新型コロナの動向と弁護士業務について

一度は,落ち着きかけているようにみえた新型コロナについて,最近,また不穏なニュースが続いております。

一昨日の時点で,東京では過去最高の220人を超える感染者が確認されたようです。

前回の緊急事態宣言の際には,弁護法人心の社内でも,支店間で移動して立ち入ることのできる範囲を制限するなど,

様々な社内規制を行いました。社員の検温や業務時間中のマスク着用,勤務スペースの窓の開放などの対応は,現在も継続しております。

裁判等の予定も,前回の緊急事態宣言の際には,軒並み延期となり,最近,ようやく裁判所に足を運ぶ回数が回復してきていただけに,

その矢先の,感染拡大のニュースは先行きに大きな不安を感じさせられるものでした。

ニュースなどをみていると,ブラジルなどでは,経済活動を優先して営業制限等は行わない方針を大統領が推進しているそうです。

大統領自らが新型コロナウィルスに感染しても,経済優先の姿勢を崩していないようです。

また,スウェーデンなどでは,いわゆる「集団免疫」という考え方に基づいて,厳格な行動制限は行わない方針をとっているとも聞きます。

私の知識は,テレビのニュースで聞きかじった程度のものですので,不正確な点が多分にあると思いますが,新型コロナウィルスに対する対応については,各国で,かなり個性があるのだなと,興味深く思いました。

ただ,日本で,このような極端な経済優先策や,集団免疫作戦を実行できるかというと,相当難しいのかなという感想をもっています。

新型コロナウィルスの致死率については,様々な統計があるようですので,確定的なことはいえませんが,以前,WHOの発表では5%~4%程度とされていたと記憶しております。検査から漏れたまま回復した感染者もいれば,コロナと確認されないまま死亡した感染者もいるはずですので,正確なパーセンテージは確認のしようがないように思いますが,各国の感染確認者数と,死亡者数をみていくと,概ね,数パーセント程度となっているようです。日本でも,令和2年7月9日現在の数字をみると,2万人強の感染が確認され,千人弱の死亡が確認されているとのことですので,死亡者/感染者=5%弱となります。

ある社会が集団免疫を獲得するには,人口の70%程度が感染を経験して免疫を獲得する必要があるとききます。

日本の人口は1億2000万人台の半ばですので,わかりやすく1億人の70%で計算したとすると,7000万人が新型コロナに感染する必要があることになります。

そして,仮に致死率を5%とすると7000万人のうち5%の350万人が死亡する計算になります。

第2次世界大戦の日本の死者数は210万人~310万人程度と計算されているようですので,350万人もの死者となれば,

第2次世界大戦以上の死者数をだした未曾有の大災害ということになります。

また,仮に,現在の10倍程度は確認されないまま回復した感染者がいて,なおかつ,コロナによる死者はすべて把握できていると仮定し,実際の致死率は0.5%程度であると仮定して計算しなおした場合でも,人口の70%が感染した場合には,死者数は,35万人以上に上る計算になります。

35万人という数字も多すぎて,イメージがつかみにくいですが,

例えば,最近の日本の交通事故による死亡者数は年間で5000人を下回っていますので,35万人という数字は,交通事故死亡者を70年間積み重ねてもまだ届かない莫大な死者数ということになります。

過去に,交通事故が交通戦争といわれる程,社会問題となった時でさえ,交通事故の死亡者数は年間で1万7000人程度ですから,35万人という死亡者数がけた外れにおおきなものであることがわかります。

致死率が,上記試算の100分の1と仮定して,0.05%と仮定しても,人口の70%が感染すれば,3万5000人以上の方が亡くなることとなります。

それでも,日本の1年間の自殺者と交通事故死者数を合計した数字よりも,さらに1万人程多い数字になります。

こういった,試算をしてみると,集団免疫に期待して過度に経済を優先する政策というのは,それに伴う死者の数があまりに大きくなる恐れがあって,到底社会のコンセンサスを得られないのではないかと思われます。

したがって,このまま新型コロナの感染再拡大がつづけば,何度でも,緊急事態宣言や自粛が繰り返されることにならざるをえないのだろうかと,先行きに大きな不安を感じます。