからでしょう。

このように、満ち欠けをする月の特徴についてあれこれと思いを巡らせていると、古代の人が、月の満ち欠けをもとに暦を作ったのも、なるほどとうなづけます。

現在の日本で普通に使われているカレンダーは、太陽暦に基づくものになっていますが、江戸時代までは月の運行にあわせて作られた太陰暦が使用されていたとききます。

太陰暦は、日本では旧暦などと呼ばれて、すっかり廃れていますが、中華圏などでは現役で使用されているようです。

インバウンドの商売などに関連して、中国の旧正月についてニュースで取り上げられることも増えた気がしますが、日本の正月と旧正月の違いは、まさに使う暦の違いによって生じる違いです。

また、中国の知人から〇月〇日が誕生日ときいていたので、その日に「誕生日おめでとうございます。」といったら、「今日は、私の誕生日じゃないですよ。今日は太陽暦の〇月〇日ですが、私の誕生日は太陰暦の〇月〇日です。」という反応が返ってきて、両者の違いに戸惑うこともあります。

このような暦の違いによって生じる文化の違いは、仕事に直接かかわらない分野についてであれば、「興味深いですね」という程度の扱いで済みますが、仕事にかかわってくると大きな問題になります。

例えば、弁護士の仕事をしていて、〇月〇日が裁判所に書類を提出する期限ですといわれていたときに、使用されている暦が何種類もあったのでは、実際にいつまでに書類を出せばいいのか判断できなくて、仕事になりません。

今の日本では、使用される暦が統一されているので、このような問題は発生しませんが、「〇月〇日に~しましょう。」といったら、誰もが同じ暦を見て、同じ日時を特定して行動できる状況は、当たり前のことだと思っていましたが、あらためて考えてみると、重要な社会の制度の一つなのだなと気づかされます。

ちなみに、日本で現在使用されている暦が、どうして公的に正しい暦だといえるのかという、法的根拠を調べてみると、明治時代に出された太政官布告第三百三十七号(改暦ノ布告)にまでさかのぼるようです。

国の法令データベースで、布告の文面もすぐに検索することができるのですが、興味深いので以下に本文を引用しておきます。

「詔書写

朕惟フニ我邦通行ノ暦タル太陰ノ朔望ヲ以テ月ヲ立テ太陽ノ躔度ニ合ス故ニ二三年間必ス閏月ヲ置カサルヲ得ス置閏ノ前後時ニ季候ノ早晩アリ終ニ推歩ノ差ヲ生スルニ至ル殊ニ中下段ニ掲ル所ノ如キハ率子妄誕無稽ニ属シ人知ノ開達ヲ妨ルモノ少シトセス盖シ太陽暦ハ太陽ノ躔度ニ従テ月ヲ立ツ日子多少ノ異アリト雖モ季候早晩ノ変ナク四歳毎ニ一日ノ閏ヲ置キ七千年ノ後僅ニ一日ノ差ヲ生スルニ過キス之ヲ太陰暦ニ比スレハ最モ精密ニシテ其便不便モ固リ論ヲ俟タサルナリ依テ自今旧暦ヲ廃シ太陽暦ヲ用ヒ天下永世之ヲ遵行セシメン百官有司其レ斯旨ヲ体セヨ

明治五年壬申十一月九日」

 

要約すると、明治天皇のお言葉として、太陰暦は不便だからこれからは太陽暦を使いなさいと指示がされたということです。

 

普段何気なく利用しているカレンダーも、法的根拠を遡ると、太政官布告にまでさかのぼるのだなと、歴史の深さに感慨深く思います。

 

 

