弁護士目線で語る『ゼロの執行人』,ようやく最終章です。
○修習生を罷免された羽場二三一
橘弁護士の事務所も元事務員だった羽場二三一は,司法修習生のときに裁判官を志望していたがなれず,終了式で教官とみられる人に詰め寄ろうとして司法修習生を罷免されたとあります。
これと似た事件として,昭和46年4月5日に行われた修習終了式において,裁判官志望者7人に対する任官拒否(不採用)に抗議するため,一人の司法修習生が司法研修所長のマイクを取って発言を始めたため,「品位を辱める行状」があったとして司法修習生を罷免されたという事件があったそうです。
もしかしたらこの出来事を意識して描かれたのかなとも思いますが,羽場は大きな声を出して詰め寄ろうとしただけなので,正直罷免までされるというのはやりすぎかなと思います。
ちなみに,「品位を辱める行状」を理由に司法修習生が罷免されたのは,上記事件があった昭和46年以降,4人しかいません。
また,司法修習生を罷免されても,司法試験の合格が取り消されるわけではないので,改めて翌年司法修習生への再採用を希望して弁護士を目指すことは可能です。
○司法修習の終了式が春
映画での描写を見る限り,司法修習の終了式のとき,司法研修所と見られる建物には桜のような花が咲いており,春のように見えます。
ところが,新60期以降は,終了式は12月に行われており,春ではありません。
実際に私が終了式に出たときも冬だったので,花は一輪も咲いていませんでした。
旧52期(平成10年)までは,どうやら終了式が4月に行われていたようなので,羽場は旧52期以前の司法修習生であれば辻褄が合いますが,映画では羽場が罷免されたのは今から4年前とあり,辻褄が合いません。
(この映画が平成16年以前を舞台にしていたのであれば話は別ですが,コナンがスマートフォンを使っていることから,その可能性は低いと考えました。)
全体として,弁護士や検事,司法修習生などが出てきたり,専門用語が多めだったりと,大人向けを意識しているような内容でしたが,大人向けであるならもう少し細かいところを詰めてほしかったというのが感想です。
クレジットを見る限り,弁護士の監修はなかったようですので,次にこういった内容にするときはそこを改善していただけると,よりリアリティが増して面白くなるかなと思いました。