愛知県弁護士会所属の中里です。
今回は,平成30年(2018年)1月4日の記事の続きです。
1月4日の記事では,犯罪が成立するための要件である,構成要件のなかの「客観的構成要件」の中の実行行為について説明しました。
犯罪の実行行為が行われれば,通常,「(構成要件的)結果」が発生します。
殺人罪でいうと,殺人罪の結果は,人の死亡です。
もっとも,住居侵入罪(刑法130条前段)のように,構成要件的結果が要求されていない犯罪もあります。
住居侵入罪は,正当な理由がないのに他人の住居などに「侵入」する行為があれば,既遂となります。
このように,構成要件的結果が要求されない犯罪を,「挙動犯」といいます。
殺人罪のように構成要件的結果が要求される犯罪を,「結果犯」といい,
結果犯については,客観的構成要件要素として,実行行為と結果との間に「因果関係」が必要とされます。
たとえば,Aという人物が,Vという人物を殺そうとして,Aが金属バットでVの後頭部をめがけて思いっきり殴りかかったとします。
しかし,Vは,運よくこれを避けることができたとします。
それにもかかわらず,Vは,たまたまBが投げた砲丸投げの玉が運悪くVの頭に直撃し,Vが死亡したとします。
このケースを考えますと,Aの殺人罪の実行行為は問題ありませんし,Vの死亡の結果も問題ありません。
しかし,Aに殺人罪を成立させるのはどうしても違和感が残ります。
このようなケースでは,因果関係が否定されると考えるのです。
つまり,AのVの後頭部めがけて金属バットで殴るという実行行為からは,Vの死亡という構成要件的結果が発生したとはいえないのです。
実行行為が存在し,結果が発生しても,犯罪を成立させることに違和感が残るケースはいくつかありますので,またの機会にご紹介できればと思います。