天然たい焼きについて

先日、大阪の街を歩いていると「天然たい焼き」という広告を掲げた、たい焼き店を目にしました。

同行者から、「たい焼きに天然も養殖もあるんかな?」と疑問を投げかけられ、ふと考えてみましたが、

確かに、たい焼きは鯛の形を模して造られた型にはめて作られた焼き菓子ですから、

生きた魚のように天然も養殖もないのではないかと思われます。

気になって、調べてみると、天然たい焼きというのは、たい焼きの焼き方に関する違いのようです。

夏祭りの屋台などで見るたい焼きは一気に何十体ものたい焼きを鉄板の上に並べて焼いているイメージですが、天然物と呼ばれるたい焼きの場合、

一気に1体から2体しか焼けない焼型の中に具材をいれて、職人がその焼型を動かしながら焼き加減を調整しつつ焼き上げるそうです。

ちなにみに、弁護士の立場で「天然」や「養殖」という言葉を目にすると、それの表記に関して定めた行政法規が気にかかります。

たい焼きの「天然」「養殖」表記についての法規制は見つけられませんでしたが、

一般的に食品の表記に関しては食品表示法という法律に定められています。

食品表示法4条1項では、「内閣総理大臣は、内閣府令で、食品及び食品関連事業者等の区分ごとに、次に掲げる事項のうち当該区分に属する食品を消費者が安全に摂取し、及び自主的かつ合理的に選択するために必要と認められる事項を内容とする販売の用に供する食品に関する表示の基準を定めなければならない。一 名称、アレルゲン(食物アレルギーの原因となる物質をいう。第六条第八項及び第十一条において同じ。)、保存の方法、消費期限(食品を摂取する際の安全性の判断に資する期限をいう。第六条第八項及び第十一条において同じ。)、原材料、添加物、栄養成分の量及び熱量、原産地その他食品関連事業者等が食品の販売をする際に表示されるべき事項 二 表示の方法その他前号に掲げる事項を表示する際に食品関連事業者等が遵守すべき事項」と定められており、食品ごとに表示の基準を定めることにされています。

そして、一般的に天然や養殖が問題になる魚などの食品については「食品表示基準」という基準の第三章生鮮食品の項目に表記に関するルールが定められています。

そのなかで、「養殖」の場合には、養殖である旨等を表記する義務が定められています。

なお、「養殖」とは「幼魚等を重量の増加又は品質の向上を図ることを目的として、出荷するまでの間、給餌することにより育成することをいう。」と定められています。

鉄道と法律

先日、遠方の裁判があって名古屋・大阪間を新幹線に乗っていたときのことですが、

車内アナウンスで、今年は日本で鉄道開業してから150年の記念の年と放送されていました。

気になって調べてみると、日本で初めて鉄道が開業したのは、1872年(明治5年)10月14日のことだそうです。東京の新橋から神奈川の横浜までの区間を走る鉄道だったとのことですので、最初の鉄道だという点を考慮すると、かなりの長い区間を走る鉄道を最初から作ったものだなと感心します。

そして、この150年の間に、日本全国に鉄道網が文字通り網の目のように張り巡らされるようになり、さらに、新幹線のような高速鉄道も整備されたのですから、鉄道の発展について思うと、日本の技術力や工業生産力の発展の歴史を象徴しているようで、感慨深いものがあります。

ちなみに、日本で近代的な弁護士制度が法律によって定められ、「弁護士」という呼称がしっかりきめられたのは、1893年の弁護士法制定のあとですから、日本における鉄道の歴史は、弁護士の歴史より古いことになります。

鉄道は、工業製品として物として列車だけでなく、その列車の運行をつかさどる人的組織があって初めて機能するものです。

そのため、鉄道に関しても様々な法律が定められています。

代表的なものは鉄道事業法であり、日本で鉄道事業を行う場合に、国土交通省の認可を受けてどのようなルールのもとで、事業を営まなければならないかが定められています。安全管理規定などの安全に関する基準なども、この法律に基づいて決められています。

法律を読んでいて、興味深かったのが、鉄道事業法の第32条以下に「索道事業」に関するルールも定められていることです。「索道」というのは聞きなれない言葉かもしれませんが、簡単にいうと登山などの際に目にするロープウェイのような宙づりの交通機関のことです。

考えてみれば、地面に敷いた鉄の線路を走るのか、宙にういた鉄線に沿って走るのかの違いだけなので、鉄道とロープウェイが一つの法律のなかにルールが定めれているのも、おかしな話ではないのですが、新幹線のような電車のルールを想像しながら読んでいる中に、突然、ロープウェイの話がでてきて面白く思いました。

 

