公正証書遺言の作成

年の瀬も押し迫ってきましたね。

12月は,今年1年を振り返る良い機会だと思いますし,私も今年1年でできたことと,残念ながら不足したところを見直し,また来年も頑張っていきたいと思います。

 

弁護士の江口潤です。

 

今,遺言を書くことが一つのブームとなっています。

私も,普段から相続案件を取り扱う中で,「遺言さえあれば,こんなにもめなかったのになあ」と考える事例を担当することがあります。

遺言書を作成したいというご依頼をいただくことも多いですし,その際には,個々の遺言者の具体的なニーズに合わせ,できる限り紛争となりにくいように配慮した遺言書を作成するお手伝いをさせていただいています。

 

今回は,遺言書にまつわる問題を取り扱いたいと思います。

 

遺言書は,遺言の意思能力の問題はあるにせよ,誰でも気軽に作成しようと思えば作成できるものです。

主には自分の財産を,自分の死後にどのように処分しようかという問題ですから,本来,万人にとっての関心事であろうかと思います。

ただ,遺言は,法律の定める方式によってしかすることができないということが,民法960条に明示されています。

現在の法律では,意思表示の方法は,口頭とか書面とか,押印が必要などと限定されていないのが原則とされていますが,遺言については,法律がその方式を厳格に定めているのです。

日本法以外の法律でもそのような規律になっており,これは遺言書の真意が死後には明らかにならないことから,それを関係者によって歪めようとさせないために厳格な方式が要求されているとも説明されています。

 

遺言に方式が厳格に定められている意味を深く考察すると興味深いとは思いますが,今回はもっと実際的な公正証書遺言の方式について紹介します。

 

公正証書遺言とは,公証役場において,公証人という公務員の面前で,遺言者が遺言の内容を口授して作成する遺言書をいいます。

公証人という法律実務家が関わって作成されるものですし,法律上の要件を満たすことについて安心できますから,現在では広く利用されています。

 

公正証書遺言では,公証人が,遺言者から聞いていた遺言の内容をもとに,予め遺言書の案文を作成したうえ,遺言者からの面前の口授によって作成するのが通例です。

このように口授と公証人による筆記とは,民法969条の定める方式と順序が入れ替わっていますが,このような方法によることも裁判所に認められています。

ただし,公証人の質問に対して遺言者が単にうなずいただけとか,手を握り返しただけでは口授としては足りないとされています。

 

このように,公正証書の口授の要件については,裁判所は,一方で,遺言者の意思を実現させるために緩和した方法によることも認めてはいますが,他方で,遺言者の真意の確保という観点から,一定の限界を設けているといえます。

公正証書遺言作成の手続きについてはこちらもご覧ください。