人身事故扱いにすべきか

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

以前も取り上げたことがありますが、交通事故のご相談を受けるなかで、非常に多くの方からご質問いただくのが、人身事故扱いにすべきか否かです。

人身事故扱いとは、交通事故に遭った場合に、警察に診断書を提出すれば人身事故扱いとされます。

これをすべきか否かで悩まれる方が非常に多いのです。

まず、人身事故扱いとしなければ、その事故は物損があれば物損事故扱いとなります。

物損事故扱いとなっていれば、怪我が軽かったのではないかという推定がなされてしまう可能性は否定できません。

そうすると、加害者側保険会社から治療費を早期に打ち切られたり、後遺障害が残ったとしても適切な後遺症認定が受けられない等のおそれがあることは否めません。

また、事故状況に争いがある場合は、人身事故扱いとしておかなければ、警察の現場での詳しい実況見分等がなされないという点もリスクとなります。

というのは、ドライブレコーダー等があれば事故状況の争いは解決することが多いですが、ない場合には、警察の作成する実況見分調書が有力な資料となることがあります。

しかしながら、物損事故のままでは事故現場の実況見分等の詳細な捜査は行われず、実況見分調書は作成されません。

ごく簡単な「物件事故報告書」が作成されるのみとなり、過失割合の交渉の材料としては不十分なことも多いです。

従って、これらのリスクに鑑みると、事故に遭い、怪我をされたのであれば、基本的には人身事故扱いにする方が良いと言えます。

ただし、自身が刑事処分等の不利益を受けるリスクにも注意が必要です。

すなわち、人身事故扱いとする場合は、警察は、人身事故の届け出を受け、捜査を開始する段階ではどちらが被害者・加害者かは確定しておらず、フラットな状態で捜査を開始します。そこで、場合によっては届け出をしたご自身が刑事処分や免許の減点・停止・取消等の対象となるリスクも無くはないです。

この辺りはケースバイケースになりますので、弁護士にご相談してもよいかもしれません。

また、加害者が車両の運転を仕事で行う場合に、免許を取り消されると仕事ができないとして人身事故扱いにしないよう懇願されるケースもあります。

保険会社の実務としても、人身事故扱いとしないからといって、人身事故扱いにされると困る加害者の事情も考慮して、直ちに治療の面で不利益な取り扱いをすることは、近時では少なくなっているようです。

そこで、場合によっては人身事故扱いにしないことも有り得ると思います。

その場合は、治療費の対応は十分にしてもらえるよう、あらかじめ保険会社と相談しておくことをおすすめします。

死亡逸失利益の基礎収入について

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

最近、交通事故訴訟の控訴審で、大阪高裁にて死亡逸失利益に関して注目すべき判決が出されました。

聴覚障害がある女児が交通事故でお亡くなりになり、事故に遭わなければ将来得られたはずの逸失利益が争われた訴訟において、逸失利益の算定の基礎となる基礎収入について、大阪高裁は、全労働者の平均賃金から減額せずに(つまり健常者と同等に)算出された金額を加害者側に命じました。

一審判決では、基礎収入を全労働者の平均賃金の85%で算出していたため、この点が変更されたことになります。

死亡逸失利益を請求する場合、被害者が生前に障害をお持ちの場合は、相手方から、健常者と全く同等に仕事をすることができたとは考えられず健常者と同等の基礎収入で算出することは認められないという反論が出ることが通常です。

しかし、本件では、被害者の方が学年相応の学力等を身に着けていたこと、近年のデジタル機器の進歩や社会変化も相まって合理的配慮がされる就労環境を獲得し、健常者と同じ条件で働くことができたと予測できるとされ、障害を理由に減額することを許さない判断がなされました。

障害がある未成年者の逸失利益が争われるケースで、基礎収入を全労働者の平均賃金と同等の基礎収入で算定することを認めた判決は初であると言われています。

もちろん、今回の判決は本件の個別具体的な事情が考慮されての判断になりますので、今後同種の案件で同様の判決が得られるとは限りませんが、本件をご担当された弁護団の方々のように、個別具体的な事情を熱心に主張立証するという姿勢は弁護士として非常に尊敬に値します。

NASVAをご存じでしょうか?

