債務整理と相続財産

債務整理の相談に乗っていると、まれに、亡くなった親の名義のままの不動産が残っている、という場面に出くわすことがあります。例えば、お父様が亡くなったが、お父様名義の実家にそのままお母様が住み続けることに相続人間で争いがなかったため、特に遺産分割協議等をすることもなく、名義変更もしなかった、ということがあります。

しかし、自己破産や個人再生をする際にこのような財産が残っていると、処理が非常に大変になります。

遺産分割協議や名義変更をしていない財産がある場合、法定相続分通りの財産を持っているとみなされてしまいます。

自己破産の場合は、名古屋地裁の運用では、その財産価値が20万円を超えると処分しなければならなくなります。そして、その処分のために破産管財人という別の弁護士が裁判所によって選任されるため、裁判所に収める予納金が、個人の破産ですと22万円~42万円ほどかかります。

個人再生の場合は、清算価値(=個人再生する方の全財産)に、その財産価値が加算されますので、借金の減額幅が少なくなってしまう可能性もあります。

遺産分割協議や名義変更をしていない財産がある場合、手続きに大きな影響があるため、忘れずに申告するようにしましょう。

トイレ使用制限に関する最高裁判例

昨日、最高裁で注目の判例が出されました。

戸籍上は男性であるが、医師により性同一性障害の診断を受けている方(国家公務員)が、女性トイレを使用したい旨を経済産業省の職員へ申し出ました。これを受け、経済産業省では、同じ部署の職員に対し、性同一性障害に関する説明会を行い、女性トイレの使用について意見を求めたところ、数名の女性職員の態度から違和感を感じているように見えたため、勤務するフロア及びその上下階の女性トイレの使用は認められず、それ以外の階の女性トイレを使う処遇が実施されました。その後、人事院に対して、他の女性職員と同等の処遇を行うよう求めましたが、その要求が認められなかったため、人事院の判定の取り消しを求めた、というのが今回の事案です。

最高裁は、女性トイレの使用制限について見直さなかった人事院の判断は、裁量の範囲を逸脱又は濫用したものとして違法であると判断しました。

①性同一性障害について説明会が開かれた際、女性トイレを使用することについて明確に異議を唱えた職員はいなかったこと、②説明会の後、2階以上離れた女性トイレを使用していたが、トラブルが生じたことはないこと、③説明会から、人事院の判定が出るまでの約4年10か月の間、女性トイレを使用させることについて、特段の配慮をすべき他の職員の存在も確認されていないこと、などの事情を挙げ、離れた階の女性トイレを使用しなければならない不利益を正当化する事情はないとしました。

補足意見の中には、説明会後の暫定的な措置として、女性トイレの使用について一定の制限を設けたこと自体はやむを得ないものとして理解を示すものもあり、説明会から人事院の判定が出るまでの約4年10か月の間に、女性トイレの使用について緩和措置を講じるとか、より理解を得られるための研修を行うなどの措置を講じることなく、女性トイレの使用を制限し続けたことを問題視しているような意見もありました。

このように、この判例は、個別具体的な事情をもとに判断されたもので、事例判断の要素が強いと思われますが、社会としてトランスジェンダーをどのように尊重していくかを考える上で、大きな影響を与える可能性があります。また、弁護士目線からしても、例えば顧問先の会社からトランスジェンダーの従業員の取り扱いについて相談を受ける場面も想定されますので、その際は参考になる判例となりそうです。

自殺の動機に「奨学金の返済苦」が追加

ネットニュースを見ていて、気になった記事を見つけました。

朝日新聞の報道によると、2022年の自殺者の中で、奨学金の返済苦がその原因の一つとなっている方が、10名いたそうです。この数字は、自殺と判断された事案について、警察による遺族等からの聞き取り調査の結果、自殺原因を複数の選択肢から選択した統計から明らかになったようです。

もっとも、統計で明らかになった10名以外にも、遺族等からの聞き取り調査で明らかにならなかっただけで、「奨学金の返済苦」が自殺原因の一つになっている方が他にもいた可能性は否定できません。また、もっと広く「借金の返済苦」を原因とするものととらえると、さらに多くの人が該当することになるでしょう。

