試験における能力証明と成長機会について

名古屋では暖かい日が増えてきており、朝晩も含めて、コートが不要なくらいになりました。

先日、実家のある関西に行く機会もあったのですが、その際にはお昼に汗をかくくらいに暑かったです。

気温としては過ごしやすい季節になりましたが、他方で、花粉症にお悩みな方にはつらい季節でもあるようです。

季節ごとにしっかりと対策をしていきましょう。

 

今年の確定申告の時期が終わりました。

毎年、税理士としての業務が増えていく傾向にある中で、今年はかなりの業務量となりました。

それぞれの案件で検討を要すべき事項も多く、非常に勉強にもなる一方で、適正な業務処理が求められることへのプレッシャーも大きいといえます。

 

この件とも関連して、しばらく取り上げてきた宅建試験に関して考えたことがあります。

 

各人が試験を受ける際には、2種類の側面があるでしょう。

 

一つは、「試験で求められている能力をすでに持っていることを証明する」という側面です。

もう一つは、「試験勉強をするまでは持っていなかった能力だけれども、試験勉強を通じてそのような能力を手に入れることができた」という側面です。

 

「すでに知っている」という分野と、「まだ知らない」という分野と、試験を受けるうえで異なる意味があるといえそうです。

 

「前者の方が楽だしよい」という考え方もできるでしょう。

他方で、後者の方が人のモチベーションとしては上がるし、その人にとって価値があるといえそうです。

自分としては、前者については、たとえ達成したとしても、ある意味、当然のことですのであまりモチベーションにはつながらない一方で、後者は、自分の「成長を実感できる」という点でモチベーションにつながるという面があるし、価値が高く、効率的な行動なのではないかと感じます。

 

とはいえ、実際に受ける試験としては、自分が手も足も出ないような難しい問題を解いていても、自分の能力のなさを実感するだけで、モチベーションを維持するのも難しいかもしれません。

勉強を継続していくうえでは、勉強をすることでできるようになることが自分にとって楽しく、楽しいからこそ勉強が続けられるという、良い意味での循環を作り出すことが大切でしょう。

 

宅建の試験は、弁護士が備えているべき法的な知識の面と、自分がしっかりと勉強をしてこなかった不動産取引のルールなどの面の両方が対象となっており、今の自分にとって難しすぎることはありませんので、ちょうどよい試験なのかもしれません。

 

しばらく宅建の試験勉強をする時間を確保できないでいましたが、自らの成長のためにも、日常の業務とともに勉強を進めていきたいと思います。

 

宅建試験の過去問について

名古屋では寒い日が続いていますが、徐々に暖かさを感じる日も増えてきているように思います。

春が近づくにつれて、毎日の寒暖差も大きくなってきますので、みなさまにはご体調にもご留意いただいて、元気に過ごしていただきたいと思います。

 

前回は宅建試験を受験することに触れましたので、今回の記事では、私がどのように試験勉強を進めているかもお伝えしたいと思います。

 

前回は試験自体を採りあげて、試験の日や必要な受験の手続きを確認しました。

私は、次に試験の問題内容自体を確認することにしました。

 

私は、試験の合格を目標とするときには、まず過去問を確認します。

過去問は、実際に出題されたものですから、試験の資料としては最も確実なものです。

 

過去問を確認する目的は、その試験ではどのような能力が必要とされているのか、自分にその能力のうちどの部分が不足しているのかを確認することです。

何らかの目標を達成するときは、まずは現状の把握からとされていますが、このような試験勉強の進め方もその一つでしょう。

 

最新の令和4年度の過去問を確認すると、試験では全50問が出題され、合格には36問以上正解することが必要だということですので、最低でも7割以上を正答する必要があるようです。

 

実際に問題を解いてみると、序盤は宅建業に必要となりうる民法や判例の内容についての設問が続いていました。

自分の職業上、この部分の勉強はそれほど必要ではないと感じましたが、改正後の民法の内容の再確認や、現在の自分の実務ではあまり使用しない知識のおさらいをしておく必要はあると思いました。

法律についての知識のない方であれば、まずは、細かい知識にとらわれることなく、試験問題に登場する法律上の用語の意味をしっかりと確認することや、各制度がどのような内容なのかを確認されるところから始められるのがよいと思います。

 

ただ、この試験の内容の大部分は、宅地建物取引業法の内容から出題されています。

私自身も、宅建業法には日頃から携わっていませんし、これまでに試験勉強などで学んだことのない分野です。

ほとんど馴染みのない分野については、過去問を確認したからといってあまり深い理解が得られるわけではありませんから、出題内容のおおまかな把握をするだけに留めておき、テキストでの勉強をすることにしました。

 

過去問研究は重要ですが、初めからあまりこの点にこだわりすぎる必要もないと思います。

毎年、それほど出題傾向が変わらないということさえ確認できれば、出題範囲についての一定の勉強を進めるため、テキストの勉強や問題集の回答に移るのが効率的だと思います。

 

試験時期が近づいてきた時期に、過去問の利用方法については、再度、触れたいと思います。

 

令和5年の目標

令和5年になりましたので、今年の目標を考えたいと思います。

昨年は、特に税の分野で勉強を進めていこうとしていましたが、今年はどの分野での勉強に力を入れようかと考えていたところです。

 

今年は、不動産の勉強に力を入れて、宅建試験も受けようと考えました。

この試験は宅地建物取引業法に基づいて実施される試験で、合格者には宅地建物取引士となる資格が与えられます。

 

