高次脳機能障害は見落とされることがある

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

交通事故に遭い、頭部に衝撃を受けた場合、高次脳機能障害が残ることがあります。

この高次脳機能障害というものは、将来にわたって障害が残るにもかかわらず、意外と見落とされることがあるなぁ、とよく感じます。

まず、医師も見落とすことがあります。

なぜなら、脳挫傷、外傷性くも膜下出血等の診断名がついていれば、脳のMRIやCT画像でも明確に異常所見が映るため、見落とされることが少なくなりますが、いわゆるびまん性軸索損傷の場合は、画像撮影の技術的な限界で、異常が確認できないことが多いです。

そこで、画像上は一見、異常が明らかでなくても、本人が何となく怒りっぽくなった、物忘れがある、周りの人間との衝突が多くなった等がないか、家族等の見守りが極めて重要になります。

また、被害者である高次脳機能障害患者自身が、高次脳機能障害について自覚を持ちにくいことも、高次脳機能障害が見落とされやすい要因です。

被害者自身には、病識がないゆえに、患者自身の客観的な能力と、患者自身の自己認識のギャップが、思わぬ事故を呼び、初めて高次脳機能障害が判明することもあります。

更に、発覚までに時間がかかること場合があります。

例えば、交通事故に遭った場合、事故直後の時点では高次脳機能障害が明らかではなくても、成長し、大人になって仕事を始めたときに、初めて周囲となじめない等で社会的な適応能力の問題が発覚し、高次脳機能障害が発覚することもあります。

このような高次脳機能障害を見落とさないためにも、交通事故に遭い、頭部に衝撃を受けた場合は、医師に詳しく検査をしてもらうこと、家族の見守りが極めて重要となりますが、損害賠償の観点から弁護士がアドバイスできることもありますので、一度ご相談ください。

 

 

相続土地国庫帰属制度②

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

全国的に40度近い猛暑が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

東海地方は、本日の午前中に梅雨明けした、との発表がありました。

学校も夏休みに入るちょうどよいタイミングでの梅雨明けですね。

直近の土日は、外出を控えたほうが良いといわれるほどの猛暑日でしたが、今後は暑さが落ち着くことを願います・・・。

お出かけの際には、熱中症に気を付けましょう。

さて、前にも書きましたが、相続や遺贈によって利用できない土地の所有権を取得してしまった場合に、法務大臣の承認により、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度でである相続土地国庫帰属制度をご紹介しました。

令和5年4月27日から施行されています。

利用ができない相続土地の処分にお困りの方は検討されるとよいかと思いますが、どのような土地でも国が引き取ってくれるわけではなく、対象外となる土地もあります。

具体的には、却下要件か、不承認要件に当たる場合には、対象外となります。

却下要件は、申請の時点で直ちに認められないこととなるものです。イメージとして、門前払いに近いものです。

例えば、土地の上に建物が建っている土地、担保権(抵当権等)や使用収益権(地上権、地役権等)が設定されている土地、他人による利用が予定されている土地(道路として利用されている、墓地内の土地、境内地等)、土壌が汚染されている土地、隣地との境界が明らかではない土地や所有権の範囲が明らかでない土地等が却下要件に当たります。

これに当たれば、申請しても直ちに却下されます。

不承認要件は、審査には入るものの、一定の要件に該当する場合に不承認となる場合があるというものです。審査には入る点で却下要件とは異なります。

不承認要件は、勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地、土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地、逆に除去しなければいけない有体物が地下にある土地、隣接する土地の所有者等との争訟が予想される土地、その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地等がこれに当たるとされております。

不承認要件の場合は、担当官により書面調査や実地調査は行われます。

その上で、不承認か否か判断されます。

却下要件や不承認要件に該当するケースは、思いのほか多そうですね。

別荘地などで一帯の土地を管理する管理組合があり、その管理組合への土地の管理費を一定額支払っているような場合等は、不承認要件に当たる可能性があります。

相続土地国庫帰属制度を利用しようとお考えの方は、一度、土地の所在地を管轄する法務局や地方法務局にお問い合わせいただいたほうが良いと思います。

 

