台風

今年は、台風が例年よりも多いように思います。
普段は、人通りも多く賑やかな名古屋駅周辺ですが、今日は、多くの商店がシャッターをしめ、人通りもまばらでした。
テレビでニュースを見ていても、車がひっくり返るシーンなど報道されていました。
このような、激しい台風が来ると、自宅の植木や屋根の一部が飛んで行って、隣の家を傷つけてしまうなどのトラブルが起きることもあります。
自分の所有物によって、他の人の身体や所有物を傷つけた場合、台風のような自然災害が
原因で起きた出来事についてまで責任を問われることは
あるのでしょうか。
原則として、自然災害による損害は、加害者が存在しないものであり、法的な賠償責任をだれかが問われることはありません。
ただし、例えば、屋根の修繕を怠っていた結果、周りの家の屋根は無事だったのに、自分の家の屋根瓦だけが風で飛ばされて、近所の家屋を傷つけたというような場合には、民法717条の工作物責任を問われて損害賠償をしなければならない場合もありえます。
特に、相続財産として、人の住んでいない不動産を相続された方は気を付けていただいた方がよいかと思います。
相続財産の不動産を空き家のまま、適切な管理をせずにしていた場合には、今回のような台風で隣家に損害を生じさせた場合、相続人が工作物責任を問われるおそれもあります。
台風も怖いですが、台風から派生する近隣トラブルは、さらに怖いものですので、日ごろから所有不動産の管理は、もれなく、徹底しておくべきだと思います。

専門用語

相変わらず,暑い日がつづいております。

この酷暑の中,先日,自室のエアコンが故障いたしました。

安息の地であるべき,我が家が,一瞬にして蒸し風呂のような環境に変貌し,

眠れぬ夜を過ごしました。

エアコンの故障は,不思議と翌日には自然に治っていたのですが,大家さんにその話をしたところ,年式も古くなっているので交換をしてくださることになりました。

エアコン交換には,私自身が立ち会ったのですが,日頃,エアコンの構造や仕組みなど気にもかけていなかったため,工事の様子は,実に興味深いものでした。

冷却のためのガスを通す管など,「あっ,これが,ここから,ここにつながっているのか!」と思うような,面白さがあります。

さらに,興味深かったことは,工事に来てくださった電気屋さんの会話です。一人はベランダにいって室外機の配線等を行い,一人は室内でエアコンに管を取り付けたりしていたのですが,その時の二人の会話は,私にはほとんど理解ができませんでした。

もちろん,お二人とも日本語で会話をされているのですが,使われている単語が,全く違います。「ドレーン,ブイエー,アース,平曲がり」など聞いたこともない言葉で,エアコン設置の方法や作業手順を打ち合わせされていました。

餅は餅屋という諺もありますが,やはり,どの業界にも,その業界特有の専門用語や言い回しがあって,業界外の人間には,なかなか理解しにくいものなのだなとあらためて認識しました。

そして,ふと自分自身の仕事を振り返ってみると,お客様に対して,弁護士業界の専門用語や業界用語を,不用意に使っていることが少なくないなと反省しました。

「LAC」「訴訟」「遅損金」「原告」「訴外の第三者」など,何気なく使ってしまう言葉も,おそらく法律になじみのないお客様にとっては,非常に理解しにくいだろうと思います。

あらためて,専門用語の扱いには注意をしなければならないと思いました。

酷暑

連日,酷い暑さが続いております。

人間の体温を超える気温の日も少なくありません。

この夏の暑さというような自然現象は,一見すると法律と何の関係もないようですが,

意外なところで,法律と関係してきます。

たとえば,このような暑さがつづくと,怖いのは熱中症などによる健康被害です。

そして,職場での労働者の安全と健康については,労働安全衛生法という法律が規律を設けております。

また,労働安全衛生法のなかで繰り返し登場するキーワードに「快適な職場環境の形成」という言葉あります。

労働安全衛生法では,事業者の労働者に対する安全管理として,労働者の安全と健康が確保され,快適に仕事が出来る環境を整備するように求められているのです。

とはいえ,「快適な」というだけでは,漠然としすぎていますので,より細かな規律については,法令・通達によって定められています。

この労働安全衛生法をうけて定められた細かなルールについてはは,中央労働災害防止協会安全衛生センターのホームページなどで確認できる事務所衛生基準規則で確認できます。

この規則の第4条では,「事業者は、室の温度が十度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない。」,「事業者は、室を冷房する場合は、当該室の気温を外気温より著しく低くしてはならない。ただし、電子計算機等を設置する室において、その作業者に保温のための衣類等を着用させた場合は、この限りでない。」と定めています。

