慣習の意味と周囲の理解

こんにちは。

弁護士の江口潤です。

 

今回は,外国人の友人から受けた素朴な指摘から私が考えたことについて書きたいと思います。

 

日本に来てくれた外国の友人を案内していたときのことです。

 

彼を大好きなとんこつラーメンの有名店に案内し,一緒に食事をしていたところ,彼は,突然,露骨に不機嫌な表情になりました。

 

彼が気分を害した原因は,周囲の客が麺を勢いよくすすっていたことにありました。

 

 

彼,いわく,

 

「日本人はいつも礼儀正しいのに,どうしてラーメンを食べるときにはこんなに失礼なんだ」

 

(彼によると,音を立てて食事をするのは,人前でおならをする以上に失礼な行為だそうです)

 

彼は,日本の文化や政治にも詳しく,日本のことも非常に気に入っているがゆえの疑問だったのだと思います。

 

 

私は,彼の指摘を受けて,すぐに答えが思い浮かばなかったのですが,

 

「日本でも,人前で音を立てて食事をすることは失礼なことだけど,麺を食べるときはそれが許されているんだ」

 

と説明しました。

 

おそらく,麺を勢いよくすすって食べることがもっともおいしい食べ方なのであり,その行為を周囲の人間が許容しているということなのだと思います。

 

ただ,そのような説明をしても,彼はやはりそのような食べ方に抵抗があるのか,首を傾げるだけで,まったく理解はしてくれませんでした。

 

(「もっともおいしい方法で食べるをすることが,料理や食材の作り手に対する尊敬につながるのであり,これは日本文化を象徴する行為だ」とでも言えば,説得的だったのかもしれませんが)

 

 

たしかに,昨今は,ヌーハラ(ヌードルハラスメント)なる言葉もあり,自分が当たり前に感じていた行為が,万人にとって当たり前ではないのかもしれません。

 

これは弁護士業界にもいえることであり,業界の人間が当たり前に感じていた慣習が,周囲の方にとっては当たり前ではないということもあるのでしょう。

 

このような場合,自分としては,周囲の方からどのように見られているか尊重したうえで,その慣習にどのような意味があるのか考え,意味があると思うのであれば周囲の方にその意味を説明する必要があるのだと思います。

 

 

ちなみに,私は麺類をすすって食べません。

 

そのおかげで,彼からはナイスガイと認定されましたが,その理由は失礼だと考えているのではなく,汁が飛び散るのが嫌だからです。

 

あえて理由を説明する必要もなかったので,その時の私は日本風のスマイルを返しておきました。