高次脳機能障害と等級

名古屋で交通事故案件を中心に扱っている弁護士の青山です。

交通事故案件を多数扱っていると、頭部外傷を負い、高次脳機能障害が残ってしまった被害者やそのご家族からのご相談をよくいただきます。

ここで、高次脳機能障害が残った場合は、自賠責保険における等級がものすごく重要です。

高次脳機能障害で後遺障害等級が認定される場合、自賠責保険の等級では、1、2、3、5、7、9級の各等級が設けられています。

1級、2級は日常生活上において介護が必要な場合です。

1級が常に介護を要する場合、2級は随時介護を要する場合です。

3級以下は、日常生活上の介護は必要ではないものの、労働能力の喪失の度合いに応じて定められています。

3級は労働能力を全く喪失してしまった場合で、労働能力の程度が残存するにつれて級は軽くなります。

高次脳機能障害は、介護が必要になったり、労働が困難になる等の状態が将来に亘って続くことになりますので、賠償金額は大きくなる場合が多いです。

そして、後遺障害等級が変わると賠償金が大きく変わります。

後遺障害慰謝料は等級ごとに設定されており、裁判基準で1級が2800万円前後、2級が2370万円前後、3級が1990万円前後、5級が1400万円前後、7級が1000万円前後、9級が690万円前後、とされております(一応の目安であり、事案によって異なる場合があります)。

また、後遺障害逸失利益も、等級ごとに異なる労働能力喪失率が設定されていいます。自賠責保険の労働能力喪失率は、1級~3級が100%、5級が79%、7級が56%、9級が35%程度と定められております。

等級が異なると、金額が大きく変わってきます。

また、1級や2級の場合では、将来に亘る介護費用が支払われます。

将来の介護費用は、かなり金額が大きいです。

そこで、高次脳機能障害で後遺障害等級が認められた場合には、その等級が妥当なのかどうか、弁護士に相談してみたほうが良いと思われます。

弁護士に相談した結果、等級が不当に軽いということであれば、自賠責保険に異議申し立てする、裁判外紛争処理機関(ADR)である紛争処理機構(一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構が正式名称)に紛争処理手続きの申請をする、最終手段として訴訟を提起する等の手段で等級の妥当性を争うことができます。

ただし、自賠責保険への異議申し立てが圧倒的に多いです。

高次脳機能障害で後遺障害等級が認定された方やご家族の方は、等級が妥当か、ご相談ください。

 

耳鳴りと後遺障害

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

事故に遭い、耳鳴りがしたり、耳が聞こえにくくなってしまったという被害者の方がしばしばいらっしゃいます。

事故により聴覚障害が生じることは、実は珍しくありません。

この場合、聴覚障害が残れば、後遺障害が認定されることも有ります。

聴覚障害の等級は、両耳の聴覚障害と、片耳の聴覚障害、傷害の程度などによって等級が設けられています。

最も重い等級は、両耳の聴力を全く失ったもので、自賠責等級のうち、4級に該当します。

次が両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもので、6級です。

両耳で最も軽い等級は両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもので、11級です。

片耳で最も重い等級は、1耳の聴力を全く失ったもので、9級です。

片耳で最も軽い等級は、1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもので、14級です。

これらは、耳鼻科で聴力検査の結果により認定されます。

これらの聴覚障害は事故との因果関係が認められなければならず、事故からなるべく早い段階で耳鼻科を受診し、検査を受けていること、その後も定期的に耳鼻科を受診しており症状の継続がわかること、が必要です。

従って、事故からあまりに時間が経過して耳鼻科を受診したり、1回しか耳鼻科を受診していない等では、事故との因果関係が認められにくいです。

事故により聴覚障害が出てしまった方はご注意ください。

その他、治療中に注意することについてアドバイスをご希望であれば、お気軽にご相談ください。

休業損害の計算方法

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

最近、交通事故案件で、損害賠償請求をする中でよく感じるのが、休業損害の計算方法は正しい計算方法が浸透してきたということです。

給与所得者の休業損害のお話ですが、これは、事故により欠勤し、給与の減額があった場合や有休を使用した場合に請求できます。

勤務先で休業損害証明書を書いてもらい、保険会社等に提出します。

以前よく問題になっていたのが、その計算方法です。

事故前3カ月間の給料合計額を事故前3カ月の日数で割って一日あたりの休業損害日額を出すのですが、保険会社側から、事故前3カ月間の給料を÷90日で計算する方法をよく主張されていました。