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

本日は、NASVAについて簡単に触れたいと思います。

NASVAは意外と知られていないのですが、知っていると交通事故被害者にとってメリットとなることがあります。

NASVA(ナスバ)とは、独立行政法人自動車事故対策機構が正式名称であり、独立行政法人自動車事故対策機構法という法律によって設置されたものです。

NASVAは、交通事故の被害者に対し、介護料の支給、重度後遺障害者の受け入れ施設の運営、育成資金の無利子貸付等の業務を行っています。

NASVAの業務のうち、交通事故に関する弁護士業務との関連が特に深いのが、介護料の支給です。

交通事故に遭い、重い後遺障害が残り、介護が必要になった場合、NSAVAから介護料として毎月一定額の支給を受けることができます。

自賠責保険における後遺障害等級第1級また第2級に認定された者であること等が支給要件となります。

労災保険や介護保険等で介護給付を受けている場合は、NASVAの介護料の支給は受けられません。

もっとも、未だ労災保険等からの介護給付を受けていない場合は、NASVAからの介護給付も受けられますので、NASVAも選択肢に入れたほうが良いかもしれません。

なぜなら、労災保険からの介護給付は、示談または判決時までに現実に支払われたか支払いが確定している額については損益相殺の対象となり、加害者側からの賠償額から控除されます。

しかし、NASVAからの介護給付はこのような損益相殺の対象とはなりませんので、賠償金から控除されることはありません。

従って、NASVAからの介護給付を選択した場合、結果として加害者から受け取れる賠償金額が多くなることもあります。

交通事故に遭い、重い障害が残ってしまった方やそのご家族の方は、将来の介護費用については一度NASVAにご相談されても良いかもしれません。

 

 

高次脳機能障害と素因減額

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

交通事故で高次脳機能障害が残ってしまった被害者の方のご相談を受けていると、相手方保険会社から素因減額を主張されているケースが時折あります。

まず、素因減額って何?ということですが、素因減額というのは、交通事故の被害者が、事故前から持病等を持っており、それが損害の発生ないし拡大に寄与した場合、これを考慮して損害額を減額する理論です。

そして、最高裁判所の判例において、民法722条2項(過失相殺の規定)を類推適用することで、素因減額を認めるという判断がなされ、現在の実務では、素因減額を認める処理が定着していると言えます。

ここで、高次脳機能障害でも素因減額が肯定される場合があります。

過去の裁判例では、被害者に脳梗塞があった場合、一般的に脳梗塞を罹患している患者が頭部に外傷を受けた場合は、脳に障害がないものに比べ、脳外傷による症状が重くなること等を理由として、20%~30%の減額を認める傾向にあるようです。

また、高齢による脳自体の加齢変化や、精神分裂病を理由として素因減額を認めたものもあります。

他方で、事故前に有していた疾患が事故直前はほぼ落ち着いており、事故の衝撃自体が高次脳機能障害を発生してもおかしくない程度であった場合は、素因減額を否定する傾向にあるようです。

この点、仮に素因減額をされてしまう事案なのだとしても、相手方保険会社からは、過剰な素因減額の主張がなされることがあります。

そこで、このような場合は必ず弁護士に相談しましょう。

そもそも、その事案で素因減額がなされることが相当なのか、素因減額がなされてること自体は仕方ないとしても、その割合が妥当なのか、アドバイスが受けられます。

将来の介護費用を算定するにあたっての注意点

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

交通事故で重度な後遺障害が残ってしまった被害者からのご依頼をいただくことも多くあります。

高次脳機能障害や四肢麻痺が残ってしまい、後遺障害等級1級や2級が認定されるような被害者の方もいらっしゃいます。

このような方の場合は将来の介護費用を請求しなくてはなりません。

将来の介護費用は、障害が残ってしまい、他者の介護が必要となった被害者の方にとって、まさに生活に直結する重要な問題です。

ところが、この将来の介護費用は適切に算定し、請求しなければ、加害者側からは低額の金額の提示しかもらえず、そのまま示談してしまえば被害者の方が大きく損をすることもしばしばあります。

この将来の介護費は、親族等が介護する場合、ヘルパーの方などの職業付添人による介護を受ける場合、職業付添人によるとして在宅介護の場合と施設介護の場合等の様々な場合がありますので、それぞれの場合に応じて適切に算定しなければなりません。

