1年の振り返り

早いもので12月も半分以上終わり、今年も残りわずかとなりました。12月は賞与入金時期であることもあり、弁護士費用を分割払いにされている方の中には、賞与で費用の積立が完了する方もいらっしゃるため、自己破産・個人再生の申立てへ向けた打合せが立て込むなど、例年何かと忙しい時期です。

さて、少し気になったので、当職が今年1年でどれくらいの案件を受任したか集計してみたところ、任意整理、自己破産、個人再生、時効の援用を全て足すと、12月17日時点で350件ほど受任しておりました。また、相続放棄の案件も対応させていただいており、そちらは50件ほど受任しておりましたので、合計で約400件の対応をさせていただいたことになります。

1日当たり1件以上受任しているような計算となり、多くの方の手助けをできたとともに、より深い知識・経験を積むことができたのではないかと感じております。

ただ、まだまだ弁護士の助力を求めている方も多いと思いますので、来年もより一層多くの方のお力になれるよう尽力していきたいと思います。

本年は、12月27日までの予定で、新年は1月6日から出社の予定です。少し早いですが、今年は大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

差押えについて②

前回に続き、差押えについてお話していきたいと思います。今回は、差押えの対象となりやすい財産について解説していきます。

①給料の差押え

債務名義がとられた場合、よく狙われるのが給料です。給料が差し押さえられると、基本的には手取り収入の4分の1(手取り収入が44万円を超える場合には、33万円を超える部分)が差押えの対象となります。債権者から見れば、給料を差し押さえると、毎月の給料から確実に回収をすることができる点で非常に有効な回収手段となりますので、債権者に勤務先を知られている場合には、給料の差押えがされる危険が高いといえます。

他方で、勤務先を特定しなければ給料の差押えはできませんので、債権者に勤務先を知られていない場合、給料の差押えがなされる危険性は低くなります(とはいえ、探偵による調査や、銀行口座の履歴の開示手続がなされるなどして、勤務先を知られる可能性はありますので、絶対に安心とは言い切れません。)。

②預金の差押え

銀行等の預金も差押えの対象となりやすいです。預金が差押えされると、債務額によってはその時の預金残高が全額差押えとなってしまいます。債権者にとっては、債務者がどこに銀行口座を持っているかを調べなければ、差押えをすることはできませんが、ゆうちょ銀行やメガバンクなど、口座を持っている可能性が高そうな銀行は、狙われる可能性が高いです。

預金が差し押さえられる可能性が高い場合には、給料や年金など、入金があったらすぐに引き出しておき、口座の中身を空にしておくと、差押えのリスクを最小限に抑えることができます。

③動産の差押え

裁判所の執行官が自宅等を訪問し、現金や財産的価値のある物(動産)を差し押さえる手続きです。昔のドラマなどで、「差押」と書いた紙を家中の動産に張り付けるシーンを見たことがある人は、差押えと聞くとこの動産の差押えがされるのではないかとイメージする方もいらっしゃるかもしれません。

もっとも、生活必需品としての家具・家電や衣類、寝具などは差押禁止動産とされていますので、差し押さえられることはありません。また、債権者としても、借金の支払ができなくなった債務者の自宅等に現金や高額な動産がある可能性は低いためか、あまり動産の差押えがされるケースは少ないです。

以上、差押えについて簡単に触れましたが、差押えのリスクが避けられるに越したことはありませんので、支払いに困ったら早めに弁護士に相談して、解決策を探ることをお勧めします。

トイレ使用制限に関する最高裁判例

昨日、最高裁で注目の判例が出されました。

戸籍上は男性であるが、医師により性同一性障害の診断を受けている方(国家公務員)が、女性トイレを使用したい旨を経済産業省の職員へ申し出ました。これを受け、経済産業省では、同じ部署の職員に対し、性同一性障害に関する説明会を行い、女性トイレの使用について意見を求めたところ、数名の女性職員の態度から違和感を感じているように見えたため、勤務するフロア及びその上下階の女性トイレの使用は認められず、それ以外の階の女性トイレを使う処遇が実施されました。その後、人事院に対して、他の女性職員と同等の処遇を行うよう求めましたが、その要求が認められなかったため、人事院の判定の取り消しを求めた、というのが今回の事案です。