このように,快適な職場環境として,冷房するときは気温を外気温より著しく低くしてはならないと定められています。

そして,続く第5条では,空調設備のある部屋では,「 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。」と具体的な温度設定まで定めています。

このように,法律というものは,その法律をうけてつくられた法令や通達でより細目が定められている仕組みとなっているので,法律を実際に使う場面では法律だけでなく法令・通達まで把握することが必要となります。

しかし,第4条で「外気温より著しく低くしてはならない。」とされている一方で,第5条では「室の気温が十七度以上二十八度以下」とされていますが,今年の酷暑のように,外気温が二十八度よりかなり高くなる場合には,この規定をどう整合的に解釈したらいいのか悩んでしまいそうです。

街の風景と法律による規制

街を散歩したり,自転車で走っていたりすると,場所によって街の風景が,随分違うものだなと気付くことがあります。

たとえば,名古屋駅の周辺には大きなビルが立ち並んで大都会という印象を受けますが,太閤通りの南側にわたって黄金駅の方に向かおうとすると,途端に,平屋や2階建ての住宅ばかりにになり,いかにも住宅街という風景になります。

あるいは,太閤通りを中村公園駅の方まで移動する場合,太閤通り沿いには,かなり大きなビルが立ち並んでいるのですが,一本南側や北側の道路を通ると,こちらもいかにも住宅街という風景です。

単純に,建物に対する需要を考えるのであれば,これはちょっと不思議なことに思えます。

太閤通り沿いに大きなビルを建てて,そこに賃借人が入るのであれば,そこから数十メートルしか離れていない一本裏の道にビルを建てても,一定の賃借人が見込めるように思われます。

10階建てのマンションの裏に7階建てのマンション,その裏に5階建てのマンションというように,大通りから段階的にビルの規模が小さくなるというのが自然な形のように思われますが,実際には,大通りに面しているかどうかで,建物のの大きさに,大きな落差が生じています。

このように,街の風景に大きな違いが出来る理由として,都市計画法の用途地域による規制があげられます。

都市計画法は,都市の健全な発展等を目的として制定された法律です。

その都市計画法の中では,都市部について,全部で12種類の用途地域というものを定めて,その用途地域ごとに,建設できる建物の種類や規模等を規制しているのです。

先ほどの,名古屋駅周辺の風景についても,名古屋駅付近(裏側)では,おおむね太閤通りを挟んで北側は商業地域といって,建てることのできる建築物の規模に制限が少ない地域であるのに対して,太閤通りの南側では,多くの場所が,第一種住居地域となっていて,建てることのできる建物の規模等の制限が大きい地域となっています。

また,太閤通り沿いの地域も,太閤通りに面した箇所は,商業地域となっているのですが,そこから一歩,外れると第一種住居地域となっています。

このように,見慣れた街の風景にも,実は,法律による規制が深く関わっています。

なお,名古屋市に住んでいらっしゃるかたであれば,自分の住んでいる地域が,どの用途地域に該当するのかついては,

「名古屋市 用途地域」というキーワードでインターネットで検索していただければ,すぐに確認することができますので,一度確認してみると面白いかもしれません。

 

 

