相続に関する民法の改正で,相続人以外の親族が,被相続人に対する療養看護その他の労務の提供により,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をすると,特別寄与料という金銭を請求できるようになりました。
これまで,例えば,長男の妻が,義理の父親の面倒を見たり,義理の父親の事業を手伝っていたとしても,長男の妻の貢献はあくまでも相続人である「長男の貢献の一部」としてしか評価されませんでした。
今回の法改正では,被相続人の「親族」(①6親等内の血族,②配偶者,③3親等内の姻族)であることが要件となっていますが,特別の寄与をした場合に貢献に応じて,特別寄与料を請求できる者の範囲が広がりました。
ただ,弁護士としては,法律上・実務上の問題点も気になります。
特別寄与料の請求は,あくまでも,「特別の寄与」であることが必要です。
ですので,これまでも扶養義務が存在する相続人の場合は,その「扶養義務」(民法877条1項)の範囲を超えるほどの「特別な」寄与が必要でした。
今回の法改正で特別寄与者として認められた「親族」のなかには,民法上の「扶養義務」を負っていない者も含まれますので,法解釈上は,「扶養義務」を負っている親族が行った貢献と「扶養義務」を負っていない親族が行った貢献では,「扶養義務」を負っていない親族が行った貢献の方が,「特別な寄与」として認められやすいのではないか,という解釈があり得ます。
果たしてこれが妥当なのか,どこまで認められるのか,という点は,今後の裁判例の蓄積を待たなければなりませんが,弁護士としては,どこまで認められるのかはっきりしない特別寄与料に頼るのではなく,貢献してくれた方には,遺言書を作成し,遺贈でその貢献に報いてあげて欲しいところです。