最高裁は、女性トイレの使用制限について見直さなかった人事院の判断は、裁量の範囲を逸脱又は濫用したものとして違法であると判断しました。

①性同一性障害について説明会が開かれた際、女性トイレを使用することについて明確に異議を唱えた職員はいなかったこと、②説明会の後、2階以上離れた女性トイレを使用していたが、トラブルが生じたことはないこと、③説明会から、人事院の判定が出るまでの約4年10か月の間、女性トイレを使用させることについて、特段の配慮をすべき他の職員の存在も確認されていないこと、などの事情を挙げ、離れた階の女性トイレを使用しなければならない不利益を正当化する事情はないとしました。

補足意見の中には、説明会後の暫定的な措置として、女性トイレの使用について一定の制限を設けたこと自体はやむを得ないものとして理解を示すものもあり、説明会から人事院の判定が出るまでの約4年10か月の間に、女性トイレの使用について緩和措置を講じるとか、より理解を得られるための研修を行うなどの措置を講じることなく、女性トイレの使用を制限し続けたことを問題視しているような意見もありました。

このように、この判例は、個別具体的な事情をもとに判断されたもので、事例判断の要素が強いと思われますが、社会としてトランスジェンダーをどのように尊重していくかを考える上で、大きな影響を与える可能性があります。また、弁護士目線からしても、例えば顧問先の会社からトランスジェンダーの従業員の取り扱いについて相談を受ける場面も想定されますので、その際は参考になる判例となりそうです。

自己破産と損害賠償義務

最近のニュースで回転寿司屋さんで醤油の注ぎ口をなめる、レーン上の寿司に唾液を付けるなどの迷惑行為が行われ、その様子を撮影した動画が拡散されています。各回転寿司チェーン店は、民事、刑事両面で厳格に対処する旨のコメントを出しています。

では、民事事件で、不法行為による損害賠償請求訴訟が提起され、損害賠償義務が認められた場合、不法行為者が「そのような金額は払えない」と自己破産をした場合、その支払い義務は免除されるのでしょうか。

破産法では、破産によっても免責されない(=支払い義務が免除されるない)債務として、税金の支払い義務、悪意によって加えた不法行為に基づく損害賠償義務、故意または重大な過失により人の生命・身体に対して加えられた不法行為に基づく損害賠償請求権などが挙げられています。

店舗に対する迷惑行為の場合、悪意によって加えられた不法行為に該当すれば、自己破産をしても免責されないことになります。なお、「悪意」とは、故意よりも強く、相手方へ害を加えてやろうという意図を意味すると考えられています。

飲食店では、安全・安心な食事の提供が求められており、特にコロナ禍では食事の際の感染を予防するための様々な対策が取られるなど、日々企業努力が重ねられています。そのなかで、不衛生な行為を行い、かつその様子を動画に撮影してネット上にアップする行為は、飲食店の信頼を害し、多大な損害を与えることが容易に想像できますので、「悪意」ありと判断され、自己破産をしても免責されない可能性があります。

もっとも、店舗に対する迷惑行為が、悪意によって加えられた不法行為に該当するか否かは、弁護士や裁判所によって見解が分かれるかもしれません。実際に裁判で争われた場合、どのような判断となるのか、注目していきたいところです。

個人再生委員が選任される場合②

2023年が始まりました。今年もよろしくお願いいたします。

さて、今回は、個人再生委員が選任された場合の手続きの流れについてお話しします(名古屋地裁での運用、当職の経験上のお話です。)。

個人再生委員が選任されると、通常は申立代理人の弁護士と、個人再生を申し立てた本人が揃って個人再生委員の事務所へ出向き、面談をすることになります。そこで、財産や履行可能性(返済能力があるかどうか)、裁判所からの確認事項等についての質問・確認があります。特に履行可能性に疑義がある場合には、家計の収支バランスの改善を指示され、今後の家計の状況において改善が図られているかチェックされることもあります。