「辯」護士

弁護士の仕事をしていると,数多くの漢字を用います。

「縷々述べる」,「畢竟,独自の見解を述べたものにすぎない。」,「蓋し」など,こういった言葉遣いに慣れていない方からすると,

ちょっと意味も読み方も分かっていただけないのではないかという漢字が,法律文書では数多く使われています。

最近の裁判官の書く文書や,弁護士の作成する書面で,このような古風な表現を使うことは少なくなりましたが,

それでも,昔の裁判例などを参照する際に,このような表現を見かけて,懐かしく思います。

このような,漢字のほかに,古い戸籍など,かなり時間をさかのぼった資料を参照しなければならないときには,旧字体の壁に直面することもあります。

旧字体とは,戦前に使われていた漢字の書体のことで,現在の漢字の書体に比べて非常に複雑な文字になっています。

たとえば,「體」という文字を,ぱっと見て読むことが出来るでしょうか。

骨が豊かとかかれいて,どこかホラーな雰囲気の漂う文字です。

この文字は,現在の漢字でいうと「体」という文字にあたります。

現代であれば,わずか7画の文字を,戦前は23画もかけて書いていたのですから,考えてみると,戦前の日本というのは,随分のんびりしていたのだなと思います。

現代の感覚からすると,旧字体というのは不便で非効率なように思いますが,他方で,旧字体のほうがしっくりくる場合もあります。

たとえば,弁護士の「弁」という字は,旧字体では「辯」と書きます。

いまでも,業務用の印鑑や名刺などで「辯護士」と表記されている先生もいらっしゃいます。

この「辯」という文字は「辛い」と「辛い」という言葉の間に「言う」という言葉あり,

なんというか,一文字で弁護士の日々の仕事風景を連想させてくれます。

仕事で使う略称について

どのような業界にも正式名称と,その略称の使い分けがあるかと思います。

弁護士の仕事をするうえでも,そのような略称は数多く使います。

たとえば,法律名でも「自動車損害賠償保障法」のことを,そのまま読み上げることは稀であり,

通常は,「自賠法」と省略して呼びます。

「対人賠償責任保険によって対応」というときも,簡単に「対人対応」と会話ではいいます。

法律相談の際にも,ついつい,このような略称をつかってしまうことがありますが,

相談に来られているお客様からすると,ただでさえ馴染みのない法律や保険の用語を,さらに省略されては,

理解しづらくて仕方がないと思いますので,極力,相談の際には略称の使用は避けるように心がけたいと思います。

反対に,略称を使用されて弁護士の側が困惑してしまうこともあります。

典型的に多いのは,医学用語の略称です。

「 activities of daily living」は直訳すると「日常生活動作」となり,「ADL」と略して表記されます。

このくらいであれば,カルテ等に記載があっても,そこまで抵抗感はないのですが,なかには解釈を迷う略称もあります。

「NB」という略称は「neourogenic bladder」つまり「神経因性膀胱」の略称であるとともに,「nothern blotting(ノザンブロッテイング)」というDNA解析の手法の一つの略称であり,さらに「Nichts Besonders」というドイツ語の略称でもあります。

このどちらの意味で表記されているのかは,文脈から判断することになるのですが,医学の専門家でない弁護士にとっては容易ではありません。

また,「Nichts Besonders」の解釈についても「Nichts」はドイツ語で否定を意味する言葉であり,「Besonders」は「特に,特別に」という意味の言葉ですから,翻訳をみると「異常なし」と訳されることもあれば「特記すべきことなし」と訳されることもあるようです。

翻訳の仕方で,ニュアンスが異なってしまうこともありますので,証拠資料としてカルテが出てきたときには,苦労しながら読み込んでいかないといけません。

 

 

身近な法改正の話

法律は,一定の立法目的を実現するために社会のルールを定めたものですから,社会の状況が変わるにつてれて,適宜,改正が行われていくことになります。

民法や刑法のように,社会のルールの大枠を決めた法律は,簡単には改正できないですが,

最近,書店などにいくと民法改正に関する書籍がどんどんとふえてきていますが,民法というような基本的な法律の改正というのは,それだけ大きなインパクトのある出来事であるということです。

その他の,社会保障に関連する法律や,労働環境に関する規制,食品安全に関する規制などの法令は,比較的頻繁に法改正が行われます。

ニュースなどで「働き方改革」などのキーワードで,国会で議論がなされているのが放映されたりもしていますが,

あの手続きも,労働基準法等の労働関係法令の改正を巡る議論をしていることになります。

このように,細かな特別法も含めた日本の法律体系は,日々生き物のように新陳代謝をして変化していっています。

ただ,普通に生活しているだけでは,あまり関係することのない法律も数多くありますので,

法改正がなされたことに気付かないことも多いかと思います。

ここ数年の身近に法改正を感じられる例といえば,選挙年齢の引き下げなどが挙げられるかと思います。

私が弁護士になった頃は,選挙は20歳からでしたが,選挙年齢が18歳まで引き下げられました。

選挙年齢の引き下げの話を聞いた時は,大学生になったばかりの若い人が選挙になど行くのかな?と疑問に思っていましたが,たとえば第24回参院選の統計では18歳の投票率は51.3%にまでなるようで,これは20代,30代の平均を上回る投票率でした。

 

 