雨水について

6月に入り、梅雨も近づいてまいりました。

近頃は、すっきりとした晴天という日がすくなくなり、朝からどんよりとした雲が空一面を覆っていたり、裁判等で傘を持たずにでかけて、帰りに雨に降られて濡れてしまったりすることも増えました。

梅雨時は、紫陽花の花を雨が打つ姿など風情のある良い面もありますが、ジメジメとした気候や、雨天が続くのは、やはり、あまり心地のよいものではありません。

このように、雨を意識することが多い季節ですが、弁護士らしく法律に絡めたお話をすると、

雨に関して、比較的新しい法律が作られているのを、ご存知でしょうか。

平成26年頃に作られた法律ですが、「雨水の利用の推進に関する法律について」という法律がございます。

これは、法律の名前からもわかるように、雨水をどう利用するかということについて定めた法律です。

この法律の第1条では、法律の趣旨として、「この法律は、近年の気候の変動等に伴い水資源の循環の適正化に取り組むことが課題となっていることを踏まえ、その一環として雨水の利用が果たす役割に鑑み、雨水の利用の推進に関し、国等の責務を明らかにするとともに、基本方針等の策定その他の必要な事項を定めることにより、雨水の利用を推進し、もって水資源の有効な利用を図り、あわせて下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与することを目的とする。」とかかれています。

ここで注目すべきことは、単に雨水を有効活用しましょうという「水資源の有効な利用」というだけでなく、「下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制」も目的にされていることです。

立法当時のニュースなどを見ると、立法の背景にはゲリラ豪雨などの多発により、都市の一部が冠水する事例など出てきていたことに対する、対応策という意味もあったようです。

法律のなかでは、雨水の利用を進めるための建築物や施設を国や地方公共団体が協力しながら整備していくべきことが定められており、大量に降った雨を、そのまま河川や下水に排出して洪水のような状態が起きるのを避けて、貯水施設にためておき、その貯水施設の水を、水資源として有効活用しようという考え方のようです。

私などは、雨が降っているのを見ても、「雨だな、濡れるの嫌だな。」と漫然と雨を眺めているだけですが、日本の一隅には、降る雨を見て水資源の活用や、災害防止まで思いをはせている人もいるのだなと、感慨深く思いました。

 

国連決議について

ニュースを振り返ってみていると、ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、何種類かの国連決議が話題に上っていました。

1つは、2月下旬に話題になっていた、国連の安全保障理事会での決議です。ロシアのウクライナからの即時撤退を求める採決が行われ、否決されました。

2つ目は、3月初旬におこなわれた国連総会の緊急特別会合での、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議です。

こちらは、賛成多数で採択されました。

3つ目は、3月下旬に国連の安全保障理事会にロシアが提出した人道決議の採決で、こちらは否決されています。

4つ目は、同じく3月下旬に国連総会に欧米主導で提出された人道決議案の採決で、こちらは賛成多数で採択されています。

このように整理すると、安全保障理事会の採択はすべて否決でおあり、国連総会での決議は可決されていることがわかります。

これを、なぜこのような結論になったのかを国連憲章との関係で確認すると、

前回の記事で触れた国連憲章27条に基づき、常任理事国に拒否権があるため、常任理事国同士で意見対立が生じる今回のウクライナ侵攻については、常任理事国の拒否権により決議が採決に至らなかったということになります。

他方で、国連総会の決議には、そのような拒否権の規定は定められていません。

国連憲章18条をみると

「1 総会の各構成国は、1個の投票権を有する。

2 重要問題に関する総会の決定は、出席し且つ投票する構成国の3分の2の多数によって行われる。重要問題には、国際の平和及び安全の維持に関する勧告、安全保障理事会の非常任理事国の選挙、経済社会理事会の理事国の選挙、第86条1cによる信託統治理事会の理事国の選挙、新加盟国の国際連合への加盟の承認、加盟国としての権利及び特権の停止、加盟国の除名、信託統治制度の運用に関する問題並びに予算問題が含まれる。