親族介護の場合は、過去の裁判例を見ると8000円~10000円程度で認定されることが多いですが、加害者側からはもっと低額な金額で提示されることが多いですので、しっかりと交渉しなければなりません。

職業付添人による介護を受ける場合は、実際にかかる費用の実費をベースとして算定されます。

後遺障害が認定されてから、示談または訴訟までにある程度の介護の実績があれば算定しやすいですが、未だ介護の期間が短いなどで実績が不十分な場合は、実績ができあがるのを待って示談や訴訟を起こすことが必要な場合もあります。

また、親族も加齢により介護ができなくなることもあるため、将来は職業付添人による介護に移行する可能性も踏まえて算定する必要があることもあります。

いずれにせよ、将来かかるであろう介護費用を、綿密な予測の上、算定しなければならず、将来の介護費用を請求する場合は弁護士に依頼した方がよいでしょう。

 

 

ゴールド免許

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

9月に入り、暑さがいったん落ち着いたかと思いましたが、9月下旬になってまた暑さがぶり返してきました。

さわやかな秋晴れの日が待ち遠しいですね。

さて、私は普段、自動車の運転をしますが、免許の更新時期が来ました。

そして、この度、前回の更新から5年間、無事故・無違反で運転してきましたので、ゴールド免許へと昇格となりました!

交通事故案件を扱っている弁護士として、誇らしいですね。

弁護士として交通事故案件を扱っていることと、この5年間、無事故・無違反でこられたことは、決して無関係ではないと思います。

年間500件以上の交通事故のご相談に乗らせていただき、対応させていただいておりますので、交通事故がどのような状況で起こるのか、ある程度はわかります。

そうすると、自然と、事故に遭いやすい状況を避けた運転をするようになりました。

例えば、非常に多い十字路での出会い頭の事故を避けるため、十字路では、こちらに一時停止が無くても、必ず停止するようになりました。

おかげで一時停止違反の車が目の前を勢いよく横切って行ったときなどは、腹も立ちますが、停止して本当に良かったと胸を撫でおろします。

他には、車線変更の際は、余裕をもって指示器を出し、ミラーだけではなく、振り返って必ず目視してから車線変更します。

ミラーだけですと、死角で2輪車を巻き込んでしまうおそれがありますから。

また、駐車場を通るときも、駐車スペース部分から出てくる車両に相当気をつけて走行するようになりました。

後ろからの追突等の完全なる貰い事故は避け難いですが、交通事故案件を扱っている弁護士として恥ずかしくないよう、これからも安全運転を心掛けたいと思います。

交通事故の示談交渉は弁護士へ

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

交通事故に遭われた方の相談にのっていると、つくづく患者様が自分で相手方と交渉することの大変さを感じます。

示談相手となる保険会社は、交渉のプロであり、交通事故に関する知識は被害者側とは比べ物になりません。

また、保険会社は交通事故被害者への対応を日常的に行っているため、交渉慣れもしています。

これに対して、交通事故の被害者は、保険会社に対して何をどこまで請求してよいのかわかりません。

適切な金額の相場もわかりません。

交通事故の被害者が、まったく知らなかったことを調べながら、保険会社の担当者と対等に交渉を行う難しさやストレスは、並み大抵のものではありません。

そこで、保険会社との示談交渉は、弁護士に依頼することをお勧めします。

弁護士に依頼することで、保険会社対応からのストレスから解放されましょう。

弁護士に依頼すれば、必要な資料の収集や、煩雑な保険会社との交渉を弁護士に任せることができるため、被害者の負担は大幅に減ります。

また、保険会社から提示される示談金額は、不当に低額である場合もあり、弁護士に依頼すれば、示談金額も弁護士が適切な金額を算定し交渉することで、被害者自身が交渉するよりも高額になる可能性が高いです。

 

銀座法律事務所オープン!

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っております、弁護士の青山です。

東海地方は、2日前に梅雨明けしましたが、異常な暑さで、事務所に出勤するだけでも体力を奪われますね。

熱中症や、夏バテには気をつけましょう。

また、最近コロナが第11波?(もう何回も起きすぎて何波かもわからなくなりますね)が到来したともいわれるほど、再燃していますね。

暑い中マスクをするのは本当にしんどいですが、人が多いところへ行く際にはつけるように気をつけています。

さて、少し前になりますが、弁護士法人心銀座法律事務所がオープンしました!