「弁護士事務所をどこにつくるか」と「にぼしの日」

街中を歩いていると,コンビニエンスストアを見かけることはよくありますが,

弁護士事務所を見かけることは,そんなに多くありません。

もちろん,絶対数が違うということが一つの理由だと思います。

また,弁護士事務所は,コンビニエンスストアのように,大きく看板をだしていないから気付かれにくいということもあります。

もう一つの理由としては,コンビニエンスストアに比べて,弁護士事務所のある場所には,地域的な片寄りがあるということがあると思います。

多くの弁護士事務所は,乗降客数の多い大きな駅の最寄りビルか,あるいは,裁判所などへのアクセスに優れた地域に密集しています。

コンビニで雑誌を立ち読みして帰る感覚で,家の近所で,仕事帰りにふらっと弁護士事務所に立ち寄ろうというお客様は珍しいでしょうから,

自ずとこのような,弁護士事務所の設けられている場所には地域的な片寄りがでてきます。

弁護士法人心の名古屋駅法律事務所も,名古屋駅の新幹線出口を出てすぐのビルに事務所を構えております(弁護士法人心名古屋駅法律事務所のアクセスページ)。

弁護士事務所というと,厳めしいオフィスビルの一角にあるイメージが強いかもしれませんが,

弁護士法人心の名古屋駅法律事務所の1階下のテナントは「らしんばん」というアニメ関係の商品を扱うお店がはいっています。

話は変わりますが,本日は,バレンタインデーになります。

こちらのお店がエレベーター内に掲示しているポスターのなかに,「バレンタインデーはやりません。煮干しの日キャンペーン」と書かれていました。

「煮干しの日?」と思い調べてみたところ,2月14日は,「1」を「ぼう(棒)」とかけて,「に=2 ぼ=1 し=4」という解釈のようです。

世の中には,自分の知らない,いろんな記念日があるものだと関心しました。

ちなみに,料理などを普段なされない方のために,補足をいたしますと,煮干しというものは,一般的にイワシなどの小魚を乾燥させた食材です。

よくスーパーの乾物コーナーで鰹節の隣に並んでいる,小魚いっぱいの袋があると思いますが,あれが煮干しです。

煮干しの歴史は古く,江戸時代頃には,現在の煮干しの原型になるような食品が作られていたようです。

栄養価も高く,DHAなどに加えて,カルシウムやビタミンB1等も豊富と紹介されていました。

そういえば,昔,食費を節約するために,煮干しをそのまま齧っておかずにしていたことがありましたが,割と健康的な食生活だったんだなと思います。

今年のバレンタインデーは,チョコレートではなく,久しぶりに煮干しを齧ってみようかと思います。

 

 

 

身近な詐欺の話

食べ物の好みに,そば派か,うどん派かという話があります。

関東は,そば派が多く,関西でが,うどん派が多いとききます。

名古屋は,ちょうど東西の中心にたっていますが,きしめんが人気であることを考えると,どちらかというと,うどんよりなのでしょうか。

そば,うどんといえば,先日,テレビで,「時そば」という演目の落語を見ました。

蕎麦屋でそばのお勘定を上手に誤魔化す人物と,

それを真似しようとして失敗する人物の対比をコミカルに描いた,落語の有名な演目の一つです。

そのお勘定の誤魔化し方は,十六文のそばの代金を支払う際に,

一文銭16枚を「1枚,2枚,3枚・・・8枚」と言いながら,

一枚ずつ手渡ししていく途中で,

「いま何時?」と店主にきき

「9つです」と返事があった後に,

「10枚,11枚・・・」と,9枚目の一文銭を渡さずに誤魔化してしまうというものです。

ちなみに,上方落語では同様のお話が「時うどん」として存在しているようです。

このようなところにも,そば派の関東,うどん派の関西という違いがあるのかと興味深く思います。

 

一文というと,現在の貨幣価値では,おそらく10円20円程度だと思われますので,

冷静に考えてみると,そこまでして誤魔化す方が大変だなと感じる金額ですが,

落語家さんの演じる,勘定をごまかす際の掛け合いが,実に軽妙で面白いところが,この落語の見どころです。

ちなみに,この落語を法律の側面から考えると,登場人物には詐欺罪が成立するものと考えられます。

勘定をごまかす意図をもって,八枚目まで一文銭を支払ったところで,

「いま何時だ?」と店主に質問して,「9つ」と答えさせることで,9枚目の一文銭が既に支払われたと錯誤に陥らせ,

1文の支払いを不法に免れたことになるからです。

実際の生活では,そもそも,こんな騙し方で騙されてくれる,お蕎麦屋さんはいないと思いますが,

これと少し似た話で,私たちの日常生活で身近に詐欺罪が成立するケースとして,釣銭詐欺というものもあります。

たとえば,1000円の品を買う時に5000円札を店員に渡したところ,

店員が5000円札を1万円札だと勘違いして「1万円入ります。お返しは,9000円になります。」といって,

1千円札9枚を渡してきた場合を想像してみてください。

1000円の品を受け取った上に,5000円が9000円に増えて帰ってくるのであれば,大儲けです。

そこで,「店員さん,勘違いしているな・・・」と思いつつお釣り9000円を受け取ってしまう場合には,

詐欺が成立すると考えられています。

店員さんが勝手に間違えたのだから,受け取った人は悪くないという見方もありそうですが,

店員さんの勘違いをしている状態を利用して,そのままお釣りを受け取る行為には,不作為による詐欺が成立するとされています。

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新人弁護士

最近では,中途採用なども増えてきてはいますが,

一般的には,多くの会社では,大学を卒業したばかりの新人が4月にたくさん入社する採用の仕組みになっていることが多いのではないでしょうか。

これは,大学新卒を中心にした採用活動と,大学の卒業時期が3月に集中していることによるものと考えられます。

もっとも,弁護士の業界では,大学を卒業したあと,司法試験に合格し,さらに「修習」と呼ばれる研修期間を経なければ弁護士登録はできませんので,新人弁護士が新たに法律事務所で働き始めるタイミングは,その他の業種の企業とは異なります。