これですと、土日が休みの会社員の方などは、3カ月間で60日ちょっとしか働かないので、労働日数1日の給与相当額を計算すると、例えば事故前3カ月間の給与の合計が90万円だとすると、90万円÷60日=1万5000円が労働1日あたりの給与相当額となります。

しかし、これを90日で割ってしまうと、90万÷90日=1万円となってしまい、不当に低くなり、被害者は損をします。

この÷90日の計算方法でも間違いではない場合もあるのですが、÷(実際の稼働日数)で計算するほうが正しいことが多いです。

今でも保険会社側からは÷90日の計算で休業損害の支払いが提示されることは多いですが、弁護士が介入して交渉すれば÷(実際の稼働日数)で休業損害が支払われることが多くなってきました。

多くの交通事故被害者ないしその弁護士が、正しい計算方法で交渉してきたことの効果が地道に表れ、計算方法が保険会社側にも浸透してきたものと思われます。

私も、今後より定着することを期待して、休業損害の正しい計算式で交渉を続けて参ります。

相続土地国庫帰属制度の開始

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

今回の記事は交通事故関連ではなく、相続分野に関連が深い話題となりますが、間もなく興味深い制度が始まりますので、ご紹介させていただきます。

相続土地国庫帰属制度です。

私は、以前、交通事故案件以外に相続案件を取り扱っていたこともあります。

そのなかで、相続財産の中に利用することが困難な土地が含まれており、その土地だけ手放したいが、相続放棄をすればそのほかの相続財産も全て放棄しなければならないことから、やむを得ず利用困難な土地も含め相続する、というケースがよく見受けられました。

しかしながら、利用できない土地であっても、土地の固定資産税や管理費はかかるため、相続人の負担となりますし、結局他に買い手もいないため、更に相続が発生することで当該土地の所有者が膨れ上がり、より処分が困難となるケースもありました。

今回の相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人であれば申請が可能で(共有者全員で申請する必要があります)、法務大臣の承認により、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。

ただし、国庫帰属が認められないケースもあります。

令和5年4月27日より施行されます。

この制度により、相続により不要な土地を取得した方の負担の解消、所有者不明土地増加の歯止めにつながることが期待されています。

 

Youtubeと著作権

名古屋の弁護士の青山です。

今回は、興味深いなと思った最近の裁判例について少し触れます。

Youtubeはとても身近な情報ソースであり、私も見ることがあります。

このYoutubeで、長編の映画を編集して10~15分程度にまとめ、映画の全容がわかるような内容の動画がアップされたところ、映画の著作権者の著作権を侵害するとして、損害賠償が認められた裁判例が最近出ました。

映画等の著作物の著作権者には、著作権の内容として、翻案権、公衆送信権が認められます。

翻案権とは、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他翻案する権利をいいます。

小説や漫画の映画化などが典型的です。

今回のYoutubeへアップされた動画も、映画の全容がわかるような形で10~15分に編集したものであり、翻案にあたると判断されました。

また、公衆送信権とは、その名のとおりで、著作物を公衆に送信する権利です。

今回のYoutubeへの動画アップは、この公衆送信権も侵害するとされました。

そして、このケースの損害額は、問題となった映画は、本来消費者がストリーミング形映画を視聴するには所定の料金を支払ってはじめて可能になることから、この料金を考慮して定める金額に、再生数を乗じて算定するのが相当であると判断されまし。

Youtubeがこれだけ広まっている中でこのような裁判例は今後も増えていくのではないでしょうか。

また、法規制も進んでい行くでしょう。

既存の映画等の作品を題材にした動画をYoutube等にアップする際には、他人の著作権を侵害していないか、注意が必要ですね。

タクシー共済との交渉

名古屋で交通事故案件を中心に扱っている弁護士の青山です。

タクシーとの間で交通事故に遭った場合、タクシーが任意保険に加入していれば、任意保険会社がタクシー側の窓口になります。

ところが、タクシーは任意保険に加入していないことも多く、タクシー共済に加入している場合はタクシー共済が交渉の窓口になります。

そもそもタクシー共済がどのようなものなのかですが、タクシー会社は、その保有する膨大な数のタクシー車両について、全て任意保険に加入するとなると、保険料の負担が莫大なものになります。