銀座1丁目駅4分、宝町駅3分、京橋駅6分のアクセス便利な立地にございます。

車でお越しの方のために、近隣の有料駐車場で駐車料金をサービスさせていただくことも可能です(特定の駐車場に限ります)。

弁護士法人心銀座法律事務所の詳細はこちら

もちろん、弁護士法人心の他の事務所同様、電話相談も可能です。

これで、東京都内は東京法律事務所、池袋法律事務所に加え3店舗目になります。

また、隣県の神奈川県には横浜法律事務所、千葉県には千葉法律事務所、船橋法律事務所、柏法律事務所もございますので、関東地方では7店舗目になります。

これも、日ごろから弁護士法人心を信頼し、ご依頼くださる皆様のおかげです。

今後も、弁護士法人心は関東地方のみならず、日本全国の皆様のお力になれるよう努力してまいりますので、今後も弁護士法人心をよろしくお願いいたします。

 

遷延性意識障害

名古屋で交通事故案件を中心に扱っている弁護士の青山です。

交通事故の被害者の方の中には、頭部外傷によって遷延性意識障害になってしまう方もいらっしゃいます。

この「遷延性意識障害」とは、いわゆる「植物状態」のことを指します。

呼吸はでき、循環機能も保たれ、その他の自律神経機能は維持されていますが、運動・知覚機能や知能活動がほぼ欠如した状態です。

日本脳神経外科学会が定めた基準によれば、次の1~7に該当すれば「遷延性意識障害」と判断されます。

1 自力での移動が不可能であること

2 有意な発語ができないこと

3 意思疎通がとれないこと

4 眼でかろうじて物を追うことがあっても、それを認識することができないこと

5 自力での飲食ができないこと

6 大・小便を漏らしてしまうこと

7 以上の状態が、治療にかかわらず3カ月以上続いていること

遷延性意識障害となった被害者ご自身が非常にお気の毒であるのはもちろんですが、そのご家族にも、極めて過酷な介護生活が待ち受けています。

遷延性意識障害の患者はご自身では何もすることができず、寝たきりの状態です。

食事をとれず、着替えもできず、寝返りを打つこともできず、排せつや入浴等の基本的な日常生活上の動作もできません。

これらは全てご家族等が介助しなければなりません。

それこそ、24時間365日の他人による介護が必要となります。

遷延性意識障害になると、自賠責における後遺障害等級では、常時介護が必要であるとして、最も重い1級の後遺障害が認定されます。

このような遷延性意識障害となった場合、慰謝料、後遺障害逸失利益、将来の介護費用等、十分な金額が賠償されなければなりません。

そこで、遷延性意識障害となった場合は、示談する際には、交通事故に強い弁護士を入れることを強くお勧めします。

 

 

事故で営業用の車両が使えなくなった場合

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

交通事故に遭った被害車両がタクシーやトラックなどの営業用の車両である場合、修理や買い替えに必要な期間これらの車両を使用できなかったことで、上げられなかった利益分について、損害が発生する場合があります。

このような問題は、「休車損害」の問題と言われます。

そして、この場合、基本的には、交通事故に遭った営業用車両を使用できていれば得られたであろう純益について、請求することが出来ます。

休車損害の計算方法は、

1日あたりの損害額×休車を要した日数

で計算します。

一日あたりの損害額は、通常、

(事故前のある一定期間の売上額-休車によって支払いを免れた支出額)÷日数

で計算されます。

事故車両を買替える場合、買い替えの判断に要する期間と新規購入車両の納入に要する期間をもとに認定することになりますが、営業用車両の場合、営業用車両としての許可を受けるために必要な期間がかかることもあるので注意が必要です。

この「不要となった支出額に当たる経費」は何かについて、しばしば問題となります。

裁判例では、貨物自動車の休車損害について、事故前三か月の売上から人件費、燃料、油脂代、タイヤ・チューブ代を控除した日額をもとに、修理費見積および修理に必要な期間分の損害を認定した例などがあります。

