年末年始の家計の状況

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて,年末年始といえば,忘年会,新年会,お年玉など,何かと支出が多い時期かと思います。

自己破産や個人再生など,裁判所を通じて借金の金額を減らす手続きをしている方は,家計の状況というものを毎月作成し,裁判所や破産管財人の弁護士等に提出しなければなりません。

家計の状況とは,簡単に言ってしまえば家計簿のようなもので,月ごとの収入と支出を記載するものです。収入としては,給料,子供手当,年金などが挙げられ,支出として家賃(住宅ローン),水道光熱費,食費,携帯電話料金,車をお持ちの方はガソリン代,各種保険料などが挙げられます。

これらを各項目ごとに可能な限り1円単位で記載しなければならず,今まで家計簿をつけたことがない方にとってはなかなか面倒な作業になります。また,家計の状況は世帯全体のものを提出する必要がありますので,同居しているご家族がいる場合,ご家族の収入・支出も記載しなければなりませんので,ご家族の協力を得ることも必要となります。

家計の状況を提出する意味合いとしては,破産であれば自分の収入の範囲内でつつましく生活できているか,浪費やギャンブル,投資等にお金を使っていないか(免責不許可事由に当たる事情はないか)をチェックするなどの意味合いがあり,個人再生の場合には減額した借金を支払っていくだけの資力があるかをチェックする意味合いもあります。

そして,忘年会,新年会は仕事上の付き合いもあるかと思いますが,使い過ぎは浪費ととらえられてしまうおそれがあります。また,お年玉は無償で自分の財産を他人に贈与する行為ですから,数千円~1,2万円ほどであれば裁判所も見逃してくれる可能性はありますが,程度問題なので一概には言えません。

何かと支出の多い時期ですから,家計の状況を付けている方は,より一層慎重にお金の管理をしていただき,実際に使う前に弁護士に確認をしてから使うことをお勧めします。

養育費算定表の改定

12月になりました。この時期は,12月のボーナスで弁護士費用や裁判所の予納金の積立てが終了し,自己破産,個人再生の申立てへ進む方が多く,その準備や打ち合わせなどで慌ただしくなりますが,年内に申立てへ進んで安心してお正月を迎えてもらえればと思いながら仕事をしています。

さて,債務整理とはそこまで関係はありませんが,養育費の算定表が改定されました。

離婚した夫婦に未成年の子供がいる場合,子供と別居するようになった親でも子供を扶養する義務があります。そこで,子供を扶養するために必要な費用を支払う必要があります。これが養育費です。

養育費は,まずは離婚する父・母の話し合いによって決められますが,話し合いがまとまらないような場合には裁判所での調停や裁判の場で決められます。そして,裁判や調停の場で養育費を決める場合には,養育費の算定表を参照して決定されます。

養育費算定表では,子供の人数,年齢,表の中では養育費を払う側(義務者)の年収と養育費を受け取る側(権利者の年収)によって金額が算定されます。今回久しぶりに改定がなされましたが,従前と比較して養育費の金額が全体的に増加傾向にあることがうかがえます。近年の景気変動や物価の上昇,税制度の変化等を反映させたものといえるでしょう。

とあるインターネットサイト

最近,弁護士の中でとあるインターネットサイトの存在が問題視されています。

あえて名前は出しませんが,そのインターネットサイトの中には,個人再生,自己破産を申し立てた個人・会社名及び住所・所在地が掲載されているのです。

個人再生,自己破産をすると,氏名及び住所が「官報」という政府が一般国民に向けて発行する文書の中に掲載されるのですが,当該インターネットサイトは官報に掲載されている情報のうち,個人再生,自己破産をした個人名及び住所等をピックアップして掲載しているものと思われます。

確かに官報は,誰もが見ることのできる文書ですが,個人再生や自己破産をしたことはその方にとって周囲の方には知られたくない情報であり,個人再生や自己破産をして人生を立て直そうと考えている方にとって,インターネットサイトに自分の名前及び住所が掲載されるのは,人生の再建を妨げるおそれがあるため,非常に問題だと思います。