弁護士業務をする中で、日々、不動産に関する案件を扱っていますし、私自身も不動産についての知識をある程度は持ち合わせているつもりです。

ただ、今年は、せっかく勉強をするのであれば、資格が手に入るもので、業務に役立つ可能性のあるものを対象にしようと思いました。

普段の業務においても、日々、勉強や調査をする必要があるものの、資格試験などとしてしっかりと腰を据えた勉強をする場合には、自分の知識の整理にもなりますし、新たな発見や理解が得られるのではないかと楽しみにしています。

 

宅建試験は、不動産適正取引推進機構という一般社団法人が取り扱っています。

試験日は、例年、10月の第3日曜日とされていますが、正式には6月の第1金曜日に官報で発表されることになっています。

受験申込みは、インターネットによる方法と郵送による方法があり、通例、前者は7月中旬まで、後者は7月下旬までは期限だということです。

受験地は、受験者の住所地によって会場が決まっているようですので、私の場合は名古屋市内の会場になりそうです。

 

これらはコロナウイルスの影響で変更される可能性があり、イレギュラーになることもあるそうですので、まずは最新で正確な情報を収集しておきたいと思います。

 

何ごともしっかりと計画を立てることが重要だと思います。

次回は、宅建試験の試験範囲について触れようと思います。

 

相続財産清算人について

今年も師走に入りました。

ここからは私の弁護士業務も、毎年、非常に忙しい時期になります。

「年内に案件を解決しておきたい」という機運があるため、これにしっかり対応できるように私も今まで以上に集中して取り組んでいきたいと思います。

 

今回は令和5年4月1日に施行される予定の民法改正後の相続財産清算人について取り上げたいと思います。

 

相続人が存在しない場合には、相続財産は法人(「相続財産法人」と呼ばれます)とされます。

具体的には、戸籍を調べても相続人が存在しない場合とか、遺言書で相続人以外に財産が遺贈されている者も存在しない場合、相続人がいたとしても全員が相続欠格や廃除、相続放棄で相続権がなくなった場合に、相続人が存在しない(法律上の条文だと「相続人のあることが明らかでない」という文言になっています)と扱われます。

 

相続財産法人は清算の手続きをすることが必要なのですが、相続財産清算人という清算手続きを進めることができる権限のある者が選任されるまで、清算手続きは進められません。

相続財産清算人は利害関係のある者が家庭裁判所に選任を申し立てることができ、これがない限り、選任や手続きがされないのです。

 

相続財産清算人は、選任があった旨と相続人があるならば最低6か月間の期間内に権利主張をすべき旨の公告をすることになります。

この期間内に相続人が見つかった場合には、その相続人が相続の承認をすると精算手続きは終了することになります。

併せて、相続債権者や受遺者に対して請求の申出をすべき旨の公告を2か月以上の期間を定めてすることになります。

相続債権者や受遺者がこの期間内に権利主張をしなければ、権利を行使することができなくなります。

 

相続人や債権者が現れない場合には、相続財産が国庫に帰属することになる前に、特別縁故者がいないかが問題になります。

特別縁故者がいる場合には、特別縁故者が相続財産の全部または一部を取得することが認められます。

 

上記の相続財産清算人の職務は、これまでの相続財産管理人が行ってきたものですが、改正法では保存型の相続財産管理人の規定ができたため、これと区別するために相続財産清算人の呼称が用いられるようになったとされています。

 

相続に関わる分野では、法律の改正も多く、変更内容に注意していかなければなりません。

 

民事裁判書類電子提出システムmintsについて

11月に入り、今年もあと2か月になりましたね。

今年初めに立てた目標のことを思い出しつつ、今年一年で達成できたこと、十分に達成できなかったことを振り返ると、反省しなければならない点も多く感じています。

今年の残りの時間を利用して、まだ達成できていない目標の達成と、日々の目標をしっかりと見据えて、なるべく多くのことを達成できるように進めていきたいと思います。

 

今回は、民事裁判書類電子提出システムmintsについて取り上げたいと思います。

 

裁判所でもIT化にともなう環境の整備を進めています。

これまでは、裁判所に提出する主張書面や書証の写し、証拠説明書などの書面は、基本的にファックスで提出されていました。

mintsでは、これらの書類がオンラインで提出できるようになります。

これらの書類は、裁判所だけでなく、訴訟の相手方(他の当事者)にも直接送付(直送)する必要がありましたが、裁判所と当事者が事件ごとに作成されたページで共有することになるため、これも同時にされることになります。

 

ただ、これから運用されるシステムはあくまで現行の民事訴訟法をベースにしたもので、利用できる書面の範囲や利用方法に制限があります。

裁判所においても、データで提出されたものはいったん紙にプリントアウトして記録に編綴するという運用がされますし、裁判手続きのIT化はあくまで過渡期にあるといえます。

 

これが実施される時期は、裁判所によって異なります。

名古屋地方裁判所の本庁では、令和5年1月頃から運用される予定のようです。

 

以上は、先日、愛知県弁護士会向けに行われた裁判所の研修会での内容を参考にしています。

これからも、裁判手続きのIT化は一層進むことになるでしょうし、手続きにおける利便性も高まるでしょうし、報道でも問題になっている裁判の記録保管の問題も解消されることになるかもしれません。

他方で、IT化に伴うセキュリティやIT弱者への対応などのトラブルも生じるおそれがあるでしょう。

裁判所も、利用者の要望に応じて現在のツールを改修していくことになるのだと思いますし、私も、裁判手続きに関与する専門家として、しっかりと運用ができるようにしたいと思います。