休車していたとしても、支出を避けられない固定経費については、「休車によって支払いを免れた支出」とは言えないとして、売り上げから控除すべきでないとする議論もあります。

休車損害の認定は比較的厳格になされ、代車が出ていて代車料が支払われる場合、休車損害は認められません。

交通事故車両以外に遊休車両があり、これを利用できる場合にも、休車損害は否定されますので、他に代替車両が無いことを主張、立証していくことが必要になります。

また、休車期間についても、休車していた期間すべての分について休車損害が認定されるとは限らず、一定の期間分に制限すべきだという主張が加害者側から出ることもありますので、この場合はこちらの主張する休車期間が妥当なんだということをしっかりと主張、立証していかなければなりません。

 

 

高次脳機能障害と紛争処理機構に対する紛争処理手続の申請

名古屋で交通事故案件を取り扱っている弁護士の青山です。

高次脳機能障害をはじめとして、重い後遺障害が残った被害者について、自賠責保険に後遺障害の申請をしたものの、思っていたよりも後遺障害の等級が低かったため、より重い等級を獲得できないか、というご相談をいただくことがよくあります。

高次脳機能障害をはじめとする後遺障害等級について不服を申し立てるには、最も典型的な手段は、自賠責保険に対する異議申立てです。

では、自賠責保険への異議申し立てでも等級が変わらない場合、裁判を起こすしかないのでしょうか?

実は、裁判を起こす前に、紛争処理機構に対する紛争処理手続の申請という方法があります。

実際に、私も高次脳機能障害のケースで、この方法をとることはあります。

紛争処理機構とは、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構を正式名称とし、平成14年4月1日に改正された自動車損害賠償保障法に基づき設立された、裁判外紛争処理機関(ADR)です。

自賠責保険の判断に不服がある場合には、紛争処理機構に紛争処理手続きの申請をすることで、不服申立をすることができます。

自賠責保険とは別の判断主体になりますので、偏見なく、中立な判断者による判断が期待できます。

自賠責保険への異議申し立てでも後遺障害等級が変わらなかった場合は、裁判を起こす前に、紛争処理機構に対する紛争処理手続の申請をしてもよいかもしれません。

交通事故で裁判になる可能性

名古屋で交通事故案件を中心に扱っている弁護士の青山です。

交通事故の相談を受けていると、この件は裁判になりますか?という質問を受けることがよくあります。

実際、弁護士が依頼を受けるケースのうちで、裁判になる割合は少ないです。

多くのケースでは、加害者側と示談となります。

もっとも、中には示談できず、裁判をしなければならない場合もあります。

例えば、過失割合で争いがある場合です。

双方に過失がある場合には、その過失割合を巡って争いがあれば裁判になる可能性が高くなります。

事故状況に争いがあり、ドライブレコーダーや目撃証言等の証拠がない場合です。

また、治療期間で双方の主張に差がある場合があります。

例えば、被害者側が半年間の治療費、慰謝料等を請求したところ、加害者側からこの事故で半年もの治療を要するはずがない、治療期間は3か月程度が相当だという主張がなされたような場合です。

他には、加害者側が任意保険に未加入の場合も訴訟になる可能性が比較的高いです。

加害者側が保険に加入していない場合、加害者側は支払能力がない場合が多く、治療費や慰謝料を請求しても、スムーズに支払ってくれない場合が多く、裁判を起こさざるを得ないのです。。

 

高次脳機能障害と成年後見等

名古屋で交通事故案件を取り扱っている弁護士の青山です。

高次脳機能障害が残ってしまった被害者の方からのご相談は非常に多いです。

その際に気を付けることは、被害者の方の判断能力です。

判断能力があまりにも低下している場合は、被害者の方自身が弁護士との契約や示談内容などを理解できないため、成年後見人などを付けなければご依頼を受けることができないこともあります。

この場合は、成年後見開始の審判の申し立て等をして、成年後見人からご依頼を受ける、という形で示談交渉等を行います。

契約の途中で判断能力に問題がありそうなことが判明した場合にも、成年後見の申し立てをご提案し、改めて成年後見人から、ご依頼を受けます。

このようにしなければ、後々誰かから示談内容について疑義を出され、本人が判断能力がない状態で示談したとして、示談の無効を主張されたりするリスクも0ではないからです。

