民法(相続関係)等の改正

1月16日に内閣法制審議会で民法の相続部分に関する改正の部会が行われ,要綱案が発表されました。

配偶者の居住権を保護するための方策や遺産分割に関して配偶者をより保護するための方策,遺言書に関する制度の見直し,遺贈の担保責任,遺言執行者の権限の明確化,遺留分制度の見直し等が議論されたようです。

配偶者の居住権について,これまで判例では,被相続人が亡くなった後も当然配偶者を家に住まわせるつもりだっただろうとして,使用借権を認めていましたが,立法上の手当がなされるようです。

遺産分割に関しては,配偶者への特別受益について,一定の場合には持戻し免除の意思表示が推定されるようです。

要綱案では,民法903条を「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,他の一方に対し,その居住のように供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは,民法903条3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定する」との文言が追加されるようです。

更に,仮払制度も創設されるようですね。

一昨年の最高裁判所の大法廷判決で,被相続人の預金を相続人が法定相続分相当の払戻しを行うこともできなくなっていましたが,これでは債務の弁済や相続人の生活費もまかなうことができないという問題もありました。

補足意見等では,保全等の手続きで仮払いする方法の提示もありましたが,実務的にはどのような運用になるのか不透明なままでした。

今回の改正では,「家庭裁判所は遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは,その申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を,その者に仮に取得させることができる」との条項が加えられるようです。

なお,但書では,「他の共同相続人の利益を害するときは,この限りではない」との文言が入るようです。

相続人に対する一時的な救済措置にはなりますが,調停や審判の申立てが前提になりますので,迅速性が求められる場合には対応できないのでは?との疑問もありましたが,その疑問に答える形で,更に家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める制度ができるようです。

要綱案によれば,「各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,その相続開始の時の債権額の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額については,単独でその権利を行使することができる」との規定が設けられるようです。

相続財産の額にもよりますが,取り急ぎの対応としては,この単独権利行使で生活費等を確保し,調停申立て後,必要があれば請求する,という形になりそうです。

要綱案の他の規定につきましては,後日ご紹介します。


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