身近な詐欺の話

食べ物の好みに,そば派か,うどん派かという話があります。

関東は,そば派が多く,関西でが,うどん派が多いとききます。

名古屋は,ちょうど東西の中心にたっていますが,きしめんが人気であることを考えると,どちらかというと,うどんよりなのでしょうか。

そば,うどんといえば,先日,テレビで,「時そば」という演目の落語を見ました。

蕎麦屋でそばのお勘定を上手に誤魔化す人物と,

それを真似しようとして失敗する人物の対比をコミカルに描いた,落語の有名な演目の一つです。

そのお勘定の誤魔化し方は,十六文のそばの代金を支払う際に,

一文銭16枚を「1枚,2枚,3枚・・・8枚」と言いながら,

一枚ずつ手渡ししていく途中で,

「いま何時?」と店主にきき

「9つです」と返事があった後に,

「10枚,11枚・・・」と,9枚目の一文銭を渡さずに誤魔化してしまうというものです。

ちなみに,上方落語では同様のお話が「時うどん」として存在しているようです。

このようなところにも,そば派の関東,うどん派の関西という違いがあるのかと興味深く思います。

 

一文というと,現在の貨幣価値では,おそらく10円20円程度だと思われますので,

冷静に考えてみると,そこまでして誤魔化す方が大変だなと感じる金額ですが,

落語家さんの演じる,勘定をごまかす際の掛け合いが,実に軽妙で面白いところが,この落語の見どころです。

ちなみに,この落語を法律の側面から考えると,登場人物には詐欺罪が成立するものと考えられます。

勘定をごまかす意図をもって,八枚目まで一文銭を支払ったところで,

「いま何時だ?」と店主に質問して,「9つ」と答えさせることで,9枚目の一文銭が既に支払われたと錯誤に陥らせ,

1文の支払いを不法に免れたことになるからです。

実際の生活では,そもそも,こんな騙し方で騙されてくれる,お蕎麦屋さんはいないと思いますが,

これと少し似た話で,私たちの日常生活で身近に詐欺罪が成立するケースとして,釣銭詐欺というものもあります。

たとえば,1000円の品を買う時に5000円札を店員に渡したところ,

店員が5000円札を1万円札だと勘違いして「1万円入ります。お返しは,9000円になります。」といって,

1千円札9枚を渡してきた場合を想像してみてください。

1000円の品を受け取った上に,5000円が9000円に増えて帰ってくるのであれば,大儲けです。

そこで,「店員さん,勘違いしているな・・・」と思いつつお釣り9000円を受け取ってしまう場合には,

詐欺が成立すると考えられています。

店員さんが勝手に間違えたのだから,受け取った人は悪くないという見方もありそうですが,

店員さんの勘違いをしている状態を利用して,そのままお釣りを受け取る行為には,不作為による詐欺が成立するとされています。

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