不動産取引における心理的瑕疵について③

朝晩もめっきり寒くなり、すっかり秋という感じになりましたね。

私の弁護士事務所が入っている松坂屋名古屋店の本館7階のフロアでは、大北海道展が開催されています。

連日、多くのお客様が来店されていますが、商売をする側にも熱気を感じますし、非常ににぎわっています。

 

前回から引き続き、国土交通省が令和3年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」について取り上げたいと思います。

 

心理的な瑕疵の内容に該当する事実の有無や内容は、売主から買主に伝える必要があります。

不動産取引に関わる宅建業者は、販売活動・媒介活動に伴う通常の情報収集を行うべき業務上の一般的な義務を負っているとされていますが、心理的な瑕疵についてはどこまでの調査をしなければならないのかが問題となります。

 

ガイドラインにおいては、宅建業者は、原則として、自ら周辺住民に対する聞き込みやインターネットを使用した調査を行う義務まではなく、売主や貸主から過去の事案についての記載を求めることによって、通常の調査義務を果たしたものとするとされました。

宅建業者には原則として調査義務までは負わないとされているものの、仮に調査をする場合においては、亡くなった方やその遺族の名誉や生活の平穏に十分に配慮して進めることが必要とされています。

 

売主や貸主から上記の確認を取る際には、宅建業者としては、記載が適切になされるように助言をすることや、事案が存在することを故意に告知しなかった場合等には民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが望ましいとされています。

そして、宅建業者が、事案の存在を疑うに足りる事情があると考える場合には、売主や貸主に確認することが必要であるとされました。

 

業界で使用されている告知書(物件状況等報告書)においては、すでに事案に関する記載欄がありますし、宅建業者としては、後日、トラブルとなってしまったときに備えて、しっかりとこの書類を保存しておくことが必要だといえます。

 

不動産取引における心理的瑕疵について②

暑さもかなり和らいだように思いますが、名古屋でもまだまだ暑い日も続いていますね。

季節の変わり目は体調を崩しやすくもありますし、今の季節は台風にも警戒が必要でしょうから、みなさまもくれぐれもご用心いただきたいと思います。

 

前回から引き続き、不動産取引における心理的瑕疵について取り上げたいと思います。

 

国土交通省が令和3年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、人の死の事案について「告げなくてもよい場合」が明示されていることが特徴的です。

 

告知義務のない類型の一つ目として、「対象不動産において自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合」があげられています。

この類型は、賃貸借取引と売買取引の双方が念頭におかれています。

「自然死」とは、老衰や持病による病死などのことをいい、このような人の死亡が発生することは居住用不動産において当然に予想され、一般的な死因であることから、取引判断に重要な影響を及ぼさないと考えられています。

「日常生活の中での不慮の死」とは、たとえば、階段からの転落や入浴中の溺死、食事中の誤嚥などのことをいい、これについても自然と同様に扱ってよいだろうとされています。

ただし、上記のような死因であっても、いわゆる孤独死などによって特殊清掃などが必要になったケースについては、取引判断に重要な影響を及ぼす可能性があることから、告知義務があるものと考えられています。

 

告知義務のない類型の二つ目として、「告知義務がある場合であっても、それが判明した後に概ね3年が経過した場合」があげられています。

この類型は、賃貸借取引が対象で、売買取引は対象外です。

心理的瑕疵は、時間の経過とともに希釈され、やがて消滅するとも考えられているところではあり、では、この期間がどのくらいであるのかが問題となります。

この問題に関する過去の裁判例を参考にして、賃貸借契約においては、原則として、概ね3年が経過した場合には告知義務が消滅するとされています。

ただし、例外的に、人の死の事案の事件性や周知性、社会に与えた影響等が特に大きい事案については、上記の期間の経過では足りず、告知義務がないとはいえないとされています。

 

告知義務のない類型の三つ目として、「対象不動産の隣接住戸又は借主若しくは買主が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で生じた死の事案」があげられています。

これも、第一の類型と同じく、賃貸借取引と売買取引の双方が念頭におかれています。

対象不動産そのもので生じたものではなくても、その周辺で生じたものも心理的瑕疵になりうると考えられますが、では、どのような場合がこれにあたるかが問題となります。

「対象不動産の隣接住戸」とされているので、周囲の住居で起きた死の事案については、原則として、告知義務の対象外とされています。

「通常使用しない集合住宅の共用部分」とされているので、マンションなどの共用部分のうち、居住者が通常使用しない部分で起きた死の事案も、原則として対象外とされています。

ただし、この類型でも、第二の類型と同様、人の死の事案の事件性や周知性、社会に与えた影響等が特に大きい事案については、例外として扱われています。

 

ガイドラインでは上記のとおりとされているのですが、みなさまの感じ方はいかがでしょうか。

前回のブログでも指摘しましたが、何を心理的瑕疵と考えるかは人それぞれであるといえますので、告知義務の対象外としてよいのかは慎重に考えるべきでしょう。

とはいえ、不動産の客観的な価値を評価する場合には、「一般的な視点」というものが必要になりますし、これに対する一つの考え方が明示されていることは有意義だといえます。

これは今後の社会の状況や人々の認識によって変わり得るものであろうとも思いますが、弁護士や不動産取引に関わる者としては、このような一般的な視点を理解しておく必要があるとはいえるでしょう。

 

相続人申告登記について

安倍元総理大臣が凶弾に倒れました。

一報を聞いたときは非常に驚きましたし、命を落とされたと聞いたときはショックでした。

その業績に対する評価はさまざまでしょうが、日本という国のことを考えて非常に尽力された方であろうと思います。

このような形で最期を迎えられたことは、関係者にとっては非常に悔しいでしょうし、何よりご本人が無念であったろうと思います。

心からご冥福をお祈りいたします。

 

