差押えについて②

前回に続き、差押えについてお話していきたいと思います。今回は、差押えの対象となりやすい財産について解説していきます。

①給料の差押え

債務名義がとられた場合、よく狙われるのが給料です。給料が差し押さえられると、基本的には手取り収入の4分の1(手取り収入が44万円を超える場合には、33万円を超える部分)が差押えの対象となります。債権者から見れば、給料を差し押さえると、毎月の給料から確実に回収をすることができる点で非常に有効な回収手段となりますので、債権者に勤務先を知られている場合には、給料の差押えがされる危険が高いといえます。

他方で、勤務先を特定しなければ給料の差押えはできませんので、債権者に勤務先を知られていない場合、給料の差押えがなされる危険性は低くなります(とはいえ、探偵による調査や、銀行口座の履歴の開示手続がなされるなどして、勤務先を知られる可能性はありますので、絶対に安心とは言い切れません。)。

②預金の差押え

銀行等の預金も差押えの対象となりやすいです。預金が差押えされると、債務額によってはその時の預金残高が全額差押えとなってしまいます。債権者にとっては、債務者がどこに銀行口座を持っているかを調べなければ、差押えをすることはできませんが、ゆうちょ銀行やメガバンクなど、口座を持っている可能性が高そうな銀行は、狙われる可能性が高いです。

預金が差し押さえられる可能性が高い場合には、給料や年金など、入金があったらすぐに引き出しておき、口座の中身を空にしておくと、差押えのリスクを最小限に抑えることができます。

③動産の差押え

裁判所の執行官が自宅等を訪問し、現金や財産的価値のある物(動産)を差し押さえる手続きです。昔のドラマなどで、「差押」と書いた紙を家中の動産に張り付けるシーンを見たことがある人は、差押えと聞くとこの動産の差押えがされるのではないかとイメージする方もいらっしゃるかもしれません。

もっとも、生活必需品としての家具・家電や衣類、寝具などは差押禁止動産とされていますので、差し押さえられることはありません。また、債権者としても、借金の支払ができなくなった債務者の自宅等に現金や高額な動産がある可能性は低いためか、あまり動産の差押えがされるケースは少ないです。

以上、差押えについて簡単に触れましたが、差押えのリスクが避けられるに越したことはありませんので、支払いに困ったら早めに弁護士に相談して、解決策を探ることをお勧めします。

差押えについて①

借金問題でお悩みの方の中には、借金の支払ができなくなるとすぐに財産が差し押さえられてしまうのか?、差押えがなされると家に債権者が押しかけてきていろいろなものを持っていかれてしまうのか?(急に家に来て周り近所に知られてしまうのか?)など、差押えに関する不安を抱えている方は少なくないでしょう。

そこで、今回は借金の支払ができなくなった際に行われる差押えまでの流れついて解説していきます。

借金の支払ができなくなると、まずは債権者から訴訟(裁判)を提起されたり、支払督促といった裁判所の手続きが行われることがあります。それを無視してしまったり、適切に反論をしないと、訴訟の場合は判決が、支払督促の場合は仮執行宣言付支払督促の申立てがなされ、それらが確定してしまうと、債権者は財産の差押えなどの強制執行をすることができるようになります。

このように、強制執行をすることができるようになる確定判決や仮執行宣言付支払督促の確定などを、「債務名義」と呼びます。

債権者からの督促状や法的手続予告通知書等の書面には、この一連の流れを「支払をしない場合、訴訟などの法的手続をとって財産を差押えします。」とさらっと記載してあることが多いです。おそらく、あえてそのように記載することで、支払しないとすぐに差押えが来るから大変だと思わせて、支払を促したいという思惑があるのだと思います。しかし、実際は裁判を起こしてから、初回期日まで1~2か月ほどかかる場合もありますし、支払督促の場合は受け取ってから2週間以内に督促異議を出せば、債権者は訴訟に移行せざるを得なくなるため、債権者が債務名義を獲得するまで、少し時間がかかります。

とはいえ、訴訟等の手続きがなされると、早ければ数か月程度で差押えがなされる危険性がありますので、支払いに困ったら、訴訟や支払督促などされる前に、弁護士に相談した方がよいでしょう。

次回は、差押えの対象となる財産について触れたいと思います。

債務整理と相続財産

債務整理の相談に乗っていると、まれに、亡くなった親の名義のままの不動産が残っている、という場面に出くわすことがあります。例えば、お父様が亡くなったが、お父様名義の実家にそのままお母様が住み続けることに相続人間で争いがなかったため、特に遺産分割協議等をすることもなく、名義変更もしなかった、ということがあります。

しかし、自己破産や個人再生をする際にこのような財産が残っていると、処理が非常に大変になります。

遺産分割協議や名義変更をしていない財産がある場合、法定相続分通りの財産を持っているとみなされてしまいます。

自己破産の場合は、名古屋地裁の運用では、その財産価値が20万円を超えると処分しなければならなくなります。そして、その処分のために破産管財人という別の弁護士が裁判所によって選任されるため、裁判所に収める予納金が、個人の破産ですと22万円~42万円ほどかかります。

個人再生の場合は、清算価値(=個人再生する方の全財産)に、その財産価値が加算されますので、借金の減額幅が少なくなってしまう可能性もあります。

遺産分割協議や名義変更をしていない財産がある場合、手続きに大きな影響があるため、忘れずに申告するようにしましょう。