なお,当該サイトには,ここに掲載されているのは破産者や個人再生者ではなく,フィクションである,などと記載されていますが,官報に掲載されている内容と同一の内容が掲載されていますし,フィクションだと言いながら「事実と異なる場合には修正に応じる」と記載されるなど意味不明です。

以前にも破産者マップと呼ばれる同様のインターネットサイトが問題視されましたが,また同じようなサイトを作るものが現れてしまうとは,非常に残念です。

このような悪質なサイトを興味本位で検索される方がいなくなることを切に祈るばかりです。

 

借金の時効

貸金業者から借金をしていたが,数年前から一切支払いをしていなかったという方の相談を受けることがあります。

この場合,いつから支払いをしていなかったのかがポイントになります。

借金の返済をしていなかったのが5年以上前からであれば,その借金は時効にかかっており,返済する必要がない可能性があります。

改正前の民法では,債権は10年で時効によって消滅するとされておりますが,商法上,商行為によって生じた債権は5年で時効になるとされています。貸金業者から借金をした場合,貸金業者は業としてお金を貸していますから,商行為による金銭消費貸借(お金を貸すこと)といえ,5年で時効によって消滅します。

改正後の民法では,「債権者が権利を行使できることを知った時から五年間行使しないとき」は時効によって消滅するとされていますから,改正前,後ともに時効期間は5年となります。

したがって,5年以上借金の返済をしていない場合,時効消滅している可能性があります。

ただし,ここであえて「可能性」と言ったのは,時効にならない可能性もあるからです。

借金の返済をしなくなった場合,債権者側が訴訟を起こしたり,支払督促をしたりすることがあります。そして,債権者側が勝訴の判決が確定したり,支払督促に対して異議を申し立てずに確定した場合,時効期間がその時から10年に延びてしまいます。

また,債権者に対して借金を支払う旨の話をしてしまうと,借金があることを認めた(債務承認)ことになり,時効が中断してしまうこともあります。

したがって,これらの事情がなければ,5年以上借金を支払っていない方は時効にかかっている可能性がありますので,弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

名古屋で債務整理をお考えの方はこちら

支払督促とは

借金の返済を滞ってしまっている方のもとには,債権者からの電話や請求書などが届くことがあります。

そして,それらも無視していると,裁判所から書類が届くことがあります。裁判所からの書類には大きく分けて2種類あり,「訴状」というものと「支払督促」というものがあります。

今回は支払督促についてお話しします。

まず,支払督促とは,債権者(お金を貸した側)が,裁判所を通じて,債務者(お金を借りた側)に対して,貸したお金を返すよう求めることをいいます。

そして,通常の訴訟では,裁判所は証拠に基づいて請求が認められるか否かを判断しますが,支払督促では,債権者側からの申し立てがあれば,証拠の有無等の審査は特段せずに,裁判所から支払い督促が発せられます。

このように,通常の訴訟のように手間,時間がかからない点で,債権者にとっては便利な手続きとしてよく使われています。

もっとも,支払督促には証拠等の審査がなく,あくまで債権者側の一方的な主張に基づいて出されるものですので,すでに時効(次回,詳しくお話ししようと思います。)にかかっている借金について支払督促が送られてくるケースもあります。

その場合には,債務者側も適切に対処しなければなりませんが,支払督促には「支払督促送達の日から2週間以内に異議を申し立てないときは,債権者の申し立てによって仮執行の宣言をする。」との記載があり,2週間以内に何とかしなければなりません。

もし,支払督促をそのまま放置しておくと,債権者勝訴の判決が出たのと同様の効果が生じ(債務名義と呼ばれます。),給与や財産の差し押さえを受けてしまう危険性があります。

裁判所から支払督促が届いたという方は,1日も早く弁護士にその対処法をご相談された方がよいでしょう。

どのような場合に過払金請求ができるか。

前回の続きで,どのような場合に過払金請求ができるかをお話しします。

⑴ 利息制限法を超える利率での返済をしたこと

前回ご説明した通り,過払金の請求ができるのは,利息制限法の上限利率を超える利息を支払っていた場合に限られます。

したがって,利息制限法の範囲内で返済をした方は,たとえどれだけ多くの利息を支払っていたとしても過払金の請求はできません。

各貸金業者は平成18年の最高裁判例とその後の法改正を受けて,利息制限法の範囲内での貸付をするようになっていますから,それ以降に借入れ・返済をした方には過払金は発生しません。