今回は、相続人申告登記について取り上げたいと思います。

 

法律が改正され、相続登記が義務化されることは過去のブログでも採りあげました。

 

弁護士業務をしている中でも、「期限内に相続登記をすることが義務化される」=「期限内に遺産分割協議を成立させなければならない」と考えられている方も多いように思いますが、実は、正確には異なります。

遺産分割協議の成立による相続登記以外にも、法定相続登記による登記をすることができますし、これにより法律上の義務は果たしたことになります。

 

今回の相続登記の義務化によって、新たに「相続人申告登記」という制度が設けられることになりました。

相続人申告登記とは、相続人が、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と自らが登記名義人の相続人である旨を申し出ることによる登記のことです。

上記の法定相続登記との違いは、登記の際に提出が必要となる書類が少なくなるということです。

法定相続登記においては、すべての相続人関係を明らかにする必要がありますから、被相続人の出生から死亡、各相続人の現在の戸籍等を提出する必要があります。

他方で、相続人申告登記では、自らが相続人であることのみを示せばよく、被相続人の死亡の記載のある戸籍と自らの戸籍(これに加えて、名古屋市等の住所を証する住所証明情報も)の提出だけで済む場合があります。

このように、相続登記が義務化されたことによって、相続人に過度の負担が生じないように簡易な制度が設けられることになったのです。

 

この登記は、「申出」とされており、「申請」とはされていません。

これは、この登記があくまで申出人からの申出によって、登記官が職権で登記をすることができるという形式が採られているためです。

登記の内容としても、権利登記への付記登記として扱われます。

 

登録免許税などの登記に必要な費用の面でも配慮がされるかもしれません。

相続登記の義務化は政策的な観点から定められたものですので、なるべく負担がないような制度としてほしいと思います。

 

路線価と固定資産税評価額の決められ方

今年もゴールデンウイークの最終日となりました。

平日もお休みを取ることができた方は10連休、平日が暦どおりの方は3連休が2回あったようです。

コロナの影響もあったため、長期の旅行に行かれた方はあまり多くなかったかもしれません。

ただ、名古屋の栄でもさまざまなイベントは予定どおり開催されていましたし、少しずつ通常の生活が戻ってきているようにも感じます。

感染の拡大にも注意しながら、引き続き、日々の生活を過ごしていきたいと思います。

 

今回は、路線価と固定資産税評価額がどのように決められているかについてご紹介いたします。

 

路線価は、相続税や贈与税において、土地の評価に使用する指標です。

路線価は、毎年、見直しがされ、その年の1月1日時点での評価額が決められます。

具体的な数字は、国税庁や税務署が近隣の取引価格や従前の路線価などから、不動産鑑定士などの専門家の意見も聞きながら決められているとされています。

決められる時期については、毎年、7月までに決められるように運用されています。

 

固定資産評価額のうち土地については、住宅の集中している土地と、それ以外の田舎の土地で評価方法が異なります。

住宅の集中している土地は、いわゆる路線価と同じように、道路ごとに設定されている土地単価をもとにして、固定資産評価額が計算されています。

それ以外の土地については、標準宅地比準方式という方法が採用されており、対象の土地の付近にある標準宅地の土地単価をもとに計算がされています。

評価額は3年ごとに見直しがされており、基本的には3年間は同じ金額が採用されています。

固定資産評価額は、市町村で縦覧帳簿というもので閲覧することが可能になっており、4月1日から5月31日までが縦覧期間となっています。

固定資産の評価額に不満がある場合には、担当の部署に問い合わせたり、固定資産評価審査委員会へ再審査をしてもらったりすることが可能だとされています。

 

名義財産について

前回の記事では、ウクライナとコロナの問題に触れましたが、今は地震のリスクにも注目が集まっているようです。

インターネットのホームページでは、最近起きた地震の最大震度を4以上や5弱などに限って表示できるものもあります。

それを見ると、それなりの規模の地震が最近、頻発しているように思えます。

私自身はあまり地震に詳しいわけではありませんが、このような地震もプレートのひずみがたまったために生じたものである可能性を考えると、以前から危惧されていた巨大地震の予兆の可能性もあるのだろうと思います。

個々人ができる対策には限りはあるのでしょうが、非常時の食糧や水の確保など、少しでも備えをしておくかどうかで大きな違いがあるのでしょうから、日頃からできる範囲での準備はしておきたいと思います。

 

今回は、名義財産の問題についてご紹介いたします。

 

名義財産とは、名義はその人とは異なるが、その人の財産といえるものをいいます。

たとえば、預貯金口座が妻の名義となっているものの、実質は夫のものだったというようなものです。

預貯金のほかにも、不動産であったり、株式であったり、保険であったり、名義財産となる可能性のある財産といえます。

 

名義財産であるかどうかが問題となる場面として、たとえば相続税の申告の場合があります。

亡くなった方の名義ではないものの、亡くなった方の財産である場合には、相続財産に計上しなければなりませんので注意が必要です。

 

問題となることが多いのが預貯金のケースですので、預貯金を例にとって、名義財産かどうかを判定する考え方を紹介します。

 

最も重要なのは、その口座の預貯金の出捐者が誰なのかということでしょう。

口座内の預貯金が亡くなった方が出したものであれば、名義財産と考えられる余地で出てきます。

この他の要素として、その口座が、いつ、誰によって、どのような目的で開設されたものなのか、どのような目的で利用されてきたのか、通帳やキャッシュカードは誰がどのように管理していたのかなどを考慮する必要があります。