成年後見人を立てる必要がある場合、家庭裁判所への後見開始の審判の申し立てが必要ですが、被害者やそのご家族の方がやるとなると、難しいですし負担も大きいです。

そこで、交通事故の損害賠償と併せ、後見開始の審判の申し立てもご依頼いただくことが可能です。

一度ご相談ください。

 

高次脳機能障害と将来の介護費

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

最近でも、事故に遭い、頭部を強く打つなどして高次脳機能障害が残りそうな被害者の方からのご相談を受けます。

高次脳機能障害が認定された場合、賠償金の交渉の際には弁護士に依頼した方が良いです。

認定された後遺障害の等級が1級か2級である場合、1級と2級は介護が必要であることを念頭に置かれた等級であるため、将来の介護費用も通常認められます。

なお、1級は常時介護を要し、2級は常時まではいかないものの随時介護を要する等級です。

これに対し、3級以下の場合は、介護を要することが念頭に置かれた等級ではないので、加害者や保険会社側からは、将来の介護費用は認めない、という主張が出てくることが多いです。

しかし、3級以下であっても、介護や見守りが必要な場合には、介護日額は1級や2級よりも少なくなりますが、将来の介護費用を認める裁判例も多数出ております。

そこで、弁護士に依頼し、被害者の状況と類似した裁判例を指摘するなどして、将来の介護費用を認めてもらう必要があります。

将来の介護費用は高次脳機能障害の賠償項目の中でも特に金額が大きい項目ですので、介護が必要な状態であるにもかかわらず、全く将来の介護費用が認められないか、金額が少ない場合には、安易に示談せず、必ず弁護士に相談することをお勧めします。

 

 

高次脳機能障害の目安

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

今回も高次脳機能障害に関する記事です。

これまでも私のブログでは高次脳機能障害の記事を多数書いてきましたが、高次脳機能障害は、ご本人やご家族でも気づきにくいことが多いです。

被害者の方が頭を打つなどして生死の境をさまようような状態が続いた後、奇跡的に意識が回復すれば、家族もそのような奇跡を喜ぶあまり、被害者の事故前と事故後の小さな変化を見落としてしまうことが意外とあります。

事故により高次脳機能障害が残るか否かの目安は、概ね3つです。

①交通事故後による脳外傷を裏付ける画像所見

事故後に撮影された脳のCT・MRIでくも膜下出血、硬膜下血腫、その他の脳出血の存在や、脳挫傷痕が確認されること。

ただし、CTやMRIではDAI(びまん性軸索損傷)が発症している場合に、DAIの発生を確認することが困難です。

なぜなら、DAIは大脳白質部内部に張り巡らされた細かな神経コードの断線が推定される症状ですが、この神経コードそのものは、現在の画像技術では撮影できないためです。

DAIについては、また別の機会に記事を書きます。

②一定期間の意識障害の継続

事故後から、半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態が6時間以上継続すると高次脳機能障害の発生の可能性が高まる、と言われています。

また、上記のほどまでは至らない軽度な意識障害であっても、1週間以上続くと高次脳機能障害の発生の可能性がある、と言われています。

③高次脳機能障害に特有の異常な傾向が生じていること

怒りっぽくなった、感情の起伏が激しくなった、忘れっぽくなった、一つの作業を集中して行うことができなくなった、周囲の人間と衝突しやすくなった等の異常な傾向が生じていれば、高次脳機能障害の症状と考えられます。

交通事故に遭い、頭部を受傷した被害者の方は、奇跡的に意識を取り戻すなどの回復を見せたとしても、このような目安に照らして高次脳機能障害がないか、ご家族とともに確認することが重要です。

 

 

 

 

高次脳機能障害ではいつ頃後遺障害を申請すべき?