また,銀行は平成18年判例が出る前から利息制限法に従った利息で貸付を行ってたため,銀行からの借入れの場合には過払金は発生しません。

⑵ 最終取引から10年を経過していないこと

過払金の返還請求権は,10年間行使しなければ時効にかかってしまいます。

したがって,最終取引日から10年以上経過している場合には,過払金を請求することはできません。

借金を払いすぎているか知りたいという方は,お早めに弁護士にご相談ください。

過払金が発生する仕組み

こんにちは。10月に入り,名古屋でも朝や夜は少し肌寒い季節になってきました。気温の変化で体調を崩されないようお気を付けください。

さて,今回はテレビや電車の中の弁護士事務所の広告等でよく見かける過払金ついて,そもそも過払金はなぜ発生するのか,という仕組みをご説明します。

⑴ 従前の法律の規定

まず,お金を貸す際につける利息については,利息制限法と出資法という法律がありました。

利息制限法では,利息の上限が定められており,元本が10万円未満であれば年20%まで,10万円~100万円未満であれば年18%まで,100万円以上であれば年15%までと規定されています。

また,改正前の出資法では,利息の上限は年29.2%までとされていました。

貸金業者が出資法の上限利息を超える利息を付けた場合,刑事罰の対象とされていましたが,利息制限法の上限利息を超えても刑事罰や行政処分の対象とはされていませんでした。

また,旧貸金業法には,一定の要件を満たす場合には,利息制限法を超えた利率で利息の支払いを受けたとしても,有効な弁済があったとみなすこと(みなし弁済)が認められていました。

そのため,多くの貸金業者は刑事罰を回避するために出資法の上限利息の範囲内には収めるけれども,利息制限法の上限利息を超えるような利率で貸付けを行っていました。この出資法の上限利息と利息制限法の上限利息との間の金利帯はグレーゾーン金利と呼ばれていました。

 

⑵ 最高裁判例と法改正

しかし,平成18年1月13日の最高裁判例において,旧貸金業法のみなし弁済が実質的に否定され,その後貸金業法,出資法の改正がなされ,グレーゾーン金利が撤廃されました。

⑶ 過払金の発生

このように,みなし弁済が実質的に否定されたことから,利息制限法を超えた部分の利息については,「借金を払いすぎていた」ことになるため,過払金として返還請求ができるようになりました。

次回は,どのような場合に過払金が請求できるかを詳しく見ていきたいと思います。

消費増税

令和元年10月1日から,消費税が10パーセントに引き上げられます。

もっとも,飲食料品や定期購入の新聞は消費税8%に据え置かれます(軽減税率)。コンビニなどで食品を持ち帰る場合には8%,イートインスペースで食べる場合には10%が適用されるとされるなど,10%が適用されるのか,8%が適用されるのかの線引きが難しいところがあります。

借金の抱えている方にとっては,消費増税によって家計が圧迫されることを心配されている方もいるかもしれません。

消費増税による家計の負担を軽減するために,経済産業省が対象の店舗でキャッシュレス決済をした場合に2%か5%のポイント還元を行うキャンペーンを行っています。

しかし,任意整理をしている方は相手方のクレジットカードを使うことはできませんし,自己破産や個人再生をしている方はすべてのクレジットカードを使うことができませんので,クレジットカード決済によるポイント還元が受けられません。もっとも,そのような方でもデビットカード(代金の支払いに利用した際,即時に銀行口座から引き落としが行われるカード)などは使用することができますので,ポイント還元を受けることは可能です。

任意整理中でクレジットカードが使えない方は,検討してみてはいかがでしょうか。

令和元年度サマースクール

今年も愛知県弁護士会主催のサマースクールの中高生模擬裁判に弁護人役として参加しました。

今年は,大学のソフトボール部が舞台でした。被告人が,監督に「気合が足りない」と言われてビンタを受けて倒れこんでしまい,さらに監督からソフトボールを投げつけられそうになったところ,近くに置いてあったバットで監督の脇腹を殴り怪我をさせてしまった,という事案でした(弁護人役が染みついているのか,被告人に有利な事実認定を前提とした説明になってしまっています。)。