 

名義財産であることが疑われる場合には、課税庁は、上記の事情についての資料を収集することができますので、申告をする側はしっかりと検討する必要があります。

詳しくは弁護士にご相談ください。

名古屋で相続に関するご相談をお考えの方はこちら

相続財産の国庫帰属について

ウクライナ情勢が緊迫しているようです。

他方で、コロナに関するニュースの量が少なくなっているようにも感じます。

名古屋での感染者数は、一時のようなピークを越えているようですが、依然として高い水準にあるようです。

このように考えると、コロナのニュースの中で埋もれてしまったその他のニュースも多かったのではないかと感じます。

 

先日、事務所内で、相続財産管理人による不動産の国庫帰属に関する研修をしましたので、ご紹介いたします。

 

相続人が存在しない場合等には、相続財産は国庫に帰属することになります。

この手続きは、家庭裁判所から選任された弁護士等の相続財産管理人が行います。

 

国は、従来、不動産の物納を原則として認めていなかったため、相続財産に不動産がある場合、相続財産管理人は、不動産を換価したうえ、金銭で納めることを求められてきました。

しかし、平成29年6月27日付事務連絡よって、上記のような取扱いは変更され、「相続人不存在不動産については、管理又は処分をするのに不適当であっても、引継ぎを拒否することができないので、補完を依頼する内容については必要最小限のものにとどめ、相続財産管理人の協力を求めること」とされました。

そのため、処分が困難な不動産が相続財産にある場合でも、当該不動産に適切な処置をしたうえで、国に引き継ぐことができるようになりました。

 

具体的な流れとしては、担当の財務局と事前に協議し、現地調査などを行ったうで、該当の不動産の処分に関する方針を決定し、それに従って処理がされます。

現地調査についても、必ずしも実施しなくてもよいケースもありうるとされています。

 

どのような方針で不動産の処分をすることになるのかに関して、財務局では「相続人不存在による国庫帰属の手引き(令和3年6月改訂)」という書類が作成されています。

実際にどのような方針が採用されるかについては、当該不動産の状況だけでなく、相続財産の全体の内容なども影響しますから、ケースバイケースで判断すべき事例も多いようです。

 

財務局の担当者のご厚意で、上記手引きをご提供いただきました。

私の方でも、この点の勉強も進めていきたいと思います。

 

庭園の財産としての評価について

久しぶりの投稿です。

コロナの感染拡大によって、節分の行事が、名古屋でも相次いで中止や一部中止となっているようです。

行事には参加できなくとも、コロナという邪気が払われるように願っています。

私の事務所の入っている松坂屋名古屋店本館7階の催事場では、バレンタインに合わせた店舗が数多く出店しています。

さまざまなチョコレートが並んでおり、目移りするほどですが、主なお客さまは女性であるものの、チョコ好きとして便乗したいと思っています。

 

今回は、庭の財産としての評価について触れたいと思います。

 

私自身、相続についての案件を数多く手がけてきましたが、相続財産に庭が含まれており、遺産分割協議などにおいて、この評価額が争いになったというケースを経験したことがありません。

実際に、庭というのは、亡くなった方が好きで整備していただけで、(亡くなった方にとっては残念ながらかもしれませんが、)相続人は、その庭に価値を見出していないことが多いように感じます。

むしろ、立派な庭であればあるほど、その不動産を売却するために更地にする際の費用がかかってしまうという負の側面もあるように思います。

 

そのように、相続財産としてあまり価値を見出しづらい庭ではありますが、相続税の申告の際には注意が必要です。

 

相続税においては、庭は不動産の附帯設備等の一つである庭園設備として、しっかりと相続財産として扱われており、その評価方法が決まっています。

財産評価基本通達によると、庭園設備は調達価額の7割に相当する価額によって評価するとされています。

調達価額とは、「課税時期において、その財産をその財産の現況により取得する場合の価額をいう」とされていますので、現況の庭園を造成しようとすればいくらの費用がかかったかという価額を基準に、庭園設備の価値が評価されることになります。

どのようにこの価額を調べるかというと、庭園設備の取得価額であったり、造園業者の意見であったりを参考に、この価額を検討することになります。

 

実務上は、一般家庭の庭がこの課税対象となることはほとんどなく、よほど立派なものでない限り、申告の対象とはされていないようです。

では、どの程度のものであれば申告の対象とすべきかは非常に難しく、悩ましいケースもあると感じています。

 

 

 

自筆証書遺言の保管制度の利用状況について

コロナの感染者数が落ち着いてきたこともあり、私の事務所の入っている松坂屋名古屋店にも、人出が戻ってきたように感じます。

本館7階の催事場では、バウムクーヘン博覧会2021が来週8日まで開催されており、さまざまなバウムクーヘンが並んでいます。

私自身もバウムクーヘンは好物ですので、自分のお気に入りのものを探してみたいと思っています。

 

今回は、自筆証書遺言の保管制度の利用状況について触れたいと思います。

 

令和2年7月から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が開始されました。

国民の遺言書の作成を促進したいという政策目標を達成するために導入された制度ですが、私自身も、相続に関わる弁護士として、一般の方がどの程度利用されるのか気になっていました。

法務省から、この制度の利用状況に関する資料が公表されていますので、紹介します。

 

https://www.moj.go.jp/content/001327091.pdf

 