そして、面談における回答内容を踏まえて、再生委員が手続開始が相当であると考えれば、その旨の意見が裁判所に対して出され、それを受けて裁判所が開始決定を出します。

開始決定が出ると、いつまでに再生計画案を提出しなければならないかが決まります。

通常は、再生計画案を裁判所に提出する前に、再度再生委員と面談をし、再生計画の内容や、その履行が可能かどうかの確認を行ったうえで、裁判所に再生計画案を提出します。

それ以降の流れは、通常の個人再生と同様で、(小規模個人再生の場合には債権者の多数決を経て、)認可決定、認可決定確定へと進んでいきます。

個人再生委員が選任される場合①

個人再生を裁判所に申し立てた場合、個人再生委員という弁護士が選任されることがあります。

個人再生委員は、①再生計画の履行可能性に疑義がある場合、②清算価値を正確に把握する必要がある場合に選任されることがあります。

①再生計画とは、個人再生の手続きにおいて法律誌にたがって減額された後の金額の分割払いの計画のことをいいます。個人再生の手続きにおいて、裁判所は、「減額された後の借金を分割で支払う能力があるか」という点を重視します。収入、支出のバランスから見て、分割で支払う能力がないのではないか?と疑義を持たれた場合には、個人再生委員が選任され、収支バランスの改善を指示されたりします。

②清算価値とは、個人再生をする方の全財産に相当する金額のことをいいます。個人再生によって減額される金額につき、清算価値の基準が採用される場合、清算価値の金額がどこまで借金の減額がなされるかという結論に直結します。したがって、清算価値基準が採用される場合には、その金額を正確に把握する必要性が高いことから、個人再生委員が選任されることがあります。

もっとも、名古屋地方裁判所では、個人再生委員が選任される事案はさほど多くありませんし、個人再生を依頼した弁護士の方で十分に返済能力や清算価値についての調査・報告が尽くされていれば、個人再生委員が選任されないこともあります。

次回は、個人再生委員が選任された場合の手続きの流れについてご説明します。

またもや…

こんにちは。弁護士の松岡です。

あっという間に梅雨が明け、真夏になってしまいました。名古屋では6月なのに30度を超える暑さが連日続いております。節電も呼びかけられてはいますが、温度管理と水分補給は十分に行っていただき、皆様熱中症にはお気を付けください。

さて、前回のブログで破産管財事件の非招集型についてお話しし、今回はその続きをと思っておりましたが、またもや破産をした方の情報をネット上の地図に張り付けてアップしているサイトが登場しましたので、ブログを更新いたしました。

みたところ、2009年~2019年までの破産者の情報を掲載しているようです。また、情報の削除を求める場合には6万円又は12万円分のビットコインを支払うよう要求しており、悪質といえます。

以前登場した破産者マップと同様、いずれかの時期にはこのサイトも閉鎖に追い込まれるとは思いますが、破産をしたという情報はむやみに他人に知られたくない情報であることは間違いなく、自己破産をして人生をやり直そうと思っている方にとって不安材料にしかなりません。個人情報保護の観点からも許されるものではないと思いますので、一刻も早く消えてもらいたいものです。

 

債権者集会非招集型手続きについて①

弁護士の松岡です。

自己破産手続のうち、破産管財人が裁判所から選任される破産管財事件では、裁判所に裁判官、破産管財人、弁護士が代理人となって申立てをした場合には申立代理人弁護士、破産者、債権者(金融機関のみの場合、債権者はほぼ誰も来ませんが。)が集まり、債権者集会という期日が開かれます。

債権者集会では、破産管財人から、破産者の財産調査の結果や、財産の換価・配当手続に関する報告、破産者に免責を認めるべきか否かに関する報告等がなされたり、裁判官から破産者に対して質問や二度と破産しないようにといった注意喚起(お説教?)があります。

しかし、最近、名古屋地方裁判所を含む各地の裁判所で、債権者集会を招集することなく手続きを進める非招集型の手続きが行われるようになりました。

非招集型のメリットは、債権者集会の場に行く必要がないという点が挙げられます。債権者集会は、平日の日中に行われますので、場合によっては仕事を休んで参加しなければならないこともありますが、非招集型であればそのような負担がなくなります。

他方で、非招集型の場合、免責許可決定が出るまでの期間が1~2か月ほど遅くなる点、官報に掲載される回数が1回増えるため官報公告費が4816円高くなる点がデメリットとして挙げられます。