3その他の問題に関する決定は、3分の2の多数によって決定されるべき問題の新たな部類の決定を含めて、出席し且つ投票する構成国の過半数によって行われる。」

と規定されていますので、こちらは、構成国1国1票の多数決で決議が採択される仕組みとなっています。

なお、安全保障理事会の決議と、国連総会の決議とでは、前者には法的拘束力があるが、後者には法的拘束力がないといわれています。

安全保障理事会の決議に法的拘束力があるといわれる理由は、一般的に国連憲章25条に

「国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従って受諾し且つ履行することに同意する。」と規定されていることによると説明されています。

ただし、日本国内で法律が法的拘束力をもつ場合には、その法律に違反がなされれば、刑事罰をもって強制をすることができますし、民事分野でも民事執行などにより、強制的に目的を実現する方法が用意されています。

他方で、国連については、そういった執行機関が制度的に整備されているわけではありません。

「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため」に必要がある措置については、国連憲章7章39条以下に定められています。

安全保障理事会は、

①国連憲章39条に規定されている「勧告」すること、

②国連憲章40条により「必要又は望ましいと認める暫定措置に従うように関係当事者に要請」すること、

③国連憲章41条により「兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請する」ことができます。

基本的に、最初は勧告又は要請を中心に進めていくわけです。

なお、要請といっても国連憲章41条で要請できる措置には「経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。」とされていますので、かなり踏み込んだ対応を要請できることがわかります。

そして、国連憲章42条では「安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。」と規定されており、

39条から41条の勧告又は要請によって問題を解決できないときには、国連憲章に基づいて安全保障理事会の決議に基づく軍事行動が可能なようになっています。

このようにみると、勧告等のソフトな手続きから団体的に実行力のある強制的措置に進んでいく制度設計は、日本国内の行政法規の設計とよく似た仕組みになっています。

なお、今回のロシアのウクライナ侵攻については、大阪弁護士会でも、国連憲章や日本国憲法に言及しながら「ロシア連邦のウクライナに対する軍事侵攻に反対する会長談話」というものが出されていますので、興味のある方はご参照ください。

 

 

最近のニュースと国連憲章について

近頃、テレビをつけると、連日、ロシアとウクライナの間の戦争に関するニュースが流れています。

あらためて確認しなおすと、ロシア軍がウクライナに実際に侵攻を開始したのが2月24日のことだったようですから、かれこと、2か月ほど戦争状態が続いていることになります。

ニュースを見ていると、基本的にロシアを非難する報道が多く、また、ロシアの軍事行動を抑制できない国連の機能不全などについても語られています。

本来なら「国連総会」「安全保障理事会」「常任理事国」といったキーワードは、中学・高校の公民の授業で学んでいるはずなのですが、日本で生活している一般人の自分にとって、国連の話は、宇宙ステーションの話と同じくらい遠い世界の話に感じられて、あまり国際関係に関する制度や法律を真面目に勉強をしたことがありませんので、ニュースで国連決議が採択できないなどと報道されているのを見ても、具体的にどういう制度の話をしていて、何ができないから機能不全だといわれているのかが理解できませんでした。

そこで、弁護士として、日本国内の法律を扱う仕事が中心であるとはいえ、国際関係に係る法律やルールを知っておくのも重要かと思い、これを機会に国連の仕組みについて、政治的な観点ではなく、法律的な観点から少し勉強してみることにしました。

このブログを読んでくださっている方も、高校の授業の復習と思って読んでいただけると、ウクライナのニュースなどがより分かりやすくなるのではないかと思います。

ニュースでみる、国連の決議の話などを理解するうえで、一番わかりやすい方法は、国連憲章というものを読んでみることだと思います。

国連憲章とは、国際連合に係る基本的な事項を定めた条約であり、加盟国の権利や義務を規定するとともに、国連の主要機関や手続きを定めているとされています。

簡単にいってしまえば、日本国の国の在り方を決めるのが日本国憲法であるとすると、国際連合に加盟する国々の間で作られる国際社会の在り方を決める根本ルールが国連憲章であるということになります。

日本国憲法九十八条では、「①この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。② 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とされていますので、基本的に、憲法>国際条約>個別の法律ルールという優劣関係があると考えられています。