この資料によると、令和2年7月から令和3年3月までの9か月の保管申請数は1万6721件となっています。

日本公証人連合会が公表しているデータによると、令和元年の公正証書遺言の作成件数が11万件程度でしたので、これと比べても、相当程度の利用がなされているといえます。

公正証書遺言の作成件数はこれまで増加傾向にありましたが、令和2年は9万7700件と減っていますので、公正証書の作成の代わりに自筆証書遺言の保管制度を利用した層が一定程度あったものと分析できます。

そして、遺言書が作成された件数全体については、引き続き、増加傾向にあるのだろうとうかがわれます。

 

上記の両制度にはそれぞれメリットとデメリットがありますので、どちらの利用が望ましいのかは遺言者自身の状況によります。

どちらの形式で作成するのがよいのか悩んでおられる方がいらっしゃいましたら、ご相談をいただければと思います。

遺言に関する当法人のサイトはこちら

登記官が職権で登記情報を更新する制度について

東京オリンピックも閉幕しました。

私自身、スポーツをするのも、観るのも好きなのですが、昨今のコロナ事情のもとで、どちらも十分にしづらい状況になっているなあと思います。

オリンピックが東京で開催されるということで、心に残ったシーンもたくさんありましたが、特に名古屋にいると日本で開催されたという実感があまりなかったのが実際のところです。

その間、コロナについては、デルタ株の隆盛もあって、感染が急速に広まってしまっていますし、とても憂慮すべき状況にあると思います。

私は、2回目のワクチン接種を済ませましたが、変異株への有効性は疑問視されていますし、引き続き、気を引き締めて感染対策に臨みたいと思います。

 

今回は、登記官が職権で不動産の登記情報を更新することについて、法改正の内容に触れたいと思います。

 

登記名義人が死亡しているにも関わらず、不動産の登記情報にそのまま残っていることや、住所や氏名が変更されているにも関わらず変更がされていないことが問題視されてきたことは、何度か取り上げてきたとおりです。

ここで、登記所・登記官が、登記名義人の死亡や住所や氏名の変更の事実を把握したときには、その内容を登記に反映されるという仕組みができた場合には、このような状態の解消につながりそうです。

 

改正不動産登記法では、登記官は、登記名義人が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合には、職権で、その旨を示す符号を表示することができることになりました。

「権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合」というのは、少し難しい言い方がされていますが、死亡のほかに、災害などによって亡くなったと扱われる認定死亡や、普通は存命ではないだろうという年齢になっている高齢者消除などが想定されています。

 

住所についても、登記官は、名義人の住所などに変更があったと認める場合には、職権で、変更の登記をすることができるようになりました。

ただし、登記名義人が自然人であるときには、申出があった場合に限られています。

DVやストーカーの被害者など、最新の住所を公示することに問題のある場合があるため、このような扱いとなっています。

 

ネックとなるのは、登記官がこのような情報をどうやって取得、収集するのかということです。

死亡等の情報については、登記所が住基ネット等にアクセスすることで得られそうです。

しかし、現在の登記情報には名義人の氏名と住所しか記載されておらず、その情報のみで個人を特定するということは困難だと考えられます。

そこで、登記の名義人の情報と、住基ネットの情報を連携させるため、新たに所有権の登記名義人となる場合、登記の申請の際に、生年月日等の検索用情報を提供しなければならないこととなりました。

ただし、このような検索用情報は登記情報として公示されるわけではなく、あくまで登記所内部のデータとして取り扱われることになっています。

 

これらの情報の紐づけのために、登記所が保有する情報と、住基ネットワークの情報との定期的な照会と照合がされることが想定されています。

今後、検索情報として、生年月日のほかに、たとえば、マイナンバー等のどのような情報の提供が要求されるのかも確認していく必要があるでしょう。

弁護士の立場からすると、利便性が向上する一方で、登記申請にあたっての負担やリスクが増大しないように注意していただきたいと考えています。

 

所在等が不明な共有者から持分を取得する制度について

東京オリンピックの開幕が間近になってきました。

現在のコロナ情勢の中で、無観客での開催方法や、そもそも開催することの適否など、賛否に関するみなさまのご意見はそれぞれでしょう。

無観客での開催となると、オリンピックを通じて見込んでいたさまざまな効果は喪われることになってしまいますし、多くの労力が結果につながらなかったことは非常に残念に思います。

とはいえ、実際に開催するのであれば、選手の方々にはスポーツの素晴らしさを純粋に伝えてほしいと思いますし、大会を支える関係者を名古屋の地から応援したいと思います。

 

今回は、民法改正で導入される所在等が不明な共有者から共有持分を取得する制度について触れたいと思います。

 

前回は、所有者不明土地の解消のために制定された相続財産国庫帰属法について取り上げましたが、この制度も同じ目的で制定されたものです。

 

不動産の中に、所在等が不明な共有者(「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない共有者」)がいる場合に、共有者は当該共有者の持分を有償で引き取ることができるようになりました。

適用可能な場面としては、相続財産国庫帰属法のように相続等によって取得された不動産に限られず、通常の共有状態であれば利用することができます。

 

所在等が不明であるというためは、不動産登記の内容や住民票などを調査することで、所在などを調査しても不明であることが必要です。

このような調査を尽くしても所在等が不明であることが裁判所に認められれば、そのような共有者から共有持分を取得することができます。

 

その後、裁判所は、申立てをした共有者に対して、当該持分に応じた供託金を納めることを命じます。

これは、所在等不明共有者からの時価相当額請求権に基づく支払いの担保とするためです。

この供託がなされれば、当該持分は申立てをした共有者に移り、他方、所在等不明共有者は申立てをした共有者に対して時価相当額請求権を取得することになります。

 