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

ようやく暑さも落ち着いてきた感がありますが、いかがお過ごしでしょうか。

交通事故に遭い、高次脳機能障害の残った方やそのご家族からのご相談をよく受けます。

そして、高次脳機能障害は治療が長くなることが多いので、どのタイミングで症状固定として後遺障害の申請をするか、悩まれるケースが多いです。

基本的には、それ以上は回復の見込みがないと主治医が判断した時点が症状固定時期となります。

もっとも、高次脳機能障害の場合、身体機能障害や認知機能障害だけではなく、常識的な行動がとれなくなったり、周囲との調和がとれなくなるという、社会行動障害の回復の程度も考慮して判断しなければなりません。

そのため、学生であれば、復学をして学業に耐えられるか一定期間様子を見てからでなければ症状固定となったか判断できない場合があります。

社会人であれば、職場復帰した後、業務内容や周囲との調和等の様々な観点から、労働に耐えうるか一定の期間様子を見なければ、症状固定となったか判断できない場合があります。

また、乳幼児の場合、回復したか、更なる回復の可能性があるかは、成人の患者に比べて判断しにくい場合が多く、保育園等で集団生活を開始する時期、あるいは、就学を開始する時期まで適応状況を調査する必要があり、後遺障害の申請をするタイミングもその後になることがあります。

しかしながら、保険会社からは、比較的早期に「症状固定なので早く後遺障害の申請をしてほしい」、という要請をされることがしばしばあります。

このような場合は、医師と相談の上、被害者の生活状況も考慮に入れつつ、症状固定時期をもう少し先にするなどの交渉が必要です。

そして、是非一度当法人までご相談ください。

 

高次脳機能障害は見落とされることがある

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

交通事故に遭い、頭部に衝撃を受けた場合、高次脳機能障害が残ることがあります。

この高次脳機能障害というものは、将来にわたって障害が残るにもかかわらず、意外と見落とされることがあるなぁ、とよく感じます。

まず、医師も見落とすことがあります。

なぜなら、脳挫傷、外傷性くも膜下出血等の診断名がついていれば、脳のMRIやCT画像でも明確に異常所見が映るため、見落とされることが少なくなりますが、いわゆるびまん性軸索損傷の場合は、画像撮影の技術的な限界で、異常が確認できないことが多いです。

そこで、画像上は一見、異常が明らかでなくても、本人が何となく怒りっぽくなった、物忘れがある、周りの人間との衝突が多くなった等がないか、家族等の見守りが極めて重要になります。

また、被害者である高次脳機能障害患者自身が、高次脳機能障害について自覚を持ちにくいことも、高次脳機能障害が見落とされやすい要因です。

被害者自身には、病識がないゆえに、患者自身の客観的な能力と、患者自身の自己認識のギャップが、思わぬ事故を呼び、初めて高次脳機能障害が判明することもあります。

更に、発覚までに時間がかかること場合があります。

例えば、交通事故に遭った場合、事故直後の時点では高次脳機能障害が明らかではなくても、成長し、大人になって仕事を始めたときに、初めて周囲となじめない等で社会的な適応能力の問題が発覚し、高次脳機能障害が発覚することもあります。

このような高次脳機能障害を見落とさないためにも、交通事故に遭い、頭部に衝撃を受けた場合は、医師に詳しく検査をしてもらうこと、家族の見守りが極めて重要となりますが、損害賠償の観点から弁護士がアドバイスできることもありますので、一度ご相談ください。

 

 

高次脳機能障害と等級

名古屋で交通事故案件を中心に扱っている弁護士の青山です。

交通事故案件を多数扱っていると、頭部外傷を負い、高次脳機能障害が残ってしまった被害者やそのご家族からのご相談をよくいただきます。

ここで、高次脳機能障害が残った場合は、自賠責保険における等級がものすごく重要です。

高次脳機能障害で後遺障害等級が認定される場合、自賠責保険の等級では、1、2、3、5、7、9級の各等級が設けられています。

1級、2級は日常生活上において介護が必要な場合です。

1級が常に介護を要する場合、2級は随時介護を要する場合です。

3級以下は、日常生活上の介護は必要ではないものの、労働能力の喪失の度合いに応じて定められています。

3級は労働能力を全く喪失してしまった場合で、労働能力の程度が残存するにつれて級は軽くなります。

高次脳機能障害は、介護が必要になったり、労働が困難になる等の状態が将来に亘って続くことになりますので、賠償金額は大きくなる場合が多いです。

そして、後遺障害等級が変わると賠償金が大きく変わります。

後遺障害慰謝料は等級ごとに設定されており、裁判基準で1級が2800万円前後、2級が2370万円前後、3級が1990万円前後、5級が1400万円前後、7級が1000万円前後、9級が690万円前後、とされております(一応の目安であり、事案によって異なる場合があります)。

