特別寄与料についての最高裁決定の紹介

インフルエンザが流行しているようです。

本格的に流行する時期はもう少し後なのだと思っていましたが、私の周りの名古屋の方でも、年齢を問わず、早くも流行しているという話を聞きます。

一度、罹患してしまうと生活に影響してしまいますので、私もワクチンを接種しておきました。

みなさまも、コロナに加えて、インフルエンザについても警戒していただければと思います。

 

今回は、特別寄与料に関する最高裁判所決定(令和5年10月26日第一小法廷決定)について説明することにします。

 

特別寄与料とは、被相続人に対して療養看護等の特別の寄与をした相続人以外の者に金銭的な権利を認める制度です。

特別寄与料は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定められることになっています。

相続人が複数いる場合には、各相続人が法定相続分または指定相続分に応じて特別寄与料を負担することになっています。

 

本件で問題となったのは、「遺言書によって指定相続分がないとされていたものの、遺留分侵害額請求をしたことで財産の給付を受けた者が特別寄与料の負担を受けることになるかどうか」という点です。

 

この点について、原審は、「遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは当該相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されない」と判断し、最高裁判所もこれを支持しました。

 

上記の点については、立法過程でもある程度の議論がされていました。

一つの考え方として、特別寄与料は「具体的相続分」に従って負担するという考え方がありますが、このように考えるのは以下の点で合理性がないとされました。

特別受益については、特別受益がある相続人と特別受益がない相続人との間の最終的な取得額ができるだけ平等になるように調整されたものであるにも関わらず、特別寄与料においては、特別受益がないまたは少ない相続人の負担を増加させることは相当ではないとされました。

寄与分についても、被相続人の財産の維持または増加に貢献があった相続人について、それが認められたために特別寄与料の負担が増加するということも合理性に欠けるとされました。

さらに、上記のような特別受益や寄与分が確定しない限り各相続人が負担すべき特別寄与料が確定しないとなると、紛争が複雑化・長期化することが懸念されたという事情もありました。

 

上記最高裁決定においても、特別寄与料の負担について、「相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等によることとしたもの」と解釈され、このような理解を前提として、遺留分侵害額請求をしたからといって負担割合が変化することはないという結論に達しました。

 

この判決については、関連して考えなければならない事項もありますので、後日、取り上げたいと思います。