国際連合ができたのは第2次世界大戦が終わった1945年のことですが、日本が国際連合に加盟したのは1956年のことですので、1956年以降は、国連憲章は、あまり意識されることはありませんでしたが、日本人にも適用される規範となっていたことになります。

この国連憲章では、様々なことが定められていますが、日本国憲法に国会や内閣に関するルールが定められているように、国連憲章7条では、「国際連合の主要機関として、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所及び事務局を設ける。」として、国連の基本的な機関の設計が定められています。

このうち、今回のような戦争があった際に一番関係してくるのが「安全保障理事会」です。

安全保障理事会は、国連憲章の第5章23条以下に、いろいろなルールが定められています。こういった「機関」について細かな条項の文言を全部しっかり読むのはなかなか、骨が折れる仕事です。

まず、どんな機関かという点を理解するために、国連憲章23条1項をみると「安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。」と書かれています。

ここでポイントを整理すると、①安全保障理事会は15か国で構成されていること、②その15か国のうち中国、フランス、ソ連(現ロシア)

、イギリス、アメリカの5か国は常に理事会のメンバーになること、③15か国のうち、残りの10か国は総会の選挙で決めること、がポイントとなっています。

 

そして、このように構成される安全保障理事会が、どんな役割を果たすのかというと、国連憲章24条1項では「国際連合の迅速且つ有効な行動を確保するために、国際連合加盟国は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を安全保障理事会に負わせるものとし、且つ、安全保障理事会がこの責任に基く義務を果すに当って加盟国に代って行動することに同意する。」と記載されており、国際平和及び安全維持に関することを安全保障理事会が担うとされています。

では、国際平和及び安全維持に関する仕事をするのかというと、これは、国連憲章の第6章以下に記載されており、ここでその全部を記載することは困難ですが、様々な、要請や調査、注意喚起などをすることが規定されています。

そして、そのような安全保障理事会の仕事をする上で、どのように安全保障理事会が意思決定をするかというと、国連憲章の27条で、「①安全保障理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。②手続事項に関する安全保障理事会の決定は、9理事国の賛成投票によって行われる。③その他のすべての事項に関する安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる。但し、第6章及び第52条3に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない。」とされています。

ここで、ポイントをあげると、まずは①1国1票の投票制になっていること、②手続き事項に関する決定と、その他の事項に関する決定とで意思決定の条件が異なっていること、③手続き事項については、15か国中9か国の賛成投票で決定がされること、④その他の事項について、「常任理事国の同意投票を含む」9か国の賛成投票が必要とされていることです。

この常任理事国の同意投票を含むと記載されているため、常任理事国が同意しないと、手続き事項以外については、安全保障理事会は決定ができないこととなります。

常任理事国が「拒否権」をもっているということがニュースでいわれていますが、具体的にその「拒否権」の根拠をみると、国連憲章のこの部分が拒否権の根拠ということができます。

国連憲章の話は、かなり話がながくなるので、引き続き、本ブログで整理してご紹介していきたいと思います。

大阪法律事務所の立地

弁護士法人心では、お客様が事務所にお越しになりやすいように、

出店地域の基幹となる駅の近くに事務所を設けております。

大阪では、JR大阪駅、御堂筋線梅田駅、谷町線東梅田駅、東西線北新地駅、四ツ橋線西梅田駅などからアクセスのよい、大阪駅前第3ビルの30Fに事務所がございます。

JR大阪駅や御堂筋線梅田駅からお越しのお客様は、まずは、駅の一番南側の出口からでていただき、地下通路をとおってディアモールを経由して、地下通路の案内板に従って大阪駅前第3ビルに来ていただく方法がおすすめです。

ただし、梅田の地下街は慣れていない方にとって結構迷いやすい場所ですので、地理感がない場合には、大阪駅から阪神のデパートの方にわたっていただくとわかりやすいかもしれません。阪神のデパートの南が大阪駅前第4ビルであり、その次が、大阪駅前第3ビルになります。

谷町線東梅田駅からお越しのお客様は、谷町線東梅田駅の一番南側の改札を出ると、目の前が大阪駅前第4ビルの入り口ですので、そこから第4ビルの地下1階をとおって、大阪駅前第3ビルまでお越しいただくのが一番わかりやすいのではないかと思います。

