自己破産と損害賠償義務

最近のニュースで回転寿司屋さんで醤油の注ぎ口をなめる、レーン上の寿司に唾液を付けるなどの迷惑行為が行われ、その様子を撮影した動画が拡散されています。各回転寿司チェーン店は、民事、刑事両面で厳格に対処する旨のコメントを出しています。

では、民事事件で、不法行為による損害賠償請求訴訟が提起され、損害賠償義務が認められた場合、不法行為者が「そのような金額は払えない」と自己破産をした場合、その支払い義務は免除されるのでしょうか。

破産法では、破産によっても免責されない(=支払い義務が免除されるない)債務として、税金の支払い義務、悪意によって加えた不法行為に基づく損害賠償義務、故意または重大な過失により人の生命・身体に対して加えられた不法行為に基づく損害賠償請求権などが挙げられています。

店舗に対する迷惑行為の場合、悪意によって加えられた不法行為に該当すれば、自己破産をしても免責されないことになります。なお、「悪意」とは、故意よりも強く、相手方へ害を加えてやろうという意図を意味すると考えられています。

飲食店では、安全・安心な食事の提供が求められており、特にコロナ禍では食事の際の感染を予防するための様々な対策が取られるなど、日々企業努力が重ねられています。そのなかで、不衛生な行為を行い、かつその様子を動画に撮影してネット上にアップする行為は、飲食店の信頼を害し、多大な損害を与えることが容易に想像できますので、「悪意」ありと判断され、自己破産をしても免責されない可能性があります。

もっとも、店舗に対する迷惑行為が、悪意によって加えられた不法行為に該当するか否かは、弁護士や裁判所によって見解が分かれるかもしれません。実際に裁判で争われた場合、どのような判断となるのか、注目していきたいところです。