争点としては,被告人がバットで殴った行為は正当防衛に当たるかという点で,そもそも被告人は最初から監督にビンタされることが分かっていて,これを機に監督に暴行を加えてやろうと計画していたのではないか(積極的加害意思),防衛行為としての相当性はあるかといった内容を議論してもらいました。

中高生にも身近な問題である部活動の指導者による体罰を取り扱ったため,生徒たちも真剣に議論をしているのが印象的でした。生徒たちからは,自分が厳しい指導者に口頭で怒られた時の体験談を踏まえ,口頭で怒られている時でさえ通常の精神状態ではいられないのに,今回の被告人のように監督にビンタをされる状況下では,冷静な判断はできずバットで殴ることもやむを得なかったのではないかといった意見が出た一方で,バットという道具の危険性を指摘し(当たり所が悪ければ監督は死んでいたかもしれない),相当性を否定する意見も出ました。

サマースクールでは,答えのない問題について,自分の意見を述べ,他人の意見を聞いた上で,結論を考えてもらうことに主眼を置いています。生徒たちにとって,よい経験になったのであれば幸いです。

 

話は変わりますが,当法人も新しい弁護士,スタッフが加入しましたので,ホームページの集合写真を更新しました。

今後とも皆様のお力になれるよう,尽力してまいりますので,よろしくお願いいたします。

http://www.lawyers-kokoro.com/

自己破産はどのような方に適しているか

こんにちは。すっかり夏の天気になり,私の住んでいる名古屋でも連日30度を超える厳しい暑さとなっています。皆様も熱中症にはくれぐれもご注意ください。

さて,今回は,自己破産についてどのような方に適しているのかをご説明したいと思います。もっとも,任意整理及び個人再生のところでは,それぞれの手続きのメリットをご紹介し,どのような方に適しているのかをご説明いたしましたが,自己破産の場合には逆にこういう方は自己破産すべきでない,というご紹介の仕方になります。

そもそも自己破産とは,裁判所を通じた手続きによって,借金の金額をゼロにしてもらうこと(「免責」といいます。)をいいます。

その最大のメリットは,やはり借金がゼロになるため,任意整理や個人再生とは違って手続き終了後に返済をする必要がなくなるということです(もっとも,滞納した税金や養育費,不法行為による損害賠償義務など,破産によっても免責されないものもあります。)。

ただし,このような大きなメリットをもたらす手続きですから,破産をする場合には様々なデメリットやリスクがあります。

①免責不許可事由があると破産が認められない可能性がある。

免責不許可事由とは,破産の申し立てをした方にそのような事情があった場合に,裁判所が免責を許可しないことができる事由のことをいい,例えばギャンブルや投資によって借金を増やした場合や,クレジットカードで購入した商品を決済が済まないうちに売却して現金化した場合などが挙げられます。

もっとも,免責不許可事由があっても,裁判所の裁量で免責許可が得られることもありますので,免責不許可事由があっても破産できる可能性はあります。

②財産が取られてしまう。

破産の申し立てをした方が,不動産や自動車などの価値の高い財産を持っている場合,それらの財産が処分されてしまい,債権者への配当に充てられてしまう可能性があります。

もっとも,すべての財産が取られるわけではなく,99万円以下の金銭や生活に不可欠な家財道具は,自由財産として手元に残すことも可能です。

自己破産をしても残すことのできる財産についてはこちらをご覧ください。

③破産をするとできない職業がある。

警備員や保険の募集人などは,破産をするとその職業に就くことができなくなってしまいます。

したがって,それらの職業で生計を立てている方は,破産をすることで職業を失ってしまうことになりますから,破産を避けるか,別の職種へ転職する必要があります。

自己破産をすると影響のある資格・職業についてはこちらをご覧ください。

以上より,破産をすると就くことができない職種に就いておらず,特に処分されて困るようなめぼしい財産もなく,かつ免責不許可事由にもあたらない方は,自己破産が適しているといえます。