奨学金には、一定の条件を満たせば、減額返還や返済猶予等の制度がありますので、返済に困ったらそのような制度を利用できないか検討してみるのがよいと思います。また、弁護士に相談して、個人再生や自己破産をすることで、債務額を減額したり、ゼロにすることも可能です。

奨学金を含む借金の返済に苦しんでいる方は、一人で抱え込まず、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。解決の糸口が見つかるかもしれません。

コロナ第5類に移行

新型コロナウイルスが、5月8日より、季節性のインフルエンザと同等の第5類感染症に移行しました。これにより、外出自粛や行動制限等はなくなり、感染症対策も個人の判断に委ねられることとなりました。

これに伴って、気になるのが、破産手続における裁判所の運用が変わるかどうかです。

名古屋地裁(本庁)では、コロナ前には、免責審尋の手続きが行われていました。名古屋地裁の免責審尋では、破産をする方が何名か集まり、裁判官から手続きの説明、今後二度と破産をしないようにという注意喚起、申立て書類に嘘偽りや変更がないかなどの確認などが行われていました。

しかし、コロナの流行に伴い、大勢の人が裁判所に集まるのは感染リスクが高いためか、免責審尋は省略されるようになりました。

3月にマスク着用が個人の自由となった以降に破産開始決定を受けた方も、免責審尋の手続きは省略されていましたが、第5類に移行した以降は従前の運用が再開するのか、あるいはコロナ後の運用が維持されるのか、気になるところです。

個人的には、免責審尋の手続きを実施していない裁判所も多いですし、平日の日中に裁判所に行かなければならない負担は、(場合によっては仕事を休まなければならず)破産をする方にとっても重いと思いますので、免責審尋が省略される運用が維持されるとありがたいなあと思います。

税金の滞納と債務整理

4月になり暖かい気候となりました。先日、名古屋市内にある鶴舞公園にお花見に行きました。人出も多く、出店もたくさん出ていて、コロナ前のような活気を少し取り戻したように感じました。

さて、今回は税金の滞納と債務整理の関係をお話ししたいと思います。

まず、税金については、自己破産や個人再生をしても免除・減額されることはありませんので、滞納している金額全額を支払っていかなければなりません。

もっとも、裁判所が滞納税金についてどこまで気にするかは、手続きによって違いがありそうです。

例えば、自己破産の場合には、滞納税金を今後どのように支払うかについて、裁判所はそこまで深く追求してこないことが多いです。これは、自己破産が認められれば、借金の支払義務がなくなるため、今まで返済に回していたお金で滞納税金の支払いは可能であろうと考えているからかもしれません。

他方で、個人再生の場合には、減額された借金の支払いと、生活費の支出、滞納税金の支払いを両立できるかが重視されます。個人再生では、減額後の借金をちゃんと返済できる能力があるか(再生計画の履行可能性があるか)、という点がとても重要になりますので、滞納税金についても、役所等と協議の上、月々いくらずつ支払って滞納を解消する計画かを、書面にて提出することが求められます。

税金の滞納がある方は、債務整理の相談をされる際には、滞納している税金をどのようにしたらよいか、弁護士にお尋ねください。

家計の状況の作り方

自己破産や個人再生など、裁判所の手続きによって借金の金額を減額・免除してもらう場合、月ごとに収入・支出の状況をまとめた家計の状況を作成し、裁判所に提出しなければなりません。

しかし、今まで家計簿等を付けたことがない方にとっては、どのように作成したらよいか分からないという場合もあると思います。そこで、家計の状況をどのように作成していったらよいかについてお話しします。

①毎月1日から末日までに購入した物、支払ったものについてレシートや領収証をとっておき、月末に食費・日用品等に分けて足し合わせます。②レシート等がないものについては、何にいくら使ったかのメモを残しておき、①との合計額を家計の状況に反映させます。③家賃、水道光熱費、電話代、保険料などが通帳から引落しになる場合、通帳の記載を参照して家計の状況に反映させます。④収入については、給与明細の支給金額や通帳に入金のあった金額を収入欄に記入します。⑤収入の合計額から支出の合計額を差し引いて、翌月への繰越額を計算します。

このようにして家計の状況を作成するのが理想的ではありますが、実際は一つのレシートの中に食費と日用品、その他が混在していて分けて計算することが困難な場合もあります。その場合、すべてのレシートの合計額から、日用品のだいたいの金額(5000円とか1万円とか、丸い数字でよいです。)を引いた金額を食費として計上することもあります。