弁護士登録をするためには,司法試験に合格するだけでなく,修習期間を経て,最後に,修習の締めくくりとして「2回試験」と呼ばれる試験に合格しなければなりません。

その2回試験は,毎年11月下旬に試験が行われ,12月の中旬から下旬にかけて合否の発表がなされます。

そのため,毎年12月から翌1月が多くの新人弁護士が新たに弁護士として法律事務所で働き始めるタイミングとなっています。

今年も,やる気に満ち溢れた新人弁護士が数多く入所してくれました。

私も,彼らから刺激を受けながら,初心にかえって研鑽していきたいと思っております。

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子供の名前と戸籍

このブログを読んでくださっている方,一人ひとりに,お名前があるかと思います。

個人の名前というのは,日常生活のなかで身近でありふれた存在ですが,弁護士の仕事をしていると,名前についても,法的な観点から調べなければならないことが多々あります。

名前について,法的な話をいたしますと,

個人の名前は,戸籍法という法律に基づいて,父母,本籍地,生年月日等の情報と結び付けて,戸籍に記録されています。

戸籍法では,子供が生まれた場合,出生の日から14日以内に出生届をすることと定められており(戸籍法49条1項),その際に届け出をしなければならない事項として,父母の氏名や本籍地などを届出るように定められています(戸籍法49条2項)。

このように,戸籍制度が確立した現代では,個人の名前は,戸籍に記載されている本籍地等の情報とつながって公的に記録され,重要な本人確認の資料となるため,簡単に自分の名前が気に入らないからという理由で,名前を変えることはできません。

名前を変えようと思った場合には,名前を変えることに正当な理由がある場合で,家庭裁判所の許可を得たうえで届け出をする必要があります(戸籍法107条の2)。

このように現代では,個人の名前が出生とともに戸籍に記録され,その後は,よほど大きな事情がなければ一生同じ名前を名乗り続けることが一般的です。

しかし,歴史を振り返ってみれば,必ずしもこのような制度が一般的であったわけではなく,たとえば古代から近世にかけては,一生の間に名前を何度か変えるのが普通であった時代もあります。

たとえば,足利高氏が後醍醐天皇から「尊氏」の名を名づけられて名乗るようになった例のように,身分の高い人に縁のある一文字をもらって名前にするような例もありましたし,

通常は,幼名と成人した後では名前が変わるのが普通でした。

足利尊氏の例でいえば,幼名は又太郎で,成人して足利高氏,さらに足利尊氏と名前が変わっていったことになります。

名古屋は三英傑のうち豊臣秀吉,織田信長を輩出した土地ですが,織田信長にも吉法師という幼名が伝えられています。

豊臣秀吉については,出自の問題で,正確な幼名が伝えられているわけではないようですが,物語などでは日吉丸として登場することがよくあります。

幼名という制度も調べてみると面白いもので,戦国時代の大名の幼名では「~法師」「~丸」「~千代」といった,いかにも時代劇にでてきそうな名前が多いようですが,さらに時代をさかのぼると,紀貫之の幼名のように現代人の感覚ではなぜそのような幼名を?と思ってしまうような名前がつけられているケースもございます(興味のある方は,紀貫之の幼名をインターネットで検索してみてください)。

 

 

衆議院選と憲法改正論議

先日,台風のなか第48回衆議院選挙が行われました。

今回の選挙に関するニュースを見ていると,

「改憲勢力が議席の3分の2以上」ということを,大きく取り上げているのを見かけます。

憲法改正の是非については,極めて政治的話題ですので,

このブログで取り扱うのは適切ではないと思いますが,

今回のブログでは,

この「議席の3分の2以上」という数字がもつ意味についてお伝えできればと思います。

 

憲法96条では,「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」と定められています。

憲法は,国の最高法規だから憲法を変更しようと思った場合,衆議院と参議院の3分の2以上が賛成していないと,そもそも憲法を変えましょうという提案すらできないということです。