注意しなければならないのは、供託を命じられた供託金額が、必ずしも時価相当額請求権の価額と一致するわけではないということです。

当事者間でこの価額が争われた場合には、最終的には裁判所での訴訟で決することになります。

 

この制度がどの程度利用しやすいものとなるかは、所在等の不明に関する裁判所の判断や、供託金の算定に関する裁判所の運用によるでしょう。

不動産の権利関係の整理に対するニーズは高いものと思われますので、弁護士として制度開始後の運用に注目していきたいと思います。

 

 

相続財産国庫帰属法の利用可能性について

私の住んでいる愛知県でも、暑さがだんだんと増してきました。

日中、外に出る際には、暑さや日差しへの対策をしていきたいと思います。

 

今回は、新たに成立した相続財産国庫帰属法(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律。法務省のリンクはこちら)について取り上げたいと思います。

この法律も所有者不明土地の解消のために設けられた関連法の一部です。

 

相続においては、相続財産の一部のみを相続人の誰も相続しないという選択をすることができませんので、誰もが取得を希望しない不動産が出てしまう場合があります。

そして、そのような不動産を取得した相続人が、引取手を探しても見つからないというケースがしばしばあります。

 

このような場合の選択肢の一つとして、相続人が不動産を国に引き取ってもらうことができる制度ができました。

 

ただし、どのような不動産であっても国が引き取ってくれるわけではありません。

 

たとえば、「建物の存在する土地」は対象外となっていますので、そもそも建物は法律の対象外であるだけでなく、土地上に建物が存在すらしてはいけません。

その他に、土壌汚染がされている土地や、境界が明らかでない等の土地も対象外とされています。

 

これに該当しない土地である場合には、国は対象の土地の事実調査を実施して、管理を阻害する工作物や車両の有無などを調べたうえで、「通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」として定められたものなどに該当しないと認められれば、国に引き取りを承認してもらうことができます。

 

ただし、実際に国に引き取ってもらうためには、管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して定められた負担金を納付する必要があります。

この納付金を納めなかった場合には、引き取ってもらうことができません。

 

今後、この制度がどの程度利用されることになるのかは、どのような運用の基準となるのかや、負担金の額がどのように定められるかによります。

私が弁護士としてこれまでに関わってきた依頼者さまの中でも、上記のような不動産を相続された方がいらっしゃいますので、制度を利用することにメリットがあるかどうかを慎重に検討して、ご利用を提案したいと考えています。

 

所有者不明土地問題の関連法の成立について

私の住んでいる愛知県でも、再度の緊急事態宣言が発出されました。

5月12日から5月31までの20日間が対象であるとのことです。

自分自身だけでなく、身近な大切な方をまもるためにも、個々人が自覚をもって行動していくべきだと思います。

 

以前のブログで触れてきた、所有者不明土地の問題に関する不動産関係の民法や不動産登記法の法改正、相続土地国家帰属法が、令和3年4月21日の参院本会議で可決され、成立しました。

法の公布日は4月28日であり、原則として、2年以内の政令で定める日に施行される予定です。

(法務省のリンクはこちら

 

今回は、世間でもっとも注目を集めている「不動産登記の義務化」について触れたいと思います。

 

不動産の登記については、登記権利者の権利であって義務ではないと考えられてきました。

つまり、自らが不動産を所有しているのであれば、その不動産が自らのものであることの証明として登記をしておくのは、原則として、その者の権利ではあるけれども義務ではないと考えられてきたのです。

 

しかし、所有者が不明な土地が社会問題として深刻化してきた昨今、これが見直されることになりました。

今回の法改正では、相続登記と住所・氏名変更登記については、法的な義務とされることになったのです。

 

具体的には、相続登記については、不動産を取得した相続人に対して、その取得を知った日(「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」)から3年以内に相続登記をすることが義務付けられました(改正不動産登記法76条の2第1項)。

そして、この登記義務を怠った場合には、正当な理由がない限り、10万円の過料の制裁を受けることになりました。

 

住所・氏名変更登記については、氏名や住所について変更があったときは、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請することが義務付けられました(改正不動産登記法76条の5)。

そして、この場合においても、登記義務を怠ったときには、正当な理由がない限り、5万円の過料の制裁を受けることになりました。

 

これらの施行については、他の規定と異なって、相続登記については公布後3年以内の施行、住所氏名変更登記については公布後5年以内の施行と、より長期の猶予が与えられています。

この間に社会的な周知を広めて、適正な対応をしていくことが求められます。

 

私も、弁護士としての職務を通じて、みなさまが適正に上記の義務を果たしていかれるように気を付けていきたいと思います。

 

不動産についての法改正

私の住んでいる愛知県での緊急事態宣言は、先月28日に解除されました。

所属事務所のある名古屋市栄地区の人出は、これによってただちに変わったとの印象はありません。

ワクチンの接種が進むまでは、引き続き、感染対策と警戒が必要だと思います。

 

コロナの影響で、コロナ対策と関わりのない法律の整備もかなり遅れたところがあるようです。

私の業務分野に深く関わるところとして、不動産関係の民法や不動産登記法の法改正が、平成31年から法制審議会で取り扱われていたのですが、先月10日に、法制審議会から法務大臣への答申がなされるところまでやっと進みました。

 

今回の法整備は、社会問題となっている所有者不明土地の問題に対処するためになされるものです。

この問題の現状を少し紹介しますと、平成28年度地積調査で土地所有者に関して調査したところ、不動産登記簿のみでは所有者の所在が確認できなかった土地の割合が、全体の約20.1%にのぼったようです。

