音楽教室での楽曲使用と著作権

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

最近、著作権関連で興味深いニュースがありました。

JASRACと「音楽協会を守る会」が共同記者会見を開き、音楽教室での楽曲使用料について、従来よりも大幅に引き下げる合意がなされました。

どういうことかといいますと、楽曲を作詞、作曲した製作者には楽曲についての「著作権」が、その楽曲を実演するアーティストやレコードを製作するレコード会社には「著作隣接権」が発生します。

そして、音楽教室は、生徒に歌や楽器を指導する中で楽曲を使用する場合、上記の楽曲使用料を教室側が支払わなければならず、支払い先はこれらの楽曲に関する著作権等を取りまとめる管理団体である日本音楽著作権協会(JASRAC)です。

従来、音楽教室は、JASRACに対し、JASRACの楽曲を使用した講座の受講料の2.5%を支払うこととされていました。

この楽曲使用料の支払いが音楽教室側に重くのしかかり、この楽曲使用料の徴収を不当と考えた音楽教室側は、音楽教室での楽曲使用には著作権のうちの演奏権(楽曲等の著作物を、公衆に直接見せまたは聞かせることを目的として上演し、または演奏等する権利)が及ばないとして、JASRACを相手取り、訴訟を提起しておりました。

そして、令和4年10月24日に、最高裁判所は、音楽教室の教師の楽曲演奏については音楽教室が楽曲使用料を支払う義務があると判断する一方、音楽教室に通う生徒にはその義務はないとの判決を出しました。

この最高裁判決を受け、JASRACと「音楽協会を守る会」が音楽教室における楽曲使用を巡り交渉を進めてきましたが、このたびの合意で、音楽教室とJASRACとの間で年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合、音楽教室に通う生徒一人あたり年間750円(中学生以下は一人あたり年間100円)とされ、従来よりも徴収額が大幅に引き下げられることになりそうです。

また、生徒による楽曲演奏は使用料支払いの対象ではないことが明記されたほか、個人経営の音楽教室は使用料支払いの対象外とされました。

この合意により、特に若年層の演奏人口の減少が叫ばれる中、日本の音楽文化の後退の阻止に期待が寄せられます。

私も音楽が好きで、今回のニュースは大変興味深かったため、取り上げさせていただきました。