前回に引き続き,弁護士目線で気になった『名探偵コナン ゼロの執行人』について書いていきます。
○公判前整理手続?
映画の中で,起訴前に橘弁護士と日下部検事が裁判官室で立って「公判前(まえ)整理手続」を行うというシーンがありました。
実際は,「公判前(ぜん)整理手続」といいますが,映画では「公判前(まえ)」と連呼されており,とても気になりました。
マスメディア等ではこのように読まれることもありますが,本職の弁護士が間違えるのは結構恥ずかしいです。
また,公判前整理手続は起訴後に行われるものであり,起訴前に裁判官が事件の内容を把握できてしまうというのは,予断排除の原則(刑事裁判において,公判が始まるまで裁判官はあらかじめ起訴事実の内容に触れず,一定の心証を抱くことがないようにして予断を排除すべきというものです。)に反していて大問題です。
さらに,公判前整理手続は法廷で行うものであり(通常座って行います。),裁判官室で立って行うというのはかなり不可思議です。
おまけに,本件事件は死傷者も多数出ていて,動機も不明,被疑者の毛利小五郎は否認しているという内容なのに,立って行える程度の時間で,しかも一回で終了というのはあり得ません。
世界有数の犯罪都市である米花町は,事件が多すぎて法廷の数も人手も足りていないのでしょうか。