遺言書作成の相談

今回は,名古屋市など自治体の無料法律相談でよく受ける相談内容について書きたいと思います。

弁護士の江口潤です。

 

よくあるご相談として,「書店で遺言書に関する書籍を読んで,自分で遺言書を書いてみたので,内容について見てほしい」といった方がいらっしゃいます。

たしかに,自筆証書遺言の法律上の要件を満たされているものであることが多いのですが,やはり専門家の立場からみますと,よりよい遺言にできる余地があるなあと感じます。

たとえば,遺言の方式をどうするかというところでも,実はしっかりと考えておく必要があります。
無料法律相談にいらっしゃる方は,まずは手軽で費用がかからない自筆証書遺言をお書きになりたいという方がほとんどです。
たしかに,自筆証書遺言では,公正証書遺言よりも,遺言書の作成段階の費用を抑えることができます。
しかし,遺言者が亡くなった後に,自筆証書遺言は家庭裁判所で検認という手続きをする必要があり,この手続き自体が手間なところがあるうえ,相続人全員に立会いのための通知をしないといけないという問題もあります。

そういったことを考えると,ご相談者様が書かれた遺言書を見ただけでは,弁護士がご相談者様にとって最善のアドバイスはできないということがご理解いただけると思います。

ですので,私は,まずご相談者様が遺言書を書こうと思われたきっかけからお伺いし,その上で,家族関係や財産関係についてできる限り詳細にお伺いするようにしています。

特に,相続においてもめた案件を多く取り扱う弁護士の立場から言わせていただくと,そもそも遺言書があれば大きく違った結果になったのになあと思う案件も多いのですが,遺言書があったとしても内容や方式についてもっと詰められていれば,このような紛争にはならなかったのになあと思うこともしばしばです。

ほかに,予備的遺言だとか,付言条項だとか,遺留分減殺の方法の指定であるとか,遺言書に関する書籍にはさまざまなテクニックが書いてありますから,これらについてもできる限り有効に使っていただきたいと思います。
ただ,どうしてこのような条項を入れることが,遺言者の意思を実現するうえで役に立つのかを具体的にイメージすることは難しいかもしれませんが,このような点はぜひとも専門家に聞いていただきたいと思います。

他方で,相続においてもめないようにするというためには,実は遺言書を作成するということだけでは不十分なことも多いのです。
保険金等の受取人の指定をどうするかや相続財産をどのような形で残すのかなど,考えておくべきことは非常に多いのです。

こういったところまでも短い法律相談の時間ですべてお伝えするのは不可能ですが,遺言書を作成した方がよいかどうかや,内容についてどこまで詳細なところまで検討すべきかは,遺言者の財産が多いかどうかとは必ずしも一致しませんので,みなさまにはぜひともしっかりとしたご相談を受けられることをおすすめいたします。

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