個人的には、免責許可決定が出るまでの期間が長くなったとしても、債権者集会に出席する負担がなくなるのであれば、そちらの方がよいのではないかと思います。また、官報公告費についても、債権者集会が開催された場合の弁護士の出廷費用の方が一般的には高額ですので、一概にデメリットとも言えないように思います。

次回は、どのような場合に非招集型になるのかをご紹介できればと思います。

債務整理と個人からの借金

今年のゴールデンウィークは、最大10連休という方もいるようで、久しぶりの外出制限のないゴールデンウィークということで各地で多くの人出が見られたというニュースを見ました。確かに、ゴールデンウィーク中に名古屋駅を通ると、大きなキャリーバックを持った方も多くいらっしゃいました。みなさんはどのように過ごされましたでしょうか。

債務整理をお考えの方の中には、親、兄弟姉妹、友人、勤務先の同僚など、個人の方からも借金をしている方もいらっしゃいます。そのような場合に債務整理をすると、どのような影響があるのでしょうか。

⑴自己破産・個人再生の場合

自己破産や個人再生といった裁判所の手続きでは、債権者平等の原則を守らなければなりません。債権者平等の原則とは、言葉の通りすべての債権者を平等に取り扱わなければならないということです。

したがって、銀行や消費者金融、カード会社等の金融機関には返済をしない一方で、個人からの借金だけは返済するという行為は、債権者間に不平等が生じてしまうため、許されないことになります。個人から借入れがある方が、自己破産や個人再生をする場合には、個人に対しても返済をしてはならないという点にご注意ください。

⑵任意整理の場合

任意整理では、任意整理の対象とする債権者と、対象にしない債権者を選択できますから、金融機関を任意整理の対象として、個人の債権者はその対象にしないことができます。

したがって、任意整理によって金融機関への返済金額を減らしてもらったり、利息を免除してもらいながら、個人への返済を続けることも可能です。

個人からも借金をしている場合、その個人との関係性から、その人には返済を続けたいとお考えの方は多いと思います。そのような方は、弁護士に相談し、任意整理を検討されてはいかがでしょうか。

 

 

債務整理をすると引っ越しできないのか?

これから3回目のワクチン接種に行ってきます。副反応によって仕事に穴をあけるのが怖いので、毎回金曜日か土曜日に打つようにしています。今までは副反応で翌日に多少熱が出たくらいで、そこまでひどくはなかったのですが、今回はどうでしょうか。

さて、4月に入り新年度を迎えました。3月終盤には就職や入学等のためか、引越しをされている様子をよく見かけました。

債務整理をした方も、様々な理由で引っ越しが必要になることもあると思いますが、債務整理をしたことがあるという点は引っ越しに影響があるのでしょうか。

不動産の賃貸借契約をする場合に、家賃の不払いに備えて信販系の会社を保証会社として立てなければ賃貸借契約を結んでくれないところがあります。そのような場合、保証会社となる信販会社が信用情報を確認することになりますので、過去に債務整理をしていたという点から賃貸借契約を断られてしまう可能性があります。

他方で、保証会社を立てる必要がない場合には、信用情報による審査もありませんので、過去に債務整理をしていたという点がネックになることはないと思われます。

したがって、過去に債務整理をした方は、賃借する物件を探す際に多少選択肢が狭まってしまう可能性はありますが、賃貸借契約を結ぶことが一切できず引っ越しができないということはなさそうですので、ご安心ください。

債務整理に関するご相談は、ぜひ弁護士法人心へお問合せください。

一度自己破産をしたことがある方は、自己破産できないのか?

弁護士の松岡です。

新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が急激に広がっています。私の依頼者様の中にも、コロナにかかったり濃厚接触者になってしまい仕事に行けなくなってしまったと連絡をくださる方も出てきており、感染拡大を実感しています。より一層、毎日の検温、手指の消毒、換気を徹底していきたいと思います。

さて、今回は、過去に自己破産をしたことがあるけど、自己破産をすることはできるのか?という点についてお話しします。

過去に自己破産をしたことがある場合、過去の破産の際に裁判所から「今後借金をしないように注意して生活していくように」と指導されたかと思います。しかし、それにもかかわらず、再び破産をしなければならないほど借金を増やしてしまったのですから、自己破産ができるのか不安に思われる方もいらっしゃると思います。