また,免責不許可事由に該当していても,裁判官の裁量で免責許可が得られる場合もありますから,任意整理や個人再生では返済のめどが立たない場合には,自己破産を選択するのもよいかと思います。

ただし,ここでお話しした内容は簡単な一般論にとどまり,どの方針をとるべきかは個別具体的な判断が必要となります。

債務整理でお悩みの方は,弁護士法人心までご相談ください。

個人再生はどのような方に適しているか

先月は,任意整理はどのような方に適しているかというタイトルで,任意整理のメリットについてお話しさせていただきました。今月は個人再生についてお話したいと思います。

まず,そもそも個人再生とは,裁判所を通じた手続きによって借金の金額を減らしてもらい,分割によって完済を目指す手続きです。

メリット① 借金の金額を減らすことができる

任意整理の場合には,利息をカットできる可能性はありますが,借金の元本は減りません。

他方で,個人再生の場合には,借金の金額が,100万円か,5分の1か,清算価値(自分の財産をすべて処分した場合に得られる金額)のいずれか高い金額まで減額されます。例えば,借金の金額が1000万円あり,財産がほとんどない方は200万円まで減額され,借金は1000万円あるが,300万円の財産がある方は300万円まで減額されます。

また,分割弁済の期間は原則として3年間で,特別の事情が認められれば最大5年間まで延長することも可能です。

メリット② 家を残すことができる

個人再生の大きな特徴の一つとして,住宅ローンが残っている状態で個人再生をしても家を残すことができるという点です。したがって,借金の金額が多く任意整理では払いきることができないが,家を残したいという方は,個人再生が適しているといえます。

メリット③ 免責不許可事由があっても個人再生できる

自己破産の場合,投資やギャンブル,浪費等によって借金を増やした場合など,免責不許可事由に該当する事情がある場合には破産が認められないことがあります。もっとも,個人再生の場合には,免責不許可事由があっても認められますので,免責不許可事由に該当する方でも借金を整理することができます。

したがって,借金の金額を減らさないと完済はできないが,ローンを組んだ家は残したいという方,投資やギャンブル,浪費によって借金を増やしてしまったが,整理をしたいという方は個人再生が適していると考えられます。

個人再生をお考えの方は,弁護士にご相談ください。

個人再生に関する名古屋駅法律事務所のサイトはこちら

任意整理はどのような方に適しているか

今年のゴールデンウィークは,史上最大の10連でした。いかがお過ごしでしたでしょうか。

さて,先月のブログで借金の整理の方法は大きく分けて3つあるとのお話をさせていただきました。借金の整理をお考えの方にとって,自分はどの方針をとったらよいかわからないという方のために,それぞれの方針についてのメリットをご紹介したいと思います。

今回は任意整理についてお話します。

メリット① 家族に内緒で借金の整理ができる

借金問題は,家族や近しい友人などにも打ち明けにくいものだと思いますから,借金の整理についても誰にも知られずに終わらせたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。任意整理は,裁判所を通じた手続きではなく,弁護士と各貸金業者や銀行等(以下,「債権者」とします。)が個別に交渉し分割返済の約束をする手続きですから,家族にも知られずに行うことが可能です(もっとも,債権者が訴訟提起するなどした場合には,自宅に裁判所からの書面が届いてしまう場合があります。)。

メリット② 月々の返済金額や利息を減らすことができる

借金問題でお困りの場合,返済金額が多くて生活が回らない,毎月返済をしているがそのほとんどが利息に充てられてしまい元本がなかなか減らないというケースが多く見受けられます。任意整理では,借金の利息を免除(減額)してもらい,元本を長期間(目安としては3年~5年)で分割返済する合意を目指すことになります。したがって,任意整理によって月々の返済金額が減り,また利息が免除(減額)されることで完済までの見通しを立てることができます。

メリット③ 費用を安く抑えられる

個人再生や自己破産の場合,着手金だけで数十万円ほどかかりますが,任意整理では比較的費用を安く抑えることができます。なお,弁護士法人心の場合,着手金は1社当たり3万9800円+税,成功報酬金は0円です。