また、レシート等をとっていなかった場合は、収入の金額と、通帳から見てとれる支出の金額、月末時点で残っている預金額等から、食費、日用品の額を逆算してだいたいの金額を割り出す、ということもあります。

家計の状況の作り方が分からないという方は、適宜弁護士にアドバイスを求めて進めていきましょう。

自己破産と損害賠償義務

最近のニュースで回転寿司屋さんで醤油の注ぎ口をなめる、レーン上の寿司に唾液を付けるなどの迷惑行為が行われ、その様子を撮影した動画が拡散されています。各回転寿司チェーン店は、民事、刑事両面で厳格に対処する旨のコメントを出しています。

では、民事事件で、不法行為による損害賠償請求訴訟が提起され、損害賠償義務が認められた場合、不法行為者が「そのような金額は払えない」と自己破産をした場合、その支払い義務は免除されるのでしょうか。

破産法では、破産によっても免責されない(=支払い義務が免除されるない)債務として、税金の支払い義務、悪意によって加えた不法行為に基づく損害賠償義務、故意または重大な過失により人の生命・身体に対して加えられた不法行為に基づく損害賠償請求権などが挙げられています。

店舗に対する迷惑行為の場合、悪意によって加えられた不法行為に該当すれば、自己破産をしても免責されないことになります。なお、「悪意」とは、故意よりも強く、相手方へ害を加えてやろうという意図を意味すると考えられています。

飲食店では、安全・安心な食事の提供が求められており、特にコロナ禍では食事の際の感染を予防するための様々な対策が取られるなど、日々企業努力が重ねられています。そのなかで、不衛生な行為を行い、かつその様子を動画に撮影してネット上にアップする行為は、飲食店の信頼を害し、多大な損害を与えることが容易に想像できますので、「悪意」ありと判断され、自己破産をしても免責されない可能性があります。

もっとも、店舗に対する迷惑行為が、悪意によって加えられた不法行為に該当するか否かは、弁護士や裁判所によって見解が分かれるかもしれません。実際に裁判で争われた場合、どのような判断となるのか、注目していきたいところです。

個人再生委員が選任される場合②

2023年が始まりました。今年もよろしくお願いいたします。

さて、今回は、個人再生委員が選任された場合の手続きの流れについてお話しします(名古屋地裁での運用、当職の経験上のお話です。)。

個人再生委員が選任されると、通常は申立代理人の弁護士と、個人再生を申し立てた本人が揃って個人再生委員の事務所へ出向き、面談をすることになります。そこで、財産や履行可能性(返済能力があるかどうか)、裁判所からの確認事項等についての質問・確認があります。特に履行可能性に疑義がある場合には、家計の収支バランスの改善を指示され、今後の家計の状況において改善が図られているかチェックされることもあります。

そして、面談における回答内容を踏まえて、再生委員が手続開始が相当であると考えれば、その旨の意見が裁判所に対して出され、それを受けて裁判所が開始決定を出します。

開始決定が出ると、いつまでに再生計画案を提出しなければならないかが決まります。

通常は、再生計画案を裁判所に提出する前に、再度再生委員と面談をし、再生計画の内容や、その履行が可能かどうかの確認を行ったうえで、裁判所に再生計画案を提出します。

それ以降の流れは、通常の個人再生と同様で、(小規模個人再生の場合には債権者の多数決を経て、)認可決定、認可決定確定へと進んでいきます。

個人再生委員が選任される場合①

個人再生を裁判所に申し立てた場合、個人再生委員という弁護士が選任されることがあります。

個人再生委員は、①再生計画の履行可能性に疑義がある場合、②清算価値を正確に把握する必要がある場合に選任されることがあります。

①再生計画とは、個人再生の手続きにおいて法律誌にたがって減額された後の金額の分割払いの計画のことをいいます。個人再生の手続きにおいて、裁判所は、「減額された後の借金を分割で支払う能力があるか」という点を重視します。収入、支出のバランスから見て、分割で支払う能力がないのではないか?と疑義を持たれた場合には、個人再生委員が選任され、収支バランスの改善を指示されたりします。