そこで、いくつものタクシー会社が寄り集まり、交通事故の損害賠償請求に備えるための自主的な組織がタクシー共済です。

このタクシー共済が任意保険会社は何が違うのかですが、任意保険会社は、その存在意義の一つに被害者救済というものがあります。

ところが,タクシー共済は,交通事故を起こしてしまった場合にタクシー会社側を守ることにも重点が置かれています。

タクシー共済と任意保険会社のこのような性質の相違から、タクシー共済が相手方の場合は、賠償金を支払わないで済むよう話をもって行こうとすることがあり、注意が必要です。

タクシー共済が相手方の場合,例えば,次のようなことを主張される可能性があります。

交通事故自体が起こっていない、この程度の事故で怪我をするはずがない、あなたのほうが過失が大きい等です。

タクシー共済が相手である場合、話し合いでは解決がつかず、裁判が必要になることも多いです。

タクシー共済が相手方でお困りの方は、一度弁護士に相談してみるのも良いと思います。

民法改正

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

民法の重要な改正がありました。

嫡出推定の制度を見直す改正民法が、12月11日参院で可決され、成立しました。

改正民法が施行されるのは2024年夏ころとのことです。

これまでは、女性が婚姻中に懐胎した子どもは夫の子どもと推定され、離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子供と推定されました。

そして、女性が離婚後に再婚した場合、再婚後200日経過後に生まれた子どもは現夫の子どもと推定されました。

この嫡出推定の制度は古く、明治時代に制定された民法がそのまま現代まで続いておりました。

このような嫡出推定の制度から、離婚から300日以内、かつ再婚から200日以降に生まれた子どもは、両方の夫の子どもの推定を受けてしまいます。

このような推定の重複を避けるために、現行法では女性は離婚後100日間は再婚が禁止されており、男女平等の原則に反する等でこれまで多くの議論を呼んでおりました。

今回の民法改正により、離婚から300日以内に生まれた子どもでも、女性が再婚後なら現夫の子と推定されるようになりました。

これにより、推定の重複の問題が解消されたため、女性の再婚禁止期間は撤廃されることとなります。

高次脳機能障害と成年後見

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

交通事故で高次脳機能障害を負い、被害者に判断能力がなくなった場合には、成人であれば成年後見人を付けたほうが良いケースがあると、以前にもお伝えしたことがあると思います。

最近の報道で、交通事故の後遺症で高次脳機能障害と診断され、精神障害者手帳の交付を受けた被害者が、亡くなる直前に自宅を不動産会社に売却していたことが分かり、被害者の遺族が不動産会社を相手取り提訴した、というニュースを目にしました。

このケースでは、交通事故の被害者が意思能力(単独で有効に意思表示をできるだけの能力、判断能力)を欠いていたかかが主な争点になると思われます。

意思能力があったかは、ケースごとに、行われた契約等の法律行為の難易度や重要性等を考慮して、その行為の結果を正しく認識できていたかで判断すると裁判例上考えられております。

本件でも、この意思能力がなかった点を原告側が主張・立証していかなければならないでしょう。

この点、高次脳機能障害が残り、判断能力がないことが判明した時点で、なるべく早期に成年後見人をつけるということが、重要です。

成年後見人がついていれば、本人が単独でなした法律行為は取り消すことができ、被害者を守ることができます。

高次脳機能障害の被害者は、後見人を付けたほうが良いケースが一定数ございます。

この点も含め、高次脳機能障害が残った交通事故患者様やそのご家族の方は、一度ご相談ください。

 

通院先の病院等をどのように選ぶか?

