相続法の改正について

令和元年7月1日という日は,私のような名古屋で相続案件を多く扱っている弁護士にとって,特別なものです。
というのも,この日は,平成30年7月6日に成立した相続法の改正のうちの多くの規定の施行日なのです。

これまでも法改正の内容について十分に研究をしてきたつもりでいますが,その細部までしっかりと理解して,お客様に最善のアドバイスをしなければなりません。
また,しばらくは法改正の適用前と後の案件が混在するため,この点にも注意をしなければならないと考えています。

法改正に実務がどのように対応していくのかについても,しっかり注視していく必要があります。
たとえば,預貯金の仮払い制度の新設については,各金融機関でもこれをどのように取り扱うのか,これからの各金融機関の動きについても調査しておかなければなりません。

相続法の大きな改正が約40年ぶりとあって,ある程度メディアでも取り上げられていますが,みなさまにはその内容についても正確に理解をしておいていただきたいと思います。
相続法の改正前から,お客様から改正内容についてご相談を受けることがありましたので,今回は少しだけ法改正の内容に触れたいと思います。

相続法の改正によって,相続人以外の者の貢献が相続において考慮されることになりました。
この権利は,貢献をした者から相続人に対して請求できるものであり,このようにして請求できる金銭を特別寄与料といいます。

ただ,この権利を請求するにあたっては,何点か注意が必要です。

ひとつは,この権利を請求できるのが被相続人の親族に限られるということです。
親族ではない者について,この権利が認められるわけではありません。

また,特別寄与料の支払いを請求するうえで,当事者間で協議ができなかった場合には,家庭裁判所に協議に代わる処分を請求しなければなりませんが,これには期間制限があり,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6か月以内か,相続開始から1年以内に請求をする必要があります。

法文上は,「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」場合に,特別寄与料の請求ができることとなっています。
従来の相続人の寄与分が認められるためのハードルは高かったわけですが,今後,この権利がどの程度裁判所から認められるのかについても研究していく必要があります。

 最後に,今回の相続法の改正のすべての規定が7月1日に施行されるわけではありません。
 私自身が最も注目している配偶者居住権については,来年4月1日が施行日となっていますので,ご注意ください。