そして,いま,国会で改憲勢力と呼ばれる政党が3分の2以上を占めているということは,

「憲法を変えましょう。」という提案を,国会で改憲勢力と呼ばれる政党が行うことが出来るということを意味しています。

ただし,憲法96条に明記されているように,憲法の改正は,国会議員だけで議論して決定できるものではありません。

国会が,憲法を変えましょうと発議をした後には,国民投票によって,過半数が賛成しなければなりません。

国会議員が国会で憲法を変えましょうと発議をしても,その内容が,国民投票で賛成を得られなければ,憲法が変更されるには至らないことになります。

このように,憲法96条では

「憲法の改正に賛成するのか反対するのか?」という問題は,

国会議員だけにまかせておいてはいけない問題であり,

国民の一人一人が自分で考えて判断して,投票しなければならない問題であるとされているのです。

 

今回の選挙では,改憲勢力と呼ばれる政党の議席数が,選挙前よりも増加しました。

もしかすると,いよいよ憲法改正の発議が国会でなされる日が近付いているのかもしれません。

 

その時,自分は憲法の改正に賛成するのか,反対するのか,いまからしっかり考えておくべきなのかもしれません。

科挙

弁護士になるには,司法試験に合格をしなければいけないという事実は,広く知られていることだと思います。

新司法試験制度の導入などの司法制度改革のなかで,近年,司法試験の合格率はかなり上昇していますが,

一昔前は,合格率が数パーセントという,極めて合格することが難しい試験でした。

その当時の,司法試験を例える表現として「現代の科挙」という言葉があります。

ところで,この「科挙」というのは,どのようなものかご存じでしょうか。

科挙というのは,簡単にいうと,大昔の中国の公務員試験です。

科挙は,紀元600年頃に中国にあった王朝である隋という国で誕生した制度で,受験資格に制限はなく,だれでも受験できる試験で,国の官僚や役人になるための資格試験でした。

この科挙という制度は,隋という国が滅びたあとも,中国では近代にいたるまで採用されつづけた制度でした。

試験で公務員を選ぶというのは,現代の感覚からすれば「あたりまえじゃないか?」と思われるかもしれませんが,当時は,貴族が世襲で政府の要職を独占して,政治を牛耳るのが普通の社会でしたから,身分にかかわらず,試験に合格さえすれば官僚になれるという制度は,非常に画期的で平等な制度だったと評価できると思います。

科挙は,このように身分にかかわらず受験することができたため,極めて競争率の高い試験で,人類史上もっとも合格することが困難な試験ではないかといわれています。

試験に合格したときには,70代のおじいさんになっていた。試験に合格しなくて発狂して自殺した。そういうエピソードもたくさんあるそうです。

そのような事情から,「科挙」というのは,難関試験の代名詞のように使われる言葉となりました。

 

 

一番になれなかったもの

昨今,弁護士の業界も競争が激しくなり,

マーケティングなどのセオリーを踏まえた事務所経営の必要性が増しています。

弁護士法人心でも,社内でマーケティングの理論について話を聞く機会がふえてまいりました。

 

そのマーケティングに関する話のなかで,私が,最近なるほどなと思ったのが,「一番と二番の差は,二番と百番よりも広い」という話です。

たとえば日本で一番高い山といわれれば,「富士山」と誰もが答えられますが,二番目に高い山を知っている人は,ごく少数です。

このように,何かの分野において一番であることは,二番との間に圧倒的な知名度の差をつけることができることとなります。

 

このような,マーケティングの話を聴いていると,

「なるほどなあ」と関心する一方で,

私のような,偏屈な性格の人間は「いろんなランキングの二番は,どうなっているのだろうか?」ということに,好奇心が向いてしまいます。

そこで,今日は,私が調べた,いろんなものの二番を紹介してみたいと思います。

 

まず,日本で二番目に高い山は,山梨県にある北岳という山だそうです。

ちなみに,世界で二番目に高い山は,パキスタン・インド・中国にまたがるK2という山だそうです。

 

動物界最速の生き物は,チーターが良く紹介されます。

チーターは,動物ながら最高速度100kmを超える速度で走ることができるそうです。

では,二番目に足の速い動物はというと,プロングホーンという鹿に似た動物です。

チーターとプロングホーンは,現在では,住んでいる地域が異なりますので,自然界で最速対決をみることはできないようです。

 

世界一のお金持ちというと,マイクロソフト社のビルゲイツ氏が有名ですが,世界で二番目のお金持ちというのは,あまり話題になりません。

調べてみると,スペインのアマンシオ・オルテガ氏だそうです。この方は,ZARAの創業者だそうです。

 

ちなみに,いろいろ調べているうちに,自分の誤解に気付くことができたこともありました。

 