メリット④ 資料集めや書類作成の手間がない

個人再生や自己破産の場合,裁判所に提出しなければならない資料がたくさんあります。弁護士に依頼した場合でも,資料集めや家計の状況などについてはご自身で作成しなければならないものもあって手間がかかりますが,任意整理の場合にはそれらの負担がありません。

任意整理に要する期間についてはこちらをご覧ください。

来月は,個人再生のメリットについてご紹介したいと思います。

借金の整理の方法

こんにちは。新元号「令和」が発表され,裁判所からの次回期日に関する書面も「令和元年○月○日」という記載がされるようになりました。いよいよ改元が間近に迫ってきたな,という印象です。

さて,元号も変わるタイミングで借金の整理をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。そこで,借金の整理の方法についての大枠をお話したいと思います。

借金の整理の方法は,大きく分けて3つあります。①任意整理,②個人再生,③自己破産です。

①任意整理とは,貸金業者との間で任意の話し合いによって,借金の利息をカットしてもらったり長期間での分割弁済の合意をすることをいいます。借金の金額が多い場合には,月々の返済金額の大半が利息に充てられてしまい元本がほとんど減らない…といった事態に陥ってしまうことがあります。任意整理により,利息をカットしてもらうことができれば,完済までの道筋が見えてきますし月々の支払金額を減額できる場合もあります。

②個人再生とは,裁判所を通じた手続きによって,借金の金額を減らし,3年(場合によっては5年)で分割返済をすることをいいます。個人再生のメリットとしては,住宅資金特別条項を利用することで,住宅ローンの残っている住宅を残したまま手続きをすることができる可能性がある点です。破産の場合には,住宅ローンの残っている住宅は競売にかけられるなどしてしまいますので,住宅を残して借金の整理をしたい方は,個人再生を検討すべきでしょう。

③自己破産とは,裁判所を通じた手続きによって,借金をなくすことをいいます。借金がなくなる点でメリットも大きいのですが,破産が認められなくなってしまう事情(免責不許可事由)もありますので注意が必要です。この点については,いずれ詳しく取り上げたいと思います。

それぞれの手続きにおいて,メリット・デメリット,利用できる条件等が異なります。借金の整理をお考えの方は,弁護士にご相談ください。

債務整理の種類についてはこちらもご覧ください。

平成30年度賃金センサス

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡です。

少しずつ暖かくなってきて,もうすぐ名古屋でも桜が見られるような季節になってきました。

さて,3月29日に平成30年度の賃金センサスが公開されました。賃金センサスとは,性別,年齢,学歴等の分類ごとに,平均的な収入をまとめたものです。交通事故の損害賠償請求の際に,被害者の方の収入が不明確である場合(例えば,主婦としての家事労働を収入に換算する必要がある場合,若年者で将来的に仕事をした場合にどれほどの収入が得られるか分からない場合など。)に,賃金センサスの平均収入をもとに損害の金額を計算することがあります。

ここでは,交通事故の損害賠償請求の際によく使われる平均収入をご紹介します。なお,賃金センサスの検索方法や平均収入の計算方法は,平成30年3月の私のブログでも取り上げておりますので,詳しくはそちらをご参照ください。

男女・学歴・全年齢計…497万2000円(平成29年:491万1500円)

男性・学歴・全年齢計…558万4500円(平成29年:551万7400円)

女性・学歴・全年齢計…382万6300円(平成29年:377万8200円)

このように,前年に比べて平均賃金が上昇傾向にあることが分かります。

離婚慰謝料に関する最高裁判決

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡です。

今月19日,離婚の慰謝料に関する注目の最高裁判決が出されました。この事案では,男性が,元妻の不倫相手に対して離婚に関する慰謝料を請求していました。しかし,最高裁は,離婚に関する慰謝料を不倫相手に請求することは原則としてできないとの判断をしました。

これだけを読むと,不倫相手に対する慰謝料の請求はできないのか,という誤解が生まれそうなので,詳しく見ていきたいと思います。

この最高裁判決を理解する上でポイントとなるのが,”不倫”の慰謝料と”離婚”の慰謝料は違う,という点です。

そもそも,配偶者が不倫をした場合,不倫された側には,配偶者とその不倫相手に対して不倫に関する慰謝料を請求する権利があります。そして,不倫の慰謝料請求権は,民法上,不法行為に基づく損害賠償請求権となり,3年で時効になってしまいます。今回のケースでは,男性が不倫を知ってからすでに3年以上が経過しており,男性の不倫相手に対する不倫の慰謝料請求権は時効にかかってしまっていました。そこで,男性は不倫から5年後の離婚を原因として,不倫相手に慰謝料を請求したのです。

