給与が減少していないと逸失利益はもらえないのか③

先月は雪が降った日もあったのに、今日(2月22日)の東京は最高気温23度と、まるで初夏のような暖かさとなりました。
こんなに気温の変動が激しいと、毎朝どの上着を着ればよいのか迷ってしまいます。

さて、数回にわたってお話ししてきた「給与が減少していなくても逸失利益が認められる場合」についてですが、今回は前回ピックアップした2つの裁判例以外の裁判例で、考慮要素とされている点を、今回から何回かに分けてお話しいたします。

① 減収不発生が一時的
「事故後減収がない」というのは、大抵の場合は示談段階において減収が発生していないというだけであり、今後もずっと減収が発生しないことを意味するものではありません。
例えば、事故による後遺障害の影響で仕事のパフォーマンスが落ち、査定自体は下がってしまったが、事故前に被害者が獲得した大型契約によって一時的に売上が上昇し、結果的に事故後の給与が増加したといった場合、後遺障害による影響がなかったから減収が発生しなかったわけではありません。
また、このような給与の増加はあくまで一時的なものである可能性があり、今後も継続する見通しがない場合は、逸失利益が認められる可能性があります。

② 昇進昇給における不利益
事故後現時点ですでに昇進や昇給に遅れが生じている場合や降格となったこと、事故により昇進試験を受験できなかったことといった事情がある場合は、まだ減収として表れていないとしても、実質的には経済的不利益が生じているとみることができます。
また、後遺障害のため特定の業務に就くことができなくなり、その結果将来の昇進が困難となった場合も、逸失利益を認める方向の考慮要素となります。

③ 業務への支障
まだ減収が生じていなかったとしても、後遺障害により実際の業務に支障が生じている場合は、将来の減収の発生を推認させる事情となります。
また、後遺障害のため配置転換を余儀なくされた場合は、本人の経験や実績、意欲を十分に発揮できる業務に従事できなくなる結果、本来得られたはずの収入を得られない可能性が高まるとして、これも逸失利益を認める方向の考慮要素となります。

次回に続きます。