弁護士の仕事をしていると,数多くの漢字を用います。
「縷々述べる」,「畢竟,独自の見解を述べたものにすぎない。」,「蓋し」など,こういった言葉遣いに慣れていない方からすると,
ちょっと意味も読み方も分かっていただけないのではないかという漢字が,法律文書では数多く使われています。
最近の裁判官の書く文書や,弁護士の作成する書面で,このような古風な表現を使うことは少なくなりましたが,
それでも,昔の裁判例などを参照する際に,このような表現を見かけて,懐かしく思います。
このような,漢字のほかに,古い戸籍など,かなり時間をさかのぼった資料を参照しなければならないときには,旧字体の壁に直面することもあります。
旧字体とは,戦前に使われていた漢字の書体のことで,現在の漢字の書体に比べて非常に複雑な文字になっています。
たとえば,「體」という文字を,ぱっと見て読むことが出来るでしょうか。
骨が豊かとかかれいて,どこかホラーな雰囲気の漂う文字です。
この文字は,現在の漢字でいうと「体」という文字にあたります。
現代であれば,わずか7画の文字を,戦前は23画もかけて書いていたのですから,考えてみると,戦前の日本というのは,随分のんびりしていたのだなと思います。
現代の感覚からすると,旧字体というのは不便で非効率なように思いますが,他方で,旧字体のほうがしっくりくる場合もあります。
たとえば,弁護士の「弁」という字は,旧字体では「辯」と書きます。
いまでも,業務用の印鑑や名刺などで「辯護士」と表記されている先生もいらっしゃいます。
この「辯」という文字は「辛い」と「辛い」という言葉の間に「言う」という言葉あり,
なんというか,一文字で弁護士の日々の仕事風景を連想させてくれます。