民法が大幅に改正されますが,相続法も改正の対象となっています。
主な改正点は,
1 配偶者の居住権の保護
2 遺産分割に関する仮払制度の明確化等の見直し
3 遺言制度に関する自筆証書遺言の保管等の見直し
4 遺留分制度に関する見直し
5 相続の効力に関する見直し
6 相続人以外の貢献を考慮するための制度
です。
今日は,「1 配偶者の居住権の保護」について説明します。
【夫が所有している自宅に夫と住んでいたが,先日,夫が亡くなってしまった。
相続人は,私と息子の二人ですが,私はいつまで自宅に住むことができるのでしょうか。】
このような場合,民法の大原則から考えますと,遺された妻と息子が自宅についてそれぞれ2分の1の潜在的な持分を有していますので,妻だけが自宅に住み続けているのであれば,妻だけが家賃相当額の利益を得ているようにも思えます。
ただ,通常,亡くなった夫は,妻が自分の死後も自宅に住み続けることは想定していたと思われます。
そのため,判例では,被相続人(夫)と同居していた相続人(妻)の間に,遺産分割が終わるまでの間は,無償で自宅を使用し続けても構わないという使用貸借契約が成立していた,と考え,配偶者に短期の居住権を認めていました。
今回の相続法の改正では,このような判例の趣旨を受けて,
① 配偶者が被相続人所有の建物に,仮に所有者が変わっても終身または一定期間という比較的長い間,無償で住み続けられる権利(配偶者居住権),
② 配偶者が被相続人所有の建物に,死亡から遺産分割によって建物の帰属が確定するまでの比較的短い間,無償で住み続けられる権利(配偶者短期居住権),
を認めることにしました。
配偶者の保護を考えた改正ですが,配偶者以外の相続人にとっては,一定の不利益を受けることにもなりますので,ご生前の対策をきちんとされていないと思わぬ家族間の争いに発展するかもしれません。
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