弁護士の岡原です。
先日、お店の入り口で体温を測ったところ、まさかの32度と出たにもかかわらず、店員さんに爽やかな笑顔で「はい大丈夫です!」と言われました。
私はこういうときに、果たしてこれが天然なのか、ツッコミ待ちのボケなのか未だに判断できません…。
話は全く変わりますが、交通事故で後遺障害が認定されるような大きな怪我をされた方でも、幸いにして事故前と事故後を比較して収入が下がっていないケースがあります。
そのような場合に、よく相手方保険会社は「判例によれば、収入の減少がない場合には後遺障害逸失利益は出せません。」と言ってくることがあり、こんなに毎日つらい思いをしているのに納得できない!と当法人にご相談いただく被害者の方はとても多くいらっしゃいます。
相手方保険会社が指摘する「判例」とは、昭和56年12月22日判決のことを指しているかと思います。
この判例では、「かりに交通事故の被害者が事故に起因する後遺症のために身体的機能の一部を喪失したこと自体を損害と観念することができるとしても、その後遺症の程度が比較的軽微であって、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないという場合においては、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はないというべきである。」としています。
つまり、単純に収入が減っていない=逸失利益なし、というわけではなく、①後遺障害による支障が軽微、②職業の性質上、現時点で収入が減少していない、または将来も減少しないと考えられ、③特段の事情もない、といった場合には、逸失利益が認められない場合があるということです。
さらに、「特段の事情」については、「後遺症に起因する労働能力低下に基づく財産上の損害があるというためには、たとえば、事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであつて、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか、労働能力喪失の程度が軽微であつても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情の存在を必要とするというべきである。」
では、具体的にどのような場合には収入減少がなくても逸失利益が認められる可能性があるのかについては、次回のブログで解説したいと思います。