また、後遺障害逸失利益も、等級ごとに異なる労働能力喪失率が設定されていいます。自賠責保険の労働能力喪失率は、1級~3級が100%、5級が79%、7級が56%、9級が35%程度と定められております。

等級が異なると、金額が大きく変わってきます。

また、1級や2級の場合では、将来に亘る介護費用が支払われます。

将来の介護費用は、かなり金額が大きいです。

そこで、高次脳機能障害で後遺障害等級が認められた場合には、その等級が妥当なのかどうか、弁護士に相談してみたほうが良いと思われます。

弁護士に相談した結果、等級が不当に軽いということであれば、自賠責保険に異議申し立てする、裁判外紛争処理機関(ADR)である紛争処理機構(一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構が正式名称)に紛争処理手続きの申請をする、最終手段として訴訟を提起する等の手段で等級の妥当性を争うことができます。

ただし、自賠責保険への異議申し立てが圧倒的に多いです。

高次脳機能障害で後遺障害等級が認定された方やご家族の方は、等級が妥当か、ご相談ください。

 

耳鳴りと後遺障害

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

事故に遭い、耳鳴りがしたり、耳が聞こえにくくなってしまったという被害者の方がしばしばいらっしゃいます。

事故により聴覚障害が生じることは、実は珍しくありません。

この場合、聴覚障害が残れば、後遺障害が認定されることも有ります。

聴覚障害の等級は、両耳の聴覚障害と、片耳の聴覚障害、傷害の程度などによって等級が設けられています。

最も重い等級は、両耳の聴力を全く失ったもので、自賠責等級のうち、4級に該当します。

次が両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもので、6級です。

両耳で最も軽い等級は両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもので、11級です。

片耳で最も重い等級は、1耳の聴力を全く失ったもので、9級です。

片耳で最も軽い等級は、1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもので、14級です。

これらは、耳鼻科で聴力検査の結果により認定されます。

これらの聴覚障害は事故との因果関係が認められなければならず、事故からなるべく早い段階で耳鼻科を受診し、検査を受けていること、その後も定期的に耳鼻科を受診しており症状の継続がわかること、が必要です。

従って、事故からあまりに時間が経過して耳鼻科を受診したり、1回しか耳鼻科を受診していない等では、事故との因果関係が認められにくいです。

事故により聴覚障害が出てしまった方はご注意ください。

その他、治療中に注意することについてアドバイスをご希望であれば、お気軽にご相談ください。

休業損害の計算方法

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

最近、交通事故案件で、損害賠償請求をする中でよく感じるのが、休業損害の計算方法は正しい計算方法が浸透してきたということです。

給与所得者の休業損害のお話ですが、これは、事故により欠勤し、給与の減額があった場合や有休を使用した場合に請求できます。

勤務先で休業損害証明書を書いてもらい、保険会社等に提出します。

以前よく問題になっていたのが、その計算方法です。

事故前3カ月間の給料合計額を事故前3カ月の日数で割って一日あたりの休業損害日額を出すのですが、保険会社側から、事故前3カ月間の給料を÷90日で計算する方法をよく主張されていました。

これですと、土日が休みの会社員の方などは、3カ月間で60日ちょっとしか働かないので、労働日数1日の給与相当額を計算すると、例えば事故前3カ月間の給与の合計が90万円だとすると、90万円÷60日=1万5000円が労働1日あたりの給与相当額となります。

しかし、これを90日で割ってしまうと、90万÷90日=1万円となってしまい、不当に低くなり、被害者は損をします。

この÷90日の計算方法でも間違いではない場合もあるのですが、÷(実際の稼働日数)で計算するほうが正しいことが多いです。

今でも保険会社側からは÷90日の計算で休業損害の支払いが提示されることは多いですが、弁護士が介入して交渉すれば÷(実際の稼働日数)で休業損害が支払われることが多くなってきました。

多くの交通事故被害者ないしその弁護士が、正しい計算方法で交渉してきたことの効果が地道に表れ、計算方法が保険会社側にも浸透してきたものと思われます。

私も、今後より定着することを期待して、休業損害の正しい計算式で交渉を続けて参ります。