もっとも,裁判所は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である」から,不倫相手が必ずしも離婚に関する不法行為責任を負うわけではなく,不倫相手に対する離婚を原因とする慰謝料請求が認められるのは,不倫相手が「単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」と判断しました。

以上をまとめると,①不倫相手に対する”不倫”の慰謝料請求は認められる(ただし,3年の時効に注意),②不倫相手に対する”離婚”の慰謝料は特段の事情がなければ認められない,ということになります。

今後の裁判では,この「特段の事情」に当たるか否かが争われるケースが出てくると思われます。判例の集積に注目していきたいと思います。

人身事故扱いにするか否か

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて,事故に遭ったばかりの方の交通事故の相談を受ける際に,よく聞かれるのが,人身事故扱いにした方がよいかどうか,という点です。

警察での交通事故の取り扱いは,人身事故と物件事故の2通りあります。両者の違いは,人身事故は簡単にいえば交通事故によって怪我人が出た,物件事故では車は壊れたが怪我人は出ていない,ということになります。また,物件事故扱いの場合には,警察の方で「物件事故報告書」という簡単な書類が作成されるのみですが,人身事故の場合には「実況見分調書」という事故状況が詳しく記載された書類が作成される点で違いがあります。

信号待ちで停止しているところに追突された場合のような被害者側に過失がない事故類型の場合には,人身事故扱いにしておいた方がよいでしょう。というのも,物件事故扱いのままだと,怪我の程度がそこまで大きくなかったのではないかと誤解されてしまうことがあるからです。

また,事故当事者の言い分が異なっており,過失割合に争いがあるような事故態様の場合には,実況見分調書が有力な証拠となる場合がありますので,人身事故扱いにしておいた方がよい場合があります。ただ,人身事故扱いにすると,被害者側にもある程度の過失割合が認められるような事故態様の場合,免許の点数が引かれたり,罰金等の刑罰が科されるリスクもありますので,ご注意ください。

相手方の任意保険会社からは,物件事故扱いのままでも怪我の対応はするからと言われることもありますが,それに従う必要はありません。警察の方も,事故から時間がたちすぎてしまうと人身事故扱いにできないといわれてしまうこともありますので,もしご心配であれば,早めに弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

弁護士費用特約

早いもので今年ももう終わりですね。来年は平成から新元号に変わるため,なにかと「平成最後の」というワードをよく耳にします。平成最後の年末年始,皆さんはどのように過ごされるのでしょうか。

さて,今回は,弁護士費用特約についてお話したいと思います。

弁護士費用特約は,自動車保険や生命保険,火災保険等の保険に付加される特約で,弁護士に法律相談をした際の法律相談料,依頼した際の着手金・成功報酬金等の費用を保険会社が負担してくれるものをいいます。

弁護士というと,やはり敷居が高くて相談しにくいというイメージを持たれる方が多くいらっしゃいます。その原因の一つが,費用が高いことにあると思います。確かに,法律相談だけで30分5000円~1万円かかることも多いので,費用が高いと思われることも当然と思います。しかし,弁護士費用特約に加入していれば,上限金額はありますが弁護士費用は保険会社が出してくれるので,気軽に相談・依頼をすることができます。

弁護士に相談をしたいと思われた場合には,自分の入っている保険の中に弁護士費用特約がないかチェックしてみてください。また,保険会社によっては,同居のご家族が加入している保険の弁護士費用特約を使える場合もありますので,併せてご確認ください。

交通事故の弁護士費用特約についてはこちらもご覧ください。

家事従事者の休業損害②

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡です。

今年の夏は特に暑かった印象ですが,ここ最近は風が肌寒くも感じるようになってまいりました。急な気温の変化に体調を崩しやすい季節ですので,皆様も体調には十分お気を付けください。