たとえば,世界で一番古い法典は,てっきりバビロニアのハンムラビ法典だとばかり思い込んでいたのですが,

実際には,ハンムラビ法典に先行して,ウル・ナンム法典という法典が存在していたそうです。

また,世界で一番長い首都名は,スリランカのスリジャヤワルダナプラコッテだとばかり思い込んでいました。

小学校の頃,よくこの地名を早口言葉のように唱えて遊んでいた記憶があります。

当時は,世界で一番長い首都名と教えられていたのですが,調べてみると,実は正式名称ではタイのバンコクの首都名が,世界で一番長い首都名になるそうです。

バンコクの正式名称は,このブログに書き写すのも諦めたくなるほどの長さでしたので,

興味のある方は,一度,「バンコク 正式名称」で検索してみてください。

名字

弁護士の仕事をしていると,相談者,依頼者,事件の相手方など,本当にたくさんの方々の名前を目にします。

時には,読み方に悩むような珍しい名字の方に出会うこともあります。

 

最近では,インターネット上で,名字が全国で何番目くらい多くある名字なのかを検索できるサイトがございます。

検索すると,特にどの都道府県にその名字が多いかが分かることもありますので,私も,時々,利用したりしています。

 

ちなみに,私の名字である「有田」は全国で3万2700人ほど,全国順位で 615位の名字だそうです。

「有田」の反対で「無田」という名字はあるのだろうかと思い,これも検索してみたところ,

全国で230人ほど,全国順位で 19874位で「無田」という名字の方もいらっしゃるそうです。

 

 

花火についてさらに調べてみました

前回,花火の法規制についてブログで紹介させていただきました。

ところで,子どもの頃,友達とあつまって学校の校庭や近所の公園などで,花火をして遊んだことがある人は多いと思います。

この時期,ドンキホーテなどで買い物をしていると,花火コーナーで花火が販売されているのも,よく見かけます。

このような,前回,花火は「火薬庫」で貯蔵しなければならなず,貯蔵方法も一定の技術水準をみたしていないといけないと火薬取締法に規定されていることを紹介しましたが,

子供の頃遊んだ花火を,法律で定められた技術水準を満たすような場所で保管していた記憶はありません。

これは,法律違反だったのでしょうか。

実は,火薬取締法では,花火を「煙火」と「がん具煙火」とに区別して定めています。

いわゆる,ドンキホーテの花火コーナーで販売されているような花火は,打ち上げ花火に比べて,小さくて危険性の低い花火です。

このような花火は,火薬取締法では「がん具煙火」として,より緩やかな規制が行われることとなります。

「がん具煙火」については,一定の数量を下回る場合には,貯蔵方法についても規制の適用除外が認められています(火薬取締法51条3項)。

花火

先日の夜,窓の外を見ていると,遠くで花火が打ち上げられているのが見えました。

夏の夜空を彩る花火というものは,何んとも綺麗で,見ていて楽しい気持ちになるものです。

ただ,花火をみても「きれいだなぁ。」という感想だけで終われないのが,弁護士の性分です。

花火について,気になることをいろいろと調べてみました。

たとえば,花火は火薬で打ち上げて爆発させていることは,なんとなく知ってはいましたが,

あの色鮮やかな色は,どうやって出しているのかでしょうか。

火薬自体が,燃焼の際に,色を帯びるのでしょうか。

あるいは,燃焼の際に発色のする物質を火薬と一緒に爆発させることで,色を出しているのでしょうか。

調べてみると,花火は,ストロンチウム,銅,アルミニウムなどの金属を燃焼させることで,色を出しているそうです。

金属によって,燃焼時の色が異なるため,うまく配合することで,あのような複雑な配色の花火を作ることもできるそうです。

それにしても,火薬に加えて,このような,金属を空中で燃焼させるわけですから,素人が勝手気ままに花火をつくって打ち上げては危険です。

そこで,花火の法規制についても調べてみました。

花火は,火薬取締法上で「煙火」と規定され,同法の規制を受けています。

たとえば,素人が花火を勝手に作ることは法律上認められておらず,花火の製造には許可(火薬取締法3条)を受ける必要がありますし,その許可を受けるには,製造方法や製造施設が一定の技術上の基準に適合していなければなりません。

また,花火を含む「火薬類(火薬取締法2条1項で定義されています)」は,原則として「火薬庫」に保管しなければならないと定められており,この「火薬庫」も法律で一定の技術上の水準を満たさなければならないと定められています(火薬取締法11条)。