土地の所有者が分からなければ、土地を管理する場合や、さまざまな目的で土地を利活用しようとした場合に問題が生じかねません。

所有者が不明となってしまっている原因としては、相続登記がなされていないものが約66.7%、住所変更登記がなされていないものが約32.4%であるとのことです。

 

このような現状に対処するため、さまざまなアプローチで解決策が提案されており、その中には実務的に重要なものが多く含まれています。

 

報道では、相続登記が義務化され、その違反については行政罰が規定されることになる点が強調されています。

この施策は、相続登記を義務化することで、相続登記がされないまま所有者が不明となっている事態を予防するとの観点から、導入されようとしています。

今後、どのような場合に、この行政罰が適用されるのかについても、細かく検討していく必要があります。

 

そのほかにも、さまざまな制度が整備されることになっていますので、土地の管理や相続の手続きがより円滑に進められる手段が増えることにはなっています。

他方で、これらの制度を利用することにはさまざまな制限があり、制度利用の限界や、費用の問題、本来の権利者に対するリスクの問題もあります。

 

今後のブログでは、しばらく、これらの点についてとりあげていきたいと思います。

 

法制審議会のページのリンクはこちらです。

 

 

「脱ハンコ」について

街中を歩いていると,金木犀の香りがする季節になりました。

名古屋ではまれですが,少し郊外に行くとそのような機会もあります。

私が以前住んでいた家の庭には,金木犀が植えられており,その甘い香りを感じると懐かしい気持ちにもなります。

 

今回は,印鑑の廃止について考えてみたいと思います。

 

世間では,「脱ハンコ」という言葉をよく聞かれるようになりました。

コロナの影響でリモートワークが進んでいるところ,わが国の印鑑の押印による書面作成の文化がこの促進を阻害しているというわけです。

かねてから,日本のIT化の遅れは指摘され続けており,この元凶としてハンコ文化がやり玉に挙げられてきました。

「脱ハンコ」は,今般,政府によっても取り上げられて注目を浴びていますが,稟議や決済手続きなど,日本流の意思決定手続きにまで批判が及んでいるようです。

 

弁護士業界では,決済手段として押印をすることはあまりないものの,書面に押印をする機会は非常に多いです。

裁判所に提出する書面,相手方に提出する書面など,自分の名義で作成したほぼすべての書面に職印で押印しています。

ただ,「この書面には押印は必要ないのではないか」と感じる書面もあり,見直すことはできそうです。

私は,関係者とメールで書面のやりとりをすることも多く,発信者の履歴さえ残るのであれば,作成した文書に押印は必ずしも必要ないように感じています。

 

他方,契約書などの一定の重要文書については,押印がまだまだ必要だと思われます。

民事訴訟では,本人の印鑑による押印がある場合には,本人の意思による押印,本人の意思による書面の作成が推定されるという扱いがされています。

印鑑による意思推定の脆弱性はかねてより批判されてきたところではありますが,現在でも,このように裁判実務上扱われていることは重要です。

他方,電子署名など,技術的に本人が作成したことを裏付ける技術も向上してきており,これらの日々進歩していく技術が,裁判実務上どのように扱われていくのかにも注目していく必要があります。

 

私自身は,職務上,自分の職印で押印することには,「その書面の内容に責任を持つ」という意味合いもあると感じていますし,私生活でも,重要な書類に実印で押印する際には,「本当にその書面に押印してよいのか」を自分に再確認して行うという意味もあると思っています。

みなさまの中にもハンコに愛着を感じてらっしゃる方も多いでしょうから,ハンコが日本社会から簡単に排除されるものではないように感じています。

 

ブログのアカウントは相続できるのか

名古屋でも暑い日が続いています。

残暑というよりも,夏本番の暑さが続いているような印象です。

弁護士の仕事の関係で外に出る機会も多いため,暑さに負けない体力作りに励みたいと思います。

 

今回は,少し変わったところで,「ブログのアカウントを相続できるか」についてとりあげたいと思います。

 

個人が純粋に趣味でブログを書いており,その方が亡くなった場合,相続人にとっては,そのブログを引き継ぎたいという要望を持つことはほとんどないでしょう。

相続人にとっては,新たにブログを開設さえすればよく,わざわざそのブログを引き継ぐ必要はないと考えられるからです。

しかし,ブログの中には,アフィリエイト広告収入を得られるものも存在するため,相続人としては,これを相続によって引き継ぎたいと考えるかもしれません。

 

では,ブログのアカウントを「相続」することはできるのでしょうか。

 

ブログ開設者とブログサービスの提供元との間には,ブログについての契約関係が存在していると考えられます。

この契約内容の中に,契約関係の相続を認める規定があるもの,相続を認めない規定があるもの,相続を認めるかどうかを規定していないものがあるようです。

 

相続を認める規定がある契約の場合には,この規定に従って,提供元への手続きをしていただければよいでしょう。

他方,相続を認めない規定がある契約の場合には,相続をするのは事実上困難だと考えられます。

このように,相続に関する規定がある場合にその規定どおりの取扱いになるであろうことは,契約による私的自治が及ぶと考えられるためです。

 

では,相続に関する規定がない場合はどうなのかとう考えると,非常に難しい問題だといえます。

ブログに関する契約が特定の者に専属して帰属すべきものなのか,これを承継することを許容する性質のものなのかは考え方の分かれるところであろうと思われます。

この点が問題になった場合には,これからの業界の慣行も踏まえながらとはなるでしょうが,判断がなされるものと考えられます。