法律上は、7年以内に自己破産をしたという場合には、免責不許可事由に該当し、自己破産が認められない可能性が高いです。

他方で、それよりも以前に自己破産をしたという場合であれば、再び自己破産をすることも可能です。ただし、2回目の自己破産となると、裁判所も免責を許可すべきかを慎重に判断する必要がありますので、破産管財事件になる可能性があります。他方で、1度目の自己破産からかなりの期間が経過していたり、1度目の破産が例えば親の借金の保証人になっていたことが原因である(つまり、自分が作った借金ではない場合)など、事情によっては同時廃止事件になる場合もあり得ます。

過去に自己破産をしたことがあるという方でも、自己破産についてのご相談はお受けできますので、お気軽にご相談ください。

債務整理と携帯電話②(キャリア決済について)

前回、債務整理をした場合の携帯電話の利用についてお話ししましたが、今回はそれと関連した話をさせていただこうと思います。

携帯会社がキャリア決済というサービスを行っています。キャリア決済とは、お店で商品を購入する際に携帯電話会社のID等を利用して決済し、代金は携帯電話料金と一緒に後払いにすることができるサービスです(d払いやauペイなど)。

これらはキャッシュレス時代に合った便利なサービスですが、後払いの性質を持ちますので、借金の一部であることに変わりはありません。

したがって、自己破産や個人再生といった裁判所を通じた手続きをする際には、借金を作る行為は一切禁止されていますので、キャリア決済をすることも基本的にはNGとなります。

キャリア決済はほとんどが一括払いですので、あまり借金という認識がなく使い続けてしまう方もいらっしゃるのですが、これから自己破産や個人再生をお考えの方は、キャリア決済をしないようご注意ください。

なお、任意整理の場合には、このような制限はありませんので、使い続けていただいて差し支えないのですが、使いすぎて返済が回らなくなってしまうと任意整理をした債権者から一括払いを求められることもありますので、計画的にご利用されるべきでしょう。

 

弁護士と司法書士の違い

債務整理の相談をしようとするとき、弁護士と司法書士のどちらに相談すべきか悩まれる方もいるかと思いますが、弁護士と司法書士の違いについてお話ししようと思います。

まず、司法書士は、債務額が140万円を超える場合には和解の代理人となることはできないとされていますから、借金額が140万円を超える場合は任意整理の代理人となることができません。

また、司法書士は、自己破産や個人再生の書類の作成をすることはできますが、代理人となることはできませんので、裁判所や破産管財人、個人再生委員との間のやり取りについて間に入ることはできません。したがって、裁判所等とのやり取りは、自身で行う必要があります。さらに、司法書士による自己破産、個人再生の申立ての場合、破産管財人や個人再生委員が選任される可能性もあります。

他方で、弁護士は債務額による制限はないため、借金の額が幾らのものであっても任意整理の代理人となることが可能です。また、弁護士は自己破産や個人再生の手続きにおいても代理人として裁判所等とのやり取りの間に入ることができます。

弁護士と司法書士にはこのような違いがあります。借金の金額が大きい場合や自己破産、個人再生の手続きにおいて裁判所とのやり取りに不安がある場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします。

夫婦別姓に関する最高裁判決

名古屋では暑い時期が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。

婚姻する夫婦が同姓でなければならないとする民法750条、戸籍法74条1号の規定について、憲法13条、24条が定める個人の尊厳、婚姻の自由に反するかが争われていましたが、先月23日、最高裁判所はこれらの規定は憲法に反するものではないと判断しました。

平成27年にも同様の点が争われ、そこでも最高裁判所は憲法に違反しないという判決を下しました。近年の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえて、この判断が変わるかどうかが注目されていましたが、今回も違憲ではないという判断がなされました。

また、今回でも最高裁は、平成27年の判決と同様、夫婦同姓制度の在り方については「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」と判断しました。

近年では、様々な価値観を認めるべきであるという風潮に変わってきており、様々な自治体でパートナー制度が認められるなど、夫婦のあり方についても多様性が認められるようになってきているため、夫婦同姓を強制留守規定は違憲であるという判断が出される可能性もあるのではと期待していましたが、そうはなりませんでした。