東西線北新地駅は駅を出てすぐ目の前が、大阪駅前第2ビルであり、四ツ橋線西梅田駅も南側の改札をでると目の前が、大阪駅前第1ビルです。

大阪駅前第1ビル、大阪駅前第2ビル、大阪駅前第3ビル、大阪駅前第4ビルは、地下でつながっていますので、まっすぐ大阪駅前第3ビルまでお越しいただくことができます。

なお、大阪駅前第3ビルには、18階まで用のエレベーターと、18階以上用のエレベーターの二種類がございます。

弁護士法人心大阪法律事務所の所在階は30階と高層階の方であるため、お乗りいただくエレベーターをお間違いになりませんようお気を付けください。

弁護士法人心大阪法律事務所の地図等については、こちらもご覧ください。

個人再生をするときに影響のでる住宅ローンの借り方

多くの人にとって、人生で一番大きな買い物は自宅だと思います。

現金一括で自宅を購入する方はまれであり、通常は銀行から住宅ローンを借りて、長い年月をかけて返済をしていきます。

その途中で、いろんな事情で、住宅ローンの返済が苦しくなってしまうこともあります。

住宅ローンが払えなくなれば、当然、自宅を手放すことになるのですが、

例えば、住宅ローンだけはぎりぎり払えるけど、その他の借金は約束通り返済するのは無理だという状況の債務者にとって、効果的な債務整理の方法が個人再生という方法です。

個人再生という方法で債務整理をすると、上手くいけば住宅ローン以外の借金を大幅に減額したうえで、住宅ローンだけは約束通り支払いつづけて自宅を手元に残すことができます。

このような制度のことを、個人再生の住宅資金特別条項といいます。

もっとも、この住宅資金特別条項は、法律上使える場合が制限されています。

法律の要求する条件の一つに、自宅の土地建物に、住宅ローン債務者の住宅ローン以外の後順位抵当権がついていないことという条件があります。

例えば、家を買って住宅ローンの抵当権を家に付けただけなら問題ないのですが、例えば、そのあと事業資金などで銀行から大きな借り入れをする必要があり、そちらの借金についても自宅に抵当権を付けたというような場合、住宅資金特別条項の利用は認められないため、自宅を手放さざるを得なくなります。

また、例えば夫婦で協力して住宅ローンを借りる場合にも、借り方によって住宅資金特別条項の利用できるかどうかの結論が変わる可能性があります。

例えば、夫婦がお互いに連帯債務者となって3000万円の住宅ローンを組んで、一本の債権として、住宅ローンを返済していく場合には、仮に夫婦のどちらかだけが個人再生をしなければいけないとなっても、夫婦どちらからみても、自分の借金について自宅に抵当権がついていることになりますので、住宅資金特別条項の利用が認められます。

他方で、例えば、3000万円の住宅ローンを夫が1500万円、妻が1500万円に分けてそれぞれ組んだ場合、夫一人で個人再生をしようとしたとき、自宅には、夫の住宅ローン以外の別のローンの抵当権がついているので、形式的には住宅資金特別条項の利用条件を満たさないのではないかという問題が生じてしまいます。

実際の裁判所の運用では、こういう場合でも、夫婦そろって個人再生を申し立てるようにした場合には、住宅資金特別条項の利用を認めて自宅を手放さなくてもよいような対応をされることが多いですが、借り方の選択一つで大きな違いが生じる可能性もある部分ですので、これから住宅ローンの借り入れをお考えの方は、ご参考にしていただければと思います。