このように,花火は,製造や保管について詳細な法律上の規制を受けながら,夜空に打ち上げられているのです。

国籍法について

先日,民進党の蓮舫代表が二重国籍問題で戸籍の公開をしました。

ニュースなどでは,賛否両論がだされているようですが,

ここでは,時事問題から一歩離れて,

そもそも日本における国籍取得がどのような仕組みでなされているかについて,紹介させていただきたいと思います。

まず,日本には「国籍法」という法律が定められており,その第一条には,「日本国民たる要件は,この法律の定めによるところによる。」と定められています。

つまり,だれが日本人で,だれが日本人じゃないかは,この法律で決めますよということです。

そして,国籍法第2条には出生によって日本国籍が取得できる場合が定められており,大半の日本人は,この規定によって日本国籍を取得していることになります。

具体的に国籍法第2条により日本国籍取得が認められる場合は以下のとおりです。

①出生の時に父又は母が日本国民であるとき。

②出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき。

③日本で生まれた場合において,父母がともに知れないとき,又は国籍を有しないとき。

このように③の場合のような例外的なケースはあるにせよ,国籍法第2条では,「日本人の子供」であるか否かを重視して,日本国籍の取得するか否かを判断しています。

もちろん,父母ともに日本人でない外国籍の人でも,帰化(国籍法3条)の手続きをとれば,日本国籍を取得できますが,日本人の子供に生まれて日本国籍を取得する場合に比べれば,国籍取得について高いハードルが科されることとなります。

このように,「日本人かどうかは,日本人の血筋を受け継いでいるかを重視して決めていく。」という立場を,法律の世界では血統主義と呼んだりします。

日本以外にも,韓国や中国など,東アジアの多くの国々は,この血統主義に基づいた国籍取得の法律を定めています。

他方で,世界には,出生地主義という「その国の中で生まれた人には,その国の国籍を認める。」という方法を選択している国もあります。

代表的な国では,アメリカ合衆国などが出生地主義を採用している国です。

そうすると,「日本人と韓国人の夫婦が,アメリカ合衆国で暮らしていて,子どもが生まれた。」というような場合には,その子どもは,日本人の血筋を継いでいるという理由で日本国籍を取得し,韓国人の血筋を継いでいるという理由で韓国籍を取得し,さらにアメリカ合衆国内で生まれたという理由でアメリカ国籍も取得できることになります。

このように,諸外国の国籍に関する法律の関係上,子どもが複数の国の国籍を取得することがありえるのです。

ただし,いつまでも複数の国籍を持ったままでいられるかというと,そういうわけではありません。

少なくとも,日本では国籍法14条が定められており,日本国籍を持っていて,さらに外国の国籍を持っている人は,一定の年齢までに,外国籍を放棄して日本国籍を選ぶのか,日本国籍を放棄して外国籍を選ぶのかを選択しないといけない仕組みになっています。

今年も半分が経過

早いもので,2017年も,もう7月になり,半分が経過しました。

つい先日,初詣に行ったばかりのように思っていたら,あと一月半ほどでお盆を迎えます。

年齢のせいもあるのかもしれませんが,1年が随分早くなってきたように思います。

1月に,今年中に,弁護士としての仕事の中で達成したい目標,仕事以外の勉強などで達成したい目標など,

いくつか考えて目標を立てたのですが,まだ,そのうちの半分も達成できていない現状です。

2017年も,折り返し地点を迎えた今,改めて気持ちを引き締めなおして,日々精進していきたいと思います。

千葉の県名

弁護士法人心が柏駅に柏駅法律事務所を設立し,千葉県にも出店したことをきっかけに,

千葉県についていろいろと調べてみました。

千葉県という県名の由来・成り立ちについてみると,

廃藩置県が行われた明治時代の初めの頃には「千葉県」という呼称で決定されていたようです。

行政区画としての「千葉県」の成り立ちが,明治時代にまで遡るとして,

「千葉」という地名の由来は,いつ頃まで遡るのでしょうか。

江戸時代には,現在の千葉県に匹敵するような大きな行政区画ではなく,船戸藩や勝浦藩など,大小さまざまな藩に分かれていたようです。

奈良・平安の律令国家の頃まで遡ると,現在の千葉県周辺は,上総国・下総国等の国名が現在の千葉県に重なります。

この下総国の中には,千葉郡という行政単位があり,古代には既に「千葉」という地名は成立していたようです。

鎌倉時代の有名な御家人の一つである千葉氏なども,下総国の千葉郡を本拠としたことから「千葉」の名を冠することとなったと聞きますので,千葉という地名は,相当古くから続いているようです。

現存する文書類のなかで,最も古く千葉という地名が登場するのは,万葉集の中に掲載されている,

「知波乃奴乃 古乃弖加之波能 保々麻例等 阿夜尓加奈之美 於枳弖他加枳奴(千葉の野の 児手柏の ほほまれど あやに愛しみ 置きて誰が来ぬ)」という防人の歌だそうです。