犬神家の一族と遺留分(その1)

1 映画『犬神家の一族』

11月10日から11月23日まで、角川シネマコレクションの公式YouTubeチャンネルにて、映画『犬神家の一族』(1976年公開)が無料で公開されています。

横溝正史原作で名探偵金田一耕助が登場することや、これまで何度も映像化されてきたこと、スケキヨの白い仮面、湖から生える2本の脚などの一部の有名なシーン以外は知らなかったので、良い機会と思い、鑑賞しました。

2 物語の内容

物語は、犬神佐兵衛という大富豪が亡くなる場面から始まります。

その後、佐兵衛の全相続人が揃ったところで、犬神家の顧問の古舘弁護士から佐兵衛の遺言の内容が明かされますが、その内容を巡り事態が進展します。

3 遺留分制度の存在

この遺言の有効性や古舘弁護士の行動・発言に関しては、作品外で何点か法律的な疑問が挙げられています。おそらくインターネットが発達する前から指摘されていたと思われますし、現在では士業の方のブログで確認できます。

その中でも、とくに重大なものとして遺留分の存在を指摘するコメントを挙げることができます。

遺留分とは、遺言によっても侵害されない相続人の権利です。

『犬神家の一族』の物語の中では、古舘弁護士が遺言の内容が法的に全く問題ない旨を宣言し、遺留分が存在しない前提で話が進んでいきますが、遺留分の存在が示唆されていれば、その後の悲劇は発生していなかったのではないかとも思われます。

・・・と、ここまでなら、単に横溝正史が相続の制度を知らなかったことに起因するミスとも思われますが、事情はもう少し複雑なようです。