個人再生についてご相談ご希望の方は、お気軽に弁護士法人心へご相談ください。

弁護士法人心大阪法律事務所の債務整理に関する専門サイトはこちら

74期司法修習について

12月というと、例年ですと新人の弁護士が事務所や弁護士会に入ってくる季節です。

毎年、5月に司法試験が実施され、9月に合否が発表され、その後約1年の司法修習を経て、

最後に翌年の11月に2回試験という最終試験を受けて、12月に2回試験の合否を確認して弁護士としての仕事が始まるというのが、一般的なスケジュールです。

しかし、今年は、昨年の司法試験や司法修習のスケジュールが、新型コロナウイルスの影響で延期になっていため、例年とは異なります。

昨年度の司法試験合格者の修習期74期ですが、74期の司法修習は、4月から始まり4月に終わるスケジュールになっているようです。

最近、新型コロナは様々なところに爪痕を残したなと感じた出来事の一つです。

年金について思うこと

テレビなどをみていると、社会の高齢化との関係で、年金制度について、

「今の若い世代の人は、支払った年金よりも貰える年金額のほうが少なくなる。」

という説明を目にすることがあります。

確かに、現行の年金制度を前提に、年齢階層別の人口分布をみると、

老齢年金の支払額と受給額のバランスは、そういう結論になるのかもしれません。

ただし、弁護士として仕事をしていると、このような年金制度の一側面の問題について説明を聞いて、

「だったら、国民年金なんて払うだけ損じゃないか。払うのをやめよう。」という結論に至るのは、待っていただいた方がいいと思います。

もちろん、年金制度の趣旨である世代間扶養という理念が大事だからということもありますが、

それ以上に、年金を払わないことは、若い現役世代の方自身にとっても、リスクがあるからです。

「年金」という言葉を聞くと、どうしても「年をとってからもらうもの。」というイメージが強いですが、

年金と一口に言っても、この「老齢」を理由に支給される年金以外にも、「障害年金」や「遺族年金」といった年金もあることを忘れてはいけません。

特に、どんな人でも、不慮の事故や病気で障害を抱えて生活が苦しくなる恐れがあるので、もしもの時の備えとして、この「障害」に関する年金の重要性を、忘れてはいけません。

障害年金は、老齢年金のように、年をとらないともらえない年金ではなく、一定の基準を満たす重い障害を負ったときに支給される年金です。

国民年金や厚生年金に加入して保険料を納めていれば、重い障害を負って働けなくなった場合でも、障害年金を受給することで、年間約80万~90万円程度の公的な年金を受け取ることができる可能性があります。

厚生年金加入者の場合には、さらに年金額が高い可能性もありますし、また、障害を負った方に扶養家族がいる場合には、さらに年金額が加算できる可能性もあります。

この点で、障害年金は、もしもの時のセーフティーネットとして、軽視できない価値があります。

ただし、障害年金は、一定期間以上の保険料の「未納期間」があると、受給が認められなくなってしまいます。

年金制度の根本には、「義務を果たさないと権利を喪う」という国の厳しい態度があるということです。

そのため、「どうせ支払った分よりも少ない金額しかもらえないのだから。」という理由で、安易に年金保険料の納付を怠ってしまうと、不慮の事故で重い障害を負ったときなどに、本来、受けられたはずだった障害年金の保障を受けることが出来なくなってしまう恐れがあるのです。

ただし、収入が不安定な状況にいるときは、国民年金の保険料を払うことが経済的に、どうしても難しいという場合もあると思います。

最近では、コロナの流行で営業自粛を迫られた自営業の方や、職を失った方などもたくさんいるはずですから、それこそ、「年金なんか払っている場合か!」と思うような、大変な経済状況になっている方も少なくないと思います。

ただし、そのような「お金がなくて年金なんか払っていられない。」というときでも、かならず、保険料の免除や納付猶予の申請を役所で行うようにしていただければと思います。

詳しくは、インターネットなどで「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」というキーワードで検索していただければ、厚生労働省のホームページなどで詳しい案内をみることができますが、簡単にいうと、お金がなくて年金保険料を支払えない時でも、きちんと申請をして手続きをしておけば「年金払えなくても仕方ないよね。」と国の方でも認めてくれる制度が用意されているということです。

