弁護士の岡原です。
最近は,名古屋でも雪が積もるほど寒い日が続いていますね。
私は,あんなに注意深く歩いていたにもかかわらず,事務所の入り口付近の凍った路面で滑ってしりもちをついてしまい,何事も最後まで気を抜いてはいけないということを改めて痛感しました。
ところで,最近,夫婦別姓を日本でも導入すべきかといった議論が盛んになされていますが,現時点ではまだ夫婦は同じ名字を名乗ることになっています。
(民法750条:「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する。」)
ここで,どうでもいいことが気になってしまう私は,せっかく夫婦別姓の是非についてブログで書こうと思っていたにも関わらず,「姓と名字と氏,いわゆるラストネームを指す言葉として使われている気がするけど,一体何が違うのだろう…?」と気になってしまいました。
そこで,今回は,「姓」と「名字」,「氏」の違いについて,調べてみたいと思います。
まず,「氏」(うじ)とは,もともと同じ血筋であることを表すための名称を言い,例えば,蘇我馬子の「蘇我」は氏にあたります。
なお,「そがのうまこ」,「たいらのきよもり」のように,氏の後ろには「の」を入れますが,これは「蘇我家の馬子さん」,「平家の清盛さん」のようにそれぞれの帰属を表すためです。
そして,「姓」(かばね)とは,朝廷での役職や地位を表すものであり,蘇我馬子の姓は「臣」(おみ),平清盛の姓は「朝臣」(あそん)と言います。
姓は,公的な呼称として,公文書における表記などに用いられました。
最後に「名字」とは,氏が分家したときなどの場合に,家の区別のために用いられたもので,邸宅のある地名などを名字として付けました。
徳川家康の「徳川」は名字であり,氏は「源」,姓は「朝臣」です。
なお,平清盛には名字がないそうです。
明治以前は,このように氏と姓と名字が区別して用いられてきましたが,明治4年に姓尸不称令が出され,公文書に氏や姓を記載せず,名字と実名のみ記載することとなり,氏と姓と名字は一本化されることになりました。
そして,名字を指す法律用語は「氏」となり,同じ血族であることを示す「うじ」としての意味はなくなりました。
そのため,前述した民法750条は,名字の意味で「氏」を使用しています。
結論として,現代において「姓」と「氏」,「名字」はどれもいわゆるラストネームを指し,意味に違いはないようです。
また,法律用語としての「氏」以外は,どのような場面でどう使い分けるかという区別も特にないようです。