②清算価値とは、個人再生をする方の全財産に相当する金額のことをいいます。個人再生によって減額される金額につき、清算価値の基準が採用される場合、清算価値の金額がどこまで借金の減額がなされるかという結論に直結します。したがって、清算価値基準が採用される場合には、その金額を正確に把握する必要性が高いことから、個人再生委員が選任されることがあります。

もっとも、名古屋地方裁判所では、個人再生委員が選任される事案はさほど多くありませんし、個人再生を依頼した弁護士の方で十分に返済能力や清算価値についての調査・報告が尽くされていれば、個人再生委員が選任されないこともあります。

次回は、個人再生委員が選任された場合の手続きの流れについてご説明します。

破産・再生における債権の取り扱い

11月に入り肌寒い季節になってまいりました。また、新型コロナウイルスについても第8波になることが予想されていますので、体調にはお気を付けください。

さて、自己破産や個人再生をしようとする方が、例えばAさんにお金を貸しているような場合、Aさんに対してお金を返してと請求する権利(貸金返還請求権)を持っていることになります。このような債権も、破産・再生をする方の財産に含まれることになります。

自己破産の場合、債権の金額が20万円以上であれば、破産管財事件となる可能性があり、破産管財人からAさんに対して、破産者が貸していたお金を返すよう請求することがあります。

個人再生の場合、Aさんに貸していた金額も清算価値に含まれることになりますから、金額次第では借金がいくらまで減額されるかに影響が及ぶこともありえます。

なお、Aさん自身も金銭的な余裕がなく返済能力がない場合や、Aさんとは音信不通であり連絡も取れないし居場所もわからないということもあります。そのような場合には、Aさんに対する貸金返還請求権は回収の可能性がないから、財産的価値はないとの主張をすることも考えられます。

ただし、裁判所に対してそのような主張をするのであれば、Aさんが生活保護を受けているとかAさん自身も破産の申立て準備中であるといった具体的な事情を説明する、弁護士がAさんの住民票を取得するなどしてAさんの住所の調査を尽くしたが見つからなかったことを報告する、などの対応が必要になる場合もあります。

破産・再生をお考えの方で、第三者に対して債権を持っている場合には、弁護士に対応方法を相談すべきでしょう。

自己破産の際の財産隠し

最近急に寒くなってまいりました。季節の変わり目には体調を崩しやすいですので、お気を付けください。

さて、先月、自己破産の申し立てをした人が、ビットコインなどの暗号資産を裁判所に報告せずに隠していたことから、詐欺破産の疑いで逮捕されたというニュースが出ました。

詐欺破産罪は、破産法265条に規定されており、債権者を害する目的で、財産の隠匿や譲渡、安価で処分するなどした場合に、適用される可能性があります。

破産をしようとする方が高額の財産(名古屋地裁の運用だと、20万円を超える価値のあるもの)を持っていた場合、財産を処分(換価)して、債権者への配当に回す必要があります。それにもかかわらず、その財産を隠匿、譲渡、安価での処分等をしてしまうと、債権者が配当によって得られる金額が減少してしまい、債権者が害されてしまうため、許されません。

したがって、そのような行為をした場合には、刑事罰が科される可能性があるのです。

詐欺破産罪が適用されるケースはさほど多くはないですし、今回ニュースになったケースでも起訴されたかどうかは分かりません。とはいえ、破産をしようとしている場合に、財産の隠匿等をしてしまうことは、詐欺破産罪に該当する可能性がありますし、免責不許可事由に該当する可能性もありますので、絶対にしないようにしてください。

自己破産をする際には、自分の持っている財産は包み隠さず、弁護士に報告し、裁判所にも申告するようにしましょう。

リボ払いの恐怖

債務整理の相談をしていると、「支払が厳しくて、カードをリボ払いしていた。そうしたら、気付いた時には返済ができないほど借金が膨らんでいたため、債務整理をしたい。」というような方が非常に多くいらっしゃいます。

リボ払いとは、月々の返済金額を一定の金額に固定して、毎月その金額を返済していくような支払方法をいいます。一定の金額に固定されると、大きな買い物をした場合でも返済金額が少ないため、生活が安定すると思ってリボ払いにされる方もいらっしゃるのですが、実際は借金がどんどん膨れ上がっていくだけの状態になってしまうことが多いです。