そして、この年金保険料の「免除」や「納付猶予」が認められていれば、実際に年金保険料を納めていなかったとしても、「未納期間」とは評価されないことになります。

そのため、こういった手続きさえしっかりしておけば、お金がなくて年金保険料を納めることが出来ない場合でも、障害年金の保障を受ける権利を喪わずに済むことになります。

「免除」や「納付猶予」の申請をするだけであれば、タダです。

タダでできる手続きを怠って、障害年金の保障を受ける権利を喪うのはもったいない話です。

今は年金保険料を払う余裕がないというときでも、役所にいって「免除」や「納付猶予」の申請をするよう気を付けていただければと思います。

成人年齢の引き下げについて

民法の改正に伴って、契約に関するルールや、法定利息の計算などにはすでに改正の効果が生じています。

そして、来年(2022年)には、成人年齢も20歳から18歳に引き下げられることとなります。

成人年齢が18歳になるからといって、すべてが18歳から可能になるわけではなく、

飲酒喫煙など医学的観点から健康のために規制されている制限は引き続き20歳からとなります。

その他にも、例えば養子をとることは20歳からでないとできないなど、18歳と20歳と、いつから制限がなくなるのかは、個別に確認しておかないといけません。

分かりやすく全部20歳なら20歳、18歳なら18歳と一律に決めておいてくれればわかりやすいように思いますが、

考えてみれば、これまでも、バイクの免許と女子の婚姻は16歳から、普通自動車と男子の婚姻は18歳から、中型以上の免許と選挙権と親の同意のない婚姻は20歳からというように、一律ではない年齢制限の中で暮らしてきたのですから、すべての年齢制限を一つの年齢を区切りにしようとする方が無理があるのかもしれません。

ただ、今回の成人年齢の引き下げにともなって、弁護士として注意をしてほしいと思うことは、未成年を理由とした契約の取り消しが、18歳以降できなくなるということです。

18歳というと、地方から大学に進学するケースなどでは、はじめて一人暮らしを始めるタイミングと重なります。

育ち方にもよるのかもしれませんが、普通に親元で生活して高校を卒業したばかりの18歳の方は、あまり法律や社会のことを知らないように思います。

私自身も、三重県から東京にでて、18歳から一人暮らしを始めましたが、当時は、民法もクーリングオフという言葉も、消費者被害の話なども、ほとんど知識がない状況でした。

そして、そんな純真無垢な状況で東京の街を歩いていると、ラッセンの絵を勧められたり、神様の教えを学ぶよう勧められたり、マルチ商法の勧誘を受けたりと、様々な契約の勧誘を受けたものです。

ラッセンの絵も、宗教も、本当にその価値とコストを理解して契約するのであれば何の問題もありませんが、正直、18歳の自分に、その判断を十分にできるだけの能力があったかといわれると、なかったように思います。

私の場合は、当時、哲学を志す偏屈な学生でしたので、性格的要因で、それらの勧誘をことごとく断りましたが、今振り返ってみると、消費者問題にかかわるような状況に陥るきっかけは、たくさんあったなと思います。

民法改正による成人年齢引き下げまでは、20未満であれば未成年者の契約を理由にした取り消しが主張できましたが、改正後はできなくなりますので、十分にお気を付けください。

 

 

 

 

Eラーニング

新型コロナの流行以降、いわゆるソーシャルディスタンスというものの徹底が、各所ではかられております。

コンビニでの買い物や、商業施設での買い物などでもそうですし、タクシーなどでも、換気やアクリル板が徹底されるようになりました。

弁護士の仕事でも、面談や裁判所の手続きがどんどんとリモート化されていることは以前も紹介させていただきましたが、

弁護士の研修もリモートで行われることが多くなりました。

弁護士以外の方は、あまりご存じではないかもしれませんが、弁護士会では、各種の法律や弁護士業務に関する研修を開催しています。

弁護士倫理等の参加が義務付けられる研修もあれば、任意参加の研修もあります。

これらの研修も、以前は、大きな会議室や講堂を利用して行っていましたが、どんどんとEラーニングに置き換わっています。

Eラーニングになってみて、よかったのと思うのが、席の近い遠いなどでパワーポイントが見えにくかったり、会場の暖房が効きすぎていたり、反対に寒かったりというような、環境に左右されず、自分にとって最適と思える環境で研修を受けることができるところです。

日常業務で、ついつい任意参加の研修からは足が遠のきそうになりますが、Eラーニングを活用して、少しでも学べるところは学んでいきたいと思います。