国会での議論が進んでいくことに期待したいところです。

クレジットカードの現金化に注意

今回は、債務整理をするにあたって、たびたび問題となるクレジットカードの現金化についてお話しします。

借金が膨らみ、毎月の返済に追われるようになると、借金をして他の借金の返済に回すことをくりかえして、雪だるま式に借金の金額が増えてしまうことがあります。そして、借金の返済をするために、クレジットカードのショッピング枠を現金化してしまう方もいらっしゃいます。

しかし、クレジットカードの現金化には大きな問題があります。

クレジットカードの現金化は、実際にショッピング枠で物を買って、その物を売却することで現金を得る方法と、クレジットカード枠の現金化を行う業者に依頼する方法に分かれます。

これらの方法は、違法かと言われるとグレーなところですが、通常クレジットカード会社ごとに定められている利用規約に違反していることが多いですので、クレジットカード会社に発覚した場合には、カードの利用停止や、一括払いの請求を受ける可能性もあります。

また、クレジットカードの現金化をした場合、例えば10万円のクレジットカード枠を使っても得られる現金は9万5千円になることもあります。そうすると、一時的には現金を得ることはできるかもしれませんが、借金の金額としては増えていく一方ですので、借金問題を根本的に解決することにはつながりません。さらに、クレジットカードの現金化をすると、自己破産の際の免責不許可事由である「不当な債務負担行為」に該当する可能性も否定できません。

このように、クレジットカード枠の現金化は問題のある行為ですので、借金問題で困ったら、クレジットカードの現金化に手を出す前に弁護士にご相談ください。

名古屋で債務整理をお考えの方はこちら

債務整理をしても車は残したい。②

前回に引き続き、債務整理をしても車を残すことができるのかについてご説明します。

今回は、自動車ローンの残っていない車についてお話していきます。

⑴任意整理の場合

任意整理では、和解した通りの分割払いさえできていれば基本的には財産への影響はありませんので、車を残すことは可能です。

⑵個人再生の場合

個人再生では、自動車ローンの残っていない車については、その時価額が清算価値(全財産)に含まれますが、法律に従って減額された後の借金を返済することができれば車を残すことが可能です。

なお、車の価値は、中古車屋や査定協会で査定をしてもらって把握することが多いです。また、名古屋地裁の運用では、①初年度登録から7年以上経過している、②新車価格が300万円以下の国産車であれば、車の価値はゼロと評価されます。

⑶自己破産の場合

自己破産では、20万円以上の価値のある車は原則として換価され、債権者への配当に回ります。20万円以上の価値のある車でも、それを残さなければならない必要性を説明することで残すことができる可能性もゼロではありませんが、ハードルはなかなか高いと考えた方がよいでしょう。

なお、ここでも車の価値については、①初年度登録から7年以上経過している、②新車価格が300万円以下の国産車であれば、車の価値はゼロと評価されます。

緊急事態宣言と裁判所の対応

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、新年あけてすぐの1月7日、1都3県に再び緊急事態宣言が出されました。また、愛知県でも大村知事が国に緊急事態宣言を要請する方針を固めたとのニュースが流れました。

仮に愛知県に緊急事態宣言が出された場合に、名古屋地方裁判所がどのような対応になるかは不明ですが、東京地方裁判所では、ホームページ上で緊急事態宣言下でも、原則、通常通りの裁判所業務を行うと発表されておりますので、前回の緊急事態宣言時のように期日がすべて取り消しになることはないかもしれません。

なお、前回の緊急事態宣言の時から継続して、名古屋地方裁判所では現在も免責審尋の手続き(一宮支部では開始前面談)を行っておらず、免責に関する陳述書を提出することで免責審尋の代わりとする運用が続いておりますが、コロナの感染拡大が続いているためこの運用はもうしばらく続いていくのではないかと個人的には感じております。

また、前回の緊急事態宣言の時には、裁判所でもテレワークを行っていたようで、案件によっては自己破産や個人再生の申立てをしてから開始決定が出るまで、コロナ流行前よりも少し長めに時間がかかったこともありましたので、今回はそのような弊害がないとありがたいのですが…。