具体的に言うと、例えば、生活費として5万円をカード決済したとして、リボ払いで毎月の返済金額を1万円に設定したとします。すると、毎月の返済額は1万円で済みますが、残りの4万円は借金として残ります。そして、次の月もまた生活費で5万円カード決済をしたとすると、借金の残額が9万円となり、1万円返済しても借金が8万円残ることになります。このように、継続的にカードの利用を続けながらリボ払いにした場合、毎月ちゃんと返済できていたとしても借金の金額がどんどん膨らんでいくのです。さらに、今の例ではわかりやすくするために省略しましたが、当然借金には利息や手数料がかかりますから、1万円返済しても借金の金額は利息や手数料を引いた金額分しか減りません。つまり、思っている以上に借金の金額が増えるペースが速いのです。

リボ払いは、1回限りの大きな買い物をした場合に、分割払いをする方法としては便利な側面もあるかもしれませんが、借金を大きく増やしてしまうきっかけになってしまうケースを多く見てきました。

借金の支払が多く、リボ払いをしようか迷っているという方は、リボ払いにする前に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。借金の金額が少なければ、債務整理の選択肢も広がりますので、早めに手を打った方がよい場合もあります。また、すでにリボ払いをしていて、完済の目途が立たないという方も、弁護士に相談してみることをお勧めします。

債権者集会における各裁判所の違い

前回の続きで、各地方裁判所ごとの債権者集会における質問内容についての違いについて、お話しします。

名古屋地方裁判所や津地方裁判所では、免責に関する質問として、例えば、自己破産に至った経緯はどのようなものか、自己破産をすることについてどのように考えているか、二度と自己破産をしないようにどのようなことに気をつけて生活しているか、などの質問がなされることが多いです(事案によっては、裁判官から質問がなされることもなく、二度と破産をしないように気を付けてください、という注意のみで終わることもあります。)。これらの質問に対して真摯に答えれば、その場で免責許可決定が出され、数分で債権者集会は終わることが通常です。

しかし、岐阜地方裁判所本庁では、自己破産に至った経緯について、浪費やギャンブル、投資などがある場合、それらにのめり込んでしまった原因は何か、なぜ途中でやめられなかったのか、また同じような失敗を繰り返さないために実践していることは何かなど、かなり細かく、厳しく追及されることがあります。そして、回答の内容を踏まえて、免責許可するか後日決定するものとして、債権者集会が終わることもあります。

個人的な感想ですが、岐阜地裁の裁判官は、債権者集会における質問を通して、しっかりと自己破産に至ってしまったことを反省させ、二度と同じ過ちを繰り返さないようにしようという意識が強いのかな、と感じました。
たまたま厳し目の裁判官に当たっただけなのか、事案の性質的に免責を許可すべきか微妙な案件だったからなのか、真相は分かりませんが、岐阜地裁の本庁はそのような傾向が強いように感じました。

破産管財事件における債権者集会

私は普段、名古屋駅近くの事務所で執務しておりますが、岐阜県や三重県にも出張で相談に出向くこともありますし、職場が名古屋市内にあるため、岐阜県や三重県にお住まいの方が名古屋駅の事務所まで相談に来られることもあります。

そして、自己破産や個人再生は、原則として申立を行う方の住所を管轄する裁判所に申立てをしなければなりませんから、名古屋地方裁判所だけでなく、岐阜地方裁判所、津地方裁判所へも自己破産や個人再生の申立てをすることがあります。

手続きの流れ自体は法律に従って進められますので、裁判所ごとの運用が異なることはありませんが。自己破産の中でも破産管財事件において開かれる債権者集会という期日について、裁判所(もしかしたら裁判官かもしれませんが。)ごとに傾向が違うような気がしてきています。

そもそも、債権者集会では、破産管財人として裁判所から選任された弁護士から、破産者の財産調査、財産の換価、債権者への配当に関する報告がなされ、その後裁判官から破産者に対して免責に関する質問がなされます。
このような流れについては裁判所ごとに運用が異なるということはありませんが、免責に関する質問について違いがあるように感じています。
次のブログで具体的に書いていきます。

またもや…

こんにちは。弁護士の松岡です。

あっという間に梅雨が明け、真夏になってしまいました。名古屋では6月なのに30度を超える暑さが連日続いております。節電も呼びかけられてはいますが、温度管理と水分補給は十分に行っていただき、皆様熱中症にはお気を付けください。