さて,前々回お話しした家事従事者の休業損害の続きです。前々回は,家事従事者の休業損害の算定方法についてお話しいたしましたが,今回は家事への支障をどのように主張したらよいのか,という点に触れたいと思います。

まず,事故前に比べて家事ができなくなってしまった,と抽象的に主張するだけでは不十分です。具体的にどのような家事に,どのような支障が生じてしまったのかを主張する必要があります。例えば,事故前は毎日食事を作っていたが,長時間立ちっぱなしだと首や腰の痛みが強くなってしまうので事故後はお弁当やお惣菜を買う機会が増えた,事故前は毎日掃除機をかけていたが,事故後は腰の痛みから前かがみになることができず週に1回に減ってしまった,事故前は一人で買い物に出かけていたが,事故後は重い物を持つことができなくなってしまったため夫に代わりに行ってもらうようになった,などです。

これらの事情は客観的な証拠で立証することはなかなか難しく,当事者の主張においてどれだけ説得的な事情を集められるかが重要になると思います。もっとも,このような事情を後から思いだすことはなかなか難しいので,事故に遭ったばかりの方や現在通院中という方は,事故後から日常生活で家事をするときに,事故前と比べてできなくなってしまったことや誰かに代わりにやってもらったことがあればメモしておくことをお勧めします。

名古屋駅法律事務所に移転

こんにちは。弁護士の松岡聡司です。

私はこれまで弁護士法人心本部で勤務していましたが,9月21日より勤務場所が弁護士法人心名古屋駅法律事務所【名古屋市中村区椿町18-22 ロータスビル4階】に移転いたしました。

勤務場所が移転したといっても,名古屋駅法律事務所も名古屋駅太閤通南口から徒歩2分の位置にあり,今まで勤務していた本部の向かいくらいの位置(徒歩で30秒くらい)ですので,ご来所いただく際にも以前とさほど変わりはない形になっております。また,提携の駐車場も従前通りオータケパーキング【愛知県名古屋市中村区椿町20-1】となっておりますので,お車でご来所される際にはこちらの駐車場にお止めください。

もっとも,勤務場所移転にともなって,電話番号及びFAX番号が変わりましたので,従来の電話番号で登録されている方は,知らない番号からかかってきたと思われてしまうかもしれません。お手数ではございますが新しい電話番号の方でご登録いただけると幸いです。

新しい電話番号及びFAX番号は以下の通りです。

TEL:052-485-9123

FAX:052-485-9124

ご迷惑をおかけいたしますが,今後ともよろしくお願いいたします。

家事従事者の休業損害①

こんにちは。名古屋の弁護士の松岡聡司です。

今回は,家事従事者,いわゆる主婦の休業損害についてお話します。

事故によって傷害を負い,その通院等のために仕事を休んだ場合の収入の減少を損害ととらえて相手方に請求することができます。もっとも,主婦の場合,日常生活上の家事で収入は発生していませんから,家事を休んだとしても「収入の減少」はありません。しかし,主婦が交通事故に遭って受傷し,家事ができなくなってしまった場合に休業損害を認めた裁判例が多数ありますので,示談交渉においても主張していくべきでしょう。

では,主婦の休業損害はどのようにして計算されるのでしょうか。

①自賠責保険基準

自賠責保険基準では,家事への支障が認められる日数(通院日数が基準になる場合が多い)×5700円で計算されます。

②裁判基準

裁判基準では,賃金センサス(3月1日のブログにて取り上げました。)を基に一日当たりの基礎収入が算出され,事故前と比較して何パーセントくらい家事ができなかったかを掛け合わせて導かれます。

例えば,事故後10日間入院しその間は何も家事ができず,退院後20日間は事故前と比べて50パーセントくらいしか家事ができず,その後1カ月間は少しずつ症状が良くなり事故前と比べても30パーセントくらいの支障にとどまった,という場合でみると,「一日当たりの基礎収入×10日×100%+基礎収入×20日×50%+基礎収入×30日×30%」という計算に基づいて休業損害の金額が導かれます。

少し長くなってきたので,次回ももう少し家事従事者の休業損害についてお話ししようと思います。

専業主婦の基礎収入についてはこちらもご覧ください。