名古屋で交通事故案件を中心に扱っている弁護士の青山です。

交通事故案件の相談を多数いただいておりますが、通院先をどのように選べばよいのか?というご質問をいただくことが良くあります。

どの病院や接骨院で治療を受けるのかによって、その後に大きな違いが出てくる場合がありま。

まず、一定期間、場合によっては長期、通院するわけですから,病院(整形外科等)の医師,接骨院の柔道整復師との相性は大事です。

自分の話を親身になって聞いてくれる医療機関を選ぶようにしましょう。

医師や柔道整復師は、万一保険会社から不当な治療費の打ち切りに遭いそうになったとき、患者の味方になってくれる重要な存在です。

自分と相性の良い病院、接骨院を選びましょう。

また、レントゲン、MRIなどの機器が揃っているかも大事です。

交通事故に遭った場合、定期的に画像等を撮影し、症状の経過を残していくことが重要になります。

これらの機器が無いと、画像撮影のために外部の医療機関を受診しなければならなくなり、患者にとって手間が増えます。

更に、交通事故患者の治療実績が豊富か否かも重要なポイントになります。

医師や柔道整復師は保険会社の担当者から治療経過を聞かれる等、保険会社とやり取りをすることも多々あります。

このような時,交通事故患者の治療実績が豊富なほうが、保険会社の担当者に対しても適切に対応してくれることが期待できます。

ホームぺージ等で、交通事故患者の取り扱い実績があるか否かを調べてみるとよいでしょう。

 

自転車と歩行者の事故

名古屋で交通事故案件を担当している弁護士の青山です。

おかげさまで、交通事故の新規相談を日常的に多数いただいております。

そのような中で、自転車と歩行者との事故で、歩行者にも過失割合が認められるのか?というご相談をいただくことがあります。

道路交通法上も自転車は軽車両として扱われていること、道路上では「歩行者優先」という認識が根強いことなどから、歩行者には基本的に過失が認められず、歩行者は損害賠償義務を負わないとも考えられがちです。

この点、歩行者が青信号で横断歩道を渡っている際の事故であれば、歩行者には過失割合は認められません。

もっとも、歩行者にも一定の過失が認められる場合があり、その場合は自転車に乗車していた方から歩行者への損害賠償が認められます。

例えば、横断歩道を黄色ないし赤色で横断中の歩行者には10~60%の幅はありますが、過失が認められます。

また、横断歩道があるにもかかわらず横断歩道の手前で横断を開始した場合も、信号色に応じて歩行者にも10%~80%程度の過失が認められます。

更に、歩行者が横断歩道が無い場所で横断中に自転車と衝突した場合にも、歩行者に一定程度で過失割合が認められる傾向にあります。

最近では、歩行者がスマートフォンを見ながら歩行していた場合に過失割合上考慮されないかというご相談もあります。

状況によっては歩行者側に過失割合が加算修正されることもあるでしょう。

このように、歩行者であれば過失がないと扱われるわけでは必ずしもありませんので、注意が必要です。

お盆

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

今年は、6月頃から猛暑日が続き、暑さで長らく苦しんでいる感覚があります。

さて、夏休みの時期に入っております。

今年は、コロナが流行してから初めて、緊急事態宣言や蔓延防止措置等の行動制限が出ていない夏となりました。

旅行や遠出を計画していらっしゃるかたも多いのではないでしょうか。

コロナ感染数は過去1番で、20万人越えの毎日が続いておりますので、感染対策は万全にした上で、楽しい夏休み、お盆を過ごしたいですね。

お盆と言えば、帰省や遠出などで車の運転をする機会が増え、「交通事故に遭った」という新規の交通事故法律相談が増加する時期でもあります。

皆様、帰省や遠出の際にはせっかくの規制や遠出を台無しにしないためにも、交通事故には細心の注意を払ってください。

万が一、事故に遭ってしまった場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。

旅行先でまだ何日か滞在する予定がある場合は、帰省してから通院しようとすると、事故から日数が空いてしまい、怪我と事故との因果関係が否定される可能性も無くはないです。

このような場合は、旅行先で一旦、現地の医療機関を受診しましょう。

また、警察にも診断書を提出し、人身事故扱いにしておく方が無難です。

自身にもそれなりに過失がある場合は、人身事故にすることで罰金等の刑事処分や免許の減点等のリスクもありますが、自身が被害者であれば、このような心配は通常ありません。

事故には気を付けつつ、楽しい夏休みやお盆をお過ごしください。

そして、万が一事故に遭われた際には、私までご相談ください。

侮辱罪が厳罰化されました。

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

2022年7月7日、侮辱罪を厳罰化した改正刑法が施行されました。

改正前の侮辱罪に関する刑法231条は、「拘留又は科料に処する」と定めていました。

拘留とは、1日以上30日未満として刑事施設に身体を拘束することです。

また、科料は1000円以上1万円未満のペナルティーとしての金銭支払いです。

これを見ても分かるとおり、侮辱罪は刑法の中でも極めて軽い法定刑でした。

しかしながら、近年のインターネットやSNSでの誹謗中傷により、自殺をする方が出たり、タレントや著名人が日常的に被害にあう等、インターネット等による誹謗中傷の問題は深刻化していました。

