名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。
最近、交通事故訴訟の控訴審で、大阪高裁にて死亡逸失利益に関して注目すべき判決が出されました。
聴覚障害がある女児が交通事故でお亡くなりになり、事故に遭わなければ将来得られたはずの逸失利益が争われた訴訟において、逸失利益の算定の基礎となる基礎収入について、大阪高裁は、全労働者の平均賃金から減額せずに(つまり健常者と同等に)算出された金額を加害者側に命じました。
一審判決では、基礎収入を全労働者の平均賃金の85%で算出していたため、この点が変更されたことになります。
死亡逸失利益を請求する場合、被害者が生前に障害をお持ちの場合は、相手方から、健常者と全く同等に仕事をすることができたとは考えられず健常者と同等の基礎収入で算出することは認められないという反論が出ることが通常です。
しかし、本件では、被害者の方が学年相応の学力等を身に着けていたこと、近年のデジタル機器の進歩や社会変化も相まって合理的配慮がされる就労環境を獲得し、健常者と同じ条件で働くことができたと予測できるとされ、障害を理由に減額することを許さない判断がなされました。
障害がある未成年者の逸失利益が争われるケースで、基礎収入を全労働者の平均賃金と同等の基礎収入で算定することを認めた判決は初であると言われています。
もちろん、今回の判決は本件の個別具体的な事情が考慮されての判断になりますので、今後同種の案件で同様の判決が得られるとは限りませんが、本件をご担当された弁護団の方々のように、個別具体的な事情を熱心に主張立証するという姿勢は弁護士として非常に尊敬に値します。