成年後見制度について

弁護士の江口潤です。

 

寒さもだいぶ和らいできました。

この冬は,前年に比べるとあまり寒くなかった印象がありましたが,やはり全国的に暖冬傾向だったようですね。

 

私の住む名古屋でも,降雪はほとんどありませんでしたし,過ごしやすかった気がします。

 

 

さて,私が,先日,成年後見事務に関する研修を受けてきましたので,今回は成年後見に関して取り上げたいと思います。

 

私は,普段から相続に関する案件を取り扱うことが多く,成年後見制度を利用することも多いです。

たとえば,遺言書を作成したいというお客様から任意後見制度のご利用をアドバイスしたり,遺産分割協議をする中で相続人の一人に成年後見人を就ける必要があったりということで,成年後見制度に携わっています。

 

成年後見人とは,認知症や精神疾患などにより十分な判断ができなくなった方にかわって,本人の財産を管理し,その身上を監護する者をいいます。

このようにサポートを必要とする人のために成年後見人をつけるには,家庭裁判所に成年後見開始の審判を申し立てる必要があります。

裁判所の資料によると,後見開始の審判の申立件数は,平成28年で2万6836件であったのが,平成29年では2万7798件となり,約3.6パーセント増加しているようです。

日本は高齢化社会ですから,今後も後見開始の審判の申立ては,この程度の件数が維持されるものと見込まれます。

 

裁判所から選任される成年後見人には,本人の親族がなるケースと弁護士等の専門家が選任されるケースとがあります。

成年後見の申立時に,親族を成年後見人の候補者としていても,財産が多かったり,遺産分割の必要があったり,親族が財産管理に適していなかったりした場合には,裁判所の判断で専門家が成年後見人に選任されることになります。

 

しばしば問題となるのは,親族に対する支出が許されるかということです。

成年後見人は,あくまで本人のために本人の財産の管理義務を負っていますから,親族に対する贈与や貸付は,財産の減少行為にあたるため,原則として認められません。

ただし,配偶者や未成熟子に対して,必要な扶養の範囲内での扶養義務の履行としてであれば許される余地がありますが,これも厳格に考えられる傾向にあります。

 

また,相続税対策のために,土地の上に居住用や収益目的での建物を建てることも問題となります。

まず,相続税対策というのであれば,本人のためではなく相続人のためということになりますので,成年後見人は行うことはできません。

居住用の建物建設といった場合にも,その真の目的は相続税対策ではないというためには,居住のために真に必要であったといえなければならないでしょう。

収益目的の建物建設の場合には,本人のために真に必要があるといえるのかどうかが,より厳格に考えられることになります。

 

このように,成年後見の事務には難しい問題も多く,専門家以外を候補者として考えておられる場合には,しっかりと対策をしておかれる必要がありますので,ご注意ください。