弁護士の松山です。
生活保護法63条と免責の関係を説明します。
1 非免責債権
自己破産した場合,基本的には全ての債務が免責されることとなり,破産者は債務を支払う責任を免れます。
もっとも,一部の債務については,破産しても免責されることはありません。
典型的には,税金や養育費,罰金等が挙げられます。
このような債権を非免責債権といい,破産法253条1項に規定されています。
2 生活保護法63条
次に示したのが生活保護法63条の規定です。
63条
被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
この規定に基づく返還債務は,免責の対象となり,破産すれば支払う責任がなくなります。
ところで,今月公布された「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」では,生活保護法の一部を改正する条項が盛り込まれています。
その内容の一つとして,63条に規定される返還債権も,国税徴収の例により徴収することができるというものがあります。
国税徴収の例により徴収することのできる債権は,非免責債権に該当するため(破産法253条1項1号,97条4号),63条に規定される返還債権が非免責債権となるとする内容の改正ということになります。