大変な年だった2020年

年末の慌ただしい時期になってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

2020年はコロナの影響もあり、大変な年でした。コロナの影響で職を失ったり、収入が下がった影響で借金をしなければならなかった方や、今までは返済に困ってはいなかったがコロナの影響で収入が下がったため債務整理について相談したいという方が多数いらっしゃいました。そういった方々の相談に触れるたびにコロナの与えた影響の大きさを痛感します。

また、最近になって感染者数も右肩上がりに増えており、ニュースを見るたびに感染者数が最多を更新している状況を見ると、今後もコロナの影響が続いてしまうのではないかと心配になってきますし、同じような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

当法人では、職員の毎日の検温、各相談室にアルコール消毒や空気清浄機の設置、窓を開けて換気をするなどし、感染症対策に努めています。また、債務整理の相談については弁護士が直接面談をしなければならないというルールがありますが、面談時間を極力短くできるように電話相談にて詳しいご相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

なお、当法人の年末年始休みは12月31日~1月3日までとなっております。

債務整理を弁護士に相談するタイミング②

前回に引き続いて,債務整理を早めに弁護士に相談された方がよいと思われる方についてお話ししたいと思います。

②借金を滞納して長期間経ってしまった方

コロナ禍で収入が減少してしまった方,けがや病気で仕事ができなくなってしまった方,お子様の学費等で支出が増えてしまった方,投資やギャンブルで失敗してしまった方など,借金の支払いができなくなってしまう事情は人それぞれです。

しかし,借金の支払いができなくなった後,そのまま放置してしまうと,債権者から裁判を起こされ,給与や銀行口座等の差押えを受けてしまうことがあります。そうなる前に,借金の支払いができなくなってしまったら,早めに弁護士にご相談された方がよいでしょう。

③毎月利息だけ返済していて元本が減らないとお悩みの方

借金の金額が大きくなると,利息の金額も大きくなってきますので,毎月返済を続けているにもかかわらず,ほとんどが利息に充てられてしまい元本が減らないとお悩みの方は多いです。そのような方は,早めに弁護士に相談し,任意整理の方法をとれば,利息をカットしてもらえる可能性がありますので,その場合には返済した分借金を着実に減らすことができるようになります。

借金関係の相談は親,配偶者,兄弟姉妹,友人など,近しい人にこそ気軽に相談しにくい内容であることから,一人で悩みを抱え込んでしまっている方もいらっしゃると思います。また,借金問題で悩んでいるが弁護士にどのタイミングで相談したらよいかわからず,相談を躊躇されている方もいらっしゃるかもしれません。

そのような方でもお気軽にご相談できるよう,当法人では債務整理関係のご相談は原則無料としております。借金問題でお悩みの方は,当法人までご相談ください。

債務整理を弁護士に相談するタイミング

少しずつ肌寒い季節になってきました。コロナ対策で換気のために窓を開けっぱなしにしているのですが,これからの季節もっと寒くなってくるとどのように空気の入れ替えを行うか難しいところです。

さて,今回は債務整理の相談を受けた際に,もう少し早めに相談してくれればよかったのに,と思った経験から,弁護士に相談するタイミングについてお話ししたいと思います。

①返済のために新たに借り入れを増やしてしまったケース

借金問題でお悩みの方の中には,月々の収入の中で返済をすることができなくなり,銀行や消費者金融などから借入れを行って返済に回すことがあります。しかし,これを繰り返していくうちに,借金の金額がご自身の返済能力を大幅に超えてしまうことがあります。そうなると,自己破産や個人再生など裁判所を通じた手続きによって,借金の金額を免除,あるいは減額してもらう必要が生じる場合があります。他方で,分割で支払いができる範囲内の借金額にとどまるのであれば,任意整理という方法をとる余地もありますので,借金の金額が大きくなりすぎる前に弁護士に相談していただいた方がよいと思います。

また,弁護士に相談する直前に新たに返済のために借入れ先を増やしてしまうと,その借入れが返済の見込みもないのに借入れをした,すなわち債権者に対する詐欺的な借入れではないかと評価されてしまう可能性があります。そのように評価されてしまうと,自己破産,個人再生において減免の対象外となってしまうおそれや,自己破産,個人再生の手続きがうまくいかない恐れもあります。新しく借入先を見つけないと返済ができないという状況に陥ってしまったら,借入れをする前に弁護士にご相談された方がよいでしょう。

次回へ続く…