先日、成人の日がありました。
祝日は、うちの事務所全体としては、お休みなのですが、私は、裁判所に提出する書面を作成するために事務所に行きました。
誰もいない事務所の方が集中できて、より洗練された書面が作成できるんですよね。
途中、小学校がありました。
祝日ですから、校門が本来なら閉まっているはずなのですが、校門が開いておりました。
そして、新成人らしき若い男女がたくさん小学校の校庭で、楽しそうに騒いでおりました。
おそらく、その小学校の卒業生たちなのでしょうね。
ここで、刑法のお勉強です。
犯罪が成立するためには、
①構成要件に該当し、
②違法性が認められ、
③責任能力がなければなりません。
①構成要件とは、簡単にいうと、刑法の条文に書いてあることだと思ってください。
例えば、建造物等侵入罪(刑法130条前段)の構成要件は、
「人の住居」「人の看守する邸宅」、「建造物」に「侵入」することです。
②違法性とは、社会的相当性を逸脱した法益侵害をいいます。
③責任能力とは、行為の違法性を弁識し、かつ、それに従って自己の行為を制御する能力をいいます。
簡単にいいますと、これはやっちゃいけない行為だとわかっていて、それをやっちゃいけないと自分をコントロールすることができる能力です。
では、新成人が自分の卒業した小学校に入る行為は、建造物侵入罪が成立しないでしょうか?
そんなの犯罪になるわけないでしょ!
って思う方は気をつけてくださいね。
小学校及びその校庭は、「建造物」にあたります。
では、新成人の小学校への立ち入り行為は、「侵入」(刑法130条前段)にあたるでしょうか?
「侵入」とは、管理権者の意思に反する立ち入り行為をいいます。
小学校の管理権者は、おそらく校長先生です。
そうすると、校長先生の許可があったかが問題となります。
もし、校長先生の許可がなかった場合には、いくら自分が昔通っていた小学校だからといって、無断に校庭に立ち入る行為には、建造物侵入罪が成立する可能性があります。
もっとも、もともと校門が開いていたのであって、校門をむりやりこじ開けていないだとか、特に小学校を荒らしていないだとか、卒業生たちは別に昔の懐かしい思い出を語りあっていただけじゃないかという事情があれば、違法性が阻却されるので、建造物侵入罪は成立しない可能性もあります。
逆に、新成人たちが、閉まっている校門をよじ登って侵入していたり、花火とかして騒いでいた場合には、社会的相当性を逸脱しており、管理権者の意思に反しているとして、違法性が阻却されず建造物侵入罪が成立する可能性もあります。
今回、私が目撃した新成人たちは、ただ昔を懐かしんでいただけであって、勝手に入ったわけではなさそうでした。
もともと、先生に頼んで入れてもらっていたのかもしれません。
そうすると、建造物侵入罪はもちろん成立しないと思います。
刑法について、語りだすと長くなってしまうので、今回はここらへんでおわりにしたいと思います。
法律は奥が深いです。
弁護士は、法律を全部知っているわけではありませんが、法律の条文を読めば、だいたいその法律がどういうものかが分かります。