名古屋で弁護士をしている中里智広です。
今回の記事では,犯罪が成立するまでの流れ,犯罪が成立しても処罰されるまでの流れをご紹介したいと思います。
犯罪が成立するためには,刑法や特別刑法などの条文上の文言に書かれている①構成要件(簡単にいいかえますと,犯罪が成立するための必要条件だと考えてください。)に該当し,②違法性が認められ,③責任能力があることが必要です。
犯罪が成立しても,すぐに処罰されるわけではありません。
警察に身柄確保(身体拘束)が必要と判断されれば逮捕され,身柄拘束までは必要ないと判断されれば,在宅のまま,まずは警察の捜査が進むことになります。
警察の捜査がある程度進んで,ある程度捜査対象となっている犯罪の証拠が集まったら,検察に送致されます。
送致とは,被疑者(マスコミ用語では「容疑者」といわれていますが,刑事訴訟法の用語ではありません。)が逮捕されている場合には,被疑者の身柄とともに一件書類(捜査報告書,供述調書などの捜査の結果作成された資料など)が検察に引き渡されます。
よくニュースで聞く「書類送検」という言葉は,刑事訴訟法上の言葉ではなく,マスコミ用語にすぎません。
書類送検も送致の一種と考えてください。
送致されたあとは,捜査の主体が検察官に移ります。
もっとも検察官に捜査主導権が移っただけですので,検察官の指示に基づくなどして,引き続き警察でも捜査が行われることが多いです。
担当検察官が,刑事裁判にかけるかどうか(起訴するかどうか)は,公判維持に耐えうるだけの十分な証拠があるかどうか(有罪判決を得ることができるかどうか)を主眼にいろいろな事情を考慮して判断します。
刑事訴訟法の条文では以下のとおり書かれています。
(起訴便宜主義)
刑事訴訟法第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
検察官が起訴すれば,被疑者は被告人という立場に呼び方が変わります。
日本の有罪率は,約99.9%といわれていますから,無罪判決を勝ち取れる事件にめぐりあえることは奇跡的です。
よくドラマであるような,無罪判決を何度も勝ち取っているような弁護士は,実際にはほとんどいないと思われます。
私が弁護士として働き始める前の1年間の研修(「司法修習(しほうしゅうしゅう)」といいます。)でお世話になった刑事弁護の教官ですら,無罪判決は今までめぐりあえたことはないとおっしゃっていました。
運がいいと,弁護士1~3年目でも無罪判決にめぐりあえることはあります。
実際に,私も修習生のときに弁護士1~2年目で無罪判決を勝ち取った弁護士とお話しさせていただいたことはあります。
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次回以降に続きの記事を書きます。