さて、前回のブログで破産管財事件の非招集型についてお話しし、今回はその続きをと思っておりましたが、またもや破産をした方の情報をネット上の地図に張り付けてアップしているサイトが登場しましたので、ブログを更新いたしました。

みたところ、2009年~2019年までの破産者の情報を掲載しているようです。また、情報の削除を求める場合には6万円又は12万円分のビットコインを支払うよう要求しており、悪質といえます。

以前登場した破産者マップと同様、いずれかの時期にはこのサイトも閉鎖に追い込まれるとは思いますが、破産をしたという情報はむやみに他人に知られたくない情報であることは間違いなく、自己破産をして人生をやり直そうと思っている方にとって不安材料にしかなりません。個人情報保護の観点からも許されるものではないと思いますので、一刻も早く消えてもらいたいものです。

 

債権者集会非招集型手続きについて①

弁護士の松岡です。

自己破産手続のうち、破産管財人が裁判所から選任される破産管財事件では、裁判所に裁判官、破産管財人、弁護士が代理人となって申立てをした場合には申立代理人弁護士、破産者、債権者(金融機関のみの場合、債権者はほぼ誰も来ませんが。)が集まり、債権者集会という期日が開かれます。

債権者集会では、破産管財人から、破産者の財産調査の結果や、財産の換価・配当手続に関する報告、破産者に免責を認めるべきか否かに関する報告等がなされたり、裁判官から破産者に対して質問や二度と破産しないようにといった注意喚起(お説教?)があります。

しかし、最近、名古屋地方裁判所を含む各地の裁判所で、債権者集会を招集することなく手続きを進める非招集型の手続きが行われるようになりました。

非招集型のメリットは、債権者集会の場に行く必要がないという点が挙げられます。債権者集会は、平日の日中に行われますので、場合によっては仕事を休んで参加しなければならないこともありますが、非招集型であればそのような負担がなくなります。

他方で、非招集型の場合、免責許可決定が出るまでの期間が1~2か月ほど遅くなる点、官報に掲載される回数が1回増えるため官報公告費が4816円高くなる点がデメリットとして挙げられます。

個人的には、免責許可決定が出るまでの期間が長くなったとしても、債権者集会に出席する負担がなくなるのであれば、そちらの方がよいのではないかと思います。また、官報公告費についても、債権者集会が開催された場合の弁護士の出廷費用の方が一般的には高額ですので、一概にデメリットとも言えないように思います。

次回は、どのような場合に非招集型になるのかをご紹介できればと思います。

債務整理と個人からの借金

今年のゴールデンウィークは、最大10連休という方もいるようで、久しぶりの外出制限のないゴールデンウィークということで各地で多くの人出が見られたというニュースを見ました。確かに、ゴールデンウィーク中に名古屋駅を通ると、大きなキャリーバックを持った方も多くいらっしゃいました。みなさんはどのように過ごされましたでしょうか。

債務整理をお考えの方の中には、親、兄弟姉妹、友人、勤務先の同僚など、個人の方からも借金をしている方もいらっしゃいます。そのような場合に債務整理をすると、どのような影響があるのでしょうか。

⑴自己破産・個人再生の場合

自己破産や個人再生といった裁判所の手続きでは、債権者平等の原則を守らなければなりません。債権者平等の原則とは、言葉の通りすべての債権者を平等に取り扱わなければならないということです。

したがって、銀行や消費者金融、カード会社等の金融機関には返済をしない一方で、個人からの借金だけは返済するという行為は、債権者間に不平等が生じてしまうため、許されないことになります。個人から借入れがある方が、自己破産や個人再生をする場合には、個人に対しても返済をしてはならないという点にご注意ください。

⑵任意整理の場合

任意整理では、任意整理の対象とする債権者と、対象にしない債権者を選択できますから、金融機関を任意整理の対象として、個人の債権者はその対象にしないことができます。

したがって、任意整理によって金融機関への返済金額を減らしてもらったり、利息を免除してもらいながら、個人への返済を続けることも可能です。

個人からも借金をしている場合、その個人との関係性から、その人には返済を続けたいとお考えの方は多いと思います。そのような方は、弁護士に相談し、任意整理を検討されてはいかがでしょうか。

 

 

債務整理をすると引っ越しできないのか?