それを受け、今回の厳罰化に至りました。

今回の改正で、侮辱罪の法定刑は、上記の拘留及び科料に加えて1年以下の懲役または禁錮、もしくは30万円以下の罰金となりました。

改正前と比べ、相当に厳罰化されたことが分かります。

また、今後は、このような侮辱行為に対し、民事での損害賠償請求も増加していくでしょう。

改正前の侮辱罪が制定されたのは明治時代であり、不特定多数の人が目にし情報の永続性もあるインターネットがある現代とは、侮辱行為のもたらすダメージが全く違います。

今回の刑法改正で、法的規制がようやく時代に追いついてきたと言われており、今後はツイッター等での発言の際も、以前にも増して注意を要することになりそうです。

 

コロナ対応に関する裁判例

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

コロナの感染者も徐々に落ち着きつつある今日この頃ですが、5月に東京地裁で注目すべき判決が出ました。

新型コロナウイルスに対応するための改正特別措置法に基づき、2021年1月に出された緊急事態宣言の際、東京都から午後8時までの時短営業の要請を受けたが拒否したことを理由に、飲食チェーン店が東京都から時短命令を受けました。

この時短命令が営業の自由を保障した憲法に違反するとして、飲食チェーン店を経営する会社が東京都に損害賠償を求めたのが上記の裁判です。

この点、損害賠償が認められるためには、上記の時短命令が「違法」で、かつ、東京都に「故意」または「過失」が認められなければなりませんが、上記の判決は、都が時短命令を出した時点での諸事情を考慮して、特に必要があると認められないにもかかわらず出された命令であるとして、「違法」であると認めました。

もっとも、専門家で構成される当時の都のコロナ対策審議会でも命令が必要だとされていたことや、非常事態であり先例がなかった点などを考慮して、都が時短命令が必要だと判断してもやむを得なかったとして、「過失」がないと判断し、賠償は認められませんでした。

コロナ禍という前例のない非常事態で出された様々な措置や処分の適法性・妥当性について、コロナ禍が就職に向かいつつある中、今後このような裁判例等が増えていくと思われます。

注目したいと思います。

高次脳機能障害に注意

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

今年もゴールデンウイークがありましたが、例年ゴールデンウイーク明けは交通事故の相談が増えます。

車で遠出の機会が増えるからだと思われますが、交通事故にはくれぐれも注意しましょう。

さて、前にもブログで書いたことがあるかもしれまんせんが、交通事故に遭い、頭に強い衝撃を受けた場合は高次脳機能障害に注意です。

高次脳機能障害は、脳に残った障害です。

外から見てわかる身体的な障害があるわけではないのすが、脳に障害が残った結果、理解力や集中力、記憶力の低下や、性格の変化などを引き起こします。

症状の程度は様々で、明らかな人格の変化が見受けられる場合もありますし、よくよく注意しなければわからないこともあります。

そのため、交通事故で頭に強い衝撃を受けた場合、被害者の家族や職場、学校等の周囲の方々は、被害者の普段の様子を注意深く見守る必要があります。

被害者が前よりも怒りっぽくなった、集中力が続かなくなった、周囲の人間とよく衝突するようになった、忘れっぽくなった等の症状がある場合には高次脳機能障害の可能性があります。

高次脳機能障害は難しい症状で、まれに医師でも気付かないことがあります。

高次脳機能障害が残った場合、自賠責保険で適切な後遺障害等級が認定されれば、適切な賠償金が支払われます。

認定される等級によって、賠償金が大きく変わってきます。

名古屋で交通事故に遭い、高次脳機能障害が残ってしまったか、あるいは高次脳機能障害が疑われる場合は、一度私までご相談ください。

成年年齢が改正されました

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」が2022年4月1日から施行されました。

これまで20歳が成年年齢とされていましたが、選挙への参加その他の場面で18歳、19歳の若者も成人として扱うことが適当ではないかという声があがっていたことも踏まえ、明治時代以降の20歳という成年年齢が今回改正されました。

これにより、2022年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の方は、その日に成年に達することになります。2004年4月2日生まれ以降の方は、18歳の誕生日に成年に達することになります。

成年年齢の引き下げにより、18~20歳の方は、単独でできることが増えます。

たとえば、親の同意を得ずに様々な契約をすることができるようになります。

アパートを借りる、クレジットカードを作成する等の契約は、自分でできるようになります。

携帯電話も自分で購入することができるようになります。

10年有効パスポートの取得等も可能になります。

他方で、成年年齢が引き下げられても、お酒やたばこに関する年齢制限は変わりません。

また、公営のギャンブル等も20歳未満ではできません。

その他には、成人式を20歳の方を対象にするのか、18歳の方を対象にするのか等、今後の要検討事項もあるようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紛セか訴訟か?

