離婚慰謝料に関する最高裁判決

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡です。

今月19日,離婚の慰謝料に関する注目の最高裁判決が出されました。この事案では,男性が,元妻の不倫相手に対して離婚に関する慰謝料を請求していました。しかし,最高裁は,離婚に関する慰謝料を不倫相手に請求することは原則としてできないとの判断をしました。

これだけを読むと,不倫相手に対する慰謝料の請求はできないのか,という誤解が生まれそうなので,詳しく見ていきたいと思います。

この最高裁判決を理解する上でポイントとなるのが,”不倫”の慰謝料と”離婚”の慰謝料は違う,という点です。

そもそも,配偶者が不倫をした場合,不倫された側には,配偶者とその不倫相手に対して不倫に関する慰謝料を請求する権利があります。そして,不倫の慰謝料請求権は,民法上,不法行為に基づく損害賠償請求権となり,3年で時効になってしまいます。今回のケースでは,男性が不倫を知ってからすでに3年以上が経過しており,男性の不倫相手に対する不倫の慰謝料請求権は時効にかかってしまっていました。そこで,男性は不倫から5年後の離婚を原因として,不倫相手に慰謝料を請求したのです。

もっとも,裁判所は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である」から,不倫相手が必ずしも離婚に関する不法行為責任を負うわけではなく,不倫相手に対する離婚を原因とする慰謝料請求が認められるのは,不倫相手が「単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」と判断しました。

以上をまとめると,①不倫相手に対する”不倫”の慰謝料請求は認められる(ただし,3年の時効に注意),②不倫相手に対する”離婚”の慰謝料は特段の事情がなければ認められない,ということになります。

今後の裁判では,この「特段の事情」に当たるか否かが争われるケースが出てくると思われます。判例の集積に注目していきたいと思います。