これから3回目のワクチン接種に行ってきます。副反応によって仕事に穴をあけるのが怖いので、毎回金曜日か土曜日に打つようにしています。今までは副反応で翌日に多少熱が出たくらいで、そこまでひどくはなかったのですが、今回はどうでしょうか。

さて、4月に入り新年度を迎えました。3月終盤には就職や入学等のためか、引越しをされている様子をよく見かけました。

債務整理をした方も、様々な理由で引っ越しが必要になることもあると思いますが、債務整理をしたことがあるという点は引っ越しに影響があるのでしょうか。

不動産の賃貸借契約をする場合に、家賃の不払いに備えて信販系の会社を保証会社として立てなければ賃貸借契約を結んでくれないところがあります。そのような場合、保証会社となる信販会社が信用情報を確認することになりますので、過去に債務整理をしていたという点から賃貸借契約を断られてしまう可能性があります。

他方で、保証会社を立てる必要がない場合には、信用情報による審査もありませんので、過去に債務整理をしていたという点がネックになることはないと思われます。

したがって、過去に債務整理をした方は、賃借する物件を探す際に多少選択肢が狭まってしまう可能性はありますが、賃貸借契約を結ぶことが一切できず引っ越しができないということはなさそうですので、ご安心ください。

債務整理に関するご相談は、ぜひ弁護士法人心へお問合せください。

自己破産における車の取り扱い

自己破産をする場合に、持っている車がどのような取り扱いを受けるか不安に思われる方は多いと思います。そこで、自己破産における車の取り扱いについてお話しします。

①ローンの残っている車

車のローンを組んだ際、ローンを支払い終えるまで車の所有権をローン会社やディーラーに残しておく「所有権留保」という条項が契約内容に含まれていることがあります。その場合、ローンの残った状態で自己破産をすると、車がローン会社等によって引き揚げられてしまい、手元に残すことができません。

その場合、例えば親族等から援助を受けて、自己破産をする前にローンを完済してしまえば、ローン会社等に引き揚げられることはなくなります(ただし、下記②によって処分される可能性はありますので、注意が必要です。)。

他方で、銀行系の車のローンですと、所有権留保が付いていない場合もありますので、引き揚げられずに済む場合もあります。

②ローンの残っていない車

ローンの残っていない車であっても、名古屋地裁の運用では、時価額が20万円を超えるものは、処分されてしまい、債権者への配当に回ります。他方で、20万円を下回るものについては、手元に残すことが可能です。

なお、名古屋地裁では、初年度登録から7年以上経過していて、かつ新車価格が300万円以下の国産車であれば、原則として時価額をゼロと評価する運用となっていますので、手元に残すことができます。

裁判所の運用は、各地の裁判所によって異なることがありますし、変更になる可能性もありますので、気になる方は弁護士にご相談ください。

名古屋で自己破産のご相談をお考えの方はこちらをご覧ください。

一度自己破産をしたことがある方は、自己破産できないのか?

弁護士の松岡です。

新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が急激に広がっています。私の依頼者様の中にも、コロナにかかったり濃厚接触者になってしまい仕事に行けなくなってしまったと連絡をくださる方も出てきており、感染拡大を実感しています。より一層、毎日の検温、手指の消毒、換気を徹底していきたいと思います。

さて、今回は、過去に自己破産をしたことがあるけど、自己破産をすることはできるのか?という点についてお話しします。

過去に自己破産をしたことがある場合、過去の破産の際に裁判所から「今後借金をしないように注意して生活していくように」と指導されたかと思います。しかし、それにもかかわらず、再び破産をしなければならないほど借金を増やしてしまったのですから、自己破産ができるのか不安に思われる方もいらっしゃると思います。

法律上は、7年以内に自己破産をしたという場合には、免責不許可事由に該当し、自己破産が認められない可能性が高いです。

他方で、それよりも以前に自己破産をしたという場合であれば、再び自己破産をすることも可能です。ただし、2回目の自己破産となると、裁判所も免責を許可すべきかを慎重に判断する必要がありますので、破産管財事件になる可能性があります。他方で、1度目の自己破産からかなりの期間が経過していたり、1度目の破産が例えば親の借金の保証人になっていたことが原因である(つまり、自分が作った借金ではない場合)など、事情によっては同時廃止事件になる場合もあり得ます。

過去に自己破産をしたことがあるという方でも、自己破産についてのご相談はお受けできますので、お気軽にご相談ください。