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

「紛セ」のことはご存じでしょうか。

交通事故に遭い、相手方と話し合いがつかない場合には、訴訟を起こすことが考えられますが、訴訟は時間がかかります。

そこで、早期解決のために裁判外の紛争処理手続であるADR手続があり、その中の代表的なものに、交通事故紛争処理センターによるあっ旋手続があります。

交通事故紛争処理センターは略して「紛セ」と呼ばれます。

紛セの手続は、数回の期日で手続きを終了することを念頭においておりますので、訴訟に比べ大幅に時間を短縮できます。

その分、紛セにはなじまないケースもあります。

時間を要する証人尋問等を要するケースは紛セになじみませんし、お互いの主張が真っ向から対立し合意に達する見込みがないケースも紛セになじみません。

合意に達しなければ、結局紛セでの審理は打ち切られ、訴訟に移行せざるを得なくなるからです。

従って、証人尋問が必要であったり、合意に達する見込みが少ないケースは、最初から訴訟を起こしたほうが良いと言えます。

具体的には、過失割合は争いが無く、治療費の支払いも保険会社から済んでおり、休業損害や慰謝料額等のみ折り合いがつかないケースであれば、紛セでの解決になじむことが多いです。

他方、双方の主張する事故状況及び過失割合が真っ向から対立し、ドライブレコーダー等もなく、証人尋問や検証等を行わざるを得ないケースであれば、訴訟のほうがなじむと言えます。

 

事故の加害者が任意保険に加入していなかったら

名古屋で交通事故を中心に扱っている弁護士の青山です。

交通事故に関する相談は日々多数受けておりますが、加害者が任意保険に加入していなかった事例が意外と多いです。

この場合、治療費の支払い等はどのようにすればよいのでしょうか?

いくつか手段はありますが、大きく言うと次のものが考えられます。

1 自賠責保険への被害者請求

任意保険がない場合、相手方の自賠責保険に直接治療費等の支払いを請求することができます。

ただし,傷害については上限が120万円です。

また,相手方の任意保険会社が治療費の支払いをしてくれる場合は,保険会社が病院等へ直接治療費を支払うため,被害者が一時的に立て替える必要はございませんが,自賠責保険を使う場合は,一旦被害者が治療費等を立て替える必要があります。

2 健康保険

交通事故の治療でも健康保険を使うことが出来ます。

相手方の任意保険会社が治療費の支払いをしてくれない等の場合,一旦は自身で治療費を立て替えることとなりますが,健康保険を使用する場合は3割負担で治療を受けることが出来ます。

ただし,「第三者行為災害の届出」を出す必要がございます。

3 労災

仕事中の事故あるいは通勤途中の事故の場合,労災保険を使用することができます。

労災を使用できるのであれば,相手方の任意保険会社が治療費を支払ってくれない,あるいは休業損害を支払ってくれないという場合であっても,労災からこれらの支払いを受けることが出来ます(なお,労災でも休業補償は支払われますが,収入の60%に限られます)。

4 人身傷害保険

ご自身の自動車保険等についていることが多いです。

人身傷害保険は、相手方に任意保険がない場合,病院等に直接治療費の支払いをしてくれます。

ですので,ご自身で治療費を立て替える必要はありません。

また,人身傷害保険は,保険会社の定めた上限はありますが,自身に過失があるかは問わずに支払われます(慰謝料,休業損害等も額は限られますが支払われます)。

最近では,ほとんどの車両保険に付帯されているのが人身傷害保険です。

弁護士としても,人身傷害保険への加入は非常にお薦めです。

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新年

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

当事務所は年明け1月4日から業務を開始いたしました。

新規のご相談を随時受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。